恋女房達 公演情報 青☆組「恋女房達」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    心にすっと入り、じんわりと広がっていくような良さ
    あいかわらず、台詞と、その間と、そのトーンが絶妙である。
    ちょっとした短い会話から、その人やその人との関係が、すっと浮かび上がる様は見事だ。

    ネタバレBOX

    ちょっとした視点の変化から、物事の有様や本質のようなものを眺めてみることが、青☆組の得意とするところではないだろうか。

    その視点の変化は、以前の『花とアスファルト』にあった「団地に熊が住む」という設定のように、今回の「恋女房」での、ちょっとあり得ないものから、「末永い夜」のように、痴呆の母親が感じている歳からの視点が交錯するようなものまである。

    また、その設定がジャンプしても、足下はきちんと現実と地続きにある。人と人との関係や繋がりなどが現実の中にある。だから、単なる絵空事や、中途半端なSFやファンタジーになってしまわない。

    そして、その根底には、どこか温かさがある。それはたとえ「押しかけ女房」のような怖い話であったとしてもだ。つまり、怖い思いをした女の心には、恐怖以外のものが残ったように思えるからだ。

    青☆組の良さは、「人(というもの)を信じている」ということ、あるいは「そういう人が絶対にいることを信じている」ということではないだろうか。そんな感じがする。
    いつも青☆組を観た後の感想に「品の良さ」のようなことを、私は書くのだが、結局のところ、「品」とはそうした人と人との関係の表れのようなのもかもしれないと思うのだ。


    「恋女房」
    保険外交員の男と同じ視線で???を頭に浮かべながら物語が進む。無理にこじつけや説明がないところがいい。ちょっとブラックな味わい。

    「燃えないゴミ」
    コミカルな中に、やはりブラックなテイストが。

    「スープの味」
    2つに分けたところが秀逸。前半に子どもっぽくだだをこねていただけの男に見えていたのが、後半では、切なさ溢れる展開に。

    「押しかけ女房」
    雨の設定が効いている。こういう細かいディテールの選択が、短編なのに物語を深く見せてくれる。カギのキーワードからの、ぞっとする展開が見事だし、単なる恐怖話にしないための、ラストのモノローグが切ない。これって、同世代で同じような境遇の女性(1人暮らしの女性という意味で、不倫は別として)から見ると、切実なものがあるのではないかと思った。吉田小夏さんの気持ちが込められているのかな。

    「赤い糸」
    ほのぼの話。メルヘンっぽくあるが、これは、赤い糸なんてものは存在しないので、本当のところ、運命の赤い糸伝説を自分で演出し、今付き合っている男にそれを信じさせ、結婚を決断させた女の話なのかもしれない。つまり、男だけでなく、「物語だから赤い糸はあり得る前提で観ていた」観客もうまく騙したのかもしれない。

    「末永い夜」
    親戚間の会話がうまい。何気ない会話なのに、関係が見えてくる。母親が痴呆で、昔の時代にいることを若い女性に演じさせることのうまさは、演劇ならではの演出であり、観客の頭を少し揺さぶってくれて気持ちいい。ラストの一言が活きてきて、深い味わいと余韻が残る。

    短編というと、どうもオトシバナシ的な展開になりがちなものだが、すべてを下手にオチを付けてオチのための物語にしなかったところが、うまいと思う。
    短編映画でも短編小説でも、直接的には描かれていない前後の繋がりがうっすらと見えてくるものがいい作品だと思う。
    そういう意味において、この短編たちは、単にストーリーを追って、面白い、おかしいというだけでない、深みや余韻を楽しめるものになっていた。

    青☆組と吉田小夏さんの作品を数本を拝見して感じるのは、男女の役割が、ちょっとノスタルジー的な彩りがあることだ。
    それは、吉田小夏さんの実体験というよりは、根底に持っている昭和へのあこがれなのか、または彼女のご両親から受け取ったもの(愛情とか)に対する尊敬の念なのかな、と思う。
    それがアナクロになったり、パロディになったりしないのは、創作の巧みさだけでなく、やはり「品」とか「姿勢」とかのようなものなのではないかと思うのだ。


    私の観劇した回は、あの会場で立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。次回は、もう少し大きな会場で、ということになるのだろうか。
    すでに次回も楽しみになっている。

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    2010/06/09 05:27

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