Tab.5『退嬰色の桜』 公演情報
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公演地:大阪府

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公演地:大阪府

Tab.5『退嬰色の桜』

N₂(大阪府)

公演に携わっているメンバー:7人

団体紹介
京都薬科大学薬学部出身の作家・杉本奈月を中心に、中高の六年間を過ごしたミッションスクール・大阪女学院時代から十年来のテーマであった「治癒/治療」のあいだに立つ演劇とケアのあり方を見い出しながら「物語の書き手」ではなく「語りの聞き手」として他者とかかわっていく作劇を行う。2015年、上演のたびに更新される創作と上演『居坐りのひ』へ従事。第15回AAF戯曲賞最終候補となり「大賞の次点」(地点 三浦基)、「才能あるものに賞はいらない」(篠田千明)と高く評価される。ウイングカップ6にて、関西小劇場演劇シーンにおけるあらたな「劇詩」として好評を博し最優秀賞受賞。第16回AAF戯曲賞『草藁』(旧題『居坐りのひ』)一次審査通過。2016年、⼤阪をホームグラウンドに据え京都を第⼆の拠点として、書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み「Tab.」、処女戯曲の翻訳と複製「Fig.」を始動。2017年、KAC Co-program2017「KACセレクション」採択。2018年、第9回せんがわ劇場演劇コンクールファイナリスト、日本演出者協会若手演出家コンクール2018一次審査通過、第18回AAF戯曲賞『雲路と氷床/赤裸々』一次審査通過、おおさか創造千島財団「平成30年度スペース助成」採択。『居坐りのひ』の舞台美術を担ってきたカンパニーメンバー・秋山真梨子は現在、東宝舞台株式会社に勤務。
応募公演への意気込み
昨夏、第9回せんがわ劇場演劇コンクールファイナリストとして上演した処女戯曲の翻訳と複製 Fig.2『桜紙』を下じきにした、書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み Tab.5『退嬰色の桜』- Borderless is born from pillar of wife.* は、おおさか創造千島財団「平成30年度スペース助成」採択事業としての公演である。ここで訴えられるのは、流行り病のように性犯罪が犯される国土について――自我ばかりが芽生え一向に根ざさない倫理観、内外へ通じるための手つづきを知らないまま希薄するわたしとあなたの人間性。隣人との境界が失われていく今、遠くの海から漂着する木造りの船ですら腐りつつある温室へ吹く風とはならない。舌足らずな音で書かれた戯曲の言葉を口走ってしまう前に、先ずは自分自身の話をするために。わたしたちの意思は未だ書かれた「戯曲」ありきでしか表明されないべきか。大阪と京都、そして東京の三都を行き来し物語とポストドラマの二つの文脈から独自の作劇をアップデートしつづけるN₂(エヌツー)による最新作。

* pillar of wife:塩柱の妻;旧約聖書「創世記:ソドムとゴモラの滅亡」より

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処⼥戯曲の翻訳と複製「Fig.」は、プロトタイプである「同時代の思春を過ごす⼥学⽣をモデルとした⼆⼈芝居」をベースに「⻘少年のための⼝語による会話劇」を創作し上演するための系である。命名は学術論⽂における「Figure / 図」と「Table / 表」に由来。なお「表」は「周期表」からのイメージであり、今作の「Tab.5」は原⼦番号5の「B / ボロン(ホウ素)」自体のとって代わられやすい性質と植物ならびに昆虫への毒性、前作の「Tab.4」では原⼦番号4の「Be / ベリリウム」による水棲生物への害と腐食性、振動板(ダイアグラム)、前々作の「Tab.3」では原⼦番号3の「Li / リチウム」を産出する塩湖(ソルトレーク)が⼀つのモチーフとなっていた。

