映像鑑賞
満足度★★★★
映像配信を鑑賞。これもレビュー未記入であった。
だいぶ忘れているが、二つの時代を描いている、というのが(当時こんな議論したのかなー、といった疑問を乗り越えて)徐々に見えて来た。中津留節と言える議論劇だが、極めて大事な、しかしあまり表面化されない議論が舞台上で繰り広げられた事それ自体に心を揺さぶられる。差別について、人権について、日本は未だ発展途上どころか退行の様相すら見えるが、少々飛躍した考えを述べれば「彼ら」はその事を私たちに考えさせるために「こそ」存在するのであり、生まれ来たのだ、と考えると、健常者のカテゴリーに安閑としている自分たちも病気を抱え偏屈さ暢気さ優先順位の奇妙さそれぞれに程度の差はあれ「異常」と共に生きている生き物ではないか・・。その「栄誉」は私たちの中にもあるのだ。
昨今、改めてこう問いたくなる場面が多々ある。「自分が真っ当であると考えている理由は何か。その根拠は・・?」皆がそうしているから・・そう言っているから・・。それは、理由になっていないのである。
実演鑑賞
満足度★★★★★
二部構成がすごい活きてる。
一部も良い芝居なんだよね、良くは出来てるけど、今まであった範疇とゆうか。
現実はこの一部のところにも到達してない気もしたり。
一部を踏まえての二部、障がい者の社会進出がすすめば、当然、障がい者がハラスメントする側にもたつっていう。
役者の役の役の変わり方もすごい演劇的に面白くて、ね。
稽古すすめるにあたっても、このニ役は相当に考えさせられるだろうなって。
僕は基本、演劇として面白ければいいって立ち位置なんだけど、この芝居にはテーマ的なところでも唸りました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
とっても感動しました。
知的障害者の方達が仕事したい思いに向きあっているのに感動した事も人権尊重への考えにも感動もあるのですが、何よりも人権に対しての時代の変化をわかりやすく見せているのに感動しました。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/18 (月) 14:00
初日に観て、あまりにも良くて楽日に滑り込んで2度目の観劇。やはり素晴らしい。心が痛くなる部分と安らかになる部分がある。奇麗事を実行する。障がいは個性。話せば分かる。85分(11分休み)71分。
実在するチョーク会社を舞台にした作品だが、綿密な取材を経て書かれたのがよく分かる。1幕は障害者を雇用するまで、と、雇用し始めた頃をちょっとだけ描く。昭和30年代で戦争の爪痕も残り、差別的な発言も今より多かった時代で、心が痛くなるセリフもいっぱいある。国鉄、というセリフにはチョットばかりドキッとしたが、穏やかに落ち着く展開でホッとする。これだけならば、よくある話とも言えるが、問題は2幕。現在の同社で障がい者が7割いるという現状で起こり得る健常者と障がい者のぶつかり合いを描き、ハラハラするけれども穏やかに終わる。本作がいいのは、「障がい者」と呼ばれていない人も同じ悩みを持つことを大事に扱っていることで、1幕の菅井と2幕の今岡の存在が大きい。 初日に観て、若干ぎごちないと思ってた部分がなくなり、スムーズに展開されていた。2度観て良かった。
アフタートークで同社の社長が「奇麗事だと言うかもしれないけど、それをやるんです」と言ったとか…。なかなか言えないことだと思う。
同劇団を初めて観たのが2003年8月の『トラッシュマストラント2003』だからもう観て20年になる。吉田羊という女優を知ったのも同劇団。最初は独特のコメディをやっていたのが、いつの頃からか社会派と呼ばれるようになった。いつもだと2つ(以上)の対立する意見を双方が述べて、白黒付けるわけでもなく終わる、という心が痛くなる舞台をすることが多い。前作『入管収容所』はその最たるモノだったが、本作では当パンで中津留も言っているが、心がホッとするような物語になっているのが何よりも良い。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/15 (金)
駅前劇場にて劇団トラッシュマスターズ『チョークで描く夢』を観劇。
前作『入管収容所』を拝見し、あまりの生々しい日本の実体に衝撃を受けたトラッシュマスターズさんの新作。今回は障がい者雇用をテーマとした物語でした。前作同様、3時間に迫る長編作品であるにも関わらず、その長さを感じさせず、むしろどんどんグイグイと作品の中に吸い込まれる感覚。個人的にはまだ2作品を観劇したに過ぎないので、あくまでも前作・今作を通しての感想に留まるのですが、まず内容云々以前に、このように作品の中に引っ張られるような感覚に陥るのは、トラッシュマスターズさんの特徴の一つなのかもしれません。それくらい目の前で起きていることが生々しく、一つ一つのシーンが心に突き刺さるのです。
