七曲り異聞・隠れ処京香
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
タイトルから何となく想像できたが、第41回公演「七曲り喫茶紫苑」の続編(1年後)。その公演を観ていても いなくても楽しめる作品。同時に劇団芝居屋のしたたかさを感じる。コロナ禍で演劇界は大打撃を受け、たぶん今もその影響はあるのではないか。その原因となったコロナを題材として劇作する。その意味で失礼ながら転んでもただでは起きない、そんな強かさを感じるからである。しかし それは重要なことであろう。
少しネタバレするが、上手に平台を積み重ねただけの ほぼ素舞台。その最小限のセット、そこにタイトルー隠れ処京香という妙味が生かされている。物語は ほんの数時間の出来事、そこに前作から引きずっていた蟠りを打ち明ける。過去(コロナ禍や駅前再開発など)と決別し未来に目を向ける といった逞しさ、まるで人生の応援劇といったところ。
さて、観劇当日は断続的に雨が降るという不安定な天気、場内はけっこう蒸し暑かった。終演後 外へ出た観客は口々に涼しくて気持良いと。芝居でも冒頭 ビルオーナーの間寛子(堀江あや子サン)と七曲り「万年青」女将の影山典子(永井利枝サン)の会話シーンで、堀江さんの顔が汗で…。何気なく汗を拭きふき演じていたが、少し気の毒だった。
(上演時間1時間35分)
憂鬱なロケット
友池創作プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
広くてすてきな宇宙じゃないか【Mura.画】
Mura.画
北池袋 新生館シアター(東京都)
2024/10/25 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
この公演は「Mura.画(ムラエ)」の本公演ではなく、初の演劇研究会2024としての公演。出会ったことのない俳優とのコラボ、脚本(成井 豊氏)の魅力もあるが、俳優陣の生き活きとした演技が物語を充実させている。その意味では本企画は成功だと思う。
初めて観る演目だが、近未来に出現しそうな世界で色々考えさせられる。同時に人を思いやる気持、その優しさ温かさは どんな時代でも変わらない。公演の魅力はテーマ性は勿論、軽快に物語を展開し飽きさせないところ。上演時間60分と短いがとても充実した内容で楽しめる。
(上演時間1時間) 【ミザールチーム】
こもれびラジオ
劇団BLUESTAXI
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
(Aキャスト)
東京から少し離れた地域にある架空の町、峰原市。閉鎖した印刷工場を改装してカフェを作り、更にその一角にブースを置いてコミュニティFMラジオ局の放送を行なっている。「こもれびラジオ」は鈴木絵里加さんが局長。場所を提供しているカフェのオーナー・小野健一氏と山口祐子さん夫妻。補助金を負担している市役所の市民自治推進課の担当・鯵坂(あじさか)万智子さん。ヘビーリスナーである菅原琴さんがスタッフ採用の面接に来ている。現役スタッフの木野雄大氏と高根沢裕貴さん。カフェ常連のお喋り好きな介護士・杉山さや香さん。朗読の番組を持つ町内の古本屋の主人・大谷朗氏。
鈴木絵里加さんは多才。いろいろ細かいネタを仕込んでくる。
菅原琴さんは何か男にもてそうな雰囲気がある。歌手でLIVE活動もしているそうだ。
お笑い芸人役の松野翔子さんは松田聖子ライクな昭和アイドルをブースでずっと無音で演っているシーンが強烈。
小野健一氏はひたすら弄られて周囲に柔らかな笑いを提供。何とも掴みようのない憎めない男を好演。
ブースに入った大谷朗氏の語る想い出が映像となって舞台上に見えてくる時こそラジオから魔法がかけられる瞬間。
是非観に行って頂きたい。
父娘旅情(おやこりょじょう)
片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
七曲り異聞・隠れ処京香
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
憂鬱なロケット
友池創作プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
おまえの血は汚れているか
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
全員名字が違うきょうだいの30年ぶりの再会、その背景にある殺人事件の真相を巡って互いが互いの今を揺すぶっていく。
タイトルに違わず、終始ひりひりした会話が続く95分。そして、その緊迫をドライブし続ける俳優陣の集中力と推進力に舌を巻く。
妊娠出産を経験しているがゆえに、どうしても「母」や「妻」である3人の俳優の視線を目で追ってしまった。みなさんすごく細やかで瞳の雄弁さを痛感。名字を変えても、会うことがなくとも付きまとう血縁と埋葬しきれない記憶、そして罪。さらに私は本作に"逃れられない母性"をもみた気がする。
血縁を繋いでいく、いかざるをえない状況が身体に起こるということ、それによって抗い難い本能に苛まれるということ。母性は輝きだけではない。夕暮れの灯りに包まれるラスト、長男の妻の台詞に一筋の光。毎度ながら、舞台美術、音楽、照明が素晴らしく、鵺的ならではの総合芸術の力を堪能!
