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『ミネムラさん』

『ミネムラさん』

劇壇ガルバ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

何だか不思議な世界に迷い込んでしまったという感覚に包まれた舞台でした。
あとからあれは何だったのかといろいろと考えさせられるスルメ的な作品だと思いました。

かげきなデイリープレイス

かげきなデイリープレイス

演劇集団イヌッコロ

ザ・ポケット(東京都)

2024/09/18 (水) ~ 2024/09/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ヤクザが演劇をする、その過程で起きる勘違い、誤魔化し、すれ違いなどを面白可笑しく描いたシチュエーションコメディでありスラップスティックコメディ。
設定は違うが、何となく実践記録を基にした「野球部員 演劇の舞台に立つ」という映画、舞台化もされているを連想した。訳あって 嫌々ながら始めた演劇、しかし成し遂げようとする過程で生まれた感情、仲間意識が…そんな成長譚でもある。

なぜヤクザが演劇をするのか、その突拍子もない理由は任侠の世界らしい。勿論、自分たちがヤクザということを知られてならないのは、他のキャストやスタッフが怖がること、興行に悪影響 というか出来ない。それでも裏稼業の人間ということを隠し、いろんな噓をつき通す。公演の日程・場所は決まっており、もはや逃げられない状況に追い込まれ…。

舞台は犬山町にある犬山集会所の一室。演目は「くれないの お雪」(?)、その主役を演じる<ゆうな>という女優の存在が肝。場面によって爆笑・失笑・苦笑など、笑わせ方が違う。そこに演劇集団イヌッコロの観客への溢れるサービス精神を感じる。それだけに活動休止は残念だ。
(上演時間1時間35分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、奥の壁に犬山集会所まつり(10月5日)のポスターや絵画が飾られ、置台には電話。上手は出入口、下手に黒板。中央の大部分はスペース(素舞台)。

ヤクザが演劇をする、実は親分の行きつけの飲み屋(スナック)で贔屓にしている女 ゆうなを主演にした舞台興行をする。そのため若頭 安藤(佐野瑞樹サン)が選んだのが稲葉と氏家。まったくのド素人、イヤイヤ舞台稽古を始めるが…。そして何故か若輩の原も加わるが、演劇だとは知らない。そこで殺し屋修行(にしては緩慢な動き)と嘘をつくが、さらに本当の役者や集会所の管理人も巻き込んでの大騒ぎ。

始め、台詞覚えの場面では棒読みで、感情も入らず 動きもぎこちない。そして いつの間にかミュージカル仕立ての演劇になり、ハードルがどんどん上がり 歌やダンスも覚えることに。演出家 真田が ゆうなに好意を抱き、個人的に食事等に誘う。ミュージカル振付担当の甘利が、この世界はそんなものと自嘲する。しかし段々と演技らしくなり、という成長を見せる。そして舞台という虚構とは別に、本物の殺し屋が潜み親分を狙って というドタバタが重なる。

コメディとしての面白可笑しさ、それを観(魅)せる歌・ダンス・アクション、更に掃除道具を楽器にしたパフォーマンスなど、全てを舞台上に乗せて楽しませる。勿論、始めの未熟さ、稽古の大切さ、舞台の面白さといった段階がしっかり描かれた成長譚。それは1人ひとりの成長であり、仲間を思いやるといった繋がり、まさに演劇公演のバックヤードを思わせる。
次回公演も楽しみにしております(活動再開を願っております)。
かげきなデイリープレイス

かげきなデイリープレイス

演劇集団イヌッコロ

ザ・ポケット(東京都)

2024/09/18 (水) ~ 2024/09/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

快調なテンポで進む小気味好いコメディ。本公演をもって活動休止とは本当に残念。

『ミネムラさん』

『ミネムラさん』

劇壇ガルバ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

3つの物語を纏めたストーリーで、私には難しいというか・・正直分からなかったです。
でも、何だか面白いし怖いし、謎過ぎる不思議な舞台でした。
何とも言えない独特の世界を過ごせました!

