ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】 公演情報 ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-20件 / 31件中
  • 満足度★★★★★

     
    観劇

  • 満足度★★★★★

    もういろいろ嘘。
    ネタバレボックスへ。

    ネタバレBOX

    フライやーの「緊張感?そんなもんねぇよ」。

    ・・・嘘じゃん!なにもかも嘘じゃん!UFOとかないです。
    こんなに笑いとドキドキのまじった芝居ははじめてです。
    ドキドキしながら笑ってていいのかよくわからない気持ちに陥りました。
    人物が舞台上におらず、声だけで進行するの場面は特に。
    ストーリーも新鮮でした。

  • 満足度★★★★★

    凄い!
    めちゃくちゃ面白かった。

    ネタバレBOX

    最初の音響からやられました。面白い匂いがぷんぷん!
    見ていけば、なんのつながりもなさそうな主婦とタクシー運転手の会話。

    そこから叫び声とともにビニール袋を血まみれにして
    降りてくるグロッキーなもう一人の女性。

    やられた!女性とその夫との優しさ100%オーラにぐっときた!
    もう最初から最後まで想像力を駆り立てられてキュンキュンです!

    衝撃とちょっと笑える雰囲気。

    舞台ってこれです!みたいな。

    もう大満足です。

    劇団五十八号線戦線のハマカワさんがいい味だしてました☆
  • 満足度★★★★★

    罪の置き場所。
    人間の無意識層に眠る本性をスケルトンにあぶりだし、リアルタイムの日常を鼻歌でも口ずさみながらスラスラとスケッチしてしまうようなところにこの作品の凄さがあり、恐ろしさがあります。そしてグロい、キワドい、カルト、ヴァイオレンスなどという使い古された言葉を粉々にした怪人の手招くほどよく壊れた世界にただもうひたすらヤバイくらい満たされていくだけ。何だろうこの感じ。とにかく観て欲しい。なんかもう、それしか言えない。

    ネタバレBOX

    日々のタイムスケジュールの中に組み込まれているルーティーンワーク化された暴力行為に忌々しささえ抱きながらも制裁を下し続ける被害者家族と、暴力行為を受けることによって犯した罪を償い続ける加害者という逆転の構図。
    肉体的な暴力をひたすらフィルムに収めることに心血を注ぐ映像作家の視点は観客の心理を代弁し、同級生を殺害した美少女は、加害者の青年の思惑を背負っているかのよう。

    善悪で割り切れないグレーの世界は病的で狂ってる。と言ってしまえばそれまでだけど、事を追っていくと、怖いくらいつじつまが合う。

    傷を舐め合うように罪とか罰とか擦りつけ合って。
    犯した罪を償う手段はあるものの、互いを許し合える決定的な方法はない。
    もうこれ以上、手の施しようがないことを知っているから、誰もが核心に触れることを諦めていて。
    誰かが殺されたり、誰かが自殺しても不思議と憤りを感じない。
    同情のないあっけない死は事件というよりも、不慮の事故に近いから。
    嘆いたり悲しんだりなんかしないで自分の立場を気にしてる。
    思いやりがすっぽりと抜け落ちている。
    見つかったらヤバイ。だからなかったことにする。
    口が軽そうなヤツもまとめて処分してしまえ。
    そう、すべては合理的で、利己主義で、理にかなっているのだ。

    当団体は初見だったが、終始、演劇という名の虚構の枠組みからはみ出している印象を受けた。芝居くさくない役者の振る舞い、嘘くさくないダイニングキッチン、完成されたテキストからあえてひとの心の動きを停止させ、部分的にそぎ落とし、曖昧にぼかしたような演出の仕方、共感されるキャラクターが誰ひとりとしていないこと、凄い画を撮るためならひとり死ぬくらい別にいいし。とか本気で思ってそうな映像作家の、正気の面したクリーチャー等の殺意に満たない小さな悪の集まりが、圧倒的なリアリティを獲得していたからだ。人を殺した人間は、殺されて然るべきだろう。という誰もが一度くらいは感じたことのある素朴な正義感を、被害者側と加害者側に優劣をつけずに同レベルから捉える試みも秀逸だった。残虐なシーンをあえて見せずに、観客の想像力のみで暴走させる不健全さ。魂を浄化させるような柔和な光の傾き。醜悪さと美しさのアンビバレンス。ゾクゾクきた。クセになりそう!
  • 満足度★★★★★

    凄かった!!
    いやあ、凄い内容でビックリしました!

