ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】 公演情報 elePHANTMoon「ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    罪の置き場所。
    人間の無意識層に眠る本性をスケルトンにあぶりだし、リアルタイムの日常を鼻歌でも口ずさみながらスラスラとスケッチしてしまうようなところにこの作品の凄さがあり、恐ろしさがあります。そしてグロい、キワドい、カルト、ヴァイオレンスなどという使い古された言葉を粉々にした怪人の手招くほどよく壊れた世界にただもうひたすらヤバイくらい満たされていくだけ。何だろうこの感じ。とにかく観て欲しい。なんかもう、それしか言えない。

    ネタバレBOX

    日々のタイムスケジュールの中に組み込まれているルーティーンワーク化された暴力行為に忌々しささえ抱きながらも制裁を下し続ける被害者家族と、暴力行為を受けることによって犯した罪を償い続ける加害者という逆転の構図。
    肉体的な暴力をひたすらフィルムに収めることに心血を注ぐ映像作家の視点は観客の心理を代弁し、同級生を殺害した美少女は、加害者の青年の思惑を背負っているかのよう。

    善悪で割り切れないグレーの世界は病的で狂ってる。と言ってしまえばそれまでだけど、事を追っていくと、怖いくらいつじつまが合う。

    傷を舐め合うように罪とか罰とか擦りつけ合って。
    犯した罪を償う手段はあるものの、互いを許し合える決定的な方法はない。
    もうこれ以上、手の施しようがないことを知っているから、誰もが核心に触れることを諦めていて。
    誰かが殺されたり、誰かが自殺しても不思議と憤りを感じない。
    同情のないあっけない死は事件というよりも、不慮の事故に近いから。
    嘆いたり悲しんだりなんかしないで自分の立場を気にしてる。
    思いやりがすっぽりと抜け落ちている。
    見つかったらヤバイ。だからなかったことにする。
    口が軽そうなヤツもまとめて処分してしまえ。
    そう、すべては合理的で、利己主義で、理にかなっているのだ。

    当団体は初見だったが、終始、演劇という名の虚構の枠組みからはみ出している印象を受けた。芝居くさくない役者の振る舞い、嘘くさくないダイニングキッチン、完成されたテキストからあえてひとの心の動きを停止させ、部分的にそぎ落とし、曖昧にぼかしたような演出の仕方、共感されるキャラクターが誰ひとりとしていないこと、凄い画を撮るためならひとり死ぬくらい別にいいし。とか本気で思ってそうな映像作家の、正気の面したクリーチャー等の殺意に満たない小さな悪の集まりが、圧倒的なリアリティを獲得していたからだ。人を殺した人間は、殺されて然るべきだろう。という誰もが一度くらいは感じたことのある素朴な正義感を、被害者側と加害者側に優劣をつけずに同レベルから捉える試みも秀逸だった。残虐なシーンをあえて見せずに、観客の想像力のみで暴走させる不健全さ。魂を浄化させるような柔和な光の傾き。醜悪さと美しさのアンビバレンス。ゾクゾクきた。クセになりそう!

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    2009/11/22 02:52

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