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バリカンとダイヤ

バリカンとダイヤ

劇団道学先生

ザ・ポケット(東京都)

2022/10/15 (土) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/20 (木) 14:00

座席1階

道学先生旗揚げ25周年と銘打った演目は、亡くなった座付き作家の中島淳彦が10年前に書き下ろした作品という。前回の「梶山太郎氏の憂鬱と微笑」、前々回の「おとうふ」と同様、家族や仲間の間の微妙な隠し事やそれにまつわる駆け引き、心の動きを見事なまでに織りなした戯曲である。2時間があっという間に過ぎた。面白い! 見ないと損するかも。

税務署に勤めていたという無口なお父さんが亡くなった、という設定でスタートする。葬式を終えたばかりの妻、3人の娘。宮崎県から葬儀のため駆け付けた妻の姉、そして勝手に上がり込んでくる自称友人…。妻は子育てと夫の世話だけをしてきたような「昭和の妻」で、周囲は気落ちしてどうにかなるのではないかと心配する。ところが、物語が進むうちに、3人の娘たちがそれぞれに結構な問題を抱えていることが分かってくる。高額化粧品のセールスとか、怪しげな宗教勧誘の女とか、夫を亡くした高齢の妻に付け入ろうとするような人たちが登場して、「いかにもこれは、ありえるぞ」と笑ってしまう。
主役は夫に先立たれた妻なのだが、母親に打ち明けていないことがありすぎる3人の娘たちが強烈に面白い。葬儀を終えた後の貯金通帳には260万円しかなくて、いったい公務員としての退職金などはどうなったのかと長女が騒ぎ出す。妻は夫から渡されるお金で生活を切り盛りし、夫がどれだけ稼ぎ、通帳がどうなっているのかなどは全く感知してこなかった。3人の娘が通帳を見たところ、1500万円が数年前に引き出されたことが分かって、騒ぎはさらに大きくなる。
今回の道学先生の真骨頂はまず、家族一人一人の人に言えない小さな罪を少しずつ種明かししていく物語の流れ。そして、無口で堅物で娘たちに「つまらない」と言われるような父親が娘たちに向けた思い、言葉で伝えることはできなかった妻に対する本当の気持ちを種明かししていく構成も見事。特に、舞台には姿を見せない父親の胸の内を遺された品々で雄弁に語らせ、「ああ、そうだったんだ」と客席の琴線に触れていく。泣いたり笑ったりどきどきしたりしながら、客席は何だかほっとするような思いになる。
3人の娘の家と残された妻の家(娘たちの実家)をそれぞれ同じステージにしつらえた舞台装置には感心した。テンポのいい舞台転換など演出もよかった。

舞台や映画、テレビドラマには人間ドラマと銘打ったものがあふれているが、今回の道学先生こそ正真正銘の人間ドラマだと思う。際立つ個性をうまく演じきって舞台を盛り上げた3人の娘役の女優さんたち(もりちえ、関根麻帆、山崎薫)はお見事でした。家に帰ってきたばかりなのに、もう一回見たい!

テノヒラサイズの人生大車輪2022

テノヒラサイズの人生大車輪2022

BALBOLABO

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2022/10/20 (木) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ゲネを鑑賞させていただきました。
いつ見ても安心してすべての方にお奨めできる名作です。
笑って笑ってジーンときます。
最後はこの作品のスケールの大きさを感じながら大笑いのうちに幕切れという最高の終わり方です。
登場する7人の役者が皆うまいということにも感動しました。

凍える【10月24日、10月30日公演中止】

凍える【10月24日、10月30日公演中止】

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2022/10/02 (日) ~ 2022/10/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

犯人の特殊性(障害との関連性)にクローズアップしたドラマとして、とても面白かった。
開演前、舞台セットが「あわれ彼女は娼婦」とほぼ同じ十字架仕様なのでこれは演出家の好みなんだなと。で、当然贖罪を追うのは犯人だと思って観始めたが、そうでもないようで途中からわからなくなってしまった。
十字架のせいで、主な芝居は上手に限定され、下手席は置いてけぼり。下手のローナ実家、平和なはずのあの空間との対比か、有名な俳優じゃなくていいからもっとコンパクトな空間でドキドキしながら観たい。

