朝焼けとハミング
route.©️
王子スタジオ1(東京都)
2023/07/21 (金) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/21 (金) 12:30
座席1階1列
大内真佑花主演。「ユニットバスの人魚姫」の8年後を描く。
男の血肉を食べて生きる人魚姫の伝説が残る離島が舞台。元アイドルの美月が島に戻ってくるところから物語が始まる。大内さんの演技の幅広さ、かわいさから妖艶な美しさに変化していく表情に心を奪われる。同級生の美月への言動一つ一つに意味が込められ、最後に全てのパズルのピースが埋まるようなエンディングに鳥肌が立つ。映像美ともいえる舞台演出と美しい悲劇に心が震える作品。
灰色の街
Project JUVENILE
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かったです。
サスペンスドラマのような雰囲気で、どんどん惹き込まれました。
シリアスな部分と笑いの部分のバランスが良くて、とても楽しめる内容でいた。
役者さん達の熱演も良かったです。
特に朝倉を演じた役者さん、愛嬌たっぷりで表情も良かったです。
他の役者さんも皆、それぞれのキャラクターを好演していて好印象でした。
音楽も良かったです。満足の舞台でした!
ユニットバスの人魚姫
route.©️
王子スタジオ1(東京都)
2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/20 (木) 16:00
座席1階1列
全体的にホラーでエグい場面もありながら、芸術的演出と役者やmove actorの表現力によって美しさを感じる作品。主演の中村透子さんの鬼気迫る熱演や、人魚役のまひたんさんの妖艶さが光る。愛情の美しさと恐ろしさが心にささる。劇場に入った瞬間からroute©︎の世界観に包まれる。
スペーストラベロイド
collaboLab
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
体裁を取り繕うにも程がある、誤魔化しの限界突破か(笑)
嘘と勘違いと本気がこれでもか!と混ざり合って、どこか懐かしさを感じるくらいコッテコテのコメディー作品でした
それでも役者さん達が素晴らしく爽やかに演じられているのでコッテコテ感はかなり軽減されていたかも
馬鹿馬鹿しい状況と宇宙圏内にいるという危機感、有り得ないコントラストを如何にテンポ良く熱く演じられているかが作品の肝(きも)
誰がどんな勘違いをしているのか混沌としてきても、そこをわかりやすく見せてくれるテクニックに感心しました
PILLOW VELVETTIE
流山児★事務所
スペース早稲田(東京都)
2023/07/21 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「お前も沈むのね。そして夜が来る。」
太陽に向かってそう語り掛けた女は毒を呷る。
チケットにワンドリンク付いていて、BARトワイライトのマスターはアダムスファミリー調の甲津拓平氏。前説も担当。
登場するのはピロウ・ヴェルヴェッティ(ヴェルベット〈光沢のある柔らかな肌触りの生地〉の枕)を名乗る女優。どうやらここは警察署の取調室。彼女は事情聴取をする刑事のことを大好きな俳優から取って、ジョルジオと呼ぶことにする。語り出すのは母親が好きだった歌。昔の映画のワンシーンで印象的だったハミング。そしてシャルル・ペローの童話『青髭』について。次々と娶った妻が行方不明になってしまう恐怖の権力者の言い伝え。彼女は天才演出家、サイモンこそが現代の青髭だと告げる。そして自分が彼を殺したことを。
伊藤弘子さんデビュー37年、出演作155本目の記念公演は初の一人芝居。客席後方でキーボードとエレキ・ギターのa_kira氏、コントラバスの伊藤啓太氏が生演奏。何曲も歌い上げる。『When a Man Loves a Woman』の間奏のギター・ソロが布袋っぽかった。a_kira氏は小室哲哉っぽい。
電気スタンド(デスクライト)をハンドマイクのように握り締めて歌い、自らの顔を下から照らす。上から垂れ下がる7本の首吊りロープのダンス。流山児事務所名物の背景への投影。線描画のアニメみたいな奴が凄かった。退屈させない工夫に充ちている。デイヴィッド・リンチ作品を連想させる世界観。
伊藤弘子さんのファンならずとも、是非観に行って頂きたい。
灰色の街
Project JUVENILE
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
けた外れにおもしろい。
おもしろ過ぎる。
もらったパンフレットによると、演出の富樫さんが、二十数年前、富樫さんが初めて観劇し心を奪われ、夢中になって芝居作りに励むキッカケになった思い入れのある作品とあった。
そんなにいい作品なのか、と気合いを入れて観た。
正直なところ、最初の30分くらいは、普通のどこにでもあるお芝居ですが、半分を過ぎたあたりから、おもしろくて夢中になる。
最初もおもしろくないわけではなく、朝倉健太郎役の役者さんが、一途な好青年を演じていて、私は、彼の演技がとても可愛く好感が持てて、楽しんでしまった。
途中からは、ピストルをふんだんに使うスリルある展開になり、目が離せなくなった。
やくざ風な展開を期待して行ったので、超満足でした。
もっと書きたいのだが、ネタバレ厳禁と念を押されているので書けない。
印象に残ったのが、竜造寺役の富樫さんの演技だ。
味があり渋くて、スゴかった。
迫力も貫禄も半端ではない。(ここのところ必見です。)
衣装もバッチリ決まっていた。
飯原優さんのひたむきな演技もとても良かったです。
スペーストラベロイド
collaboLab
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
こんないい加減な管理の宇宙船には絶対乗りたくないが、そのいい加減さが上手く活かされたストーリー。嘘に勘違いの連続の笑いはあまり好きではないのだが、ついつい笑いに惹き込まれた。くどさを感じることはあったが、泥臭さがないので嫌味にはならずに観れたと思う。初日のせいか、キャスト間に少し距離を感じはしたが、これからどんどん仕上がっていくのではと思う。楽日観劇は相当良い仕上がりでは?