売り言葉
平体まひろひとり芝居
雑遊(東京都)
2024/10/10 (木) ~ 2024/10/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/13 (日) 14:00
スパイラルホールでの大竹しのぶによる初演以来22年ぶりなので「何か自転車で舞台を走っていた」以外ほとんど記憶がなかったが(爆)冒頭の「あの曲」で「おや?」と思いその後すぐの言葉遊びで「そういうことか!」と膝を叩く。
以降、多彩な表情と変幻自在の演技に惹きつけられ魅入る。
そして終盤、流れ始めた時に「いやまさかあの曲?」と思ったその曲が意外にもピタリとハマっており冒頭と共に選曲にも舌を巻く。
あと、女中の語りから始まりいつの間にか智恵子になり終盤で女中に戻っている構造やラジオの臨時ニュースでその場の時代を表すのはさすがだね。
現代衣裳で見せる高村智恵子の「怨み節」、面白かった♪
ソーセージ
クオーレ
博品館劇場(東京都)
2024/10/10 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
父娘旅情(おやこりょじょう)
片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
父娘旅の珍道中だと思っていたけれど、間に差し込まれる落語とリンクするお話がメインだった。
良い意味で「思ってたんと違う!」作品。
おりんちゃんの江戸っ子ぶりが痛快で、おつうさんの懐の深さが家族をまとめてさすがだなぁ。
個人的には助さん・格さんの見守り隊が良かったです。
七曲り異聞・隠れ処京香
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
本作の前のお話になると思う、七曲商店街移転のお話から拝見し、北口でも頑張ってるみんなが見られた感じで嬉しかったです。生活の一部を覗き見するようなお芝居とのお話もありましたがまさにですね。登場人物はそれぞれみんないい人で、心暖まる優しくなるお話でよかったです。このシリーズの続きも楽しみにしています。
こもれびラジオ
劇団BLUESTAXI
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても面白かったです。前作の去り行くあなたへから拝見したと思うのですが、とても丁寧に心の動きや背景を見せてくれて、優しい気持ちになりました。悪い人が一人もいない。仲間って、故郷っていいなあと思う作品でした。心のこもった言葉伝わりました。ありがとうございました。
ドクターズジレンマ
せんがわ劇場
調布市せんがわ劇場(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
調布市の公共劇場のこけら落とし公演。劇場というより、階段付きスペースといった感じで、東京郊外に多くある地方自治体の文化施設である。小笠原響が芸術監督になってお披露目の舞台である。翻訳から出発している芸術監督だけに見落とされていた翻訳物作品を第一作として、地味なキャストで上演した。
いろいろ「見てきた」感想はあるが主なものをあげると。
この劇場で翻訳物を軸にすると(ことに、ショーなどというイギリス通好みのラインアップだと)、劇場が市民に親しまれる前に足が向かなくなるのではないかという危惧がある。
イギリスと言ってもいろいろあるが、今回のショーのような作品は、もともと大劇場のプロセニアム劇場で上演するように書かれていて、このような狭い平土間スペースを前提としていない。前世紀には商業劇場では登場人物の数まで設定するのが常識になっている(もちろん大群衆の出る芝居もあるが、このような都心商業劇場向け作品は、という意味である)中で書かれているので、よほど上演台本で地元向きに手を入れないと客は退屈する。今回は休憩10分入りで2時間35分。長い。テキストはここでやるなら、医師の方は三人位に絞ってはっきりキャラクター劇にしないと持たない。芸術監督は翻訳が多い人で、原作者に遠慮もあるだろうが、ここで、小劇場向きの新しい翻訳の在り方をやってみるというなら面白い路線だが、役者も贅沢が言えない中で原作紹介の路線は早めに考え直した方がいいように思う。確かに、イギリスやブロードウエイの周辺には日本未上演の素敵な客受けのいい戯曲がゴロゴロ放置されているが、日本の商業演劇が、向こうで当たったものを選びに選んで翻訳上演しているのには理由がある。(日本の客はなかなか当てさせてくれない)からで、芝居が良く出来ている、という単純な文人趣味の観点では劇場の興業はモタない。
付随して言うと、この劇場は劇場というより「スペース」である。道具の出し入れ、音響照明の装置、俳優の控室、客の対応窓口などとても劇場並みとは見えない。それは商業劇場だと商売だからいつの間にかそれらしくなってくるが、公共劇場のなかには、いつまでたっても劇場として機能していかないスペース止まりの劇場もどきはたくさんある。市の担当課にはかなりの覚悟と勉強がいる。外注するなら杉並区の様に丸投げの覚悟も必要である(高円寺はそれなりに成功した)
調布は都内から見に行くにも近い割にかなり不便で、現に、吉祥寺と三鷹でも一駅でもかなり差がつく。仙川では三鷹よりよりもさらに苦戦しそうだ。