春眠も遠のく冬、横浜の海に近いThe CAVEの「防空壕」から京都芸術センターの「避難所」へ。下降の⼀途を辿る⻘年の精神年齢を肯いながら、脆くも若い⾻⼦が時代の悲劇へ投じる⼀⽯となる Tab.3『雲路と氷床』/ Fig.1『⾚裸々』は、活動歴も浅く阪神・淡路⼤震災を知らない「1995年以降」に⽣まれた20 代前半の⼥優とともに「⽣活史」を歩むように創作を進め、世間の流⾏と⾵評に雲がくれし黙殺されてしまうイエでの⼩さな悲劇が「劇詩」ではない「会話」の台詞によって明らかとなった。

戦後の日本を背景に、メディアへ露出しない俳優の姿を軸に水面下で抱くアンビバレントな感情をドキュメントした Tab.1『水平と婉曲』は人間座スタジオにて、2020年の東京オリンピックを見据えながら、劇場の閉鎖が相次ぐ土地のフィールドワークからスポーツ性のない物語と運動しつづける身体を立ち上げた Tab.2『火入れの群』は閉館直前のアトリエ劇研にて初演となった。後者では、医療従事者と患者間におけるコミュニケーション倫理、再現性を重視する薬学研究者の観点、言葉ではなく空間の実測値により算出された理論値から見る劇場の再定義など、薬学部出身である杉本奈月の知見を生かした作劇がなされた。

書き⾔葉と話し⾔葉の物性を表在化する試み「Tab.」では、劇中において「出演俳優により書かれたテキスト」が読まれるが、過去のTab.1「わたしが俳優である理由」、Tab.2「観客への⼿紙」Ⅰ〜Ⅲ、Tab.3「毎⽇の⾷事、⽉毎の⾷べ物」/「わたしの年表上を⾏く先⽣」につづき、Tab.5『退嬰色の桜』- Borderless is born from pillar of wife. では「血液と初潮」、「根回しと植民あるいは木造の船」、「白昼夢/夢日記」がタイトルとなる。(大阪ミナミの劇場寺院・浄土宗應典院で初演をおえた Tab.4『磔柱の梨子』では、テキスト「神様とわたし」を元に、キリスト教圏である韓国とアニミズム文化のあったニュージーランドにルーツを持つ二人の出演俳優と東京での再演にむけてリクリエーションを進めている。)
将来のビジョン
現在は「Tab.」を創作するにあたり、⾃由な演出家の⼿と⾜を使い地道に「外の⾔葉を⾒い出し聞き⼊れ、そして書くこと」を⽣かした作劇をアップデートしている途中である。また「Fig.」における「⻘少年たちの会話」による「⼝語」独⾃の⾳を⾊として役者の⽴ち居へそえることで、劇空間へ『居坐りのひ』時代の「難解さ」ではない「やさしさ」とともに世代に囚われない好感触な振る舞いを⾒せ始めている。「Tab. / Fig.」は、劇場がそう遠くないのにもかかわらず演劇が身近でない人々へ水をむけていく試みでもある。少なくとも、演劇とは大きな物語の存在によってしか人々と通じえないところも多くあり、ただそこに通える劇場があるからといって露骨な小文字で書かれたお話が舞台と客席、あるいは、そのあいだに立脚できる訳でもない。たとえ過去が流せないものであるにしても、現に表現者間で語られる「語り」というものは、いわゆる当事者性に依拠した狭いコミュニティにとどまりやすい。それでも、劇場という場をもって閉じつつも、広く演劇へかかわりある場を開いていくための未来に働きかけていくことはできないのか。劇場における本来の公共性が失われつつあるクローズドな空間で、いかに観客へ「ひらかれた時間」をつくっていくのか。私性 / 詩性のあいだを行き来ながら “official” から “common”、そして “open” へと通ずる公(おおやけ)について、先ずは身一つで人々へ目をむけ、語りに耳をかたむける――戯曲先行でない「Tab. / Fig.」での作劇の場を、一人一人の「わたし」たちが主体として、たった一つの役を担っていくための手がかり、足がかりとしたい。