ネタバレBOX

母が犯人を許す根拠は、同じ我が子の言葉から?ちょっとあっけなくて、でも、それからの行動が、犯人の思考に影響を与えるのだから、そこが十字架をもってきた理由か?汝の敵を愛した結果、彼は何に目覚めたのだろう。
パラダイス

パラダイス

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/11/03 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

底辺で蠢く行き場のない者達に、危うく同情しそうになってしまった。どこか冷ややかな見せ方が観客にとって救いになっているのかも。小間使い水澤さんの描かれ方がステキです。

ネタバレBOX

主人公の実家の場面が丁寧すぎて…でも、あんな家庭普通にありそうだし、主人公がそこに戻ってどんな風にやり直しが始まるのか、あれこれ想像するのが楽しい。
心踏音 -Shintouon-

心踏音 -Shintouon-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/10/19 (水) 19:00

ワードレスのためにつくられた、ワードレスならではの詩的で美しい作品だなと思います。
物語をキャッチする要素は、台詞のほかにも立ち位置、目線、表情、身体の動き一つひとつ、音楽、衣装、舞台美術、小道具、照明、など…色々あるなあと思っていて、東京支部さんは殺陣アクションにさまざまな演出アイデアが加わって表現されるのですが、この作品はタップダンスも加わってこれが本当に効果的ですてき。セリフのないしばりがキャラクターのハンディキャップと通じて感じられたり、見えない暗闇や触った感覚を味わったり。劇場を出たあと、普段自分が暮らしているなかで感じている五感をあらためて新鮮に感じました。
日頃の運動量に裏付けられた無理のない身体づかいは身体表現好きにはたまりません。タイトル演出も光を浴びて淡く浮かび上がるのが本当に美しかったな。またいつか見たい。

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

Antikame?

雑遊(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

吉田康一氏の「見かえしたかっただけ」という二人芝居を観る

静謐

開演前の注意で「静かな舞台なので、必ず電源はお切りください」と言われれたが場内物音ひとつしない、いや出来ない
コロナ禍で家にいるようになったことからズレ始める二人
会話劇というか、交代の独白と言った感じ
表情と台詞の勝負
二人の役者(日野と高橋壮志)が微妙な変化の照明と音楽と相まって、いくつかのメタファーとともに精緻に紡ぐ危うい世界

ネタバレBOX

女性(日野あかり)がたくさんの服が詰まったゴミ袋わふたつ持って出てくる
別に断捨離したい訳じゃない、ゴミ収集が決まった日に来てくれるから出さないといけないと言う気になる、云々のセリフ
それぞれの服の思い出を語りながら投げ出していく
それもメタファーになっている
最後の彼女の「ただ見かえしたかっただけ」と言う表題のセリフはちょっと真意を図りかねた
「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

Antikame?

雑遊(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

良い舞台だったと思います。

オルガ・トカルチュクの『宝物』

オルガ・トカルチュクの『宝物』

シアターX(カイ)

シアターX(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 一時、日本の新劇をリードし一世を風靡した劇団の人々は観ておくべき作品だろう。原作はポーランド出身で2018年にノーベル文学賞を受賞したオルガ・トカルチュク。今作は彼女の唯一の戯曲だが「昼の家、夜の家」という彼女の小説をTV用に再構成して戯曲化した作品である。作品の特徴は、因果律等の必然性を背後にした文脈からある意味離れ、而もベケット流不条理とはならず、寧ろ無という概念的零を目指すも実際には至り着けない無限の希薄とか、宇宙で完全な概念としての真空を目指しても実際には究極の真空には到達できない物理学の実際に経験させられる事実とかを表象するに近い。極めて知的で知的探求心にも富み、該博な知にも支えられながら実際にはイデアとしての零にも、即ち無にも辿り着けない我ら人間の知の限界にも竿さしつつ、遥か向こうで笑っている何か、人間の知等を遥かに凌駕した無限の知力の夢を夢見るような世界に開かれているかも知れない新しさが感じられる。

燃ゆる暗闇にて

燃ゆる暗闇にて

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

幸せに暮らしていたグループが新しく入ったメンバーによってかき乱されるという定番の物語。今回は場所が盲学校なのでその特異性が演技の訓練になるので選定されたのだろう。視線を動かさず、表情もあまり変えない、といういわば大リーグボール養成ギプスを身に付けて、どこまで演劇を作り上げることができるだろうか。この設定ではまた、黙っていると同じ部屋にいても分からないということがまるで透明人間のSFのようで面白い。休憩なし105分。