『ミネムラさん』

『ミネムラさん』

劇壇ガルバ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

「3つのお話が交錯する舞台」と知らず、なかなか内容を理解するのが難しかったです。
特に、日本語が通じない人たちの会話についていけず、心情の語りで補う情景に戸惑い、
ミネムラさん、いったいどーなってんの?と疑問符を抱えながら観劇しました。

予習が必要な舞台だったようで、予習せずに伺ったことを反省しました。

『ミネムラさん』

『ミネムラさん』

劇壇ガルバ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

3人の劇作家の物語を1人の演出家(西本由香)がまとめ、<ミネムラさん>という1人の女性を紡ぐ。当日パンフ(記載順)によれば、3人の作品は「フメイの家」(作・細川洋平)、「世界一周サークル・ゲーム」(作・笠木泉)、「ねむい」(作・山崎元晴)で、時間軸を10年間隔か もしくは交錯させるという技巧的な構成だ。この公演自体が実験的なもので、その面白さは観客の感性に委ねられている。

作者が違うから劇風も異なるはずだが、そこは上手く調整し統一感は保たれている。と言ってもオムニバスのような紡ぎ方で、時間軸を違えることによって違和感を抱かせない。1人の女性の多面性、それを自らの状況・環境の変化で観せる と同時に、他の者(第三者)の目を通して描き出す。その人間観察を少しコミカルに表現し、内省とか客観的という難い面を和らげている。

少しネタバレするが、舞台美術が秀逸だ。有効ボードを上手く使い<家屋>もしくは<家庭>といった居場所を現す。そのボードには木目があり温もりを感じさせる。勿論 場面に応じた音響・音楽は、不穏や優しさを表現するといった効果的な役割を果たす。全体的に不思議・空想的な感覚の話だが、なぜか観入ってしまう魅力がある。
(上演時間1時間50分 休憩なし) 

ネタバレBOX

有効ボードを可動できるよう 幾つかに切り分けており、そのパーツの組み合わせの違い 変化によって、色々な情景・状況を作り出す。先にも記したが木目がきれい、しかも自分の席からは<龍の頭>のようにも見えた。後ろは暗幕で囲っており、パーツの組み合わせによって窓を作り、照明を当てると不思議な世界が…。それと幾つかの箱馬が置かれている。

物語は、警察に探し物(者)の捜索を依頼し、家の中を動き回る警察官と浮浪者?探しているのは手紙なのか、その差出人本人なのか といったチグハグな会話から始まる。受取人ヤマザキは差出人の名前を思い出せない。「ミ、ミネ・・」と記憶がボケるようで、早くも不条理の様相が見える。場転換しミネムラさんの家。ここにヤスコという女性を住まわせ、彼女が就職できるまで面倒を見ている。ここにはミネムラさんという”普通”の女性が描かれている。尤も”普通”とは を追求しだすと難しい。更に場転換し、結婚し赤ん坊もいるミネムラさん。年の離れた夫の連れ子だ。実は妹が同居しており、精神を病んでいるような。しかし 本当に病んでいるのは 妹なのかミネムラさんなのか、混乱・錯乱そして狂気な世界。

ミネムラさん(心)の旅は、現実なのか空想の中か、その混沌とした不思議世界が公演の魅力。この人は こういう人と特定/断定出来ない。その人には色々な面があり、その多面性によって捉えどころ(人物像)が違う。勿論 他者(相手)との付き合い方や深度によって印象は異なる。もっと言えば自分が知らない自分(第四の窓)的な感じも受ける。

一般的なストレートプレイ公演とは趣が異なり、場面の繋がりが唐突というか歪に感じられるが、そもそも3人の作家の作品を1つにして描いている。その発想にどれだけ順応できるか、見巧者向けとは言わないが 手強い公演ではある。
次回公演も楽しみにしております。
『ミネムラさん』

『ミネムラさん』

劇壇ガルバ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/09/19 (木) 14:00

会話の内容も面白いし、セリフのテンポもよく、舞台に引き込まれました。面白かったです!