調布市民と言ってもどう東京都民と違うのか、市役所職員も問われても困るだろうが、演劇を見るという行為については全然違うと思ったほうがいい。市場調査をきちんとやり直し、それにふさわしいスペースを設計することが勝負どころである。(もっとも、固定客だけを固めてしまうという方法もあるかもしれないが、ここからあまり遠くない民藝の稽古場劇場には客は足が向かない。公共劇場の「演劇」の苦しいところでもある)
今回の芝居の選択も、啓蒙的、良心的かもしれないが、演劇のフツーの客(野田流に言えば)から見れば古めかしい過去の巨匠の作品である。ショーはイギリスでは一時、司馬遼太郎並みの一国を代表する名声知名度とはいえ、作品の中身は、現在の医学や、医者の社会的地位がかつてのイギリスとは全く違っているから、今の調布市の舞台から、まるでつかめない。多分ウエストエンドでは爆笑のところがウンともスンともいわない。それは社会の違いだからいかんともしがたい。そこを見抜くのも芸術監督の仕事の大事なところである。現に世間知らずの芸術監督の失敗の具体的例がそこここにある。
芝居の中身については、俳優陣で若い芸術家のコンビ(石川湖太朗 大井川皐月)が役をよくこなしていてなかなか良かった。本も後半は今に通じるところがあり芝居の組みの良さも効果を上げているが、前半の爵位がらみの話は思い切って整理しないとテレビで「ドクターX]を見慣れている客には勝てそうもない。
おまえの血は汚れているか
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
8hのメビウス
ウンゲツィーファ
スタジオ空洞(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
サラマンドラの星空
Jungle Bell Theater
萬劇場(東京都)
2024/10/17 (木) ~ 2024/10/23 (水)公演終了
こもれびラジオ
劇団BLUESTAXI
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/10/24 (木) 19:00
ラジオの素晴らしいさが伝わる素晴らしい舞台でした!キャストも個性豊かで良かったです!
憂鬱なロケット
友池創作プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/23 (水) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしかったです。女優さんが急遽交代ということもありちょっと心配していましたが心配ご無用の舞台でした。代役された女優さん、さすがです^^ 過去と現在が同時並行に進むスタイルわかりやすくていいですね。最後、大人になった陽平として脚本と演出を手掛けられた友池氏が出てくると思っていましたがそれはありませんでしたね^^ 友池創作プロジェクトの舞台はこれで2度目ですが安定の面白さでした^^
Silent Sky
アン・ラト(unrato)
俳優座劇場(東京都)
2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
『unrato#10 三人姉妹』も『unrato#11 月の岬』も素晴らしかった。(『月の岬』は席が悪かったのでもっと良い環境で観たかった)。更に今作は朝海ひかるさんが主演。いつもながらキャスティングが絶品。場内を埋める年季の入ったコム・ファン。周囲では「こんな老後になるなんて」と、同じ境遇の者達が全国公演を追っていった話に花を咲かせる。ヅカファンの背負ったカルマは殉教者並みだ。
このラインナップに高橋由美子さんが不思議だったがメチャクチャ良かった。むしろ彼女でなければいけない位。貫禄の保坂知寿さん。竹下景子さんはここ数年で一番輝いて見えた。やはり素晴らしい作品に参加している時の女優が一番生き生きしている。このレヴェルで演れる誉れ。幾ら実力があっても発揮出来る場がなければどうしようもない。松島庄汰氏は松坂桃李に見えた。朝海ひかるさんは男っ気のない仏頂面が八代亜紀っぽくもある。そしてこの作品の持つ気品。『博士と彼女のセオリー』なんかを思い出した。通路を贅沢に使って演劇空間を客席まで広げる。朝海ひかるさんは通路を歩く姿がいつも絵になる。
牧師の娘、ヘンリエッタ・スワン・レヴィット(朝海ひかるさん)はマサチューセッツ州にあるハーバード大学と提携した女子大学で学び、ハーバード大卒と同等の資格を得て卒業。だが髄膜炎により聴覚に障害を負う。1893年エドワード・ピッカリング率いるハーバード大学天文台に職を得て毎日の天体写真を解析しデータを整理する作業に。ピッカリングは分光器の付いた望遠鏡で天体撮影する技術を開発し、宇宙を知る為に膨大なデータを集めていた。職場の上司に恒星の分類法を確立した天才アニー・ジャンプ・キャノン(保坂知寿さん)、家政婦から天文学者にのし上がったウィリアミーナ・フレミング(竹下景子さん)。レヴィットは単調な作業の中、膨大なデータからある法則を読み取る。
死ぬ程面白い。今作をどうしてもやりたかった製作陣の気持ちが伝わる。世界は変わるかも知れないよ。貴方のほんの少しの気付きで。
ちょっと、一分、一世紀。
是非観に行って頂きたい。