    でも、ニュースでは同じようなことを報道してるし…、

    ネタバレBOX

    島尾の奥さんはこの家に何度も来ているのに、最初のシーンでけつまずいていたのはどうかなって。

    落語の「らくだ」のように、立場の逆転が面白い。
  • 満足度★★★★★

    吐き気がするほどロマンチックだぜ
    悪趣味(良い意味で)

    こんだけ好き嫌いが別れる芝居を久々にみた
    金払って気持ち悪くなるのが好きな変態の方はマストで
    気持ち悪いのって度をこすと快感に変わるんだなー

    初見でしたが、これからもこのスタイルを貫いて欲しいです

    あと音楽のヴォリュームがデカいので嬉しかった

  • 満足度★★★★★

    立ちすくむような
    じわっと見えてくる物語の構造の中で、
    なすがままになっていくような
    逃げられない感覚にとらわれて・・・。

    ある種の美学に取り込まれて
    目が閉じられず、
    息を殺して見続けてしまいました。

    ネタバレBOX

    舞台のトーンに織り込まれるように
    次第に物語の設定が明らかになっていきます。

    妙に納得できるというか、
    受容しうる設定のなかで、
    次第に状況が観る者の感覚をくわえ込んでいく前半。
    違和感はあるのですが、
    そういう感じがありだと思えてしまう
    不思議なナチュラル感が舞台にあって。

    役者たちの緻密な間の作り方や仕草の積み重ねに
    観る側がその世界に取り込まれてしまう。
    で、登場人物たちがため込んでいる
    滓のような、何かを蝕んでいくような感覚までが
    爪の間から伝わるように沁み込んでくるのです。

    その感覚が、
    雫一粒でコップの水が溢れるがごとく
    堰を切って流れだす・・・。
    愕然とするくらいに淡々と
    刺殺のイメージや
    自刃のシーンがやってくる。

    そこから、まるで魔物の鎖が外れたように
    キャラクターの深層に醸し出された
    欲望のなすがままに
    物語は進んでいきます。
    何かが崩れたあと、
    陥没が次々に周りの家を飲み込んでいくような感じ。

    役者たちの瞬き半分くらいの絶妙な間が
    蟻地獄に落ちていく感覚にしなやかさを織り込んで・・・。

    ブランクの舞台にリアリティをもった狂気の気配が流れる時間。
    ナチュラルに部屋に差し込む光を見ながら、
    手首から流れ出した血をそのままにしておくような、
    なすがままに堕ちて染まっていく
    逃げ出せない諦観を含んだ感覚がやってくる。

    しかも、それだけではすまず
    観客は
    さらに底がもう一段割れたような
    声を立ててしまうような鮮やかなエンディングに
    息をのむことになるのです。

    観終わって一呼吸おいて、
    ハマカワフミエからやってきた
    深くてどす黒く澄み切った質感に
    ぞくっとする。

    それにしても、なんなのだろう・・・、
    明らかに何かが外れてしまった世界なのに、
    物語の流れを受け入れてしまう自分。
    甘い毒を舐めて、蝕まれていく感覚に
    抗わず身を任せるような、怠惰な嫌悪感。

    蠱惑感に苛まれる自分には
    否定する感情が降りてくるのですが
    でも、自分をその場から動かさない
    未必の故意のようなものも生まれて。

    とても笑えないようなひどい話だとも思うのに、
    なぜかすらっと笑えてしまう部分すら
    いくつもあって・・・。

    映像作家を「すらっ」とその家に受け入れてしまうみたいなシーンが
    前半にありましたが
    その感覚って物語を受け入れる自分にもあるのです。

    好みが分かれる作品なのかもしれませんが
    少なくとも私は、
    作り手側の魔力に囚われてしまったみたいです。

    何気に私をその世界に絡めとり幽閉した
    マキタ作劇・演出の美学のようなものと
    それを具現化させた役者達の力に
    鳥肌立つような想いがしたことでした。






  • 満足度★★★★★

    マチネ
    初エレファントムーン。永山さん目当て。とても面白かったのです。

  • 満足度★★★★

    笑えない時も笑え。
    (※舞台芸術アワード用の登録。本文は後から書きます)

