
トミイのスカートからミシンがとびだした話
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2025/11/11 (火) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
娼婦の流転記と云えば『にっぽん昆虫記』のような作品を想像するが今作はもっと明るく元気。岡本喜八の初期作みたいにカラッとしている。娼婦じゃなくストリッパーだが、作品の雰囲気は『カルメン故郷に帰る』か。井上ひさしの『日本人のへそ』も想起。戦後、パンパンから足を洗った女性から見える世界。
戦後の混乱期、パンパン(売春婦)で貯めた金で当時高級品だったミシンを購入、足を洗って田舎に帰る富子、通称トミイ(大田真喜乃さん)。パンパン仲間と元締めのヤクザの下っ端、流しのギターや顔馴染の刑事なんかが送別会。股ぐらでせっせと稼いだ金がミシンに化けたのだ。男の一人がからかう。「まるで『トミイのスカートからミシンがとびだした話』だな。」
空襲で両親を失ったトミイと弟(森唯人氏)、妹(田村良葉〈かずは〉さん)は提灯屋の伯父(和田壮礼〈たけのり〉氏)、伯母(向井里穂子さん)の家に世話になっていた。東京で成功して地元で洋裁店を開くトミイを皆が歓迎する。新聞記者が取材に来る。敗戦から落ち込んだままの日本を希望の明るい灯りで照らしたい。女一人で成功したニュースが皆を勇気づけるかも知れない。断るトミイだったが無理矢理記事にされてしまう。
東京でパンパンをやって金を稼いだことが写真付きで週刊誌に載る。陰口嫌がらせ落書き誹謗中傷、真面目な弟はグレ出し妹は精神を病む。伯父はトミイを性的な目で見始め、夜這いを繰り返す。この辺り『どですかでん』っぽい。地元の悪ガキの一人、中島一茶氏はカズレーザー系。
地元に居られなくなったトミイは職を転々とする。衛生博覧会で踊る。優しかったパンパン仲間の律子姉(辻坂優宇さん)の言葉を思い出す。「何処にも居られなくなったらいつでもここに戻っておいでよ。」
大田真喜乃さんは面白い女優。物語が進めば進む程魅力的に。サバサバしたトミイのキャラが立ってくる。信仰もしていないのに教会に通って祈る。『罪と罰』のソーニャなんだろうな。細かいことはどうでもいい。大事なことだけ間違えなければ。
現代ならAV女優が引退して帰郷したらSNSで情報を拡散されるような話。堅気の仕事に就こうとしてもずっとネットストーカーに付きまとわれ身元をバラされてしまう。それでも何とか幸せに向かって生きていこうと思う。真っ直ぐな前向きな心だけが自分の武器だ。
THE STAR CLUB 「THE WORLD IS YOURS」
苦境に瀕した時 頼りは悪運だけ
後戻りは不可能 覚悟してやったぜ 信じる事さ
是非観に行って頂きたい。

高知パルプ生コン事件
燐光群
「劇」小劇場(東京都)
2025/10/31 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/02 (日) 19:00
価格4,500円
11月2日〈日〉19時観劇。
製紙工場が違法に汚染水を垂れ流した結果、
市内の川や内湾の環境破壊が進んだ。
役所や地元メディアは知らん顔。
そこで、有志が立ち上がる…。
私自身は高知の出身です。
この事件については幼い頃から、
話を聞かされていました。
今回の上演に当たって、燐光群の方は
事件のことをとてもよく調査されていました。
事件の背景や登場人物など、とてもよく分かりました。
大変勉強になりました。
ということで、この劇は社会的な内容
(公害事件を広く世に知らしめる目的)がゆえに、
芸術的・文学的な要素はまったくありません。
そういった要素を期待されている方には退屈だと思います。

『はりこみ』
殿様ランチ
駅前劇場(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
タイトルと説明だけみると、緊張感溢れる物語のように思えたが、実際は ほどよい緊張と弛緩が絶妙に組み合わさった公演。まず前説が警察 無線通信のように音声で注意事項を伝達、繰り返し緊張しないように と笑わせる。が、冒頭シーンから緊迫感を漂わせ、警察隠語が飛び交う。
公演は、舞台装置とその使い方が上手い。単に はりこみ する<静>のイメージと監視する対象者の<動>への切り替わりが巧みで、物語が生き活きとしている。街の風景が台詞の端々で説明され、それを表わすかのように電車の走行音が聞こえる。
(上演時間1時間55分 休憩なし)

『イン・ヒューマン (in human)』
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
世田谷区民会館(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/13 (木)公演終了

