ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】 公演情報 elePHANTMoon「ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    被害者が加害者になるとき
    加害者の家で起こっていた物語。加害者が被害者への償いの為に己の身を差し出す。一方でこの風景は被害者の生きる糧となる。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    寺尾の息子を殺してしまったマサトは寺尾夫妻に賠償金が払えない。思いついたのが寺尾から何度も暴行を受けることで賠償金として相殺するという方法。だから、ケンタ(殺された息子)の母親は毎晩、マサトに暴行を加え、返り血を浴びない為にゴミ袋をかぶる。そうして受け取るべき賠償金は少しずつ、目減りしていく。マサトは自らの体を犠牲にすることで賠償金の代償として寺尾に支払うことができ、また、自分の傷を見て、罪を償っているということを意識して安心する。マサトの兄はこんな方法でも賠償金を払い終わったら、弟の為になる、と考え、こうすることで被害者が生きる糧になればいい。と思う。

    この物語は被害者の心理と加害者の心理、加害者の家族の心理を描いた作品だ。しかし、観ているうちにいつのまにか三者の立ち位置が私の中で逆転してしまう。ケンタがどんな殺され方をしたのか、ここでははっきりとした描写はない。しかし、現況のマサトが受けている暴行を想像したとき、さっくり殺されたほうが楽なんじゃないか?と思うからだ。

    そんな妻の行為を止める夫。しかし妻は「貴方は誰かが死なないと向き合えない人なのよ。」と夫を詰り夫の愛人の存在をも攻撃する。そして妻は暴行を加えてるとき、マサトをケンタだと錯覚してしまう。だから、この暴行を止めたらケンタに会えなくなる。と奥行きのない、乾いたレモンのような目で前置きなしに訴える。唇だけを動かすような話し方だった。

    壊れてる。何か世界そのものを壊されたような感覚だ。ぽたりぽたり・・・と私の胸に冷水のような感情が一滴一滴、ゆっくりと滴り落ちていた。心臓がずぶぬれになっていく感覚に耐えながら、その歪んだ物語はクライマックスをむかえる。

    やがて、娘を殺された被害者・北田は「自分の生きてる糧は娘だった。いくら加害者に暴行を加えても生きてる糧にはならない。もう終わりしよう。」と言って、マサトを殺して自分も自害する。ぽたりぽたり・・・と今度は北田からまだ生温かそうな鮮血が一滴一滴、ゆっくりと滴り落ちていた。肋骨の内側で心臓がどくんと鳴った。その音が自分の耳に聞こえた気がした。

    どうやらここは被害者と加害者が集まってるような場所らしい。だから、途中から母親に連れられてこの家に訪れた優子は「自分の親友を切り刻んで殺しちゃった。」と作り物のような目で罪悪感なしに告白する。そんな彼女が北田の死体を見て、「隠しましょう。」と言って、まるで相手を諦めさせる殺し文句みたいな口調で告げる。それを受けてその場にいたカメラマンや針谷たちは優子の指示に従って死体を細かく切り刻むことを決意する。この時に見せた優子の二ヤリ・・と薄く笑った表情が恐ろしい。膿んだような二つの眼だけはねばついて宙を見ていた。それはきっとこれから死体を切り刻む様子を想像すると嬉しくて堪らない表情だった。「サボらず細かく切るのよ!」

    彼らの黒い闇は増殖し完璧に舞台を支配し、その闇は浴室へと移動したために舞台の前の観客は音だけで自分の感性を刺激させながら切り刻む場面を想像する。奥でがたりと何かが鳴った。それとほぼ同時にノコギリで骨を削る音。大きな物音。何かがひっくり返ったような音。唐突にバタバタと床がふみならされる。唸るような低い声。ばん!と音。

    急に静かになったかと思った矢先、島尾夫妻が現れる。マサトが死んだ。と告げられると、急に今までの憎悪が沈んだように納得して帰っていく。しかし、「北田はどうした?」と自害した北田の死体を気にしていた内海はあっさりと優子に包丁で刺される。この殺しは北田を死体処理した皆の合意の元だ。

    そうしてたぶん、内海もみんなによって切り刻まれて処理される。集団の殺意はまるで、底に溜まっていた泥が水の中に散ってたちまち全体を茶色く濁らせていくようだった。

    この物語はホラーなんでしょか?歪な人間関係と、共犯という意識の中で、歪んだ信頼関係が芽生え、今まで存在しなかった闇の中の獣が蠢いて成長しているようだった。そして誰かが「この世は完全犯罪だらけですよ。やったことを他人に気付かれさえしなければ、それは完全犯罪なんです。」という声が響いてくるようだった。

    この舞台が好きか嫌いか?で判断すると決して好きな舞台ではない。狂気というには何かが足らない。それから場面設定が弱い気がする。これが陰鬱な倉庫だったり、あるいは隠れ小屋だったり、森の中のほら穴だったり、樹木がうっそうと茂った下の祠だったりしたら、もっと臨場感が味わえたような気がするからだ。ところがこの場所は窓に緑の木々が映し出された天気のいい日の台所なのだ。「さあ、皆さん、お茶でもいかが?」みたいなほのぼの感があるんだよね。そして登場人物に危機感がない。誰も吠えないし叫ばない。コメディみたいな描写だってある。だからか、ホラーとみるには弱すぎて、深層心理を追求するには薄い。ただただ闇があっただけ。


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    2009/11/20 18:16

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  • きゃる>
    はい。彼を時々、劇場でお見受けしていました。ですから間違いないほど、面、割れてますし。笑
    まあ、俳優なら、今後の行動に気をつけてもらいたいですね。どこで週刊誌が張ってるか解らない。笑

    2009/11/22 16:20

    「観たい」のところで、片方の人が酔っ払ってるのを見かけたと書いていらしたでしょ?
    それ、すごいなと思って。よく、本人と気づきましたね。私ならもし似てるなーと思えても
    本人との自信が持てないと思うので(笑)。

    2009/11/22 10:05

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