エゴイズムでつくる本当の弟
Stokes/Park
小劇場B1(東京都)
2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/20 (木) 19:00
座席1階
札幌出身の劇作家白鳥雄介による演劇ユニット。今作は自身の生い立ちや家族の実話を基にした作品という。
自分の物語を書くのはどんな気持ちなのだろうか。パンフレットによると、家族にはいいイメージを持っておらず、長年悩まされてきたというが、その悩みに全力でぶつかり、けじめをつけたいとしてこの作品をつくったのだという。「いいイメージでない」エピソードは満載だ。エステティシャンの母は子どもたちとの会話の端々でギャグをかます底抜けに明るい性格だが、兄弟が幼いころに離婚。新たな恋人も離婚していて男の子がおり、連れ子同士で同居をする(結婚はしていない)という展開だった。こういう性格の母親だからだろうか、血のつながっていない息子に対しても兄弟同様の愛情を注いだが、事態は悪い方へ悪い方へと展開していく。
次男(原作者)の結婚式前夜の場面から始まる舞台。軽妙な会話劇で進行していく。兄と弟の関係、さらに連れ子の弟との関係。親が勝手に同居しても、その連れ子たちが家族、すなわち「3兄弟」になれるかというのは別問題である。あえて入籍しないという親の選択が、東日本大震災の緊急避難時に長兄と血のつながっていない末弟との兄弟関係の証明ができず、不利益をこうむるというエピソードがあった。名字が違うままの連れ子同士の兄弟に対する、世間の冷たさも描かれる。
演出はシンプルで好感が持てる。擬人化された飼い猫が登場するが、今ひとつ効果的ではなかったようだ。タイトルの「エゴイズムでつくる本当の弟」は筆者の胸の内をさらけ出した本音だとは思うが、タイトルとしては分かりにくくインパクトに欠けたのではないか。
若者中心の家族劇として、新たな姿を提示しようという意欲作であることには違いない。
シュガシュガ・YAYA
東京にこにこちゃん
OFF OFFシアター(東京都)
2023/07/12 (水) ~ 2023/07/19 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/19 (水) 18:00
価格3,500円
初日及び楽を観劇。
ハッピーエンド路線を確立、公言する東京にこにこちゃんが描く大学生活のモラトリアム、そしてそこからの一歩を描く物語。
和光大学...をモチーフにした大学に入学した春瀬舞笑(大畑優衣)が演劇研究会に入部。様々な経験を重ねつつ成長も迷走もし、最後には周囲に力強く背中を押されて自分の意志で「ドア」を閉める。
団体側で不定期で過去作を無料配信している(本作も期待!)ので、以下ネタバレBOXへ。
ハートランド
ゆうめい
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/04/20 (木) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
なんだか思っていたものと違っていました。今回は今まで違ったものだったみたいで、それででしょうか?相島さん見たさもあっての観劇でしたが予想以上に出演されていなくて残念でした。
デンジャラス・ドア
爍綽と
浅草九劇(東京都)
2023/04/26 (水) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かったです。ただ、面白い前に笑ってしまうファンのような方が多く、笑いたいところでハズされてしまいました。女性版山内ケンジ感が強かったです。
明けない夜明け
演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2023/07/14 (金) ~ 2023/07/20 (木)公演終了
スペーストラベロイド
collaboLab
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
2回公演観ましたが、何回みても笑える。要所要所に置かれている伏線を最後できれいに回収して、温かい気持ちになれました。土田が宇宙遊泳しているところは、本人いないけど、舞台上の演者の息ぴったりで本当に泳いでるんじゃないか?と後ろを振り返ってしまったくらいリアルでした。
スペーストラベロイド
collaboLab
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2023/07/19 (水) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)
ムシラセ
駅前劇場(東京都)
2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了
ストレイト・ライン・クレイジー
