サイハテ 公演情報 演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)「サイハテ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/12/13 (土) 13:30

    “国民管理局”による徹底した管理社会、カースト制度のような絶望的なしくみ…。
    定年退職後の楽園を夢見て、地道に底辺の仕事を続けてきた男がたどり着く現実。
    庶民ってこんなにも非力で哀しいものなのか。

    ネタバレBOX

    白い布に覆われた舞台、骨壺のような箱が一段高いところに置かれている。
    開演前からその箱の前に一人の女性が、客席に背を向けるように座り続けている。

    定年を迎えた男は “サイハテ” という楽園のような場所へ行くことを夢見ている。
    国民管理局では先に来ていた職場の先輩や後輩、同じ底辺の人間ながら管理局に勤務している者
    などに出会う。 “サイハテ” への切符を手に入れるため、人々は宝くじのような確率に
    望みをつないでひたすら待ち続ける。男の娘は、自分を置いて一人“サイハテ”に行こうとする
    父親に反発し、管理局まで追いかけてくる。
    厳しい詮議の末に男はついに“サイハテ”にたどり着くがそこで見た世界は…。
    というストーリー。

    「規則ですから」を連発する国民管理局の女性職員(高畑こと美)のスキの無い
    なりきりぶりが素晴らしく、観ている側も国家の締め付けを感じて息苦しくなる。
    それが功を奏して、上司を差し置いて国民をいいように扱うこの女性職員が、
    自らの失態を上司に突かれて失脚する様には爽快感マシマシ。
    いい上司もいるじゃないか、人間味を失わない管理者も存在してよかった、これで男は
    望み通り“サイハテ”へ行ける、と思ったのだが、無事たどり着いたその“サイハテ”は、
    暗澹とするような場所だった…。

    男が繰り返す「妻をサイハテに連れて行くと約束したんだ!」という叫びと
    現れては消えていく妻が、実はもう死んでいるという現実。

    「自分がいなくなった方が30歳の娘は自立できる」という理屈と
    自分は置いて行かれた、戻ってきてと望む娘。

    「相手が望むことをしてやりたい」と言いつつそれを自分の目標にすり替えるのは
    優しさと背中合わせのエゴなのだろう。
    自分でも気づかないうちに獲得した目標にすがりつき、それを目指し優先する。
    誰かを幸せにし(た気になって)達成感に浸る(自己満足)構図が透けて見える。
    老後これでは「それ、結局自分のためでしょ!」と総スカンかも。

    台詞が少し冗長で流れが滞る場面があり、もったいない気がした。
    その分“サイハテ”の現状がもっと知りたかったと思う。
    想像力を掻き立てる演出ではあるが、もう少しリアルに、あの男が直面した過酷な現実を
    見せて欲しかった。そうして共に暗澹としたかった。
    先に到着した人々はどう過ごしているのか、結局国は何の目的で“サイハテ”を作ったのか、
    残された家族はどうなるのか、そして“サイハテ”にも希望は残っているのか…。

    あの“サイハテ”に、ひとすじの希望があればと願う。



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    2025/12/14 13:55

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