恋女房達 公演情報 恋女房達」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-20件 / 29件中
  • 201006031930
    観劇

  • 満足度★★★★

    ヤラレタ!
    短編が6つ。
    どれも面白かったが、特に家に帰ると主婦が待っているストーリーは秀逸。
    完全にやられたと思った。スゴイ!

  • 満足度★★★★

    なんて素敵な時間
    だったのか


    たまりません

  • 男性受けする、北島亭的なフレンチ
    教養のある年配の方(とくに男性)を虜にしてしまう、夢十夜とかを彷彿とさせる知的な作品群。なにより、昭和なお茶の間の風景が素敵☆ 反面、OL会話とか、赤い糸の若者の雰囲気はすこし弱かった感も。

    ネタバレBOX

    あと、個人的には、
    多くの人が喩えているフレンチのディナーでいうと、
    後半3本は「魚料理」「グラニテ」「肉料理」という皿だしになっていたけれど、
    個人的には、デザートと珈琲、あるいは食語酒としてマールやカルヴァドスで締めて欲しかった気も。3分の小品でいいので。
    まあ、カーテンコールがそうだった、ともいえるのだけど。
  • 満足度★★★★★

    心にすっと入り、じんわりと広がっていくような良さ
    あいかわらず、台詞と、その間と、そのトーンが絶妙である。
    ちょっとした短い会話から、その人やその人との関係が、すっと浮かび上がる様は見事だ。

    ネタバレBOX

    ちょっとした視点の変化から、物事の有様や本質のようなものを眺めてみることが、青☆組の得意とするところではないだろうか。

    その視点の変化は、以前の『花とアスファルト』にあった「団地に熊が住む」という設定のように、今回の「恋女房」での、ちょっとあり得ないものから、「末永い夜」のように、痴呆の母親が感じている歳からの視点が交錯するようなものまである。

    また、その設定がジャンプしても、足下はきちんと現実と地続きにある。人と人との関係や繋がりなどが現実の中にある。だから、単なる絵空事や、中途半端なSFやファンタジーになってしまわない。

    そして、その根底には、どこか温かさがある。それはたとえ「押しかけ女房」のような怖い話であったとしてもだ。つまり、怖い思いをした女の心には、恐怖以外のものが残ったように思えるからだ。

    青☆組の良さは、「人(というもの)を信じている」ということ、あるいは「そういう人が絶対にいることを信じている」ということではないだろうか。そんな感じがする。
    いつも青☆組を観た後の感想に「品の良さ」のようなことを、私は書くのだが、結局のところ、「品」とはそうした人と人との関係の表れのようなのもかもしれないと思うのだ。


    「恋女房」
    保険外交員の男と同じ視線で???を頭に浮かべながら物語が進む。無理にこじつけや説明がないところがいい。ちょっとブラックな味わい。

    「燃えないゴミ」
    コミカルな中に、やはりブラックなテイストが。

    「スープの味」
    2つに分けたところが秀逸。前半に子どもっぽくだだをこねていただけの男に見えていたのが、後半では、切なさ溢れる展開に。

    「押しかけ女房」
    雨の設定が効いている。こういう細かいディテールの選択が、短編なのに物語を深く見せてくれる。カギのキーワードからの、ぞっとする展開が見事だし、単なる恐怖話にしないための、ラストのモノローグが切ない。これって、同世代で同じような境遇の女性(1人暮らしの女性という意味で、不倫は別として)から見ると、切実なものがあるのではないかと思った。吉田小夏さんの気持ちが込められているのかな。

    「赤い糸」
    ほのぼの話。メルヘンっぽくあるが、これは、赤い糸なんてものは存在しないので、本当のところ、運命の赤い糸伝説を自分で演出し、今付き合っている男にそれを信じさせ、結婚を決断させた女の話なのかもしれない。つまり、男だけでなく、「物語だから赤い糸はあり得る前提で観ていた」観客もうまく騙したのかもしれない。

