満足度★★★★
様式美的なものも漂う
格調と言うと大袈裟だが、台詞回しや演技に様式美的なものがあり「あー、芝居だなぁ」感アリ。
また、内容も方舟なり故郷なりが現さんとするものの幅が大きく観る側が経験・知識に応じて好きに(?)解釈できるのも好み。
さらにコエキモなどの制作で馴染み深い北澤嬢による舞台美術もステキ♪
満足度★★★★★
等身大のリアルさ
いい感じにアナクロなアングラ感。
熱気がある舞台。
見終わって、「これいいんじゃない」と少し鼻息荒くなった。
酒井一途は今後も注目に値する作家ではないか。
たぶんこの物語はコレではないか、と思い当たったことを、失礼ながら、ちょこっと「ネタバレ」に書いてみた。…ちょこっと、と言いながらいつもの長文ではあるのだが…。
この長文は、作家の想いとは相当のズレはあるとは思うが、深層心理にはこういうことがあったのではないか、と思うことだ。
満足度★★★★
役者陣の力がありました。
ストーリーが自分には難しいながらも、役者陣の技量があったので、集中力が切れることなく最後まで観ることができました。舞台美術もとてもよかったです。
満足度★★
空中分解
箱舟に乗り込めば救済されるとの情報で、我がちに人々が集まる。然し、乗り込めるのは、ごく一部の人間だけであるから、当然、競争は苛烈なものになり、多くの者は、残されたまま滅ぶと考えられている。然し、実際に船に乗り込んで見ると、乗船している人々が幸せだとは思われない。幸せでも不幸せでも無い状態は、極端な悪さにも陥らない為、これがベストなのだという発想が、主流を為しているのである。
然し、新しく乗船したシャンスラードは、この船の救世主になる可能性があると、この船の歴史を総て知っている道化が、彼に告げる。
乗船者達は、それぞれ個性を持っているはずであるのだが、毎日、同じ議論を繰り返していて、一向に結論は出せない。然し、革命を目指す者が一人、彼女は情況を打開する為に先を見越すことを提言する、が。
演者たちの演技が空中分解していたように、この革命議論も幻想論の域を出ていないことが、一弾深みのある論理によって浮き上がってこない。このことに象徴される舞台であった。
本来、役を振られた役者が、己の実態と役の間にある溝に悩む姿を形象化しなければならないはずのこの舞台で、演出がその点に気付かず、きちんと駄目出しもできていない。
ここで描かれているキャラクターは前に進もうとはしない、が、幻想を持つほどに進みたいとのアンビヴァレンツやアンチノミーを表現したかったはずの舞台で、脚本の意図を汲んでいないであろうからである。
ハッキリ言って演出・役者の力量不足。道化を演じた役者に役者としての芽を感じた他は、見るべき所無し。それぞれのキャラが立つような演出になっていないのは、脚本の読みが浅いのと、脚本自体が頭でっかちなのであろう。
脚本に直接あたっていないので定かでは無いが、恐らく脚本自体コンセプチュアルなものであったろうことは想像できる。演劇は身体性に根ざしていなければならないだろうが、その点についての考察の甘さも感じる。
満足度★★★★★
骨太
理想を掲げ沈んだ陸地から方舟に乗り込んだ、選ばれし者たちは、いつしか仲間同士で争うことになる。暴力で相手を制止しようとする者、あくまでも、議論で和解しようとする者。それぞれの思惑の中で対立するが、彼らの求めるものは何処にもなく、気がつけば、自分たちは陸の上に立っているだけで世の中は何も変わっていない。ただ、ただ、幻想の中で生きているだけの滑稽なノアの物語。
現代を風刺したようなストーリー。斬新な切れ味に深く感銘を受けた怪作だと感じた。