2019年より、演劇表現の主体となる「公演」のあり方を見直していくために、N₂/杉本奈月と二十代から三十代前後のアーティストを中心に始動した「カンパニー代表と外注の公演制作を含む制作者たちの視点による」アーカイブを制作している。関西の小劇場演劇界には制作者が少なく、カンパニーの代表者がアーティストとして創作と並行しながら制作も手がけている例も多い。代表者と制作者にはペイがなされない旧体制の中では、生活がままならなくなるくらい金銭の負担が大きく、活動を一時休止し、やがては去ってしまうといった話は作品のジャンルを異にする同世代からも耳にしている。閉ざされた身内のコミュニティでは、外へ目をむけられないがゆえに出自とコネクションが足枷となってしまいがちであり、今あらたに小劇場という創造環境を望み、ここへ入ってこようとする人たちが共通してアクセスできる公のプラットフォームは「劇場」にさえ、わたしが見聞きして来たかぎりでは存在していない。共有知がないために制作者/代表者が行っている物事への理解に差が生じ、引いては、そうした無理解が演劇界で活躍していくための足場を失わせているのではないかと考える。大阪の演劇史において平成の一時代をつくりあげた「維新派」や「桃園会」ですら既に忘れられつつある今、後に過去の記憶となってしまうわたしたちの小さな財産をネットの海に埋もれさせるのではなく、同時代にある彼らの生の声を活字として紙面に起こし一冊の本にすることで、次世代の人々にも共有する価値のある知恵を分かちあうための「場」としたい。

公演に携わっているメンバー(7)

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秋山真梨子
美術

秋山真梨子・Mariko Akiyama[ カンパニーメンバー ]舞台美術。1991年生まれ、27歳。東京都出身、埼玉県在住。大阪女学院高等学校普通科理系コース卒業、大阪市立大学生活科学部居住環境学科土井研究室卒業。大阪市立大學交響楽團にてコンサートミストレスを務める。千葉大学大学院工学研究科卒業。現在は、東宝舞台株式会社に勤務。東京公演『居坐りのひ』(第15回AAF戯曲賞最終候補)、第4回公演『居坐りのひ』(ウイングカップ6最優秀賞受賞 / 第16回AAF戯曲賞一次審査通過)にて舞台美術を担う。N₂(エヌツー)所属。
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八若 奈菜子
照明

八若奈菜子 Nanako Yawaka [照明]1997年生まれ、21歳。滋賀県出身。京都造形芸術大学舞台芸術学科在籍。照明、演出助手。
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小林佳太郎
脚本 演出

小林佳太郎 Keitaro Kobayashi[ 演出助手 ]1996年3月26日生まれ、22歳。静岡県出身、兵庫県神戸市在住。神戸大学国際文化学部4年次在籍。外部活動は、匣の階『パノラマビールの夜』 舞台監督助手(2018)、ウイングカップ9 / 劇の虫 『かかす』 出演(2019)、Fの階 『なにごともなかったかのように再び始まるまで』 舞台監督助手・映像助手など。移動しながら暮らしている。猿の左手を主宰し、㐧一回公演『肺色の街で深々と煙になった夢を見ている』、対劇企画 猿の左手×劇の虫『ポスト・フィクションな生活』 にて作・演出を担う。
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髙道屋沙姫
役者・俳優 脚本 演出

