最新の観てきた!クチコミ一覧

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ご不幸

ご不幸

江古田のガールズ

「劇」小劇場(東京都)

2016/08/10 (水) ~ 2016/08/21 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/08/16 (火)

2つのバージョン中、『白の人々』を拝見。

不動産屋を訪れた客。なぜか訳ありの物件を探しているらしい。不動産屋は、事故物件ばかりをまとめたファイルを開いて、特に問題ありの物件について、そこで何があったか説明し始める……。

ひとつめの事件は、ある劇団の主宰が住んでいたときの話。訪れた数人の劇団員とのやり取りが軽妙に進む中、奇妙な隣人の話になって……。

途中から、ゾクゾクするような緊張感が漂ってきて、話の運びに引き込まれ、登場人物が怖がる様子に違和感なく同調できる。しだいに見えてくる隣人の正体(!?)と結末、そしてラストに登場した年配の女性がふいにニヤッと笑った瞬間、声を上げそうなくらい怖かった。

その笑いと、メインのストーリーと別に登場してくる、人々の目には見えないらしい(霊感の強い女にだけ見えている)黒衣の男が、次の話へと繋がっていく。

そして、2つ目の事件。さきほどの部屋で暮らすミュージシャン崩れの男と、その誕生日に集まったガールフレンドや友人カップル。いつの間にか、常軌を逸して干渉してくる大家の話題になり、すぐに大家本人も姿を現して。

大家の奇妙な振る舞いに翻弄される入居者やその仲間とともに、観客も固唾を飲んで成り行きを見守った。

なるほど、人間の怖さについての物語だったなぁ、と思う。

「黒の人々」は、この話の続きになっているとのことなので、できれば両方観たかったな、と思った。

艶情☆夏の夜の夢

艶情☆夏の夜の夢

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2016/08/04 (木) ~ 2016/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/08/10 (水)

8人の女優が魅せる『夏の夜の夢』。夏の夜の開放感と祝祭性をふんだんにまとった、艶やかなシェイクスピア。歯切れのいい演出とパワフルなキャスト陣の活躍で、盛夏にふさわしい濃密な時間を過ごすことができた。

出演者が発表になった時点で、岡田あがささんのティターニア、七味まゆ味さんか深谷由梨香さんのパック……などが頭に浮かんだが、予想はまったく外れていた。しかし、意外に感じていたキャスティングも実際に観てみればぴったりハマって、見どころの多い舞台となっていた。

たった8人での上演なので、(パック役の千葉雅子さんをのぞいて)アテネの人々と妖精たちと職人たちと、3つの役をそれぞれ演じていく。

大公とハーミア役の役者さんがオーベロンとティターニアをも演じるパターンは割に見かけるけれど、それをひとつひねって、大公を演じた岡本あずささんがティターニアを、ハーミア役の七味まゆ味さんがオーベロンを演じるのもオール女性キャストらしい配役で面白かった。

千葉雅子さんの飄々としたパックの存在感、深谷由梨香さんの演じるボトムのチャーミングさ、岡田あがささんのやたらイケメンなディミートリアス、葉丸あすかさんの可憐なヘレナなど、バリバリに存在感のある女優陣に、初々しさを感じさせるライサンダー役の長尾友里花さんとパンチの効いたハーミア役の福井夏さんの健闘も印象に残った。

麦とクシャミ

麦とクシャミ

ホエイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/08/06 (土) ~ 2016/08/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

初めて拝見する団体ながら、過去の作品に対する観劇仲間の感想などから、きっと好みに合うだろう、と期待していた。そしてその期待以上に好みの作品だったと思う。

歴史に題材を取つつ、人の暮らしに寄り添うように進んでいく物語は、大地の変動と戦争による時代の激動の中で、人が生きていくということを確かな手応えで描き出す。それぞれの理由でその土地に暮らす一人ひとりのお国言葉が、彼らの背景に厚みを加える。

火山の噴火により大地が鳴動し隆起していくという稀有な事態に加えて、戦争末期であるという非常事態。そんな中でも人々は山菜を採り、花火を見上げ、サイダーを飲む。時代に翻弄され、それでも生き抜こうとする人々の強さが愛おしい。

