チョークで描く夢 公演情報 TRASHMASTERS「チョークで描く夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    全国に先駆けて知能遅滞の人々雇用したチョークを作る地方の中小企業の物語りである。
    昭和34年(1959年)と六十年後の現在。それぞれ80分の二場に休憩10分。2時間50分。障害者雇用の難しさも時代とともに変わっていくが、基本は宗教的な人間の倫理観が必要である、まとめてしまえばそういうことだが、それを実地で実行するには、かくも多くの軋轢がある、昔・差別、今・ハラスメントというドラマである。
     前回の「入管管理局」で復調してきた作者はこのデータを重ねた経験を生かして、細かいデータをよく集めていて、その上にもう25年にもなる経験を生かしてドラマをうまく組んでいる。
     社会問題を正面からとりくんできた先駆けの作者にふさわしい。このラインでは古川健や横山拓也が追尾してきていて、ドラマに成熟させる点では抜かれてしまったが、こういうデータと現実の扱いはさすがベテランである。後発の作者たちの追従を許さないのは、現実の事実表現にギリギリまで迫っていくところで、今回も知能遅滞の障害者(もちろん俳優が演じている)が数多く舞台に現われる。観客は問題を直視せざるを得ない。
    こういうドラマは昔は左翼系劇団が問題劇としてやってきたし、告発劇もあったが、どれも不発だった。しかし、トラッシュマスターズの舞台はナマそのままが放り出されてような現実感がある。現在の配慮の行き届いた演劇界ではやはり異色の劇団として評価したい。
    現に、何かの弾みで集団感激することになったらしい私の前の40歳前後の女性団体は呑まれたように見ていた。今の商業劇場にも小劇場にもない独特のヘタウマなのである。
    経営上は難しいだろうが、今ほとんどが使われる機会の少ない中小都市の市民ホールなどで、巡演できたらいいのに、と思った。入り入りは八分強。


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    2023/09/14 11:02

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