朗読劇 夏月夜十景
エムズクルー
新宿眼科画廊(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ベシミル! 最高レベルの朗読劇。脚本、演出、物語展開の機序、役者陣の実力、舞台美術、照明、音響も見事であり、各々が上手く噛み合って楽しめる。華5つ☆。尺は約90分。
ネタバレBOX
開演前には何と憂歌団の曲が流れていた。大好きなバンドなのでいきなり引き込まれる。それにしても何とセンスの良い曲たちであることか! 釜でしか生まれなかった本物のブルース。流石に音響も劇場用とあって細部の音までクリアに拾っており、自分の部屋で聴く安物の音響装置では味わえない音色だ。先ずこれにイカレタ!
明転するとこの鰻の根床のように細長い空間を、演者に京都ゆかりの方がいらした所為かとても上手に用いていることに感心させられた。舞台美術はホリゾントに衝立を設けて袖を拵え、上演中には溜まりとして用いつつ、出捌けに使われる。床几形式の椅子は格子になっておりベンチ式に用いたり、片側の足を床に立てて用いたり、予め設置してある木柱二本の各々と組み合わせて全く別の構造物を作り出したりと千変万化。天板の丸い椅子三脚も各々高低差があって朗読する演者が座ると声の位地が自ずと変わり微妙な声音の発生源の位地がずれて極めてポリフォニックに響く。劇場長辺側には行燈に見立てることのできる朧な照明が灯っているが作品に応じて総ての小道具のレイアウトは適宜変化する。
この際のセンス、場転のスピード等も見事だ。また噺の内容によって擬音効果を巧みに用い臨場感を盛り上げるのも、ハッシと叩いて噺を進める手際も見事、祭囃子で音響を用いる以外、殆どは演者自らが小道具を用いてこなす。用いられる器具は按摩の用いる女笛からチベット仏教の仏具、波音を発生させる道具等々多用であり、実に効果的に用いられる。
構成も巧みでかつては良く行われたという怪しげな者達の登場する百物語のような作品群から選ばれた短編数編及び劇仕立ての世話物長編二編。演者は何れも芸達者、声量も適宜で間の取り方が見事なので演じられる個々の作品総てに命が宿り極めてヴィヴィッドに迫ってくる。最高レベルの朗読作品群である。
朗読劇 夏月夜十景
エムズクルー
新宿眼科画廊(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
朗読劇だが、比較的狭い空間にセットを設え、それによって情景豊かに紡いでいく。怪談というよりは不思議な妖艶噺と信仰噺といった印象だ。構成は大括りに前半と後半、まず朗読劇の企画(怪談会)に掛かる前半、続けて物語2編が後半として展開していく。
説明にもあるが、明治末期から昭和初期にかけての、百年に一度の怪談ブーム。文壇や演劇界、花柳界など都内各所で開かれていた怪談会や百物語。それらの会の記録と主宰の一人・平山盧江の短編小説をドラマアンソロジーとして上演すると。
前半は、会の記録から佐々木喜善氏に焦点をあて話を組立てる。そして今年の元旦に起きた能登地震から明治時代に起きた三陸の地震へ繋げる。災害に係る経験…自然の前では人間は無力、それでも生きていくといった力・逞しさを描いている。その目に見えない不思議な<力>は、物語の中に表れる超常現象もしくは怪奇・怪談に繋がるよう。後半は、怪談会に名を連ねていた新聞記者であった平山氏の小説「投げ丁半」と「二十六夜待」が格調高く語られる。
怪談話という先入観があるため、前半の怪談会、それも冒頭部分は少し早い〈喋り〉に感じたが、物語2編は情感に溢れ実に見事な〈語り〉だ。
今まで聞いてきた朗読劇の中ではレベルが高く 驚かされた。
(上演時間1時間25分 休憩なし) 7.15追記
ネタバレBOX
舞台美術は、縦型の和風照明が周りを囲むように点在。冒頭は、中央奥と上手に縁台が逆Ⅼ字に置かれている。下手に高さある椅子、その近くに丸椅子が倒れている。話や物語の展開によって、それらの道具の並べ替えをするなどして情景を表す。