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
日時によって星組、花組Wキャスト上演である、どの役を誰が演ずるかテイストの違いを楽しむこともできる。(花組を拝見)
2部構成、休憩なしの2時間25分程。一瞬たりとも目が離せない。
ストレイト・ライン・クレイジー
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/20 (木) 14:00
座席1階
ニューヨークのマスタービルダーと呼ばれた都市計画・建設者であるロバート・モーゼスの物語。ストレート・ライン・クレイジーとは、先住の都市住民を追い出してもまっすぐな高速道を通そうとした彼の人生につけられたニックネームだろう。
産業が興り、従事する人たちが集住して都市ができていくが、そのまま放置していては無秩序な街になる。都市の基幹は道路だ。都市計画は、道路をいかように通していくかということに集約されると言ってよい。
ただ、道路建設と言っても単純ではない。特に、既に建物が集まりコミュニティーができているような地域では、コミュニティーを守りたいという住民と、都市全体の交通網を考えた都市計画当局とは衝突することが多い。東京の都市計画道路は関東大震災後というほぼゼロからのスタートで後藤新平というリーダーが辣腕をふるって骨格ができた。だが、戦後の復興計画で道路建設がうまくいかなかったのは、後藤のようなリーダーが東京都にいなかったからだと自分は思う。朝鮮戦争特需で街が急速に発展する中で、東京都が環状道路を建設していくのは至難の業だった。全部で8本ある都心の環状道路の中で、環状三号線など計画倒れになっている道路が依然として残り、都心の渋滞をひどくしている。
この演劇の上演地である下北沢も、東京都が通そうとしている都市計画道路がある。裁判にまでなった小田急線高架化は断念され地下化となり、元線路だった場所は歩いて楽しむ、今やテレビドラマに何度も登場するトレンディースポットに変貌した。立ち退きを伴う道路建設は、北朝鮮の将軍様のような独裁者でもいない限り、今や不可能に近い。下北沢でこの演目が上演されたのは、何だか因縁みたいなものを感じる。
物語はモーゼスがニューヨーク近郊のロングアイランドを庶民の避暑地にするために二本の高速道を建設する場面から始まる。土地所有者である富豪たちとの強硬な交渉や、法の手続きを無視してまで進める仕事ぶりにまず、驚かされる。まさに人間ブルドーザーだ。日本で言えば、田中角栄のようなものだ。懸命に付いていく部下たちが痛々しいが、そこには庶民の生活向上という納得できる理屈があった。
戦争を経て、経済成長の中でニューヨークマンハッタンの高速道整備は難渋する。モーゼスはやり方を変えない。都市生活者として成長している市民たちが組織する反対運動の力を見誤って、時代の流れと共に計画は頓挫していく。「人間ブルドーザー」が都市の発展に力を発揮した時代は既に終わり、都市の成熟にはブルドーザーは害悪となっていた。しかも、彼が信奉した車社会に疑問が投げかけられようとしていた。
高速道計画を阻んだワシントンスクエアは車両通行禁止に。市民がそぞろ歩きをしながら都心の生活を満喫するという今のスタイルの萌芽となった。ニューヨークにはかつての高架鉄道の跡地を遊歩道にするなど、都市遺産というべきモニュメントがトレンディースポットになっている。上演劇場のスズナリがある下北沢のように。
さて、今作は力のある燐光群の看板俳優たちが遺憾なく実力を発揮し、見応えのある舞台に仕上がっている。2時間の上演時間の間、迫力のある会話のやり取りが続き、舞台から目が離せない。モーゼスの人生とは別に、民主主義と都市計画、貧困と富裕など考えさせられるテーマが散りばめられ、観劇後の一杯の席のネタには事欠かない。観てよかったと思える舞台だった。
力、族
劇団光合聲
表現者工房(大阪府)
2023/07/15 (土) ~ 2023/07/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/07/17 (月)
家族、華族にまつわる苦悩と葛藤を描いた心理劇でした。全体的に暗くて暴力的な場面が多かったので、厳しめの評価です。趣きを少し変えて痛快感などを全面に出すお芝居にしたほうが良かったのでは? が観劇後の印象です。
クレイジー・フォー・ユー【5月18日~21日公演中止】
劇団四季
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2023/04/25 (火) ~ 2023/07/22 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
流石に完成度が高い。これはリピートするべき作品。古典的な物語をまるでパロディのように構築し直したクラシックで現代的なミュージカル。文句なしに面白い。