今となっては、障がい者雇用をしている企業は珍しくなくなりましたが、この作品の1幕で描かれている1959年(昭和34年)当時は、いかにそれが特別なことだったのか、ハードルが高かったのか、障がい者の人権が崩壊していたのか。。そんなことがリアルに伝わって来ました。障がいを持った方の「働きたい」という気持ちを踏み滲み、「出来る訳がない」「足手まといで迷惑」といった偏見に溢れている社会。そのような状況においても、一生懸命に働こうとし、無事に仕事が終わり、褒められ笑顔を見せるといったシーンには思わず涙腺が緩みました。障がい者の特徴・特性を理解を示し、会社や同僚に訴えかけようとする岡野優介さん演じる佐野欣也役がやたらと輝いて見えましたし、養護学校生徒役の小向なるさん、小崎実希子さんの迫真の演技があったからこそより際立ち、印象的なシーンになっていたと感じます。「働けるだけで幸せです」と涙ながらに叫ぶシーンはインパクトが強すぎました。
2幕は一気に時代が飛び、令和の現代社会における知的障がい者の雇用を映し出した内容でしたが、障がい者の雇用自体は珍しくなくなっても、また違った問題があるのだな、、と溜め息が出てしまうほどの深くこれまた心に突き刺さるテーマに、どこまで凄い作品なんだと驚愕しました。トラッシュマスターズさんのテーマを徹底的に深掘りし、取材し、問題点を洗い出し、ギリギリまで攻めて演劇作品として仕立てる一連の流れというか、作風というか、社会に問い掛ける劇団の在り方は非常に好感が持てます。もちろん賛否はあると思いますが、観た者一人一人の心に何かが刺さるのは間違いないと思います。多くの人が観て、自分なりに考えるきっかけとすべき問題、テーマではないかと。1幕で障がい者に対し、当初特に偏見を持っていた立花役の荻野貴継さんが、2幕では知的障がい者役を演じられていたのは驚きましたし、そのクオリティの高さはお見事でした。その他キャストさんも全員が主要な役割で、最高のパフォーマンスをされていたと感じました。
健常者も障がい者も同じ一人の人間。問題は山積しているのかもしれませんが、皆が傷つくことなく共存出来る世の中になることを強く望みたいものです。
実演鑑賞
満足度★★★★
障がい者雇用で知られる日本理化学工業に取材した作品。同じ題材を扱った東京フェスティバル「幸福な職場」を10年以上前に観て感銘を受けたが、今回も大いに楽しめた。後半に描かれた健常者と障がい者の現在の問題点には唸らされますね。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/14 (木) 14:00
座席1階
劇場に通い始めて結構な年月が過ぎたが、客席の大半が男女や年齢を問わず泣いているという舞台に初めて遭遇した。障害者雇用をテーマに「差別」に真っ向から取り組んだ戯曲。休憩を挟んで3時間という長さもまったく感じない。これは見ないと損する演目だ。ハンカチも用意しよう。
舞台は黒板に書くチョークを製造する小さな工場。前半は戦後間もない時期で、養護学校(特別支援学校)の先生に頼み込まれて2人の知的障害がある女生徒に職場体験をしてもらうところから始まる。人手が足りず、通常でも忙しい職場だ。最初から「足手まとい」と決め付ける従業員たちの反発は強烈だ。ここに一人の女性が立ち向かう。銀行に就職したが苛烈ないじめに遭って退職を強いられたという出自に、中津留戯曲の真骨頂を見る。
後半は同じ工場が舞台だが、時代は現代。ここでもハラスメントを題材にするなど、差別をベースにした時事性が秀逸だ。戯曲を書くに当たって緻密に取材したという背景が伺える。
後半については、異論がないわけではない。だが、この工場は小さいながらも障害者を「戦力」として受け入れ、それを貫き通している。一部の大企業が「特例子会社」制度を駆使して別会社に障害者を集め、簡単な作業しかさせず障害者雇用率だけを上げているという現実にも触れてほしかった。
知的障害者に知人がいないので分からないが、障害者を演じた役者たちは心底頑張ったと思う。その演技がどれだけリアルだったか、障害者の作業所の人に聞いてみたい。今作は秀逸な中津留戯曲に役者たちがすばらしい演技で応えてできあがった作品である。一人でも多くの人に見てほしい。
実演鑑賞
満足度★★★★
全国に先駆けて知能遅滞の人々雇用したチョークを作る地方の中小企業の物語りである。
昭和34年(1959年)と六十年後の現在。それぞれ80分の二場に休憩10分。2時間50分。障害者雇用の難しさも時代とともに変わっていくが、基本は宗教的な人間の倫理観が必要である、まとめてしまえばそういうことだが、それを実地で実行するには、かくも多くの軋轢がある、昔・差別、今・ハラスメントというドラマである。
前回の「入管管理局」で復調してきた作者はこのデータを重ねた経験を生かして、細かいデータをよく集めていて、その上にもう25年にもなる経験を生かしてドラマをうまく組んでいる。