    「末永い夜」
    親戚間の会話がうまい。何気ない会話なのに、関係が見えてくる。母親が痴呆で、昔の時代にいることを若い女性に演じさせることのうまさは、演劇ならではの演出であり、観客の頭を少し揺さぶってくれて気持ちいい。ラストの一言が活きてきて、深い味わいと余韻が残る。

    短編というと、どうもオトシバナシ的な展開になりがちなものだが、すべてを下手にオチを付けてオチのための物語にしなかったところが、うまいと思う。
    短編映画でも短編小説でも、直接的には描かれていない前後の繋がりがうっすらと見えてくるものがいい作品だと思う。
    そういう意味において、この短編たちは、単にストーリーを追って、面白い、おかしいというだけでない、深みや余韻を楽しめるものになっていた。

    青☆組と吉田小夏さんの作品を数本を拝見して感じるのは、男女の役割が、ちょっとノスタルジー的な彩りがあることだ。
    それは、吉田小夏さんの実体験というよりは、根底に持っている昭和へのあこがれなのか、または彼女のご両親から受け取ったもの(愛情とか)に対する尊敬の念なのかな、と思う。
    それがアナクロになったり、パロディになったりしないのは、創作の巧みさだけでなく、やはり「品」とか「姿勢」とかのようなものなのではないかと思うのだ。


    私の観劇した回は、あの会場で立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。次回は、もう少し大きな会場で、ということになるのだろうか。
    すでに次回も楽しみになっている。
  • 満足度★★★★★

    極上のアラカルト料理でした
    「発想の豊かさ」という、高級調味料で味付けされた、まさに極上のアラカルト料理、堪能させて頂きました。

    以前、評判高い劇団の芝居を観に行った時、芝居そのものにはがっかりしたのですが、アフタートークで、初めて、生小夏さんを拝顔し、こんなに可愛い女性が、素敵な作劇もなさるなら、神は、何物お与えになったのかと、実は、半信半疑で、青☆組を初観劇しましたが、噂は本当でした。とっても、素敵な作品ばかりでした。観客の予想を上手に裏切る技量も大したものです。あんなに、若くて、可愛らしい感じの女性なのに…。御見逸れしました。こうして、若い才気に巡り合うチャンスがあるから、観劇はやめられないのですねえ。

    何だか、最初から最後まで、心を前のめりにして、見入ってしまいました。
    本公演も、今から、とても楽しみです。

    ネタバレBOX

    「恋女房」…保険外交員役の斉藤さんの演技が抜群でした。本当に、保険外交員の雰囲気!!驚くべき現実に、目を白黒させる様子が、実にお見事な表現力で、一目でファンになりました。大西さんのコメデイエンヌ振りも相変わらず。3人の妻のシュールさ加減も絶妙な匙加減で、おいしい前菜を頂きました。

    「燃えないゴミ」…いるいる、こういうおばさん!年配女性役の羽場さんの演技が最高でした。それぞれの独白シーンは、台詞にもセンスが溢れ、ちょっとゾクっとしましたが、惜しむらくは、唯一男性出演の田村さんの目に、一瞬、物怖じめいた雰囲気を感じてしまったこと!女性陣に気圧されたのかな?登場人物、女性だけにした方が良かった気もしました。

    「スープの味」…これは、実にお見事な、変化球劇でした。観客の予想を裏切る技量の小気味よさに唸り、最後は、大西さんの名演に、気付いたら、頬に涙が落ちて来ました。「スゴイよ!小夏さん」と、心で、突っ込みいれました。

    「押しかけ女房」…これも、予想できない展開でした。最初、女房は、主人公の分身かと思いました。あんな幕切れになろうとは!
    ただ、そうすると、主人公の好みをあそこまで女房が把握していることが、やや不思議な気はしましたが、まあ、いいかと、小夏さんの術中に、素直に嵌ってしまいました。
    独り身の複雑な女心を、木下さんが、バッチリ魅せて下さいました。

