ビヂテリアン大祭 公演情報 ビヂテリアン大祭」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    力作でした
    宮沢賢治の小説「ビヂテリアン大祭」を戯曲に書き起こした作品。演劇にかかわる前は小説家志望だったと言う清末浩平らしく、当日会場で配布された「ビヂテリアン大祭報告会」のパンフレットも凝りに凝ったもので、もっともらしい嘘がたくさん書いてあり(笑)、観客を虚構の世界に引き込んでいく。
    主宰で演出担当の川口典成のブログによれば、脚色者と演出家が相当綿密な打ち合わせのもとに作り上げた作品らしく、このクラシックスシリーズの中では、一番の力作ではないだろうか。
    この経験を生かし、秋のオリジナル作品もすばらしいものとなることを期待している。

    ネタバレBOX

    立場の異なる者同士のディベートというよりプレゼンの場といった印象の芝居。宣伝文句の「抱腹絶倒の演説バトル!」とまではいかないこの劇団らしいまじめな内容だと思った。青年団の芝居のように、会場に入ってきた参加者が開始前の挨拶を交わすなど自然な始まり方。キャスティングがとても良い。宮沢賢三役の羽田真の主賓あいさつがいかにも講演者らしい口調で、ニュウファウンドランド島で開催された文化部門発表会場の様子を淡々と語る場面は会場の様子が目に浮かぶようだった。賢三は挨拶を原稿に下書きしてきたのだが、読んでいる途中で執筆中の「銀河鉄道の夜」(?笑)の原稿が混じってしまい慌てるところが可笑しかった。
    黄色いマフラーのいかにもうさんくさい雰囲気の大林市蔵(八重柏泰士)のマッシュルームカットの髪型にもふき出した。
    司会の料理研究家・多和田敏江(古市海見子)のハイトーンの気取ったしゃべりかたも、よく、女子大の講演会の司会の教員などに見受けられるタイプで面白い。
    キザで二枚目の大学教授・フランシス浅田(尾崎宇内)が黒板の「ビヂテリアン大祭報告会」の字を手で消して持論を述べ始めるところ、大林の動揺ぶりがおかしい。
    「肉食の是非」をめぐって「フランドン農学校の豚」の劇中劇が行われる手法もよかった。劇が始まる前、多和田が70年代の金井克子の「他人の関係」の音楽に乗って振りマネまでやるのは、清末の70年代音楽およびアングラ好みの名残なのだろうか(この歌知ってる人少ないと思うけど、笑えた)。
    暑い中、着ぐるみで豚に扮して熱演した羽田は本当に辛そうで、観ていて気の毒になってしまった。
    報告会に乱入した反対派たちが実は「新宿コメディ座」の役者たちだったというオチがつくが、岬マグ郎(堂下勝気)だの宇都宮餃子(宮嶋美子)だの、どこかアングラ劇団の香りがするのも清末らしい。
    宮嶋はユニークポイントの「シンクロナイズド・ガロア」でも好演していたが、ピーチャムとの肌合いもよさそうで、今後も客演の機会がありそうな予感。
    「報告会パンフレット」の投稿文に「チケットプレゼントで招待券が当たって新宿コメディ座の芝居を観に行ったが、大変面白く、今度はお金を払って観に行こうと思います」なんて意味の文章が載っていたが、これはCoRichのチケプレへのあてつけか?(笑)
    報告会が終わって「よだかの星」の一文の朗読が行われ、宮沢憲三の作家としての心情描写の場面があるが、劇団ブログを読むと、ここは清末の思い入れが強い場面らしい。
    いかにも文学好きな清末らしい場面だとは思ったが、個人的にはこの場面だけが浮いて感じられ、あまり感心できなかった。もちろん「よだかの星」は名作には違いないが、楽しい虚構は虚構として終わらせてほしかったし、宮沢の心情や苦悩を吐露するなら、もっとわかりやすい描き方にしてほしかった。
    式次第の紙が配られたが、その中にある「閉会の辞」がきちんと述べられなかったのも不満だ。この場面が「閉会の辞」の代わりなのかもしれないが、
    「報告会」は「報告会」として完結してほしいと思った。この部分が引っかかったので満点に近い満足度だったけれど、☆4つとさせていただきました。
    観劇の連れが「パンフの中のウイリアム・キーンは何者?」と最後までこだわっていた(笑)。ドナルド・キーンじゃないよね?連れの解説によれば、「理屈好きなフランシス浅田は清末さんがモデルだと思う」だと。なるほどね(笑)。
  • 満足度★★★