社会問題を正面からとりくんできた先駆けの作者にふさわしい。このラインでは古川健や横山拓也が追尾してきていて、ドラマに成熟させる点では抜かれてしまったが、こういうデータと現実の扱いはさすがベテランである。後発の作者たちの追従を許さないのは、現実の事実表現にギリギリまで迫っていくところで、今回も知能遅滞の障害者(もちろん俳優が演じている)が数多く舞台に現われる。観客は問題を直視せざるを得ない。
こういうドラマは昔は左翼系劇団が問題劇としてやってきたし、告発劇もあったが、どれも不発だった。しかし、トラッシュマスターズの舞台はナマそのままが放り出されてような現実感がある。現在の配慮の行き届いた演劇界ではやはり異色の劇団として評価したい。
現に、何かの弾みで集団感激することになったらしい私の前の40歳前後の女性団体は呑まれたように見ていた。今の商業劇場にも小劇場にもない独特のヘタウマなのである。
経営上は難しいだろうが、今ほとんどが使われる機会の少ない中小都市の市民ホールなどで、巡演できたらいいのに、と思った。入り入りは八分強。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/11 (月) 19:00
開幕直前のタイミングで「時代背景に基づく不適切な表現…センシティブな表現や大きな声・音が出るシーン…観劇中にご気分が悪くなられたお客様は…キャンセル・払い戻しも承らせて…」といった内容のメールがチケット購入先から届き、恐る恐る見に行きましたが、気分が悪くなるどころか、心がいっぱいに、目頭が熱くなる作品でした。
24時間テレビで放送された『虹色のチョーク』が同じ会社を取り上げたドラマということで、良い予習になりました。第2部がこの劇団の真骨頂でしたかね。既に代替わりして、障害者雇用ではベテランの域になっていながらも、まだまだいろんな問題に直面し、新たな気づきや成長の多い波乱万丈の物語に、見ているこっちはハラハラドキドキ。怖い近未来予想が得意の劇団ですが、たまにはこういう心あたたまる系もいいですね。
実演鑑賞
満足度★★★★★
あまりに胸がいっぱいに、感動に包まれ終演後しばらく席を立てなかったです
長きに渡って知的障害者雇用を続けてきた企業の物語ではありますが、社会生活を営むうえで、全ての人に共通する大切な考え方がギッシリ詰まった公演であったと強く思いました
できるだけ多くの方々が、可能であれば一緒に働く会社の人達と(学生さんであればクラスメイト達と)観劇して感想を共有することが出来たのなら、かなり貴重な体験になるのではないかと願いにも似た気持ちになりました
TRASHMASTERSさんの公演であるから徹底した取材をもとにリアルな迫力をもって訴えかけてくる作品であろう事は過去の公演で実証済
なので障害者雇用に伴う問題点やその会社の奮闘ぶりを部外者の立ち位置からドキュメンタリー的な観点で堪能するつもりだったのですが、いつの間にか一緒になって解決の糸口を見つけだそうと躍起になっている
登場人物それぞれの想いを噛みしめてはどうすればいいのかと困り果て、どっぷり作中にハマり込んでいました
障害者と健常者、いやそれだけでなく色んな立場の人間が己の利益や尊厳をかけてぶつかり合うのは至って自然な事
現実にはもっと自己中心的な人間(他者の事情を一切気にかけない人間)がいて、ただでさえ難しいコミュニケーションを修復不可能にしてしまう事もあり得るわけで、その方がよりリアルかと一瞬思ったりしましたが、あえてそこまでの配置をしなかったは見事な英断
全ての事には意味がある
とことん他者を理解しようという意義と難しさ
その先に待ち受けている「幸福」がテーマであったと思えました
力強く とことん深い、素晴らしかったです
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/07 (木) 19:00
実在のチョーク会社を舞台にした作品だが、心が痛くなるシーンもある。最後は人間を信じたくなる。88分(10分休み)69分。
現時点で従業員の7割が障がい者という実在の会社を舞台に、最初の障がい者が入社する時代を描く昭和34年が1幕、2幕は令和の今、障がい者を雇用したことで起こる事件を描く。「障がいは個性である」とは良く言われることだが、それを頭で分かっても体現することは難しいと思う。それを如何に乗り越え、また、起こる事件にどう対応するのか、を、丁寧に描く。1幕はやや都合が良過ぎる気もするけど、演劇的に許容されるギリギリのレベルだろうか。2幕の事件は予想外だったが、確かにそういったことは起こりうると思った。1幕で登場した、他の従業員と対立する菅井の存在と受け入れられ方が、実は大きい出来事だと思う。演じた川崎初夏は、2年ぶりの出演となる劇団員だが、静かだが強いキャラクターを見事に演じた。川崎はじめ、手慣れた役者陣と若手の熱演が心地好い。2幕で上司に逆らって主張する社員の今岡を演じた小崎実希子がいい。