    「赤い糸」…何だか、とってもほっこりする、可愛らしい作品でした。イチゴ味の食休めの冷たいデザートみたい。台詞の随所に、個人的に受けてしまい、終始クスクス笑って観てしまいました。何か、この男性、私の身近にいるタイプなので…。

    「末永い夜」…向田邦子さんの戯曲を彷彿としました。この作品が、一番王道かも。ストーリー展開は予想通りでしたが、キャスト陣の自然な演技の好演で、やはり、従来の作品にはない深みを感じました。三男役の芝さんが、中でも光っていました。

    星新一や、清水義範や、向田邦子や、サキや、オー・ヘンリーや…、先人作家のエキスを入れつつ、独自の味付けで、よりおいしい手料理を御馳走して下さった、小夏さんに、本当に感謝です。
    ここに、登場する、女房って、男性が思い描く女房像な気がしましたが、ひょっとして、小夏さんて、外見と違い、心は、男前なのかなと、想像してしまいました。


  • 満足度★★★★★

    各編の完成度が高く構成も絶妙
    全体にユーモアを漂わせながら、シュール、シニカルときてイイ話の3段重ねで締める構成が絶妙。
    もちろん各編の完成度も高く、阿刀田高、筒井康隆など「短篇の名手」たちの作品群や漱石の「夢十夜」の切れ味を連想。
    また、装置や各編の間の転換も面白く、満足度高し。

  • 満足度★★★★★

    素晴らしい作品
    初日と日曜マチネで観劇。初日もよかったけど、2回目の方が細かい部分を味わえてさらによかったです。観られなかった人も多いらしいので、もう少し大きい小屋での再演を希望します。

  • 満足度★★★★★

    大満足!!
    それぞれに一捻り二捻りあり、その中にブラックユーモアやペーソスが潜んでいて引き込まれました。そして観終わった後に残る優しさ…… 

    ネタバレBOX

     「恋女房」と並ぶ短編の代表作となるであろう「押しかけ女房」では、事実が暴かれた時の驚きと同時に、それぞれの心の内の哀しみが胸に迫る。羽場睦子、木下祐子の名演が光る。「スープの味」終盤、実は奥さんは亡霊だったと気づかされ、あの男の切なさがなんとも哀れで悲しかった。「末永い夜」は、、一番輝いていた頃に逆戻りした認知症の母親を演じた井上みなみの初々しさが心に残る。
     
     どの作品も、もう一度観たいと思わせる魅力的なものでした。
  • 満足度★★★★

    存分に楽しめました
    心地よい言葉の連なりと、サプライズがアクセントになって
    浮き彫りにされる関係性。存分に楽しめました。
    ただ、後半は少し眠たかったけど。

  • 満足度★★★★★

    星新一的SF世界
    吉田さん演出の作品は初見ですが、とてもチャーミングだったり、ホラーっぽかったり、笑えたり、泣きそうになったり、贅沢な時間を過ごすことが出来ました。全編を通じてショートショートをSF的な世界観で描かれていて、中学生の時に良く読んだ星新一さんの作品を思い出しました。個人的にはあの中では異彩を放っていた「赤い糸」のかわいらしさ、ダメっぷり、いとおしさがとても好きです。好みを排除すれば、「押しかけ女房」が素晴らしかった。million blueではない青☆組の公演を早く観たいものです。

  • 満足度★★★★★

    日本一のご馳走
    みなさんも、ご本人も小夏さんの作品をお料理になぞらえていますが、
    僕にとっても小夏さんのお芝居はご馳走です。

    本当に美味しいものばっかり作ってくれるから、
    いつも食べに来てしまいます。

    完全に餌付けされています。笑

    今回のお芝居は
    今の日本で食べることのできる最高のお料理といっても過言ではない!!
    と言いたい!!

    栄養たっぷりで、
    しかも食後はしっかり出るものも出る!!(失礼!)
    でもそんな感じで気分はすっきりです。

    五つ星レストラン☆☆☆☆☆です!

