サイハテ 公演情報 演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)「サイハテ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    タイトル「サイハテ」…どこを若しくは何を基点にしているのか判然としないが、その抽象性が物語の世界観そのもの。時として観れば現在否定の未来、心の在りようとして考えれば 自由とは?を追求することで、逆に不自由さや矛盾を生み出すようなパラドックス。

    理屈でいえば、量的な時間と言われる「クロノス」から質的な時間「カイロス」の世界を望んだ男、言い換えれば 定年退職後、悠々自適(楽園)の生活を手に入れるための審問。それを通して人間(心情)や社会(制度)が内包する問題を炙り出すような。ちなみに登場する人物は、男・妻・娘・職員・先輩・後輩・部下そして旅人と記されており、そこから誰もが持つ普遍性を表しているようだ。また舞台美術から、この世とあの世の間(ハザマ)のようでもある。全体感は ハッキリしないが「知的」という印象、そこに不思議な魅力を感じる。見応え十分。
    (上演時間1時間45分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に白いシーツに覆われた円台。その上に上演前から1人の女性が後ろ向きに座っている。円台には携帯ラジオ、旅行鞄が開けられ 衣類が散らばっている。後々 シーツが取り払われ円台下への開閉通路が現れる。上演後 すぐにキャストが細長い白布を等間隔に吊るすが、場内の黒壁と相まって鯨幕に見える。この光景から死者との関わり 現世と来世の間(ハザマ)を連想する。

    物語は、40年間勤めた国民汚物課 下水飲料班を定年退職した男(60歳)が、「サイハテ」に行くために国民管理局の審査を受けるところから始まる。以降 管理番号で呼ばれる。その第一次審査は1日1回のガラポン抽選、それまでの(勤務)貢献度などは斟酌されない。元職場の先輩(課長)は10年間くじ を引き続けているが…。その先輩が男の代わりに引いた くじが当たり 男は二次審査へ。男の身上調査が始まるが、理不尽な質問に困惑し怒りが込み上げてくる。男は非人戸籍という最低限の権利しか有していない。その出自ゆえ、人が嫌がる仕事にしか就けなかった。

    この国民管理局には男女の職員とその部下がいる。女職員(高畑こと美サン)の口癖は「決まりですから」というルール至上主義、それに そぐわない対応をする部下(奥田努サン=Jr.5の代表)の頭をスリッパで叩く。持ち込み禁止物ー例えば爆弾や遺骨等、男は慌てて包み物を隠す。部下も非人戸籍で 男の幇助をしてしまう。客演にはさせられない叩かれ役だろう。物語は 軍服のような制服を着た管理局による統制、そこに不安・不穏といった不気味さが漂う。そんな中にスラップスティックな笑いの場面を挿入し和ませる。

    男の目指していた「サイハテ」とはどんなところか。そして妻も一緒に連れていくことにしていたが、既に亡くなっている。男の妄想によって幻影を見ているかのよう。娘は父を諫めるが、今まで娘と向き合ってこなかった男は その言葉に戸惑うばかり。男は 妻もサイハテに行きたがっていた、妻のためにラジオを買ったと思っているが、実は 男の自分勝手な思い。サイハテに来てみれば、自由はあるが何をすればいいのか。そこで出会った旅人も放浪者のような出で立ち。

    40年間働いて定年退職、「サイハテ」という地(自由)を手に入れるが、そこで待ち受けていたのは虚無の世界。しかし 元の世界へは帰(戻)れないし、そこでは銃声のような音が聞こえる。元の世界は社会という戦場であり生き残りをかけた戦いをしてきた。その安息の地が「サイハテ」ならば、そこでどう生き暮らすか模索しなければならない。それは誰にも頼ることが出来ない。相談する妻も亡く、遺骨を抱いてオロオロしているだけ。その精神的開放なのか自暴自棄なのか、遺骨の中のモノを投げ出す。そこに男の新たな一歩を見るような…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/12/14 15:25

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