『はりこみ』
殿様ランチ
駅前劇場(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
強盗殺人容疑の主犯が逃亡中。立ち寄りそうな場所ということで元交際相手(今泉舞さん)のマンションの向かいの空き室を借りて刑事達が張り込む。服部ひろとし氏、こくぼつよし氏、相樂孝仁(さがらこうじん)氏。女性の行動を監視する為、彼女の足繁く通うフィットネス・スポーツジムに潜入する刑事(大井川皐月さん)。ジムのオーナーでトレーナーでもある小笠原佳秀氏は女性会員の憧れの的。彼に夢中のはてなさんは半分ストーカー。更なる新人刑事の応援も入り混沌とする現場。
応援に入る斉藤麻衣子さんは正義感が異常に強い女刑事。父親も刑事だったが殉職。独特なファッションセンス。
発達障害の松田龍平みたいな原住達斗氏は父親が大物のキャリア組。
彼の指導を任された園田裕樹氏の困惑。
小笠原佳秀氏は武田修宏っぽい。
警察病院のカウンセリング・アドバイザー、篠原彩さん。この人が裏のMVP。ソフトな受け答えがプロ。
鶴町憲氏はロバート秋山のようなキャラで『絶対に笑ってはいけない』シリーズを彷彿とさせる。
張り込みを続けるマンションの部屋のセットがよく出来ている。前の住人が出て行ってまだハウスクリーニングも済んでいない。跡がある壁紙や妙な生活感。
テンポの良い笑いで会場が沸く。板垣雄亮氏独特のセンス。人物の内面の掘り下げに興味があるのだろう。着眼点がオリジナル。
是非観に行って頂きたい。

リヒテンゲールと二つ国の詩
Jungle Bell Theater
萬劇場(東京都)
2025/10/29 (水) ~ 2025/11/03 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/11/02 (日) 14:00
2日昼に【チーズチーム】、3日昼に【野イチゴチーム】を観劇。
魔女の策略により対立が続いている鳥の国と猫の国の和平会議を決裂させるよう遣わされた魔女の配下とたまたま宿をとった魔女を倒す旅をしている者たちが織りなす物語。
ある意味少年ジャンプ的とも言える笑いと感動を仕込んだ王道勧善懲悪ストーリーがよくできているだけでなく、それが「もう一つの物語」に包まれている層構造で終盤にはメタフィクション的な展開もあるという凝ったもの。
さらにそこに昨今の風潮に警鐘となる要素も加えて見事。
また、鳥や猫をはじめとした様々な動物をモチーフにした衣装・メイクや動作の表現も巧みで大いに満足♪
なお「当日パンフレットの配役表示が役名と俳優名を併記するだけで役の説明がないのでどれが誰だかわからないのが難点、今後の改善を望みたい」との旨を Twitter/X に投稿したら後日、役に動物を書き加えた画像をアップしていただけた。感謝♪
こういう細やかさも30年の蓄積によるものか。
あと、クライマックスの「あの場面」で「デ、デカルチャー!」と思ったのはσ(^-^) だけではあるまい。また、Tツノコプロの複数のアニメキャラを連想した方はおナカマです。(笑)

『イン・ヒューマン (in human)』
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
世田谷区民会館(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/13 (木)公演終了

蜜柑とユウウツ ~茨木のり子異聞~
WItching Banquet
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2025/11/11 (火) ~ 2025/11/13 (木)公演終了

蜥蜴の夜は虹色
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2025/11/06 (木) ~ 2025/11/12 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/12 (水) 14:00
「ねえ、何食べたい?」と聞かれて無意識のうちに相手の好きなものを答える…。
そして毎日がそのパターンになっていく…。
かつて私もそうだった…。(すげー若いころ)
自分が何を食べたいのかなんて一瞬たりとも考えない。
あの時の気持ちをありありと思い出して息苦しくなるような話だった。

『イン・ヒューマン (in human)』
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
世田谷区民会館(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/13 (木)公演終了
実演鑑賞
今回は演劇でした。
豪華、贅沢すぎる音楽劇でした。
私としては前回みたいな方が好きですが、今回みたいな作品も素晴らしいし、独自だと思います。
ギターとか人声がもっと自然に聞こえら更に良かったのに、とは思いました。

『イン・ヒューマン (in human)』
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
世田谷区民会館(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/13 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高でした。文字通り圧巻でした。劇伴がほぼオーケストラスタイルで音圧も半端なかったです。劇場のPAさん、いい仕事されてましたね。演奏もすばらしく音楽だけでも十分楽しめました。ダンスもほんと最高でした。ずっと感動しっぱなしでした。前回のものはフラメンコ教室の生徒さんも参加だったのか「う〜ん…」というシーンがいくつかありましたが今回はプロだけのパフォーマンスということもあり文字通り圧巻でした。最高の時間をありがとうございますm(_ _)m

位置について
かわいいコンビニ店員 飯田さん
吉祥寺シアター(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2025/11/12 (水) 19:00
座席J列16番
価格5,500円
個人的には中途半端な感じがして腑に落ちない
役者さんの演技は素敵

『イン・ヒューマン (in human)』
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
世田谷区民会館(東京都)
2025/11/12 (水) ~ 2025/11/13 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
めちゃくちゃすごかった!!とにかくすごかった!!
フラメンコと歌舞伎、しかも生演奏。サイコーに良かった!演者さん達の熱がビンビンに伝わってきた。感動をありがとう。