    ネタバレBOX

    どの作品もとにかく面白かったけれど、

    特にスープのくだりは、泣かされました。
    嗚咽を抑えるのに必死・・・。

    なにやら可笑しい台詞が、
    全く逆の切なすぎる台詞に変わる瞬間・・・本当に涙が止まりませんでした。
    今も泣きそうです。

    同じ言葉をこうも変えてしまう小夏さんのマジックには、
    感服しました。
  • 満足度★★★★

    期待以上
    六つの短編オムニバス、どれも面白く、特に「押しかけ女房」は秀逸です。未見の劇団でしたが、期待以上に満足です。大入りで、私が観た回も桟敷を増設してました。全くもって羨ましい。次回作も大いに期待します。

  • 満足度★★★★★

    食わず嫌い?
    正直、短編集というものはあまり好きでじゃない。

    小説であれ、映画であれ、コントであれ・・・短編にしている分、どうしても肝心な部分を表現しきれていないんじゃないかと感じてしまうからなのだが・・・

    どうもそういった自分勝手な考えは捨て去ってしまった方がいいのかもしれない・・・。

    そう思わされた。
    それくらいに面白かった。

    なにしろ「舞台なんてこれくらいがちょうどいい長さなんだよ」とでも言わんばかりに無駄がなく、そして深く、創造性に溢れていた。

    食わず嫌いだったのか?

    いや、
    違うと思う。

    だって、これまでだって何度も短編作品は観てきたんだから。

    つまり今回は以前のそれらとは根本的に違うってことだ。
    うん、そういうことだ。

    すこぶる良かった。

    ネタバレBOX

    そして僕が家に帰って最初にしたことはソーメンを茹でて食べることでした。

    そんな生理的な面への影響も十分すぎるほどに与えられました。
    ええ、それは「恋女房」の昼食の場面のせいです。

    ズズーッとソーメンだか冷麦だかをすする音はどうしようもなく耳に残ったのです。本物を使うってことはいいことですね。本能に訴えかけてきました。

    そうやって家に帰ってズズーっと誰にはばかることなく大きな音を立てながらすすっていると、ふと先程観たお芝居に対する感想が浮かんできました。

    「押しかけ女房」・・・コントのような奇想天外な話かと思い半笑いで観ていたら
    実は浮気相手の奥さんですか・・・恐ろしいです。まさかの展開にすっかりやられました。そして雨の音がやけに耳に残りました。さらには、電話の呼び出し音がNTTの陰謀だという話が心に残りました。

    「スープの味」にしたってそうです。僕はすっかり油断していました。だから、その真相を知った時、僕の両の頬にはちょっぴりしょっぱい水分が流れ落ちていたのです。

    それにしても「赤い糸」って・・・実際あるんですかね。僕は僕のことを運命の人だと言ってくれた三人の女性とサヨナラしています。もしかしたら赤い糸を自分で切り捨てていたのかもしれません。ちょうどあんな風に・・・。

    「末永い夜」・・・再び僕のホホに水が流れる羽目に・・・ああいうの弱いんです、僕。

    なにしろ素敵な六つのお話でした。
    まるでおとぎ話のようでした。

    音楽で言えばベストアルバム級ですね。

    ああ・・・そういえば音楽と言えばその昔、それはオーケストラが作り出すもので、一曲が何十分にも及ぶものだったわけですよね。だから、その頃の人達にとっては、今のように一曲がほんの数分で終わるような短いものになるだなんて想像もつかなかったでしょうね。

    時が経ち、音楽は形を変えたわけですが、僕らはそのほんの数分でどうしようもなく泣けたり、そして元気が出たりもするわけです。

    そう考えると今回の短編集・・・お芝居の新しい形なのかもしれませんね。
  • 満足度★★★★

    初見!
    吉田小夏作品。どの短編も素晴らしく楽しめた。

    ネタバレBOX

    「燃えないゴミ」 ゴミ箱の中に吐き捨てました。このセリフに妻の顔が浮かんだ。心あたりがいっぱい(笑)