  • 満足度★★★★

    ハマカワの笑顔
    怖い、凄い

  • 満足度★★★★

    文字通りの「ブラックユーモア」
    まさに文字通りの「ブラックユーモア」、思いっきりブラック(かつ不道徳?)なのに妙にユーモラスで笑えてしまうのが不思議~、みたいな。
    中には眉をひそめる(どころかタイミング的に拒絶反応を示す)方もいらっしゃるとは思うものの、個人的には支持。
    最近多いスプラッタ系コメディホラー映画の「んなワケねーだろ!」な可笑しさとはまた違った可笑しさが独特。ある意味アレよりもコワいしブキミでもあり…。
    最初の場において、その家で何が行われているか大体はワカるものの細部が見えずにやきもきしていると、次の場以降の会話で薄紙を剥ぐように(←病気じゃないんだが)それがワカってくるのが巧い…と書いていて気付いたけれど、説明台詞がないんだな。台詞でそのものズバリを説明するのでなく、会話の中にヒントを潜ませて観客に知らしめる、な感じ。
    そう言えば、舞台装置(これがまた前作に続いてリアルで、そこから生活のニオイや生活音が流れてきそう)の外(=別室とか廊下とか)で起こっていることを効果音(や聞こえてくる会話)だけで想像させるというのもこのバリエーションと言えるかも?
    で、「解体」シーンは4分くらいにわたって舞台上に誰もいない状態だったと後日言われるまでそのことに気付かず。これってスゴくね?

  • 満足度★★★★

    衝撃的!
    見終わった後、しばらく動けませんでした。あの気持ちをどう表現していいのか未だに言葉が見つかりません。ただ、独自路線を突っ走るマキタさんを尊敬します。

  • 満足度★★★★

    生理的に迫ってくる
    ようやく見れました、初エレファントムーン。
    15分やルデコでやった短編は見てるけど、本公演は初です。

    で、今まで短編で描いたイメージとは大きくかけ離れない、ゾワゾワと生理的に迫ってくる舞台でした。

    ネタバレBOX

    前半結構普通に淡々と過ぎていくのだけど、中盤あたりのハマカワフミエさんが出てくるくらいからグッと集中度が高まります。

    贖罪と猟奇、どちらにテーマの重きがあったのかわからないけど、自分としては贖罪に重きがあったと信じたい。
    セリフの途中に「ダリオ・アルジェント」を持ち出してホラーのストーリーのなさを肯定する部分があったけど、この話はもっと深みがあって、単なるショッキングな舞台を提供しているわけじゃないと思う。

    次回はもっとストーリーのある舞台が見たいなと思いました。
  • 満足度★★★★

    歯車の狂いは次第に大きく。。。
    ある事件に遭遇した被害者・加害者の人生の歯車は狂い、その狂いは次第に大きく、とめどなくなくなっていく様を描いた作品。

    ネタバレBOX

    猟奇的な幼児連続殺傷事件を引き起こした加害者の青年とその家族、および被害者遺族を中心にストーリーが展開。遺族は、賠償金を支払えない加害者に対して、ある男性からの提案によって、加害者に対して殴る・蹴る・凶器で傷つけるといった加害行為を行うことで、賠償金の代償にしている。そこに、加害者の青年の妹の彼氏で、本件を題材に、ドキュメンタリーを撮影したいと申し出る男とその後輩、また、本スキームを活用し、体で代償を支払おうとする同級生を殺害してしまった女子高生とその母親がからみ、進行される。

    事件をきっかけに、登場人物の人生の歯車は狂い始め、その歯車の狂いはとめどなく大きくなっていく。

    ごく一部の登場人物を除き、ほとんどの人物は次第に人格がゆがみ、善悪の判断さえつかなくなっていく。まるで、サイコパスの集団でもあるかのように


    当劇団は所見であったが、最初から最後まで気持ち悪さ・居心地の悪さを感じさせる舞台であった。その感覚こそがこの劇団の持ち味なのであろう。終演後、一切の拍手がない舞台がそのことを強く印象つけた。
    出演者が、それぞれの不気味な役をそつなくこなし、常に緊張感のある舞台であったし、設定も大変興味深いものであった。
    脚本に一つだけちゅうもんをつけるとすれば、なぜ、自殺した人物の遺体を切り刻まなければならなかったのか、また、そのことに快感を覚えた人物たちが次から次へと「仲間」を殺害しなければならなかったのだろうか。
    自殺した人物の遺体を「仲間」全員で解体する以降のストーリーは不要であったように思う。こうした筋書きとしたことで、物語が安易な方向に流されてしまったのではないかと悔やまれる。
    被害者が加害者になるという設定を突き詰め、かれらの苦悩を中心に再構成した舞台を是非、観たい。

  • 満足度★★★

    やっぱしelePHANTMoon
    やっぱしelePHANTMoon。
    期待を裏切らない。終盤客の想像に任せてるのも面白い。
    観劇初心者には薦めませんよ(笑)