1930年初演のジョージ&アイラ・ガーシュウィン兄弟のミュージカル作品『ガール・クレイジー』。女癖の悪い主人公を心配した金持ちの父親は、西部の田舎町にある男子専門大学に通わせる。その大学の経営者の孫、郵便局員の娘に恋をする主人公。経営危機で閉校が決まった大学を救う為、ロデオの女王コンテストを企画、州知事も巻き込んでの大盛り上がり。
1992年、この作品を基にリブート、『クレイジー・フォー・ユー』が誕生。大ヒット作となる。設定から何から全て弄ってある。
明るくハッピーなシェイクスピア喜劇を思わせる入り組んだラブコメ。ドリフや志村けんのコントを思わせる連発ギャグ。シーンごとダンスごとに詰め込みまくった細かいネタは何度も観ないと消化し切れない。贅沢なアイディアを惜しげもなく大盤振る舞い。『フル・モンティ』や『フラガール』など、どうしようもない素人労務者が見様見真似で何かにチャレンジしていく物語はいつの時代も人の心を刺激し興奮させる。
主人公のボビー・チャイルド役、萩原隆匡氏はとにかく華がある。見ているだけで楽しい。タップダンスをたっぷり味わえる。
ダンサーに憧れているが母親の跡を継いで銀行家にならなくてはいけない。渋々、西部の峡谷と砂漠の町にある劇場を差し押さえに出発。
ヒロイン、ポリー・ベーカー役・町真理子さんが最高。自分の席からだとトリンドル玲奈や村重杏奈みたいに見えた。ガサツな田舎娘の乱暴な仕草やつっけんどんな態度、足を広げてどっかと椅子に座る男勝りな無作法さ、優雅の欠片もないダンスのステップ。それがまた魅力的で主人公が夢中になる気持ちがよく分かる。心を奪われた主人公が“彼女の為”になりふり構わず頑張ろうと決める。その物語に観客を巧く乗っけてしまえば後はそのまま突っ走るだけ。
閉業状態の劇場は今では町の郵便局になっている。亡き母親がこの劇場でどれ程美しく歌い踊ったことか、父親は何度も何度も遠い目で語る。
主人公の婚約者、赤毛のアイリーン・ロス役・ 岡村美南さん。主人公を追い掛けて遥か西部の田舎町まで。
ブロードウェイの大物プロデューサー、ベラ・ザングラー役・ 荒川務氏。妻と上手く行っておらず、テスのことを口説き続けている。
ザングラーのショーの踊り子、テス役・宮田愛さん。主人公の友人で彼の為に協力を惜しまない優しい人。
他の出演者も一人ひとり魅力的で語り倒したい。
曲もダンスも超一流、一度は必ず観るべき。
ストレイト・ライン・クレイジー
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2023/07/14 (金) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
内容的には燐光群の今までの演目のような社会問題を扱っているイギリスの作家の翻訳劇である。燐光群40周年の記念公演という。もうそんなに年月がたったのかと感慨もある。
いつもの正邪明白、立場明白の戯曲ではなくて、一頃よく上演されていたインフォメーションドラマ、のタッチである。そういえば、坂手の初期の作品は、よく考え抜いたこの手の作品があったな、ト思い出す。「天皇と接吻」「海の沸点」、多作の作者だからすぐには思い出せないが、フレッシュな視点から現実に発言するドラマだった。しかも見ていて面白い。
今回の作品も、演劇激戦区の英米市場の作品だけに、都市開発問題を扱っていてもなかなか手が込んでいる。ニューヨークの都市計画を強引に推し進めた官僚の功罪を問うドラマである。1920年代後半、大恐慌の前、この官僚(大西孝洋)が、利用できる政治家(川中健次郎)や腹心の部下(秘書、技師・((竹山尚史)大健闘)を、自己の構想のママ使い倒して、平民の幸福のために自動車社会をスムースに実現できるよう近代的な都市計画を実現していく。ここまでが前半で、後半はそれから30年(1950年代後半)。官僚は、下町改革に取り組むが、ヴィレッジの多様な住民の反対に遭って挫折し、腹心たちも離れていく。
関東大震災後の後藤新平の改革はどうだったかと問うようなもので、大都市の住民にはどこでも共通する問題をうまくすくい上げている。最後に、ヴィレッジは現在NYで住むには最高級住宅地になっている、というオチがついている。
大都市住民とその環境整備の公と私を巡って、現在も大きな問題を抱えた都市問題を多角的に扱っており、一つ一つの論点を巡っても、限りない議論が生まれる。そこをあまり一方的な視点に落ちず、また、日本ではよくある人情話に落とし込まず、2時間20分、休憩なしで押し切った。多面的な情報を仕組んだ戯曲のうまさが第一の見所である。
燐光群の俳優たちも初期からの人たちも多くこう言うドラマには慣れていて、ソツはない。しかし、いつも感じることだが、役が見物が楽しめるように膨らまない。必要ないと思っているのかも知れないが、秘書の役なんかもっと面白くやれるのに、と思ってしまう。せっかく森尾舞という技術、ガラ抜群の女優を呼んできているのに、これでは勿体ない。