『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』

『A Number―数』『What If If Only―もしも もしせめて』

Bunkamura

世田谷パブリックシアター(東京都)

2024/09/10 (火) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

SFは最も芝居にしにくい領域ではないだろうか。ファンタジーと違って、サイエンスだからどこかで現実とつながっていないと、只の絵空事になってしまう。イギリスの人気劇作家のSF短編二編。二本合わせて、藝ナカ2時間もないのに、11000円の席はもちろん三階席まで売れて世田谷三、四十代夫人を主に満席。小説の方は特に売れるベストセラー以外のSFは売れ行き不振というのに、こひらはチケット争奪戦である。
最初が、「What if it only(もしも もしせめて)」で25分。時間未来もので、一人の男(大東駿介)が、どうなるか解らぬ未来に出会ってみる、という話。突然予想もしないドアの陰から異形の人物が現われたり、天井から老人が現われたり、理詰めではない(いや、あるのだろうが解らない)世界を幻のように体験する。次の「A Number(数)」は複製人間が可能になった世界で、息子(瀬戸康史)のいのちを再生した父(堤真一)が複数の息子に会うことになるが、その世界は父の意のごとくならず、という教訓めいた話である。
見どころは、マッピングを使った舞台で、この劇場の高い天井に向かって上下する四角い升のエレベーターのような舞台が設定されている。舞台は簡素な一人部屋だったり(もしも)、応接セット(数)だったりするが、劇の前後では舞台ごと、さらにアンコールでは、急速に天井に向かったり、下がったりする。そこは現実にはなにも起きていなくて、マッピングによって観客は映像を見ているだけなのだろうが、この舞台の内容には非常に上手くマッチしている。後で考えれば、だからどうと言うことはない、と言うところも洒落ていると言えば洒落ているのだが、SF作品にありがちの狐につままれたような感じがよくできていた。
役者は人気者揃いで皆神妙に務めてはいるし、客もみなさんご満足のようだけど、これで11000円?良いんですか?

失敗の研究―ノモンハン1939

失敗の研究―ノモンハン1939

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ノモンハン事件は戦後も長く一般的に知られることが少なかった事件で、そういえば、報道されたのは70年代だったか、と思いだした。その後、史実が明らかになってみると、事件は、中国北西部の砂漠で39年に起きた日ロの衝突で、ここで、日本陸軍は初めて装甲陸軍の威力から大陸戦争の難しさを知り、以後、陸軍は手薄の東南アジアに進出、難しいところは海軍任せでもっぱら内部抗争に明け暮れて、上層部全員が43年には負けると承知してからも二年間、国民はほっておかれ、大きな市民の犠牲を出したあげく敗戦を迎える。という日本現代史は概ね日本人は誰でも経験し、若い人も知ってはいる。しかし、この事件が、テストケースになり、関係軍参謀らは口を拭って終戦まで無事な戦線を廻ったと言うことはあまり知られていない。そのあたりのリアルな歴史事実のスジ売りの復習が第1幕1時間半で、ここは、どうと言うことはない。古川健らしくなってくるのは2幕からである。
物語の枠取りが70年代の発掘記事掲載する雑誌編集部にとられていて、始めての女性記者の登場と、事件の日本的構造は今の時代にも伝わっていることを巧みにつなげている。
この芝居に主演の女性編集者(藤井美恵子)が「男性は戦争の話になると生き生きする」という台詞があって、古川健らしい上手い台詞だと思ったが、ジェンダーをからめて今の時代の戦争にまでふれているところがさすがだ。最後の、日本が戦後80年、先進国やG20も含めて唯一銃を取っていないことも指摘していて、こういうところはするどく的をえている。
このドラマが描いた事態への批評はとてもこの場や、一夜の芝居見物で果たせるものではないが、それでも、こういう無謀な歴史の事実を思い出すことには大きな意義がある。例えば、昭和二十年代に高市早苗が今と同じ意見を言えば殺されかねない国民の怒りの対象になっただろう、そういう民族の底辺の記憶にまで達しているところが古川健らしさである。
この舞台の良いところは一点ここだけで、スタッフ・キャストも手を抜いたわけではなく全力を尽くしたのだろうが、全般には情報を伝えるのに忙しく、チョコレートケーキの終戦シリーズのような現代劇としての成熟に乏しかったのはやむを得ない。この劇団としては
大きめのサザンシアターだがやはり客席は薄い。失敗の研究、というのはなかなか出来ないものではあるが、60年も続いたという劇団ならでは、と言うところもあって欲しい。今回は古川健を、とにもかくにも連れてきて、ノモンハンを話題にしたたことを評価する。


9月の滂沱

9月の滂沱

KAIGYAC STAGE

シアターシャイン(東京都)