  • 満足度★★★

    日常の延長の美しさ
    もっと狂気な方向にふれたほうが好みなのだけど、あのワンシーンゆえ、全面肯定してしまう。流される血そのものに怖さはないけれど、血を絶やさぬ営みに、恐怖は宿る。

    ネタバレBOX

    音だけで綴られる解体の時間、取り残されたあまりに平凡で平穏にみえるダイニング・キッチンの夕暮れに、小さな子供がひとり入りこみ、なぜだか絵本を読んでいる姿が思い浮かんだ。それは、あのとき、「結婚式のナイフ入刀みたい」という言葉に導かれたか、あるいは溢れでる血に興奮したからか、 不運な縁に絡めとられるように優子(ハマカワフミエ)が授かることになった子供なのだろう。さらには、死体を跡形もなく消し去るために使った出刃包丁で、優しい笑みすら浮かべつつ夕食の支度をはじめるシーンを連想してみたりして。ああ、彼女は、直前にあった場面のように、両手に鎌を持つメスカマキリのごとく男を喰らい、子を育む生き物なのか。そして勝手に、自分のなかで「解体」を「懐胎」と読み替えて、自然と脹れあがった大きなお腹のような物語を持ち帰れた幸せを噛み締めてみたり。

    とはいえ、もちろん、そんな話ではまるでないのだけれど(笑)、
    空白はときとして饒舌を産み楽しい。
  • 満足度★★★

    なんともいえない感覚
    少し各登場人物の関係性が判り辛かったのと、物語も掴み辛かったかな。
    後、登場人物数の割りに、上演時間が短く、少し描ききれてなかったかなと感じた。
    (もう少し描いて欲しかったといったほうが妥当かな)

    ただ、なんだかんだいっても観終った後の、爽快感でもなく嫌悪感でもなく、なんともいえない感覚でした。
    ラスト前のバラシ場面、声だけがよかったのか、個人的にワクワクしてしまった(笑)

    ネタバレBOX

    しかしハマカワフミエ、気弱な美少女役と感じたのに、その感じた雰囲気は変えず、また表情もオドオドしいのに、平気でバラす話を進める。ハマカワフミエ、こえーぞ。
    ラストの、ぶっ刺しもお見事。ビックリしたが、でもなぜか納得(笑)。(しかし、役者は毎回大変だな)
    ただ、1番怖いと感じたのは、包丁とノコギリをクロスしてのキスシーンかも。
    あぶねーと思いながらも、そのまま絶対かっ切るかと思ったし(笑)
  • 満足度★★★

    おはつ。
    今までのチラシが肌に合わず興味を持てなかったけど(すみません)やっと観ることができました。1時間20分。

    ネタバレBOX

    後半の展開。普通の動物的な感覚を思えば邪魔者は消すというのはわかりやすい。動揺そこそこに手は動かすよ、強制されなくったって人くらい刻めるよ、やるときゃやるのよ誰だって、解体するにしたがって人間が物体に変化し、魂はどこへやら目の前にあるのはただの肉片。ざくざくざく。

    あとお恥ずかしながら、どなたも触れてらっしゃらないようなので私の完全な見間違い、妄想違いがあり・・・・
    酒巻さんのお腹に人間の手のシルエットが浮かび、その指が時々動いて見えたんですね。なので片腕が義手でど根性ガエルみたいに笑いをとるのかしらと待ってしまったあんなに緊張している場面だのに。それかその手がボトッて床に落ちて自分も人を殺してることがばれる・・・・の展開があるのかと思いきや、全く違ったわけですが・・・ 薬、酒やりません。
    最後もう一声!と感じました。たとえば15秒くらいでたたみかけるような追い込みがあれば良かった。終わりの予感があってから、あのラストがあればまた違った後味に。小林タクシーさんが静かに光る。いい意味で彼はこわい。
  • 満足度★★★

    ついに
    観た、elePHANTMoon。面白かったです。

  • 満足度★★★

    被害者が加害者になるとき
    加害者の家で起こっていた物語。加害者が被害者への償いの為に己の身を差し出す。一方でこの風景は被害者の生きる糧となる。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    寺尾の息子を殺してしまったマサトは寺尾夫妻に賠償金が払えない。思いついたのが寺尾から何度も暴行を受けることで賠償金として相殺するという方法。だから、ケンタ(殺された息子)の母親は毎晩、マサトに暴行を加え、返り血を浴びない為にゴミ袋をかぶる。そうして受け取るべき賠償金は少しずつ、目減りしていく。マサトは自らの体を犠牲にすることで賠償金の代償として寺尾に支払うことができ、また、自分の傷を見て、罪を償っているということを意識して安心する。マサトの兄はこんな方法でも賠償金を払い終わったら、弟の為になる、と考え、こうすることで被害者が生きる糧になればいい。と思う。