    「末永い夜」 初夜のシーンが可愛くて良いですね。ラストのセリフにジーンと来る。キラキラ輝いていた青春がそこには有る。

    木下佑子さん、前に「プルーフ/証明」を観て以来ですが、今回も素晴らしい。
  • 満足度★★★★★

    みた
    半券がきれいなのはいい。
    しおりに使える。

    アトリエを出て気づいた。
    隣の庭に、青紫のあじさいが咲いている。
    あるものはいまを盛りと色づき、あるものは褪せて久しい。
    舞台上の女たちに重なって、また少し感傷的になった。
    演劇の魔法にかかったなと思った。

  • 満足度★★★★★

    吉田さん、ご馳走様でした!
    私が本作を観るに至った理由については長くなるので「観たい!」をご参照ください。
    個人的にはオムニバスが好きで邦画洋画問わず、オムニバス映画をよく観に行きます。昭和の邦画全盛期、映画監督が忙しかったためもあり、良質なオムニバスもいくつか作られていたのに、公開当時はあまり話題にならず、高く評価されていなかったのが不満です。
    このお芝居は上質なオムニバスものですが、ごく普通のオムニバス芝居とは違います。ひとことで表現すると「贅沢な大人の祝祭」とでも言いましょうか、観ていくうちに「大人のアトラクション」を観るための行列に並んでいるようなワクワク感に満ち溢れてきます。
    吉田小夏さんは挨拶文で本作品をお料理にたとえておられたが、食後の感想を言わせていただくと、家庭料理でもなく、よくある外食とも違う、一流店の腕ききのシェフが自らの目で選んだ優れた食材を選び、ふだんのメニューとは一味違う料理を作る期間限定の一軒家レストラン、そこで食事した気分とでもいいましょうか。
    作品のテイストとしては、現代の怪談というか、世にも奇妙な物語的な楽しさが味わえます。しかし決して奇天烈な芝居ではないのでご安心を。
    期間限定レストランですがとてもおいしいので、ふだん本店に行かれてるかたにもそうでないかたにも、お薦めします。
    吉田小夏さん、ご馳走さまでした。とてもおいしかったです。
    アトリエ春風舎ではいつもゆったり観ていたので、こんな混雑を体験したのも初めてでした。