2024/09/18 (水) ~ 2024/09/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

シリーズ3作目。何やらSPEC的な方向性になってきたのかな。上演時間が1時間ではちょっと消化しきれない気がします。悪くはないのですが。

ニルバナナナノニ

ニルバナナナノニ

発条ロールシアター

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/08/29 (木) ~ 2024/09/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

河原のダンボール(&ブルーシート)ハウスで暮らすホームレスとその周辺の人々が織り成すドラマ。
登場人物とその関係を一通り見せてからの後半、何人かの生き方というか矜持というか「何を大切に生きているか」が語られるのは哲学?みたいな。
その信条が理想論的だったり、全体的に説明不足な感があったりしないでもない(しかし想像で補える)が、95分の尺に収めたことを考えれば妥当か?
また「旅立ち」のラストに宮沢賢治の「風の又三郎」を漠然と連想。

球体の球体

球体の球体

梅田芸術劇場

シアタートラム(東京都)

2024/09/14 (土) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

全体的に現代アートみたいな作品ですね。話自体は割と社会派な感じですが。

許し

許し

avenir'e

新宿眼科画廊(東京都)

2024/09/14 (土) ~ 2024/09/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

紙のチラシを作らなかったらしく、直前まで私も知らなかったが、面白そうな企画(戯曲も)、役者も巧そうだし、という事で出かけた。
イタリア人の名前の作者による、ちょっと皮肉の効いた「海外戯曲」という感じだったが、路上で久々に出くわした家族同士の辛辣でこれはハートフルな話になり得ないと判るやり取り。ある真相に導かれた結果も因果応報だが不条理劇の匂いも残す。
役者が巧く、独特な世界観を成立させていた。
ふらりと出向いたにしては面白かったが、小さな劇場とは言え客席の少なさには「勿体ない」と呟かずにはおれぬ。

かげきなデイリープレイス

かげきなデイリープレイス

演劇集団イヌッコロ

ザ・ポケット(東京都)

2024/09/18 (水) ~ 2024/09/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「ヤクザが演劇!?」そう、ヤクザが演劇をしなくてはならなくなる話だというのは事前に分かっているのに、ヤクザが演劇をしなくてはならなくなる冒頭からもう可笑しくて仕方ない
分かっていてもこんなに笑わせるなんて、これから相当面白くなるだろうな。と膨らむ期待感
その期待感をも軽々と越えてくる強烈キャラ達があれよあれよと妙ちくりんな状況へ持ち込んでいくので、もう気持ち良いくらい笑ってきました
ダブルコールの予測をしていなかった役者さん達の様子は微笑ましい光景でしたが、これは絶対になりますよダブルコールに
公演初日の素晴らしいスタートダッシュ
コリッチのページには今のところ明記されていませんが、今回の公演をもって演劇集団イヌッコロとしては活動休止になるとの事、なんて勿体ない!
ただ佐野瑞樹さん主催sitcomLabでこの系譜を継いだ公演は予定されているそうで、こちらは朗報

発光体

発光体

きっとろんどん

演劇専用小劇場BLOCH(北海道)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/01 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最高の演劇

椅子の見えないイス取りゲーム

椅子の見えないイス取りゲーム

劇団生命座

北本市文化センター大ホール(埼玉県)

2024/09/14 (土) ~ 2024/09/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

とても面白かったです。
人間に不適格者・適格者の区別はないと思いつつも、AIによる人の選別に踏み込んだ今の世相を反映した設定。
そうして選別された不適格者が生き残り、適格者がパンデミックで死に絶えてしまうという逆転の結末が皮肉でもあり、見事でした。
生き残った人々らがこれからどうやって世の中を作るのか?気になる終わり方もまた良かったです。
日本ではここ数年、「勝手に決める」政治が幅を利かせ、世の中は急速に悪くなってないでしょうか。
「不適格者」を許さない社会、もしくは「選ばれた者」だけがルールである社会がどんなに恐ろしいものであるかを、この舞台は暗示しています。
「不適格者は断捨離」というルールが支配している社会で、アパートの気心の知れた住人が自死する話。一家の主である男性が不適格者と判定され、苦悩した結果、不適格者で匿われている幼い娘さんを治安部隊に通報し、母親の努力もむなしく死んでしまうという筋立てもありました。母の叫びが、母娘の絆は不変であることを示し、涙を誘いました。
「見えない椅子」という何も見ようとしないただ椅子に座り続ける人々を舞台の演題に設定したのも面白い発想でした。
椅子に座り続ける人々は、冷酷無慈悲な様相も呈しますが、そもそも不適格者は断捨離というルールで社会を締め付けている社会体制(AI)が原因です。舞台ではこのルールを覆そうと訴える人や抵抗する人もいますが、見ている方からすると儚い抵抗のような感じでした。しかしながら、彼らが命を張って訴えたことで自分たちと変わらないふつうの人がいることを実感することができました。
ラストの犠牲になられた方が大家の周りに集まり、静かに迎えに来るシーンがとても美しかったです。名前のない国民の方々の演出も本当に素晴らしく、あっという間の1時間50分でした。次の公演も期待しています。