ストーリーは連続TVドラマにもできる愛憎劇なのだが、直接的な表現は少なく上品な薄味仕立てで進んで行く。「目が見えない」ということは「何かが分からない」ことの一つの例示にすぎないので、哲学的な雰囲気を持たせているのかもしれない。曖昧な方が普遍的な意味を感じられるということもあるだろう。それにしても結末はもう少しなんとかしてほしかった。

演技はやはりぎこちない。そのハンデを乗り超えて魅力を発揮する役者さんも残念ながらいなかった。この珍しい集団特殊演技を見てみたい人にはお勧め。もちろん研修生を暖かく見守りたいという人にも。

金魚鉢

金魚鉢

FEVER DRAGON NEO

studio ZAP!(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても見やすい劇場!舞台との距離が近すぎてこっちも身が引き締まります。気迫あるシーンではビリビリ来ます。ただちょっと、、、ちょっとだけ上のカフェからか美味しい匂い来ちゃいましたね。明日の仕込みですかね~。
話自体は怖くなかったし、難しくは、、、なかったかなぁ!?なんか色々な立場の人の鬩ぎ合いで、やっぱり一筋縄ではいかないんだなあと思いました。
私たち自身は負けることわかってる戦争にいつまでも健気すぎるところが観てて凄く心が痛みました。

ネタバレBOX

カツ丼食べたり、男同士の胸ぐら掴み合って唾飛び交う取り調べはありませんでした。ご注意ください。
「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

Antikame?

雑遊(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「見かえしたかっただけ」を観劇

コロナ禍で相次ぐ非常事態を生きていく中、本作のように遂にこじれてしまった夫婦・カップルはきっと多いと思う。
この二人には もう優しく交わる時間など来ないのだろうか
静かだけれども軋むような心の叫びがとても痛々しくて、カサブタをゆっくり剥がされていく様だと感じながらも舞台(そこ)からは逃れられないし、目をそらす事もできない。
ならばその先には

台詞の無い場面の所作であるとか、台詞を受けている姿・表情とか、そんなところにも刺さるポイントが
楽しい内容ではないし、万人向けじゃないかもしれないけれど、「楽しい」を超える響きがそこにはあって、自分なりにそれを受け取る事ができたのではないかと確信
今もって熱いものが残り続けています。

「若草物語」~小さな貴婦人たち~

「若草物語」~小さな貴婦人たち~

劇団文化座

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/14 (金) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/10/19 (水) 13:30

座席1階

アメリカの作家オルコットの小説。映画やアニメにもなった著名な作品を今、文化座が演ずる意味は何だろう。そんなことを考えながら4姉妹の物語を堪能した。亡くなった文学座の高瀬久男の脚本だ。

次女のジョーを語り口にして物語は進行する。4人とも性格が全く異なり、個性豊かでおもしろい。特にジョーは、良妻賢母が理想とされる当時の感覚では珍しいと言えよう。自由を愛し束縛を嫌い、自分の夢や目標のためなら恋愛や結婚も脇に寄せるという女性だ。
4人の結婚観の違いも見どころかもしれない。幸せな結婚とは何か、客席が受け取るメッセージはきっと、人によってだいぶ違うだろう。そういう多彩な見方ができるのは若草物語ならではといったところだろうか。
なぜ今、文化座が若草物語? という問いへの答えは見つからなかった。パンフレットで佐々木愛が書いている。「父(佐佐木隆)の言葉の数々とともに、私がふと出会いたくなった」。小説でもこの舞台でも、従軍牧師である父親の存在は少ない。でも、愛さんが舞台の父親に佐佐木隆を重ねてみているとしたら、それはそれで興味深いことだと思う。

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」

Antikame?