鳴動し続けている火山を、小さな郵便局の局長さんが淡々と観察し続ける。彼の息子は戦地から戻らない。満州帰りの軍人が広島弁で語った戦地の様子と、彼の故郷に落ちた新型爆弾のウワサ。

女たちや男たちの、キレイごとでない喜怒哀楽が笑いを誘いながら、しだいにそれぞれの切実な想いを浮かび上がらせていく。

声高にメッセージを語るのではなく、平凡な人々の暮らしぶりを丁寧に描きながら、それを通して感じられる明確な意思が全編を貫く。温かみのある骨太な物語が、ある種の古典めいた軸の強さを感じさせた。

【ご来場ありがとうございました】雑種 花月夜

【ご来場ありがとうございました】雑種 花月夜

あやめ十八番

インディペンデントシアターOji(東京都)

2016/08/02 (火) ~ 2016/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/08/03 (水)

神社の参道に連なるお団子屋さんを舞台にした、やわらかな土地の訛りが美しく響く物語。三人姉妹のそれぞれの個性やお母さんのチャーミングさ。蜜に想いを寄せる梢の、電話での母親との温かいやり取り。蜜の幼馴染である鵜澤の言葉にしきれない誠実さ。兄の死に際したときの久保木の表情。ミュー研メンバーとの懐かしいやり取り。劇中劇での、昔の洋画の吹き替えめいて不自然なくらい歯切れのいい台詞。

登場人物の一人ひとり、劇中劇の場面のあれこれ。語り始めたらキリがない。

しかも今回はミュージカルということで、上手な方の歌はもちろん、場面やキャラクターの雰囲気に合わせた素朴な歌声も、さまざまな場面で演奏されるたくさんの楽器も、雨戸の開け立てやカエルの声などの効果音を生でつけていく様子も、それぞれに物語を彩っていた。

パンフレットや台本にも歌詞が記されていて、読んでいると、場面とともに自然にメロディが浮かんでくるのだ。

たくさんの歌と楽器に彩られた物語は、土地の訛りや華やかな稚児行列や剣舞、お囃子の響きなどに支えられて、ひとつの歴史を持った架空の町を浮かび上がらせていく。

訛りも桜の咲く季節も違う土地から来た人にも、他所の土地に行ってしまった人たちにも、そして小堀屋の人々にも季節は巡り、また新しい物語を連れてくるのだろうか。

あの町で、また彼女たちに出逢える日が待ち遠しい。

泣く鯨、黒点は夜の側にて

泣く鯨、黒点は夜の側にて

遠吠え団

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2017/01/07 (土) ~ 2017/01/08 (日)公演終了

正直、ストーリーもテーマも分かりませんでしたが、独特の雰囲気がありました。役者さん達は、長く難しい台詞をこなしていて頑張りが伝わってきました。私には分からない舞台でしたが、分からない人が多いだろうなぁとも思いました。何とも言い難いので星評価は付けませんでした。

夜明け

夜明け

EPOCH MAN〈エポックマン〉

ひつじ座(東京都)

2017/01/06 (金) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/08 (日)

前作『鶴かもしれない』での演出技法を使いながらの一寸切ないストーリー。前作ほどのインパクトはないものの、彼の「巧さ」が印象的。

うちの犬はサイコロを振るのをやめた

うちの犬はサイコロを振るのをやめた

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2016/07/23 (土) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/30 (土)

未来を観ることができる犬のたどった数奇な運命と彼が出逢った一人の少女の物語なんだけど、これが、ファンタジーめいたじんわり温かいストーリー……になんかどうしたってならないのだ。

その犬 ゴルバチョフが、未来を観ることができるようになった経緯は物語の中にあるけれど、彼が人間の言葉をしゃべれるということ自体はもうそのまま受け入れるしかないし、彼の仲間となる連中が、なんだこれ~!という奇妙なキャラクターたちだ。