話の展開は、時代を遡行するように<怪談会>なるものが出来た経緯、そして平山氏の短編小説2編を休憩なしで朗読する。役者は小説=物語とト書きというかナレーションを担当する者がおり、その役割に応じて読み方を変える。物語中の登場人物は情感豊かに、ナレーション担当は淡々とした語り。その物語にあった雰囲気を漂わすため、例えば衣裳も現代物であれば洋服、時代物であれば和服といった気配り。
「投げ丁半」は、芸子 里奴とその馴染み客の友人である雀部 その2人が登場人物。どこかの温泉地(宿)へ投宿し 馴染み客である男を待つが来られないと…。馴染み客は電報によってその存在を示す。里奴は雀部を誘惑するが 相手にされない。そして夜に蜘蛛が現れ不吉で不気味な…女の情念によって金縛りあったかのような寝苦しい夜。花街を舞台にした艶話。
「二十六夜待」は、ある川もしくは海辺にある商家、その近くに流れ着いた心中死体。身元知れずで不憫に思い 商家の主人が丁寧に弔った。そんな時、男女の行方を捜している商家と置屋の者が事情を説明する。若旦那と遊郭女が川へ身投げをし、あの世で結ばれようと…その2人の亡霊が弔ってもらった主人のもとへお礼に来る。「二十六夜」の信仰と江戸の風俗を描いた心中物。
舞台技術、和風照明の諧調によって時間や情況を巧みに変化させる。和の柔らかく ぼんやりとした照明は怪しくもあり妖しさをも表現。それが怪談話と艶っぽい話と江戸という時代物にピッタリ。音響は 波ざる(波の音)、笛の音、仏具(リンの音)などの小道具で情景を豊かに表す。役者は台本を持ちながら、時にそれら小道具を巧く操り公演全体の雰囲気ー怪談ーへ誘う。
次回公演も楽しみにしております。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
フルタ丸初観劇。「うまいな~」と幾度となく感心しながら観た。下北沢B1は馴染みのある劇場だが、舞台をゆったりと贅沢に使ってる感覚が新鮮。未知数であった「講談」要素がどう絡んでいるのか・・そこにやはり関心が向かうが、開場時間の間流れる女性講談の音源がアウトし、開演となると、見台を高くした台上に何と女性二人が座り、講談調の語りが始まる。さて・・・
もっとも自分は講談を「落語」を通してしか知らない。(神田伯山氏の動画を初めて目にしたのは割と最近。)枝雀の秀逸なくしゃみ芸が聴ける「くしゃみ講釈」や、志の輔の全編講談調の新作を今思い出すが、(伯山氏のを聴いて実感した所の)講談の真骨頂である「クライマックス」のテンションであったりが、今回の作品にも盛り込まれ、また時折高座に出てくるフレーズをうまく嵌め込んだりと、単に「語り手(講談師)の進行による劇」止まらない趣向の充実がある。
ストーリー的には舞台となる保険屋の営業部員それぞれの人生模様が切り取られ、各人の人生の分岐点を華麗に(見た目的にはバタ臭くとも)経て行く物語が講談的に綴られる。
正直、出だしは打ち込みの音楽が「和」と合わないな、とか、可動式「見台」台の二人が人に隠れて見えないといった「不便さ」や多少多めな「甘噛み」など物理的要素に引っ掛かっていたのだが、仕込んだ伏線がやがて花開く考えられた台本に、「なるほど」「うまい」と心で呟くのであった。
ネタバレBOX
営業部員たちは男性3名、女性4名。新人女性、枕営業疑惑の女性、やり手の女性ベテラン、そしてじつは落語家を目指していて断念し、「同じ喋くりで身を立てる」仕事として選んだものの・・という女性が居る。これが後半驚くべき変化を見せる。男性にもベテランが一名、彼は音楽のプロを目指していたがバンドを去った過去を持ち、後半思い掛けない展開がある。高学歴で社会的地位の高い学友たちをターゲットに成績を上げているが頭打ちが見えている若手or中堅、もう一人が具体的に思い出せないが、各々が持つ特性に即した物語が書き込まれ、フォーカスされる。このエピソードの配置、ディテイルが「うまいな〜」なのである。