髙道屋沙姫・Saki Takandoya[ 出演 ]俳優、演出家、脚本家。1994年12月26日生まれ、24歳。大阪府出身、大阪府在住。大阪芸術大学芸術学部舞台芸術学科演技演出コース出身。大阪短編学生演劇祭最優秀賞、観客賞受賞。主な出演作は、突劇金魚〜蛇口からアイスクリーム〜『しまうまの毛』(サリngROCK 脚本・演出)、大阪芸術大学舞台芸術学科 特別公演『真田風雲録』(福田善之 脚本 / 内藤裕敬 演出)、劇団patch『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜高尾山地獄修行編』、『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜天晴版』(末満健一 脚本・演出)、應典院寺町倶楽部主催事業 第70回寺子屋トーク『道頓堀心中冥土往来』(陸奥賢 脚本 / 満月動物園 戒田竜治 演出)など。外部活動は、ワークショップ講師、浄土宗應典院寺町倶楽部モニターレビュアー、大阪府高等学校演劇研究大会審査員、ヨーロッパ企画『ブロードウェイラジオ』ラジオドラマ執筆、building202『アワーベイビー』脚本・演出、未来会議『修学旅行』(畑澤聖悟 脚本)演出など。「ちくっと胸が痛くなることをクスッと面白く」をモットーに活動する劇団、かまとと小町の主宰。殆ど全ての作品で脚本・演出・出演を務める。
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澤井里依
役者・俳優 アナウンサー・レポーター

澤井里依・Rie Sawai[ 出演 ]俳優。8月4日生まれ。奈良県出身。金蘭会高校、神戸女学院大学文学部総合文化学科出身。第29回池袋演劇祭 LINX'Sプロデュース『メビウス』舞台芸術振興会賞受賞。NHK大津「おうみ発630」レギュラー(2013~)、MBS「女の子宣言!アゲぽよTV」レギュラー(2011~)、KBS他7局ネット「温泉女子」レギュラー(2011~)、FM oh!「ASICS LOVE RUNNING!」DJ、MBS「セレンディピティ物語~新しい自分に出会う旅~」石原瑞希役(2015)、他多数出演。STAR☆JACKS、大阪ゲキバカ、LINX'Sプロデュース、オパンポン創造社、DOORプロデュース、劇団「劇団」など、舞台公演にも多数出演。(株)舞夢プロ、EVKK所属。EVKK2013『戦場のピクニック』より全作に出演。
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電電虫子
役者・俳優 宣伝美術

電電虫子・Mushiko Denden[ 出演 ]俳優、宣伝美術。1991年1月30日生まれ、福岡県出身、兵庫県在住。劇団冷凍うさぎ『あくびの途中で』(2015 / 第0回全国学生演劇祭審査員賞受賞)、『we are lucky friends』(ウイングカップ6最優秀賞受賞)、『No Surprises』(2018)などをはじめとして、うんなま、東洋企画、dracom『空腹者の弁』(2017 / 筒井潤 作・演出)、『ソコナイ図』(2018)、DIVEプロデュース「あんたの戯曲を上演させてくれへん?」Aグループ『非公式な恋人』(青年団リンク キュイ 綾門優季 作 / 坂本隆太朗 演出)、他多数出演。劇団冷凍うさぎ所属、dracom(ドラカン)登録メンバー。
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杉本奈月
脚本 演出 演出助手 制作 宣伝美術

杉本奈月・Natsuki Sugimoto[ 劇作・演出・宣伝美術・制作 ]作家。1991年10月12日生まれ、27歳。山口県生まれ、大阪府出身。大阪女学院高等学校普通科文系コース卒業、京都薬科大学薬学部薬学科細胞生物学分野研究室4年次中退。伊丹想流私塾18期生中退。第15回AAF戯曲賞最終候補となり「大賞の次点」(地点 三浦基)、「才能あるものに賞はいらない」(篠田千明)と高く評価される。第16回、第18回AAF戯曲賞一次審査通過、ウイングカップ6最優秀賞受賞。日本演出者者協会若手演出家コンクール2018一次審査通過。外部活動は缶の階/久野那美(2014)、dracom/筒井潤(2015)にて演出助手、百花繚乱文芸マガジン「ガーデン・パーティ」(LittleSophy 落雅季子 責任編集)京都日記『遠心、日々の背理』連載(2017)、應典院寺町倶楽部モニターレビュアー(2017 - 2018)など。浄土宗應典院「KIDS MEET ART」チラシデザインをはじめとしたデザインワークにも定評がある。京都舞台芸術協会、應典院寺町倶楽部、調布市せんがわ劇場DEL(Drama Education Labo)所属。N₂(エヌツー)代表。

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