    観客巻き込み
    観客を巻き込んでの討論劇。
    あたかも報告会に参加しているかのよう。

    原本に忠実ながら最後にひねりを加えたのは素晴らしい。

    ただ、狭く暑かったのが…

  • 満足度★★★★

    良かったです。
    この公演自体がビヂテリアン大祭の報告会という設定で、最初に配られるパンフレットもそれっぽく作られていて面白かったです(役者名などが記された パンフレットは終演後に配られました)。

    客席に役者が入って来たり、紛れ込んでいたりする演出はしばしば見かけますが、今まで観た中で一番説得力がありました。

    報告会ということでマイクを使って喋っていたのですが、あの会場の狭さだと耳が疲れました。

    いっそのこと、市民センターの会議室みたいな所でやって、何も知らない人が観ると舞台なのか報告会なのか分からないくらいに徹底的に虚構を押し通せば、もっと面白かったかもしれません。

  • 満足度★★★★

    おもしろいなと思いました。
    その設定が。

    ネタバレBOX

    つまり、報告会の会場という設定が。

    実際にあんな形で報告やら、お芝居やらされたら、ぐいぐいと入り込んでしまうに違いありません。もしそこが何らかの商品を売り付けるような場だとしたら完全に買っていたでしょうね。怖いです・・・。

    その皆さんの才能を悪用しないでくださいね。
  • 満足度★★★★

    ニヤリのちギャフン
    まずは大祭に参加した「ケンゾー」の帰国報告会という設定にニヤリ、続いて原典のページ欠落部分の処理にニヤリ、さらに反対派が登場して議論になることにニヤリ、それが仕込みであるというオチにはギャフン。
    他の2編を取り込んだのも上手い。

  • 満足度★★★★

    素晴らしい大祭!!
    思わぬ展開にびっくりしたり笑ったり、しんみりしたり。

    終わるのかと思うとまだまだ続く素晴らしい大祭でした。

    ネタバレBOX

    大祭に参加している気になって私も拍手していましたが、コメディ劇団員の紹介のときは本当にラストかと思って一生懸命に拍手しました。ちょっと恥ずかしい!

    犬歯の件はうんちくがありました。現状を肯定していては先に進めない…、陥り易い論理だとか。人類の知的能力は人類の生物学的進化を超えています。

    ベジタリアンの海老蔵さんを観てよく激しい動きができるもんだと常々感心していますが、私は森光子さん派で一日60グラムでしたっけ、お肉を食べて元気になる派です。

    宮沢賢治に親鸞が出てきたのには驚きましたが、色々な人が意見を述べておられました。生物は他の生物を食べて生きているということを認識して、残虐にならず、謙虚に生きようと思いました。

    ところで、大僧正の帽子がエンゼルスの帽子だったのが最高に受けました。それらしく見えるのがなんとも不思議です!
  • 満足度★★★★★

    なぜ賢治はベジタリアンだったのか
    会場を大祭報告会場に見立てつつ、観客を報告会聴講者にしてしまう数々の小技が繰り出される。また劇場らしくないシアターPOOという場所の妙もあるだろう、席に座っているだけで、自分は果たして芝居を観ているのか報告会に来たのか、自意識があやふやになって面白い。
    内容は原作にかなり忠実なベジタリアンに関する滑稽なまでの議論であり、また一種の宮沢賢治考。
    原作自体が賢治の宗教的(主に浄土真宗の)視点を含め、思想が物語のフィルターを通さずダイレクトに表に出ているものだったり、
    間に挟まれる劇中劇など、作家宮沢賢治の作品と思想の関係を俯瞰的に示す脚色がなされていたので、
    宮沢賢治の童話的な作品が好きというよりも、宮沢賢治という人間自体に興味がある人の方が楽しめるのかな、と感じた。あと議論を楽しく感じる人。
    劇中劇など所々強引な点もあったように思うが、「菜食と力」を書いたという浅田さん(笑)など今の時代に合った脚色で全く古くささを感じない。
    そして宮沢賢治っておもしれえなと改めて感心。