もちろん個人史に深く分け入れば、もっと泥臭くみっともなく、従って行動に至らない事が多くその方が賢明である事の方が多い。が、皆が皆「等しく」課題や傷を抱え、乗り越えようとする群像劇とは「等しい」という点にポイントがある事に気付かされる。一名部外者が混入、彼には「革命」を担わせ、あるいは社内恋愛要素もあって混沌とするが、うまく触媒の機能を果たす。
講談師は俯瞰で物語る存在だが、二人は営業部長を兼ね、部下たちの内面を含めた実情を鋭く見抜いている風なまなざしがある。これが作品のドラマツルギーを決定づけている感があり、そこに何かを感じているのだが、これに関してはお時間となったゆえ、またの書き継ぎにて。
野外劇『パレード』
公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター
境南ふれあい広場公園(東京都)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
屋外の演劇はなかなか経験出来ないので貴重だった。
空模様がイマイチだったのが残念でしたが、それで雰囲気が出たような気もしました。
逃奔政走
フジテレビジョン
三越劇場(東京都)
2024/07/05 (金) ~ 2024/07/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
笑いどころの多い演出で面白かった。
終演後に流れる音楽の中、劇場を出る際に清々しい感情があった。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
グルグル回る演出は面白かった
逃奔政走
フジテレビジョン
三越劇場(東京都)
2024/07/05 (金) ~ 2024/07/16 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
笑いの中にメッセージ性もある良い芝居だと思います。
あと、三越劇場は初めて行きましたが、新しい劇場とは違う風情がありますね。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
講談の醍醐味は、観客をMAXまで盛上げる語り手の熱さ、リズミカルで大仰な節回し、
ト書きも台詞もメリハリつけてすべてこなすマルチぶり・・・と数々あるが
そのすべてを存分に発揮する舞台だった。講談師のお二人、お見事!
ネタバレBOX
客入れの時から講談が流れている。よく分からないが「徳川天一坊」と「赤穂義士伝」?
聴いているうちに、そのリズムが心地よくなってきて期待が高まる。
明転すると高座が二つ、二人の講談師が「第三生命」の営業部員をひとりずつ
紹介しながら物語は始まる。
この講談師がストーリーを回し、登場人物の心情を解説したり補足したりするのだが
驚くことに普通に営業部長として台詞も言ったりする。
クセ強目のメンバーが揃っていてキャラのバリエーションは申し分なし。
彼らのバックグラウンドの描き方、業界あるある、個性豊かな保険の売り方など
盛りだくさんな情報も、講談師が整理してくれるので解りやすい。
講談らしく人情噺的要素もたっぷりで、スタッフの成長を促し見守る人々や、
がんを宣告されたスタッフが昔のバンド仲間に会いに行くところなど
人情に訴える講談の魅力が随所に生かされている。
口跡も鮮やかな講談師二人(真帆・篠原友紀)が舞台を牽引して素晴らしい。
ドラマチックな講談調が、誇張気味のキャラにマッチして相乗効果抜群。
講談に負けない役者さんたちの熱演に惹きこまれた。
このスタイルの作品は、役者のパートと講談のパートのバランスが難しそう。
登場人物のキャラが弱いと講談に負けて、芝居が講談のおまけみたいになってしまう。
二つのパートが拮抗するところに緊張感とリズムが生まれて面白くなる。
2つの高座が移動するのも(動かすの大変そうだが)時間の流れが大きくうねって良い。
この講談シリーズ、すごいですね!
いろんなシチュエーションでまた観てみたいです!