失敗の研究―ノモンハン1939

失敗の研究―ノモンハン1939

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/09/18 (水) 14:00

座席1階

結構ハードな会話劇である。歴史や戦争に関する劇作では名高い古川健らしい緻密な物語だった。テーマは「なぜ、戦争を止めることはできないのか」。歴史上、最も困難であると思われるこの命題に若き女性編集者が挑んでいく。その材料となるのが、太平洋戦争開始直前の1939年にあったノモンハン事件だ。

劇中でも出てくるが、ロシア軍と衝突した現場の国境地帯は湿地と草原が広がるエリアで、軍事的な要衝ではない。「どうしてこんな場所を巡って」と後付けでは感じるが、それだけにこの戦闘で失われた両軍の何万もの命は「何のために」というむなしさが残る。日本軍にとってはもちろん「失敗」であったが、当然、ロシア軍にとっても「失敗」であっただろう。
戦争の教訓を学ぶ、特に先の戦争での「失敗」を学ぶことは平和な未来を築くには不可欠だ。特に日本では、失敗を学ぶという取り組みに欠けている。劇中でも当時の作戦参謀の生き残りが語るが、辻政信というエリート参謀が暴走した、誰も彼を止められなかったのが失敗だったと一定の結論が出されている。
だが、なぜ辻を誰も止められなかったのか。それは、勇ましい作戦を「無駄だ」と反対する、戦わない選択をしようという主張を周囲ができなかった「空気」なのではないか。戦わないとの決断はひきょう者の考えであり、日本男子としては、天皇の軍隊としてはあり得ないという空気だ。辻を止めようとして自らの出世を棒に振る恐怖もあったであろう。でも、戦争を止められない本当の理由は、周囲の空気を読んで行動する同調圧力ではないのか。

この舞台では、失敗の教訓は同調圧力だと匂わせる場面もあるが、はっきり言っていない。関東軍の暴走、陸軍の東京の司令部が何もしなかったこと、勇ましい進軍のニュースを垂れ流したメディア。それを推した国民。いろいろな要因がせりふの中で指摘される。だが、そうした要因ももちろん「失敗」なのだが、失敗を失敗だと言い出せない同調圧力が関東軍にあり、陸軍にあり、国民にあったからだ。だから、その直後、外交的な失敗とされる日独伊三国同盟につながり、国を破滅させる「失敗」となる太平洋戦争につながっていく。ノモンハンを止められる空気がすこしでもあれば歴史は変わったかもしれない。いや、もっともっと前、明治維新から列強に追いつこうと富国強兵を重ねてきた日本が、欧米列強に伍するとしてアジアの国々を次々に侵略していくのを当然だという「空気」を変えられていたなら、というところにまで行き着く。

古川らしい脚本であったが、で少し物足りなさも感じた。もう一つ、演出に招かれた鵜山仁は客席の目の前とか舞台のあちこちに戦車や軍艦の模型を配置して、「何が起きるのだろう」と期待を抱かせたが、結局これらの模型は装飾のような感じで終わってしまったのは残念だった。

都合

都合

こわっぱちゃん家

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2024/09/12 (木) ~ 2024/09/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

こわっぱちゃん家のお芝居は身近に起こり得る問題を、ある意味えぐるように掘り下げながら人に寄り添う愛で描き、明日に立ち向かう勇気をもらえるお芝居です。緻密に書かれた本はつっこみどころもなく、また、分かりやすく書かれてもいます。今回の観劇で5作目かな。オススメですよ!