雑遊(東京都)

2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。【あいまいなしっそう】
奇妙な設定から垣間見える日常の不安や曖昧さ、その不確かさによって情緒の揺らぎを描いた秀作。見ず知らずの人と ひょんなことから話し出すが、そのきっかけが奇抜である。変哲のない日常の景色が少し違って見える、いや変えたい思いがある。しかし それは錯覚のような事実のような。

ラスト、不安と勇気は背中合わせ。躊躇する思いを奮い立たせ一歩前に進む、その瞳に映る光景はどんなものか。そんなことを問い掛け、想像させる余韻が…。
女優3人による確かな演技が、”表し難い情況”をしっかり形として観せ 感じさせる。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、古い歩道橋の手摺、真ん中にドアが倒れている。舞台下、客席との間に椅子2つと大きなクッションが上手に置かれている。上が外の風景、舞台下が室内を表す。どちらも普段の暮らしで見かける。ただ違うのは、落ちていたドアがあるということ。

毎朝、見かけていたが名前さえ知らない女性2人、向中野蕗子(花島希美サン)と小笠原可奈(永濱佑子サン)が、歩道橋の真ん中に倒れているドアに興味を示す。2人が協力してドアを立ち上げ、蕗子が支え 可奈がドアを開けてみる。同じ空間であるにも関わらず、違った風景が見えたような気がした。このドアが数日間放置されており、2人は気になってしょうがない。可奈の友人・江尻亜美(わたなべ あきこサン)はその話に興味を示しつつも、自分の目下の関心ごと、それは可奈の元カレ<あんどう君>と付き合いたいこと。2人の会話が登場しない あんどう君の人物像を立ち上げ、存在感を増していく。それがドアに繋がっていくという、少し強引な展開だが、序盤のドアを開けたままの光景に結び付ける。

一方 蕗子は理想のような夫と暮らしているが、苛立ちを覚えてしまう。何でも笑って許してくれる夫、その完璧さが鼻につく。隙のない夫と本音で向き合えない悲しさ寂しさ。可奈は出会った時に蕗子が呟いた「しっそう」(状況的には<失踪>)したい という言葉に驚く。そんな蕗子に淡い恋心が芽生えた可奈自身の戸惑い。ドアを開けなかった蕗子は、家庭(夫)という目に見えない鎖に繋(縛ら)れた景色を見ていた。舞台の上に立たせたドアの上手下手は同じ空間だが、開ければ違う景色が見え、閉めれば二つの違う空間に分かれる。

<あんどう君>を通して、可奈と亜美の夫々の思いを遂げる。可奈は、曖昧な態度を改め明確に別れを伝え、亜美は成就させようと必死の工作をする。蕗子は夫と別れる決心をして…。ドア(の開閉)を通して、普段の暮らしにちょっぴり変化をつけて違う光景をみる。曖昧な関係の先にある透明になるまで…こちらは「疾走」する言葉に変換するようだ。
公演の面白いところは、物語の端々に詩的な言葉(台詞)があり情緒を感じるところ。さらに亜美がピアニカの演奏、落語、そして表現しにくい "ぼよよ~ん"という脱力系の仕草で曖昧さ 揺らぎを表現する。敢えて観せるシーンを挿入し、演劇的な面白可笑しさを強調させたかのようだ。勿論、照明の諧調によって時間や状況の変化を印象付ける。

あまり利用されなくなった歩道橋(近くに横断歩道がある)とはいえ、数日間放置されているのは現実的ではない、などとは言わない。出来れば、その数日間の時間的な経過を表すため、せめて上着だけでも衣装替えをしては と思った。
次回公演も楽しみにしております。
GOLD IN THE DUST

GOLD IN THE DUST

GROUP THEATRE

浅草九劇(東京都)

2022/10/12 (水) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

梶原涼晴の脚本は、
English、難しい漢語、若者の流行り言葉ありで、まるで「ちょんまげ結って、靴はいてる」ようだと批判したことがありましたが、今回の作品は、世代を越え、言語の壁を越え、世界中の人々に通じる心の言葉がある脚本でした。感動しました。

マニラ瑞穂記

マニラ瑞穂記

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2022/09/06 (火) ~ 2022/09/20 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