尺には尺を
イノセントギアカンパニー
劇場HOPE(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ひとことブラボー!です。セリフの量が普通の舞台の2.5倍はあるかと思いますが、それをものともせずセリフを語り尽くした女優さんにまずは圧倒されました。女優さんの声もしっかり通り、説明調の舞台ではありましたが話もよくわかり大満足です。ほんとすばらしい舞台でした。
NAIKON_AID2024夏
ナイスコンプレックス
溝ノ口劇場(神奈川県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
深く心に残るとても素晴らしい朗読劇でした。
ファーストテイクという状況ゆえか、出演されていた役者さんたちの熱量や思いをより強く感じました。
ネタバレBOX
痴呆症の母を殺めてしまうという状況、自分だったからどうするだろうかといろいろと考えさせられる作品でした。
また、彼女役を演じられた髙橋果鈴さんの感情のこもった演技がとても印象に残りました。
放課後戦記2024
TUFF STUFF
シアター・アルファ東京(東京都)
2024/07/07 (日) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
市川美織が出る回を知人に誘われていたが、それとは別に、ちょっと気になっていた阿部凜という子が主役のTeam Redの回を拝見。主役は悪くなかったけど、セリフがこちらに届かない発声の演者が目立ったのが残念。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
久しぶりのフルタ丸の観劇。やはり期待を裏切らない面白さ。大いに堪能しました。
NAIKON_AID2024夏
ナイスコンプレックス
溝ノ口劇場(神奈川県)
2024/07/13 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
朗読劇とは思えない位、素晴らしい舞台です!心に残る舞台でした!特に母親役の演技が素晴らしかったです!
愛想回想
劇団透視図
ART THEATER 上野小劇場(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いい意味で、予想を裏切る作品でした。チラシとあらすじから、勝手にアイドル物?と思っていたのですが、これは真っ当な青春群像劇。グッときましたね。
いっかいやすみ
ポッキリくれよんズ
シアター711(東京都)
2024/07/12 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高でした。お世辞抜きに感動しました。脚本も演出もばっちしです。役者さんの声もしっかりとおり、滑舌もよく台詞回しも完璧でした。次第に伏線が回収されていって「ああ、そういうことだったのか!」というシーンがいくつもありずっと楽しめました。
『口車ダブルス』
劇団フルタ丸
小劇場B1(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/07/10 (水) 19:30
座席2列
フルタジュンさん二回目の観劇
講談スタイルのリズミカルでわかりやすい展開。
今回は講談ダブルス🎵
みなさま是非一回体験して欲しいです!
最高でしかない!
正三角関係
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2024/07/11 (木) ~ 2024/08/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ネタバレ
ネタバレBOX
NODA・MAPの『正三角関係』を観劇。
劇場に入ると人工的な匂いを撒き散らした熟れた花たちが咲き乱れていた。どうやら池袋芸術劇場が宝塚劇場に成り下がってしまったようだ。
その要因は勿論、松本潤が主演だからだ。
いきなり殺気だった唐松族の三兄弟の長男・富太郎の登場に度肝を抜かされてしまった。松本潤の野田秀樹への作品の意気込みか?役柄への憑依か?この勢いがクライマックスまで続く事が伏線とは思えないが、野田秀樹の芝居では得る事のない熱量の芝居が続いていく。
舞台は花火師・富太郎の法廷劇で始まる。父親を殺めようとした罪だ。
そこに次男で物理学者の威蕃、聖職者で三男・在良が絡んでくる。
法廷劇から事件の当日を二重構造にしながら、第二次世界大戦時期の日本とロシアの関係、アメリカとの戦争など踏まえ、終戦まで描いている。
この時期を題材にしているのは過去作にもあったが、敗戦と分かっていながら戦争を続けた日本を声高に非難しているのは間違いない。ただ描かれるのは市井の人たちである唐松族・三兄弟の話だ。
花火師・富太郎の火薬が戦争に使われてしまい、花火を打てなく落ち込んでいる最中、恋人・グルーシェニカが父親に寝取られてしまい、憎しみのあまり父親を殺めようとしたというのが物語の発端だ。
親子で奪い合うグルーシェニカとはそんなに魅惑的なのか?
