劇団しようよは大原渉平以外にも劇作家が所属する団体である。 その一人、新劇団員の富沢朱夏の第二作目『人形のいいえ』を今回上演する。タイトルにもあるようにヘンリック・イプセン『人形の家』にインスパイアされた今作は、舞台をとあるワンルームに置き換え、不確かで閉じた関係性の男女二人の会話で物語を紡ぐ。少女へ施されるグルーミングが引き起こす閉塞感、S N Sの過剰なまでの情報量が掻き乱す日常/非日常。その中で少女の束縛から、解放への物語を見出す意欲作。 企画のコンセプトを「夜の仙川」に設定し、会場であるPOSTOを完全に暗転した状態での上演を試みる。さながら夜の学校を覗くような怖さと、興味深さと、背徳感を演出し、観客は手渡された懐中電灯を持ち、「見たいもの/見たくないもの/見るべきもの/見なくてよいもの」を選択できる演出にする。それがひいては、「明かりが照らすもの」=「SNSのインプレッション数」の可視化になる仕組みとする。POSTOの空間でしか試みることができない一夜の演目にしたい。