けれど、そういう破天荒な外見から立ち上ってくる作品の骨格は、無私の愛情を描いた温かい物語だった。ラストでゴルバチョフが観た(未来の)シヅ子があまりにもキレイで涙が出そうになった。破天荒で馬鹿馬鹿しくてくだらなくて、でも、ピュアでセンチメンタルな、そういう舞台。思い切り楽しませていただきました。

insider

insider

風琴工房

Half Moon Hall(東京都)

2016/07/21 (木) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/29 (金)

シャープな、ときに笑いを含んだテンポの良い会話で、前半はバイアウト・ファンドなどの用語や意味と、登場人物の人となりを観客に伝えていく。中盤から後半にかけては、調べる側と調べられる側の緊迫したやり取りで、出来事の背景や重さを感じさせる。

証券取引等監視委員会の特別調査の目的は、インサイダー取引の犯人探しだが、マチュリティの中の誰がそれをやったのか……という謎解きは、実はさほど難しくない。

それよりも、なぜ彼がそれをやったのか、というところに焦点がある。いや、なぜ、というより、どんなふうにそこへ追い詰められていったのか、という方がいいだろうか。動機めいたものは、実はさほど詳しくは語られない。少なくとも自分はそういう印象を受けた。しかしその一方で、この物語そのものが、彼がそれをしてしまうことになった理由を語っているのだとも思えた。

ストーリーが進む中で、前作の場面が何度もインサートされる。予想以上に続編であることを意識した造りだった、と感じられた。

喰うか喰われるか、という印象もある金融の世界で、ある種の理想のもとに会社を立ち上げていった前作の高揚と、いつの間にか歯車が狂ってしまった今作の中の彼ら、いや彼と。

いったいなぜ……。観客席にいてさえ、何度も何度もその問いに立ち戻る、そういう物語だったのかもしれない。

たたかうおとな

たたかうおとな

演劇企画アクタージュ

荻窪小劇場(東京都)

2017/01/06 (金) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/01/08 (日)

ひと言"素晴らしかった!"ですね。
リアリティーな演出に感動しました⤴
もちろん、役者さん達のやりとりにいつの間にか引き込まれてあっという間に時間過ぎ終演。
ホント、いいもの観せて頂きました(^-^)

かやくごはんと煮っころがし2016

かやくごはんと煮っころがし2016

しゅうくりー夢

テアトルBONBON(東京都)

2016/07/21 (木) ~ 2016/07/25 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/23 (土)

突然の事故で死んでしまった青年と、彼を巡る人々。それぞれの関係がいつのまにかつながりあい、過去と今が結び合って、そうして、ある魂が安らかにこの世を去ることができるまでを描く物語。何度観ても泣いてしまうけれど、この劇団らしく、人が人を想う気持ちを描いて温かい。

暁の妻 凛を演じた劇団員の宮田さんの哀しみに耐えようとする笑顔や泣き笑いの表情がせつなくて、それでも彼女が笑えるようになるラストシーンに、暁と同様ホッした気持ちになった。

舞台上の一人ひとりが、確実にそれぞれの過去や未来を背負って生きている、そういう作品だったように思えた。

名なしの侍 (28日より大阪公演開幕!直前予約受付中!)

名なしの侍 (28日より大阪公演開幕!直前予約受付中!)

劇団鹿殺し

サンシャイン劇場(東京都)

2016/07/16 (土) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/17 (日)

会場を揺らす生演奏とたっぷりの殺陣で始まった物語は、音楽と笑いを散りばめた、劇団☆新感線風の時代劇……と最初のうちは思った。

しかし観ているうちに、自分の居場所や夢を追う若者の姿にウエイトが移っていく。夢を抱いて故郷を離れる数人の若者たち。戦争孤児や捨て子、肩を寄せ合うように過ごしてきたはずなのに。それぞれの運命が彼らの立場を玩ぶように動かしていく。

愛しい、大切な仲間たち。彼らが本当に求めていたものは、サムライの身分や地位ではなく、誰かにそばにいてもらうことだったのではないか。

足軽のブラス隊が奏でる旋律が、胸にしみる。

生きてくってことは、なんて寂しくてせつないことなんだろう……。そんな感傷に浸りつつ劇場を後にした。

勧進帳

勧進帳

木ノ下歌舞伎

まつもと市民芸術館 小ホール(長野県)