  • 満足度★★★★

    滑稽なまでの大芝居!(^0^)
    宮澤賢治の「ビヂテリアン大祭」を実に忠実に滑稽に描写しながらも、客席全体を大祭の会場と化すことで観客を強引に巻き込んだような面白い舞台だった。
    当初、観客の誰かが、意見を述べたのだろうか?とあっけになったほど!笑


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    「ビヂテリアン大祭」とは菜食主義者たちの世界大会の報告という形で発表された作品。作品には賢治の独特の生命観、宗教観とともに滑稽なまでの畜産組合との演説合戦、論説闘争での言葉の魅力を伝えています。 セリフの一つ一つにユーモアが溢れており、愛しくなるほど。

    ビヂテリアンらは菜食主義者(菜食信者)と肉食異教徒の論争を通して肉食の是非を議論するも議論の相手を論破するために選ばれたテーマは多種多様で、相手を負かしてやり込める為に、ない知恵を絞る。一見、難しそうにみえる論理もよくよく聞くと小難しい言葉を並べただけのマインドコントロールというマジナイみたいなもの。笑

    そんなだから力で相手をねじ伏せるのではなく、難しそうな言葉の羅列で相手の頭脳をこんがらがらせて、その隙に自分を優勢にしようとする、一見にも二見にも卑怯な手法だ。笑

    ビヂタリアンらは肉類と野菜の消化率、味覚の比較に始まって、さらに殺生の是非、人口増加と食糧資源の問題、動植物を区別することの是非、キリスト教と仏教の見解の相違、輪廻の問題とどんどん、どんどん推移して、がんがん、がんがん敵を錯乱させる。笑

    やがて、迷える子羊にはこれしかあるまい。と言わんばかりに赤の野球帽をちょこんと乗っけたジッチャマが登場する。山伏のようなそのナリはどこをどーみたって、霞を喰って生きてるような老衰手前の白装束の老人で、「よっ!翁!」なんつって合いの手を打ちながらついでに願もかけちゃうと恵がありそな雰囲気。その名をヨハネ・マルコ・ペテロルカ16世などと美味しそうな名前で襲名披露みたいに呂律しながらも、その白っぽいジッチャマは大層偉そうな事を民衆に向かって演説する。笑

    そんな中、フランドル農学校のヨークシャヤなどというヨークシャテリアのような愛くるしい名前の豚さんを主役に引っさげて一発こっきりの大芝居を打つ。この芝居たるや、人間よりも演技が上手いのだから「恐れ入りました。」と慇懃に頭を垂れるほかないのだ。そんな主役級のヨークシャヤをブクブクと太らせ終いに喰っちまおう!ってんだからフランドル農学校のヤツラと来たら鬼のような輩たちだ。

    その鬼にも「鬼に金棒」のようなお上からの命令が下る。「家畜特別同意調印法」なる、豚さんにもト殺する際には拒否権がありますよ。ですから「死亡承諾書」を貰ってくださいね。なんつー、豚さんにとっては黄金の金棒を手に入れたようなものだ。しかーし、フランドル農学校だって、そんなアホではない。言いくるめて強引に豚鼻なる印を押させ、書類には赤々と輝く豚鼻の朱肉が自慢げにどっか~んとハートのような形でのさばってるではないか。

    ビヂテリアンたちは一斉に「可愛そうだ!、可愛そうだ!」を羅列し叫びながらも、そこにはおおまじめな議論とともに、全てをビヂテリアンのビヂテリアンによるビヂテリアンの為の大祭だった事を知らしめ終わらせる。

    ユーモラスで人間味あふれる反応も見られて、尚且つ怒涛の勢いでまくしたてる論説に大いに笑った。とにかく飽きない。色んな要素がギュッと詰まったお祭り騒ぎ!(^0^)
    楽しかった。滑稽な大祭。


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