観劇後だいぶ日が経ったので記憶も朧気であるが、舞台の光景は比較的鮮明に刻まれている。面白い戯曲であるが、秋元作品中あまり話題にならず、データも少ない。
以前新国立劇場の上演を観たがもう八年前の事、栗山演出だったか・・彼っぽい舞台の使い方で、装置に目が行って役者の話が耳に入らなかった(話の筋が追えなかった)記憶がある。今回は文学座アトリエにて松本祐子演出という「マニラ」再観劇の有難い機会であった。
こういう話だったのか、と・・全く覚えていなかったが、女衒の秋岡伝次郎と女郎たち、領事と職員、軍人、植民地からの解放運動に協力する日本人らが見事に絡んで、日本人の「外地」との関わりを先行的に描いた作品は批評性に富んでいる。舞台は前半が領事館、後半は解放運動の拠点として伝次郎が出資した建造物(の残骸跡)、そして再び領事館に。「私」的事情と「公」の事情が糸で衣を織りなす如く絡み合い、刻々と世界の変化をもたらす。三好十郎を師とする作者の面目躍如たる戯曲であるが、まだ咀嚼し切れていない。舞台は面白く興味深く観たが、芝居がスポットを当てたこの時代の本質、対外関係における日本のあり方を、もっと汲み取らねばならぬ気がする。(これは個人的な感覚であるが。)

一度しか

一度しか

ほりぶん

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2022/09/29 (木) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この所定着している、出演シーン一言解説付き自己紹介を初めて見たのは、神保町花月プロデュース「予言者たち」だったか、もっと前だったか。。以後の「かたとき」、今回と3度以上見ているがこの自己紹介も磨きがかかり、今となってはこれはナイスなアイデアで毎回やる価値有りだ。
ほりぶん、ナカゴーは大いに笑えるが、やはり回を重ねて楽しみ方を会得した方が良い、と思う(というか、何処となく癖になった今、自分は会得したのだな、と思う・・当初はそうではなかったので)。
よくお笑い芸人が、目指す「笑い」の理想を、一度乗っかったら次、次と笑いが起き、会場が波打つ、等と言う。当初ナカゴーの笑いは、演劇の笑いではなくこの「お笑い」の笑いという気がしており、それが証拠にツボを突かれて波状攻撃で「笑わせられる」という側面が強かった。顎が疲れて、芝居が終るとハーと溜め息をついて帰路につく。もちろん作品は一様ではなく一緒くたに語れるものではないが。しかし生み出す笑いは独特である。
(お笑いでなく)芝居では、ドラマの高揚が目指され、笑いはこれを相乗的に高めたり、息抜きを与えたり、「潤い」がある。他方、芝居がその高揚の部分でなく底辺・下地の部分で、シニカルな空気を欲する場合には、乾いた笑いが有効。風刺や皮肉といった笑いに近く、ニヒリズムの世界を提示してそこに人間的な何かを描き出そうとする芝居で、乾いた笑い(を通したドライな人間観・世界観)が注入される。今書きながら想起しているのは大人計画の「キレイ」だ。
つい先日ぴあ演劇学校という催しで「松尾スズキ」の回を視聴し、大人計画の主宰の「お笑い観」を聴く機会があったが、ウェットな笑いとドライな笑いとあり、日本には前者が多いが、自分は後者の笑いが好きである、との事。例としてジョン・ベル―シ、モンティパイソンのジョン・クリーズ、俳優ではジム・キャリー。狂気を帯びた笑いの世界だそうだ(日本では、昔の喜劇人が凄かった、との弁)。
ほりぶんは間違いなく後者の方であるが、それは登場する人物らのキャラと切り離せず、また演じ手である川上友里、墨井鯨子らの形象力とも切り離せない。
三鷹市芸文のNEXT COLLECTIONに登場と知って意外に思ったが、「演劇」に枠を嵌めていない自由人は同センター・M氏の方か。
演劇か笑いかの話を始めてしまったが、過去私が見たほりぶんは1アイデアで突き進むといった印象であったのが、「かたとき」(紀伊國屋ホール)と言い、今回のと言い、交わる線が増え、脚本書きの貫禄を自分的には感じていたりする。