2016/07/14 (木) ~ 2016/07/16 (土)公演終了

満足度★★★★★

細長いステージは、ポスターの写真同様、道を表しているのだろう。関を守る側、越えようとする側。それぞれの思惑を追いつつ、物語は進む。ラップなども使ったスピーディな展開に、すり足のような和物の所作が混じる独特の雰囲気。

弁慶と富樫の命を賭けたやり取りの緊張感と疾走感、そして、越えられぬ境界を見据える哀切さをスタイリッシュに描いていた。

そこで見せるいくつかの関係が興味深い。弁慶と富樫の丁々発止のやり取り。主を守るために主を叱咤する弁慶の胸のうち。直接には目線を合わせることもない義経と富樫のある種の共感。

義経を演じた高山市のえみさんの、静かな覚悟を感じさせる凜とした美しさと、冨樫役の坂口涼太郎さんの胸のうちをうかがわせる微かな笑みが、それぞれ切なく印象に残った。

オペラ『おぐりとてるて─説経節「小栗判官照手姫」より─

オペラ『おぐりとてるて─説経節「小栗判官照手姫」より─

みどりアートパーク

横浜市緑区民文化センター みどりアートパーク(神奈川県)

2016/07/09 (土) ~ 2016/07/09 (土)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/09 (土)

権力とも富とも無縁の弱い者たちが、それでもより弱い者に手を差し伸べる。打算ではない。哀れみや気まぐれと呼ぶには真摯過ぎる。その「えいさらえい」という呼び声が、いつまでも胸に残った。

ラストは人々の歌声で終わる。その中で、神の申し子として生まれ最後には神として祀られた小栗を「偉大な俗物」と呼ぶ。これは英雄譚ではなく、ありふれた暮らしを生きる人々の中の尊い何かを描いた物語なのかもしれない。

peeeeep〜踊る小説2〜

peeeeep〜踊る小説2〜

CHAiroiPLIN

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/01/07 (土) ~ 2017/01/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/01/08 (日)

本質的にはダンスカンパニーなので一寸構えてしまっていたが意外にも楽しめた。俳優とダンサーでいうとダンサー寄りの演者さんが多く、動きのキレが尋常ではない。舞台芸術の奥深さに触れた気がする。中でも田中美甫が息を呑むほど妖艶で吃驚。‬4ステージしかないのが勿体無い。

ラストダンス

ラストダンス

国分寺大人倶楽部

シアター711(東京都)

2016/07/06 (水) ~ 2016/07/12 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/08 (金)

ちょっとダメな大人たちの、それでも精一杯だったかもしれない日々のひとつの終わり。

自分にも身に覚えのありそうな会話や展開、どこかで見たようなある種の典型みたいな登場人物たちが、妙に愛しくなる、そんなささやかな物語だった。

恐怖時代

恐怖時代

花組芝居

ザ・スズナリ(東京都)

2016/07/06 (水) ~ 2016/07/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/07/08 (金)

凄惨な悲劇を、様式美と遊び心で夏の夜にふさわしい美しい舞台に仕立てた。

浴衣姿でメイクもなし、舞台も蚊帳をひとつ吊っただけのほぼ素舞台。そういうシンプルな道具立だからこそ、キャスト陣が観せる大人の余裕と艶やかさが際立ったのだろう。

荒川、神キラーチューン

荒川、神キラーチューン

ロ字ック

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/06/29 (水) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/03 (日)

ヒリヒリするような記憶とそれにフタをするように生きている今。

小野寺ずるさんに感情移入し過ぎて、マイクを持って歌う彼女の夢を見そうな気がする。

何が人を救うのか。

明解な答えは出ていないけれど、抱え続けた想いも、すでに私の一部なのかもしれない。

郵便屋さんちょっと2016

郵便屋さんちょっと2016

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

つかこうへい氏の複数の初期戯曲をもとに、横内謙介氏が脚本を書き、劇団員の個性を生かして演出した熱い舞台。

つか作品らしい理不尽さや強引さや屈折、あるいはえげつなささえもがっつりと見せながら、主人公のセンジロウはどこまでも明るくポジティブである。

つか芝居のレトリックと同時に、そのポジティブさが物語を牽引する。

なるほど、これはつかこうへい氏へのリスペクトであり、そして同時に劇団としての扉座らしさを詰め込んだ作品なのだと思った。

げんない

げんない

わらび座

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/06/24 (金)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2016/06/24 (金)