本当に富太郎の恋人なのか?否か?
はたまた実在するのか?
父親にとっても、富太郎にとっても、日本にとっても貴重な存在であるグルーシェニカだが、サスペンスにするかと思いきや、謎はあっさり分かってしまう辺りから妄想な世界へ誘っていくのだ。入った瞬間から始まる父親と唐松族・三兄弟の確執、アメリカを倒す為に原発を開発する威蕃、神の存在を信じる在良、と未だに続いている戦争への非難がはっきりと読み取れていく。
長男・富太郎を描いている時は、国家に洗脳され、無理やり戦争に加担させれてしまう市井の人たちの側に立って見ることが出来る。
次男・威蕃を描いている時は、戦争に勝つ為に危険な兵器を開発し、相手を如何に倒すか?という日本国家側から見る事が出来る。
三男・在良を描いている時は、神から見た世界、人間同士の無駄な争いなど宗教を通して世界を見る事が出来る。
そこに気がつけはタイトルの『正三角関係』の意味が読み取れ、作家が毎作ごとに叫んでいるテーマに没入出来るのだ。残念ながらこのタイトルの意味を読み取れないと物語の半分も理解していない事になってしまう。
今作はいつものように物語を撒き散らす事もなく、何度も観ているファンは、置いてきぼりを食う事もなく、スピィーディーさはさほど感じない。現代の時事ネタを織り交ぜ、言葉遊び、小道具の使い方などは健在だ。
ガムテープを使いながら、牢屋にしたり、電話のフックやハンガーにしたりと見立ての上手さは他の演劇人には真似出来ないだろう。当時開発されたばかりの録音テープの表現方法の美しさにはうっとりしてしまい、物理の計算式の羅列が背景に映し出されると、手前では理解し難い量子力学を人体を使って表現している上手さにはあんぐりと口が開いてしまったほどだ。人間の創造性と演劇の無限の表現力が交わる最高の瞬間でもある。
そして今作の最大の注目は松本潤だと思われるが、実は長澤まさみだ。
既に過去作『The Bee』で演技力は認証済みだが、今作では遂に野田秀樹の分身になってしまったのだ。演劇人は自分の身代わりを登場させるのが常で、初期の頃は自分でその役を演じるが、とある時期から他者に委ねる傾向がある。それは宮沢りえであり、松たか子の存在であった。
長澤まさみの三男・在良の台詞回しは『夢の遊眠社』頃の野田秀樹とそっくりではないか!今作の最大の見せ場はそこだと言っても過言ではない。
宮沢りえや松たか子にはまだまだ追随出来ないが、完全なる演劇俳優になった記念的作品だ。
チケット入手は困難だが、野田秀樹の初めて観る方にはお勧めである。
ANGERSWING
劇団Q+
駅前劇場(東京都)
2024/07/03 (水) ~ 2024/07/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
スーウェイは観たが本体はお初。
作り込んだセット、弾き語りのオープニング、過去と現在が交錯する構成など、とても上質な作品だと思う。が、なぜか没入出来ず…
設定が日本ではない点、葬儀屋さんの存在も微妙、くしゃみの意図が分からず…
もっと強い怒りを期待してたのかな。
ノスタルジアの贖罪
空想嬉劇団イナヅマコネコ
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2024/06/29 (土) ~ 2024/07/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
初日観劇。
まだこれからなので多くは語らず。中盤までは微妙。しかし伏線回収の終盤は凄く良い!
結構泣けた。
詭弁師のレトラ
演劇企画ヱウレーカ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2024/06/28 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
最初、台詞が入ってこずヤバイかぁ〜て思ったけど、オープニングの構成に惹かれ、ストーリーも意外と分かりやすくて最後まで楽しめた。
観たことのない世界観でまるで詭弁で言いくるめられているかのようだった。
言霊、言の葉の具現化が特に良かった。