ネタバレBOX

詮無い事ではあるが、笑いと言えば観客の「笑う」行為については、何度か奇妙な笑い癖に遭遇し、批判的に書いた。今回はその「常連」とは別人であるが、私の隣とその隣に座った男女の笑いに迷惑させられた。思い出すとイラっとするので反芻したくないが、少し笑い方を紹介すれば・・
音としては少し高めから「ハハハ・・」と音節が続く笑い声であるが、その音程というのが、最初の「ハ」から二番目の「ハ」が二、三度高くなるヤツである。そのあとはその音が続き、最後の方でしぼむ。大体において「ハ」が6回以上はある。ひぐらしが丁度あの鳴き方だろうか・・。よくテレビのバラエティ番組で、出演者の言動の後に起きるスタッフの、あの「上から」笑いである。「自分は色々と物を知ってるし体験もしているが、こういうのは初めて(と言って良い)。意外なものに出くわして、ホラ、こんなに笑いがこみ上げている(俺を笑わせるなんて大したもんだ)。」そんな説明が付されて良い位の自己顕示な笑い。自己顕示の衝動だから、笑ってる(笑えてる)事に快感がある、それがために、本当の衝動による笑いと違って(セミが鳴き終えるまで止められないのと同じく)ハハハハと続けてしまうのだ。お陰でその後の台詞が聞き取れない。これを何回となく繰り返される。まず隣の女子は(よく顔は見なかったが)声からして十代か二十代と若い雰囲気、その向こうに中年男性、その向こうに同じ年恰好な「声」の女性、そちらの女性は本当におかしい時に3度ほど短く笑っていたが、雰囲気として二人が夫婦、手前が娘。この父と娘が、回数としては父が多かったが同形の笑いを何度もぶちかまして来るのだ。自分の声が台詞を妨害していても一向お構いなし、て事は、芝居の行方など気にしてなく、一点において生じたおかしな状況を「理解した」とアピールする笑いが、止まらないという感じなのである。アピールが勝り、あとの展開を見ようとする欲求は比較的小さいと理解できる。

・・と散々文句を書いたが、いや気持ちは痛い程判る。多くの人との共感を「噛み締める」だけでなくそれを「音」にして示したい衝動は、その根底に寂しさや悩みを抱えている事の証左でもある。父娘(勝手な想像による)は目の前に起きる事への理解を笑いとして発する事で、互いに「歩み寄ろう」としていたのかも知れぬ。
ただ・・それは他人を脇へ置いた「自分」中心な行為なのである。これに対してはやはり、「台詞聞こえない」と勇気をもって告げるべきだったと思い始めている。折角楽しんでる観劇に水を差すことはできない、と忍耐したが、「理解したアピール」は笑いではなく、それはアピールしなくていい事であり、アピールポイントを掴まえて細かく点数稼ごうとしてくて良いものなのであり、そして何より台詞を聞き取りたい人間が隣にいること、を理解してもらうこと。それは大事な事であった。芝居は理解できたし面白かったので良いけれど。(これは日記かっ)
路地裏の舞台にようこそ2022

路地裏の舞台にようこそ2022

一般社団法人アラヤシキ

[00]スパワールド ピロティ,[01]3U(マンション三友),[02]バクロ どやねんホテルズ,[03]ヤマト どやねんホテルズ,[04]喫茶コスモス,[05]成田屋,[06]ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学(旧ココルーム),[07]日之出湯はなれ こいさん路地,[08]イチノジュウニのヨン(大阪府)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

独りユニット εb=I『あまい或る事件』千秋楽観劇。
昨年2公演を拝見してから、結構、楽しみにしている劇団さん。
30万円で超有名探偵雇って、甘くないシュークリームの、或る消失事件を解決するお話。
とてもアットホームなのに、本格推理?!
やっぱり超~難しかった!

でも優秀賞のシューアイスをゲットしたぜ。
美味しく頂きました🙏

消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)

消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2022/10/06 (木) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

舞台セットは、難破船の甲板やマストを壁や柱にしたよう。村の右往左往と、船の航海・漂流を芝居の場面でもだぶらせながら、2022年10月の「採決」から始まる。人口1000人余りの過疎の村の「消滅」か「存続」か。自治会長(奥村洋治)が、集落の「絆の里」委員会で採決をとると、全員が、「消滅」に挙手。ここであれッとずっこけるわけだが、自治会長が「覚悟が大事だ」と、明日、再度採決をとるという。「会長はどっちなんだ!」と委員たちが突き上げれば「私は断固「消滅」です」とまたずっこける。意外な幕開けに興味をそそられる。

