舞台芸術まつり!2019春

ブルドッキングヘッドロック

ブルドッキングヘッドロック(東京都)

作品タイトル「芸術家入門の件

平均合計点:22.0
川添史子
河野桃子
鈴木理映子
古澤 健
堀切克洋

川添史子

満足度★★★

「芸術家入門教室」の世界、大学生たちの世界、女神の巨像を作る古代ギリシャの世界、客席と地続きの像を“つくり続ける”世界――この4つの世界を行き来しながら、総勢24名の俳優たちが動き続ける舞台は迫力でした。

ネタバレBOX

芸術論、芸術&カネ&コネ、様々なトピックが飛び交いながらも、舞台上では徐々に巨像が完成していきます。言葉ではないところに芸術が立ち上がるフィナーレは感動的ですし、このテーマの提示の仕方には震えました。ただ不思議と目の前の展開や台詞が妙にスムーズに頭に入ってきづらく・・意図である部分もあると思うのですが、上演時間もちょっと長く感じられました。

河野桃子

満足度★★★

この題材に真剣に挑んだ誠実さにとても好感を持てました。ビジュアルも見応えがあり、俳優さんたちも魅力的。最後の結論はフィクションのようでも夢のようでもあったので、かなり好みがわかれそうです。
とにかく長いので、観ている方もかなり体力が必要なのが、良いのか辛いのか……。個人的には短い方が観やすいし、もっとよく観られたので、もう少し長いことの意味と体感が作品とリンクすると嬉しかったです。しかしこの上演時間+アフタートークを実現させたみなさんと劇場には頭が下がります。誠実な舞台でした。

鈴木理映子

満足度★★★★

「芸術家」として行き詰まった男が体験する「芸術(家)入門」の物語。古代ギリシャの巨像制作の現場、芸大生たちの日常というふたつの異なる世界を併行させながら、入門講座を受講する「芸術家」の葛藤、奮闘の道程が描かれます。また舞台上では、常に出演者たちによる巨大な女神像の制作が続けられており、これら4つの層が、終盤に見事につながって、「芸術」の大きさ、深さを体感させてくれました。20名を越す大所帯、吉祥寺シアターの空間をめいっぱい生かした大作ぶりにも感銘を受けました。

ネタバレBOX

劇中の3つの世界、とりわけ古代ギリシャと芸大生の世界は、日常をラフに、コミカルに描いていて(言ってみれば、ワチャワチャ、です)、一つひとつの場面がどう全体につながっているのかは、観ている間にはよくつかめませんでした。それだけに、終盤のパズルのピースがはまっていくような展開には、爽快感と驚きがありました。

古澤 健

満足度★★★★★

観た。

ネタバレBOX

開演前の挨拶にかこつけたひとを食ったような出だし。三つの時空が交差する構成も、バランスがとれていて、飽きさせない。いや、退屈な時間も含まれているのだが、それも後述の理由から非常に巧みであったと思う。観客であるこちらの関心は「芸術家」(not「芸術」)の価値が、劇中でどう見積もられるか、という部分にあったように思う。主人公の冒頭での言動や、彼の振る舞い、その俗物ぶりや、それに対応する人々の紋切り型な「芸術家像」などから察すると、冒頭では「芸術家」の価値はかなり低い。だが、そもそもそれはもともと高く見積もるべきなのか?という問いがなされる。ラストに吹く風は、芸術家など存在せずただ芸術(という現象)がある、という宣言のようでもあった。
テーマに対してまっすぐにアプローチをし、そこからぶれず、観客にそのことについて集中して考える退屈な時間を与える、という点で非常に演劇的だと感じられた。

堀切克洋

満足度★★★

美大に通う大学生がなりゆきで古代ギリシャ悲劇を劇中劇として演じる、というくだりが面白かったです。吉祥寺シアターの大きな舞台空間が、もっとエネルギッシュに使えていたら、もっといい作品になったと思います。

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