江戸中期の見世物小屋を舞台に、平賀源内という天才と彼を取り巻く人々が、封建時代の日本で「自由」を求める姿を描くミュージカル。

キャッチーなメロディ、ユニークなダンス、アクロバット、浄瑠璃や殺陣、さまざまな工夫と見どころを盛り込んだ贅沢な舞台。

中でも主人公の源内が語る言葉が、時代を見通し、未来を夢見、進もうとする意志を伝えて、この舞台を希望の物語として観る者に印象付けた。

たたかうおとな

たたかうおとな

演劇企画アクタージュ

荻窪小劇場(東京都)

2017/01/06 (金) ~ 2017/01/09 (月)公演終了

満足度★★★★

「子供の喧嘩」よりも始末が悪い「大人の喧嘩」…【Bチーム】
子供の喧嘩によって話し合うことになった夫婦2組の壮絶な会話劇。当初は大人らしく穏やかな話し合いが続くと思われたが、大人と言えど人間である。その性格が段々と露わになり、自分自身のこと、夫婦間のこと、さらには男女という性差による感情など、錯綜し漂流するような会話が面白く描かれる。
前説であった上演時間を越えて約1時間30分。

ネタバレBOX

舞台セットは、赤い壁のリビングルーム。中央にソファーとローテーブル(その上にチューリップが入った花瓶)が置かれ、壁際に飾り棚やハンガーが配置。上手側は台所や洗面所へ通じる。下手側にソフトクッションのような椅子2つ(白と黒)

梗概…ザッカリー(9歳)がイーサンを殴打し、イーサンは前歯2本を折る怪我を負った。この”こどものけんか”により、加害者男児の両親が、被害者ロングストリート宅へ赴き、話し合いをする。被害者・イーサンの両親は、ホームセンターに勤務する父・マイケルと、アフリカに関する書籍を著す作家の母・ペネロピ。加害者・ザッカリーの両親は、多忙な弁護士の父・アランと投資ブローカーの仕事に就く母・ナンシー。両家の話し合いは、最初は良好なものだったが…。
何故か帰れなく話し合いを続けている。そうした中で、アランは製薬会社の薬品データ偽装の訴訟を抱えており、会話の途中に何度も電話がかかる。一方腹痛を起こしたナンシーは嘔吐し、吐瀉物がアランのズボンとペネロピの蔵書にかかる。
アランとナンシーは互いに無関心。マイケルとアランがスコッチを飲み始め、女性2人も酒が入って口喧嘩もヒートアップ。アランとペネロピが口論となるが、途中に電話が何度もかかりアランの携帯をナンシーが取り上げ、花瓶の中へ…。

ある言葉(台詞)や瞬間(仕草)によって、人の機微に触れ機嫌を損ねるような地雷を踏む。この限定空間(リビング)にはいろいろな所に地雷があるようだ。各人の視点から描かれており、被害者・加害者意識から妄想、感傷、軽視、認識の欠如を思わせるような場面が次々に暴き出される。その批判は相手夫婦のみならず自分の伴侶にも及ぶ。大人としての論理的な対応が必要、そんなことが垣間見えるがまた感情的な言動と行動を繰り返す。そこには子供より始末が悪い人(大人ゆえ)の本質が見えてくる。内面(性格)と外面(職業)を纏った人、その”たたかうおとな”は見応え十分。

この翻訳劇は面白いが、それを体現する役者陣の演技が硬く、その力量差もあったように思う。人物の性格や社会的地位(職業)を醸し出すような、演技に血肉があればもっと面白いかと…。

次回公演を楽しみにしております。

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