蜜柑とユウウツ ~茨木のり子異聞~
WItching Banquet
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2025/11/11 (火) ~ 2025/11/13 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
茨木のり子の半生を俯瞰的(この世界観が妙)に回想した物語。演じるのは 全員女優。
編集者が、彼女の甥に遺稿がないか 訊ねるところから 物語は始まる。彼女の考え方、生き方等を「詩」の朗読(抜粋も含め8編)を交えながら抒情的に紡ぐ。その内容は、戦争・女性・世相といった普遍的なテーマを扱っているが、すべて日常に根ざした視点で綴っている。
朗読劇だが、役者は 台本を持ち動きながら朗読していく。主人公の茨木のり子 役を情況に応じて代わるがわる演じ、1人の人間が持つ多面性を表現しているようだ。前々作の「AIRSWIMMING -エアスイミング-」と同じ演劇的手法。それを すんなりと受け入れて楽しめるか否かによって評価が異なるかも知れない。
彼女の「詩作」は、戦争体験が原点になっている。自分で考え判断する といった自立した生き方をすることの重さ。けっして時代(風潮)に流されないこと、そんなことを伝える。公演は、茨木のり子という人物(詩人)を通して、反戦・平和を訴えているよう。そこに単なる人物評伝に止まらない奥深さ、メッセージ性を感じる。
少しネタバレするが、(1960年)安保闘争時、のり子と夫 安信が議論する場面がある。その観点が それぞれ主観的な「世情」と客観的な「世相」のようで、フィクションであろうが 実に興味深かった。時代や社会背景こそ違うが、その議論の根本は今でも通じるもの。第19回鶴屋南北戯曲賞受賞作。
(上演時間1時間45分 休憩なし)

蜥蜴の夜は虹色
MCR
OFF OFFシアター(東京都)
2025/11/06 (木) ~ 2025/11/12 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
(笑えた度)4.12(今感)3.09(完成度)5.15(平均)4
かなり意外なことに、ド直球、ピュアなラブコメジュブナイル。
高校生の、あの時期の、「あれ。」
「あだち充の漫画じゃないんだから」セリフにもあったけど、
高校生カップルが告白して、同棲するまで。

陽炎座
花組芝居
博品館劇場(東京都)
2025/11/11 (火) ~ 2025/11/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「あやめ十八番」を観ていると「花組芝居」を観なきゃいけない気になる。一度は観ておこう、でも歌舞伎か···、難しそうだな。
人通りのない静まり返った町の寂し気な横丁、何やら聴こえて来る鳴り物の音。何かやっているみたいだな。その音に誘われた一人の男、里神楽の狂言方(作家)である小林大介氏。同じく背広を着込んだ紳士・丸川敬之氏と着物姿の美しい女(ひと)、品子(永澤洋氏)。こんな所に芝居小屋?義太夫、長唄、囃子が揃い、狐(桂憲一氏)、狸(黒澤風太氏)、猫(髙橋凜氏)が踊る。「迷子の迷子の迷子やあい」。探している迷子の名前を聞くと「迷子の迷子のお稲(いな)さんやあい」。享年19の亡くなった娘らしい。その名に覚えがある小林大介氏、そして品子。死んだ娘をどうやって見つけるというのか?帰りたがる丸川敬之氏、筋の先を知りたがる品子。
鈴木清順の『陽炎座』しか知らなかったが、元はこんな話だったとは。非常に面白い芝居。芸に色気がある。次回作も観たい。
是非観に行って頂きたい。

狩場の悲劇
ニ兎社
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2025/11/07 (金) ~ 2025/11/19 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
妻は夫に殺されたが真犯人は・・の原作ミステリーを
妻が夫に殺されたが真犯人は・・の永井作品になってました
お時間ある方はぜひ

存在証明
劇団俳優座
シアタートラム(東京都)
2025/11/08 (土) ~ 2025/11/15 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/11/11 (火) 19:00
数学の話題を使って、謎解きの要素など、いろいろな側面のある作品。俳優座の底力を観た気がする。63分(12分休み)86分。
1977年イギリスの精神病院でアン(保亜美)が数学者リトルウッドの娘だと明らかにするシーンから、1907年のケンブリッジ大でのハーディ(志村史人)とリトルウッド(野々山貴之)が未解決問題「リーマン予想」の解決に協力して取り組むシーンに飛び、時間軸を行き来しつつ壮大な物語が展開される。戦争と科学の問題や、女性の地位や、性的マイノリティの差別、細かいところでは殺人事件の謎解き、そしてもちろんリーマン予想のほかチューリングマシンとかエニグマ解決とかの数学の話題も出て、数学者の協力を軸に描いていて、さまざまな要素を描く大作だが、それだけにテーマが絞りきれていない感じが惜しい。トラムの舞台を縦横無尽に使う美術や、デリケートな照明などは素晴らしく、俳優座の底力を感じる。アン役の保の佇まいがいい。「数」を「数字」と言ったり、「漸近展開」を「ざんきんてんかい」と読ませるなどのミスがあるのは気になる。エンディングはやや冗長だが、これは長田の癖だと思う。

あの日は江古田で君と
劇団二畳
FOYER ekoda(ホワイエ江古田)(東京都)
2025/10/30 (木) ~ 2025/11/05 (水)公演終了

人のいぬ山
発条ロールシアター
中野スタジオあくとれ(東京都)
2025/10/31 (金) ~ 2025/11/03 (月)公演終了