魚雷モグラ’24

魚雷モグラ’24

ウラダイコク

みらい館大明ブックカフェ特設ステージ(東京都)

2024/08/02 (金) ~ 2024/08/04 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★★

昨年に引き続き、配信で拝見(カステラチーム)
劇場ではなく、決して広いとはいえないスペースで描かれるのは、終戦が目前に迫っていた長崎の町。
当然、そこで発生する悲劇など、まだ知る由もない女学生たちが、薄暗い地下の穴倉で魚雷を作っている。
そしてこんな状況の時であっても女の子たちはおしゃべりに夢中になり、淡い恋心もあれば友達との諍いもあって、普通に青春を過ごしている。
そんな女学生たちを演じる若い役者さんたちが、これまた懸命に演じている姿が、登場人物たちの懸命さとリンクして、思わず感情移入してしまう。
その懸命さに嘘がないのが心地よく、また可愛らしい。

こういう物語はどうしても説明をしないといけないことが多くて、説明台詞が多くなるのだけれど、それを全員のムービングや台詞(声)を使って無理なく見せる演出が、毎年の積み重ねを感じさせる。

たまに他の公演で、小道具だけをマイムにしているところがあるが、これははっきりって手抜きだと思う。
やはりマイムでやるのならこの作品のように、パワーマイムとして成立させないと見る側の想像力が広がらない。
そして、それら状況説明の台詞がとても詩的で美しい。
美しい言葉と、救いようのない事実との、どうしようもないアンバランス。

この作品に込めた作者の思いを受け止めた観客は、そこで切なくてたまらなくなる。

石を洗う

石を洗う

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2024/09/07 (土) ~ 2024/09/19 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★


いわゆる「朗読劇」を文学座らしく、演劇的にやってみると、こうなるという企画である。悪態をつけば、手間暇かけず、手軽に稼げて、役者は台本は覚えなくてもいい,朗読会はコロナは以後はかなり流行ったが、世間が落着くと減っていった。しかし、朗読的な演出で、さらに演劇的リアルをもと深めることが出来るのではないか、という考えにも一理ある。ことに文芸の作家は、舞台的な感情表現は安っぽいと思い、地の文に拘泥する作家も少なくはない。舞台化、朗読上演を、映画化、テレビ化と同様に捉えられているが、そこは違う。
朗読をあまり深く考えにずに俳優の簡便な顔見せとして興行した劇団も少ないが、さすが文革座、この公演はかなり考えた上で舞台に乗せている。
主な登場人物はそれぞれ配役する。
俳優は、配役された役をシーンで演じるだけでなく、本人の動きも、客観的記述の地の文も読む。演じると読むという二つの役割を果たす。
シーンを設定する舞台は,それぞれ簡単な大小の道具で抽象的に示される。例えば、満員電車に乗っている登場人物はつり革だけを手に揺れるし、周囲の人物は半透明の白いビニールのレインコートをかぶって、中の一人は地の文を読む、というような趣向である。驚くような仕掛けはなく、物語も人物たちもベタ日常的で平凡である。
戯曲は地方作家の新作による過疎部落人間模様で、前半の1時間半は,その村から都会に出て定年寸前になっている男の都会生活。ほぼ同じ長さの後半は、ムラが主舞台で、ムラ出身になりすました青年が現われたり、人が逝き、過疎が進むムラの日々。どこかで聞いたような話ばかりだが、実際に俳優が役を演じ、地の文の解説も行届き、邪魔ないならないどころが、良い感じで語られると,こういう舞台にはすれっからしのアトリエの客も3分の1くらいはウルウルしている。
都会の路地裏に登場する白い野良犬はスチールの映像でスクリーンに出る。この辺は幻灯劇のような使い方である。舞台は不器用を装って、非常に上手く企まれているのである。まぁ、死せる王女のパヴァーヌが出てきたりするところが唯一、文学座の衒学的なところが鎧の下からのぞいたというところか。
この朗読のスタイル、もう確立している朗読劇業者の声優作品とは別の演劇的可能性も残されているように思う。文学座は言葉の技術が出来ているから、どこの劇団でもやれるわけではないが。
演出。五戸真理恵。




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