    ネタバレBOX

    赤をうまく使った舞台美術と照明。音楽からして昔の遊園地のようなオープニングが楽しい。
    作品は6つ。「恋女房」は白昼夢といった趣。身重の若妻(小瀧万梨子)に保険のセールスマン斉藤(荒井志郎)が保険を勧めていると主人(藤川修二)が帰ってくる。昼時なのでそうめんを振舞おうとするが、次々違う「女房」が現れるのでセールスマンは目を白黒。主人はさも当然であるかの様子。もしかして一夫多妻制なの?さらに斉藤の前任者芹沢の妻(大西玲子)まで乗り込んできて、「その子、芹沢の子じゃないでしょうね!」と激昂。妻のひとり(木下祐子)が斉藤に昼寝を薦め、「芹沢さんはよく昼寝して行かれたのに・・・」という謎のひとこと。ラベンダーのサマーニットがよく似合う木下が美しい。
    「燃えないゴミ」。最近引っ越してきたという若い主婦(國枝陽子)がゴミ当番で掃除しているとゴミを捨てに近所の主婦が次々集まってきて・・・。燃やせるかもしれないけど“燃えないゴミ”もある。黒一点で妻のパンストを入れた小さなゴミを捨てにくる夫(田村元)が夫の本音を表現していて可笑しい。
    「スープの味」。妻(大西玲子)の作ったスープに「まずい!」と文句を言い続ける子供っぽい夫(林竜三)。「うまい料理を食べさせてくれると思ったから結婚したのにィ・・・」とごねることごねること。昔はこういう「結婚する理由は妻に料理を作ってもらえるから」みたいな本音を言う夫が多かったなー(笑)。
    「味噌汁の味」に文句を言う夫が多かったようだが。そのスープのレシピは妻が自分の母親に教えてもらったものらしい。妻は家を出て行く。この話には後段があって、夫が客(芝博文)にスープを振舞っている。「おいしい」と客は言う。妻の残したレシピでスープを作ったのだと言う。妻は既に亡くなったらしい。一度は夫を大嫌いになったという妻はいまは夫を再び大好きになって優しく見守っている。
    「押しかけ女房」。独身でバリバリ働く女性(木下祐子)。疲れて帰ってくると「女房」を名乗る女性(羽場睦子)が家にいる。炊事、洗濯、アイロンがけ、かいがいしく世話を焼いてくれるので、女性は不審に思いながらも、家の居心地はよい。結婚していく同僚たち。女性は上司(藤川修二)と不倫をしていた。煮え切らない男だったが、「一緒に暮らそう。女房は家を出て行ったんだ」と言う。「私の部屋の鍵を返して」と女性が言うと「家の中でなくしたと思うんだけど、なぜか鍵がみつからないんだ。女房が出て行ったころくらいから・・・」と言う。ハッとして家に帰った女性に「女房」はある想いを切々と訴える。雨がモチーフになっていて、ちょっとした怪談のようだが、凄く思い当たる部分が多い作品(笑)。キャリアウーマンとして社会で活躍する女性はよく「夫じゃなくてお嫁さん、女房がほしい」と口にするものねぇ。自分もそういう時期があったし(笑)。一方、「妻」って何?というと、この「女房」の訴えはある意味、専業主婦の本音というか、女房としてはこう言うしかないって部分がある。木下、羽場が役になりきり、とてもいい。同僚のうち、独身派の佐々木なふみがセクシーな足の組み方で「“いい女”の自信とつっぱり」を表現し、ゴールイン派の國枝が「無意識のうちにもちょっといやみな優越感を漂わせる勝ち組」を演じ、ふだんの彼女たちの役のイメージと重なって面白い。もちろん、現代は夫婦像も多様になっていろんな「女房」がいるわけだけど、ある部分、非常にこの作品はピンポイントで核に当たる部分が大きいと思った。で、男女問わず独身でありながらも家事も完璧にこなして居心地のよい「おひとりさま家庭」を作れる人もいて、こういう人は結婚しなくなる。自分の場合、その一歩手前で結婚したような気がする(笑)。
    「赤い糸」。読書好きな男(石松太一)が「赤い糸をみつけたから」と女(小瀧万梨子)から一方的に別れを告げられる。女が赤い糸をたぐり寄せると結ばれた男(芝博文)はあっさり糸を鋏でプツンと切ってしまう。唖然とする二人。
    ふられた読書好きな男のほうは、猛烈に自分の想いを伝える。本を読んでいるのはその素晴らしさを彼女にも伝えたいからだと。二人は元の鞘に収まり、このあと結婚するのかもしれない。好きな本ばかり読んでいないで、彼女にしっかり向き合わないとダメだということですな。この「読書好きな男」の言動が知人にそっくりで、悪いけど笑ってしまった。彼もこの芝居を観て恋にリベンジしてほしいと思う。
    「末永い夜」。外で転んですりむいた程度の怪我をした母を心配して集まった叔父(林竜三)や息子たち。母は叔父のことを「おじいさん」と呼んだりする。長男(田村元)は結婚しているが、次男(石松太一)三男(芝博文)は独身。三男の光男は生まれ変わりとまで言われたほど父親に生き写しだと言う。母が起きてきて、光男に夫のように話しかけ、嫁入りのときのように「初夜の挨拶」をする。戸惑う光男に、長男の妻(木下祐子)が母がいま息をひきとったと告げる。では、いまの母は?母(井上みなみ)はあくまで若い姿。人はぼけると一番幸せだったころに戻ると言うが、「霊界では一番幸せだったころの姿で生活している」という丹波哲郎の言葉を思い出した。この母もそうなのかなぁ。
    最後に「観たい!」理由の第一に挙げた國枝陽子さんについて触れさせて下さい。多少婦人では神経質だったりエキセントリックだったりするちょっと怖い女性の役が多いが、昨年客演したストロボライツの公演ではふだんと違う往年の清純派女優のようなピュアな芝居を見せた。その役でさえ、多少婦人の演出家・渡辺裕之さんが「嫌な女の役」と評したので私は戸惑ってしまったのだが(あれははたしてそういう役だったのかな、と疑問が残った)。ともあれ、この「恋女房たち」では吉田さんが彼女の資質をよく生かしてくださったうえ、オープニングの場面でスイングする彼女には多少婦人では見せたことのないチャーミングでコケティッシュな表情に驚いた。吉田さん、ありがとうございました。石井千里さんも先月、電動夏子安置システムの客演で活躍したし、多少婦人の女優さんにはどんどん他流試合で腕を磨いてほしいと私は思っている。
    照明が青年団系とは違う、でもどこかで観たような雰囲気だなと思ったら、あの内山唯美さん(劇団銀石)だったのも嬉しく、実に贅沢なお芝居でした。
  • 満足度★★★★★