    この物語は被害者の心理と加害者の心理、加害者の家族の心理を描いた作品だ。しかし、観ているうちにいつのまにか三者の立ち位置が私の中で逆転してしまう。ケンタがどんな殺され方をしたのか、ここでははっきりとした描写はない。しかし、現況のマサトが受けている暴行を想像したとき、さっくり殺されたほうが楽なんじゃないか?と思うからだ。

    そんな妻の行為を止める夫。しかし妻は「貴方は誰かが死なないと向き合えない人なのよ。」と夫を詰り夫の愛人の存在をも攻撃する。そして妻は暴行を加えてるとき、マサトをケンタだと錯覚してしまう。だから、この暴行を止めたらケンタに会えなくなる。と奥行きのない、乾いたレモンのような目で前置きなしに訴える。唇だけを動かすような話し方だった。

    壊れてる。何か世界そのものを壊されたような感覚だ。ぽたりぽたり・・・と私の胸に冷水のような感情が一滴一滴、ゆっくりと滴り落ちていた。心臓がずぶぬれになっていく感覚に耐えながら、その歪んだ物語はクライマックスをむかえる。

    やがて、娘を殺された被害者・北田は「自分の生きてる糧は娘だった。いくら加害者に暴行を加えても生きてる糧にはならない。もう終わりしよう。」と言って、マサトを殺して自分も自害する。ぽたりぽたり・・・と今度は北田からまだ生温かそうな鮮血が一滴一滴、ゆっくりと滴り落ちていた。肋骨の内側で心臓がどくんと鳴った。その音が自分の耳に聞こえた気がした。

    どうやらここは被害者と加害者が集まってるような場所らしい。だから、途中から母親に連れられてこの家に訪れた優子は「自分の親友を切り刻んで殺しちゃった。」と作り物のような目で罪悪感なしに告白する。そんな彼女が北田の死体を見て、「隠しましょう。」と言って、まるで相手を諦めさせる殺し文句みたいな口調で告げる。それを受けてその場にいたカメラマンや針谷たちは優子の指示に従って死体を細かく切り刻むことを決意する。この時に見せた優子の二ヤリ・・と薄く笑った表情が恐ろしい。膿んだような二つの眼だけはねばついて宙を見ていた。それはきっとこれから死体を切り刻む様子を想像すると嬉しくて堪らない表情だった。「サボらず細かく切るのよ!」

    彼らの黒い闇は増殖し完璧に舞台を支配し、その闇は浴室へと移動したために舞台の前の観客は音だけで自分の感性を刺激させながら切り刻む場面を想像する。奥でがたりと何かが鳴った。それとほぼ同時にノコギリで骨を削る音。大きな物音。何かがひっくり返ったような音。唐突にバタバタと床がふみならされる。唸るような低い声。ばん!と音。

    急に静かになったかと思った矢先、島尾夫妻が現れる。マサトが死んだ。と告げられると、急に今までの憎悪が沈んだように納得して帰っていく。しかし、「北田はどうした?」と自害した北田の死体を気にしていた内海はあっさりと優子に包丁で刺される。この殺しは北田を死体処理した皆の合意の元だ。

    そうしてたぶん、内海もみんなによって切り刻まれて処理される。集団の殺意はまるで、底に溜まっていた泥が水の中に散ってたちまち全体を茶色く濁らせていくようだった。

    この物語はホラーなんでしょか?歪な人間関係と、共犯という意識の中で、歪んだ信頼関係が芽生え、今まで存在しなかった闇の中の獣が蠢いて成長しているようだった。そして誰かが「この世は完全犯罪だらけですよ。やったことを他人に気付かれさえしなければ、それは完全犯罪なんです。」という声が響いてくるようだった。

    この舞台が好きか嫌いか?で判断すると決して好きな舞台ではない。狂気というには何かが足らない。それから場面設定が弱い気がする。これが陰鬱な倉庫だったり、あるいは隠れ小屋だったり、森の中のほら穴だったり、樹木がうっそうと茂った下の祠だったりしたら、もっと臨場感が味わえたような気がするからだ。ところがこの場所は窓に緑の木々が映し出された天気のいい日の台所なのだ。「さあ、皆さん、お茶でもいかが?」みたいなほのぼの感があるんだよね。そして登場人物に危機感がない。誰も吠えないし叫ばない。コメディみたいな描写だってある。だからか、ホラーとみるには弱すぎて、深層心理を追求するには薄い。ただただ闇があっただけ。


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