話は2010年の「出帆(または放置)」にさかのぼる。委員会を立ち上げ、空き家のリフォーム、40歳以下の移住者への支援金50万円etcの、人口増加策のあれこれをやってきた。それでも委員の中からも離村者が出る現実、学者の傍観者的推計等々、なかなか出口は見えない。委員同士でも、今度引っ越しするのはあなた?、いやあっちの人と噂しあう。そして冒頭に戻り、翌日の再採決。そこまでの光が見えないフラストレーションを吹き飛ばす、意外な感動が待っていた。

ネタバレBOX

村で生まれ育った女性(関谷美香子)がいう。「なぜ生まれ育ったこの土地を離れなければならないのか。体をちぎられるような思いだ」。すると、数年前から村にいる女性(みょんふぁ)が「生まれたところでなければ故郷でないの?」と問い返す。「私は宮城に生まれ、大阪に移り、そしてここにきた。だけど、私にとっては、今はここが故郷」と。この問い返しは考えさせられる。生まれ育った場所に特権的(感傷的)にしがみつくのでなく、今住む人、今いる土地はみな平等のはずではないか。

そしてラスト、自治会長は「消滅」に一票を入れ続ける理由を語る。「来るかどうか、定着するかどうかも分からない人のためにお金を使うより、今いる人のためにお金を使おう。いたんだ家の修繕、荒れた耕作地の整備につかって、今いる人がより良く暮らせるようにした方がいいではないか」「それが「消滅」に予算を使うということだ」。こんな発想が聞けるとは思わなかった。言われてみれば当然のことだ。いつの間にか「人口増加」などと、あてのない未来のことばかりを言って、現在の住民のことを二の次にしていた。「消滅」を覚悟しての逆転の発想だけど、案外、現在の高齢者たちが生き生きと暮せば、それにひかれて移住してくる人もいるだろう。

会長が「なぜ移住者が定着しないか。それは「愛着」がないからだ」ともいう。シンプルな真理なのに、忘れがちのことだ。

最初のシーンで村のおばばがたとえ話をする。〈鼠の害に困りはてた男が、思い余って鼠の巣に火を放ち、その結果、家が全部燃えてしまった〉。みんな、何の意味か分からない。でも最後になって、村のおかみさんの一人がその話を思い出して言う。「あれは、一番大事な絆を燃やしてはいけないという意味だったんじゃないの?」。おばばは「あなたがそう思うならそれででいいじゃない」。なかなか心憎いしめくくりであった。
路地裏の舞台にようこそ2022

路地裏の舞台にようこそ2022

一般社団法人アラヤシキ

[00]スパワールド ピロティ,[01]3U(マンション三友),[02]バクロ どやねんホテルズ,[03]ヤマト どやねんホテルズ,[04]喫茶コスモス,[05]成田屋,[06]ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学(旧ココルーム),[07]日之出湯はなれ こいさん路地,[08]イチノジュウニのヨン(大阪府)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

マシュマロテント『みえない』楽日観劇。
「私、夢だと解るの」とはしゃぐ姉と親友、寄り添う妹夫婦。
突然闇が襲う世界。
劇中TVに大笑いの役者。
楽しい時が突然、空白の姉の記憶、グッと胸が締め付けられ…
観たい夢をみる事ができて、本当に良かった!
無茶苦茶良かった。高評価👍
超~素晴らしい。

これからもマシュマロテントさんは要チェックです。
こう言う出逢いがあるのが、「路地裏の舞台にようこそ」の良さだと思う。

路地裏の舞台にようこそ2022

路地裏の舞台にようこそ2022

一般社団法人アラヤシキ

[00]スパワールド ピロティ,[01]3U(マンション三友),[02]バクロ どやねんホテルズ,[03]ヤマト どやねんホテルズ,[04]喫茶コスモス,[05]成田屋,[06]ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学(旧ココルーム),[07]日之出湯はなれ こいさん路地,[08]イチノジュウニのヨン(大阪府)

2022/09/10 (土) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

Prarium『理科室のアリア』楽日観劇。
くーちゃんさん、Pさん、等々、VTuberさんと演劇のコラボ?
VTubeと演劇の可能性についての試適用的な内容。
VTuberさんに走って貰ったり、歌って貰ったり、生歌まで聞かせて頂いたり、充実のアフタートークも愉しかった。

ある種、異次元の拝見した事のないVTuberさんの世界を垣間見られて面白かった

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