    面白い!
    オープニングが可愛らしい。ポップな音楽とともに登場するキャストらのコミカルなダンスもハイテンションでいいな・・。なんてリズムで、こっちの表情もニコニコしちゃう。いいじゃな~~~い!!♪

    結婚して後悔するのと、結婚しないで後悔するのと、どちらがいいのだろうか・・。笑)


    以下はネタばれBOXにて。。


    ネタバレBOX


    「恋女房」
    一人の夫に複数の女房。ちょっとしたハーレムだ。笑)   しかも女房の年齢は若いのから熟女までさまざま。そこにサニー生命の営業マン・田中が営業にくるが、キョトン!とした彼の表情がいい。更に、これらの女房たちが、かつての担当だった芹沢とも関係があったかのように臭わせる状況に愕然とする田中の仕草が可笑しかった。
      
    「燃えないゴミ」
    ゴミの日に集った近所の主婦らの会話劇。リアルな中にも近隣住民のとのつきあいの難しさをも露呈した作品。「燃えないゴミ、燃えない会話、燃えないアナタ、遠い森の中に捨てた。」などと、夫との冷めた関係を絶妙なもじりかたで表現する。

    「スープの味」
    どうやら妻は亡くなったらしい。その妻が霊となって夫が作ったスープのあれこれを夫の愚痴を聞きながら過ごすつかの間の幸せな光景。序盤、「あなた顔色が悪いわよ。最近、痩せたし。」なんて妻のセリフから夫を殺そうとしてスープに毒でも盛ってるのではないか?と懸念したが、真相は亡くなった妻が夫を恋しさに夜な夜な現われる悠久のレンアイ物語。妻の吐くセリフ、「貴方の事が凄く好きになって、嫌いになって、大嫌いになって、死んだら好きになって、そして大好きになって、忘れられなくなった。」が切なくグッとくる。

    「押しかけ女房」
    キャリアウーマン・木下がある日、帰宅すると女房がいた。至れり尽せりの女房は木下にとって、心地いい存在だった。しかし、女房は不倫相手の藤川の本当の女房だったことがわかり、ついでに藤川が複数の女性とも不倫していたことがバレル。孤独なキャリアウーマンが持つ独特の表情を木下が絶妙に演じる。とてもいい。

    「赤い糸」
    付き合っていた男女の女子のほうに突如、小指に赤い糸がつながっている。彼女は今カレと別れる決意をし、糸を手繰り寄せると、そこにはイケメンが居た。彼女はそこに希望を見るが、あっさりとイケメンに糸を切られてしまう。笑
    結局薬局、高みは無理だと諦め、今カレと鞘に納まる。

    「末永い夜」
    呆けた姑を軸に家族らが織り成す情景。ここでの妻と夫の関係が坂道を転がる様に最悪になっていく。しかし、弟と妻の関係に何かありそうな空気もある。ちょっと辛口なスパイスを加えた物語。



    相変わらず、キャストらにはかせるセリフ回しが素敵だ。小夏にはこういった独特のセリフが魅力だが、愛も変わらず、キャストらがいい。それぞれのパンチの効いた物語のスパイスはすべてが好みだった。


  • 満足度★★★★

    ごつごつと挑むように
    短編集でしたが
    個々の作品が舞台上に創意をしっかり貫いていて、
    しかも、それぞれの物語に
    シュールさを打ち消さないふくよかな繊細さがあって。

    さらには全体を包括するようなトーンも醸し出され、
    たっぷりと堪能しました。

    ネタバレBOX

    どの作品にも、
    しなやかに寓意や不条理が織り込まれていて、
    それがさまざまなパターンを持って
    しかも鮮やかに観る側に伝わってきます。
    個々の作品が奥行きを持ってわかりやすいのです。

    冒頭の「恋女房」からやってくる
    どこかぬめっと
    底なし沼に取り込まれるような感覚が
    観る側の逃げ場をしなやかに断ち、
    「燃えないゴミ」から伝わってくる
    単に経年変化の表現にとどまらない
    燃えないものを捨てさる側の
    連帯感と閉塞感にぞくっとくる。

    「スープの味」があからさまに表す
    時間軸をもしっかりと取り込んだ
    現実のテイストには
    あとに残るウィットがあって・・・。
    他の物語を挟んだ見せ方が
    その味わいをさらにシニカルに膨らませていくところにも
    作り手のしたたかさを感じる。

    「押しかけ女房」に裏打ちされた
    日々の生活感覚にも瞠目。
    鏡に映る姿では見えないような
    キャラクターがすっと浮かび上がってきて
    目を見張るのです。

    「赤い糸」の瑞々しさもすごくよくて・・。
    相手との時間が醸し出す愛憎と
    お互いの揺れる気持ちの行く先が
    しっかりとした球筋で伝わってくる。

    「末長い夜」が俯瞰する時間と
    それぞれの時間のリアリティにも
    取り込まれた。
    今の雰囲気がきちんと作り上げられているからこそ、
    その場に重なる不条理な時間での
    嫁ぐひとときの常なる感覚が
    鮮やかに浮かび上がっていく。
    重なりあう時間の奥行きが
    そのまま女性があゆんだ
    女性の道程の質量を運んできて、
    生きることへの自然体の重さに
    すうっと満たされたことでした。

    観終わって振り返ってみると
    それぞれの物語に
    明確な表現の色合いがあって、
    観る側として挑まれているような
    高揚感が生まれていることに気がついて。
    その色合いをささえる役者たちの
    個々の物語のなかでの
    それぞれにキャラクターを演じ分けていく力が
    短編集のクオリティの統一と
    全体感を生み出しているのもすごくよい。
    初日ということでほんの少しの硬さはあったものの
    公演期間の後半にはもっと熟する予感もして。

    青☆組ワールドの
    たくさんの感覚をもらって
    苦いも甘いも含めての
    その味わいに
    とても満たされたことでした

    ☆☆☆★★









  • 満足度★★★★

    おかしなことを聞くね?
    ブラックコメディからファンタジーまで詰め込んだ6編のオムニバス。
    不条理感ただよう中盤まではかなり好きだな。
    日本的なタイトルとは裏腹に、アメリカ現代作家の小説を読んでいるよう。
    後半のウェットなエピソードは好みではないが、いい構成だと思う。
    細かい演出のアイデアも豊かで効果的だった。
    青☆組初観劇だったが、こういう芝居を作る女性作家がいることは、
    ちょっと驚きだった。

    ネタバレBOX

    白眉はサイコスリラーばりの第4話。
    木下祐子って何かハードボイルドなんだよなぁ。
    みんみん、相変わらずぴちぴち(むちむち)だ。
    ちっちゃい顔とのアンバランスさが可愛いけどね。

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