最新の観てきた!クチコミ一覧

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燃える花嫁

燃える花嫁

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年、この作家の『日曜日のクジラ』を観てイマイチだった。今回も前半はハマらずこの作家とは相性悪いなと感じたが最後まで観ると本物。もっと受け狙いの兄ちゃんかと思っていたがガチガチのマジの人。本気で真剣に世界と取っ組み合おうとしている。今、2025年だぜ。ああ本気なんだな、この人。名取事務所がオファーする訳だ。
実はもの凄く古典的な物語。余りにオールドスクールで驚く程。ポル・ポト、チェ・ゲバラ、毛沢東、金日成、ウラジーミル・レーニンにカール・マルクス···、PUNK ROCKでも構わない。とにかく今の自分の思考回路を支配する鉄の掟のような価値観から自由に導いてくれる風であるならば。

凄いのは構成。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の『DEATH』編を思わせる。これはTVシリーズ24話の総集編なのだが初見の人には全く解らない作り。各登場人物が死ぬ間際に見る走馬灯のようなスタンス。解らなくてもいいから感じてくれ、みたいな作風。勿論今作はきちんと解るようにしっかり作られている。逆にこの構成にした作家の意図こそがミステリー、その謎を観客が頭の中で解いていく作品。

MVPは鬼頭典子さん。この人のキャパシティは想像を絶する程大きい。有り得ない役を振れば振る程開花する。
そして森尾舞さん。この役を女性にしたことが大きい。
更に平体まひろさんは流石に凄い。時系列でルックスを変えてみせる。本当に心が生き生きと生命を謳歌し羽根を天空に開いてみせた時の美しさ。

テーマは『移民と差別』。もろクルド人の物語として受け止めた。正解のない世界でせめてもの擦り合わせで作る、よりマシな答。ラストのタイトルロールは鮮烈。
是非観に行って頂きたい。

大谷ひかるのシンデレラ 尼寺修行編

大谷ひかるのシンデレラ 尼寺修行編

三条会

アトリエ春風舎(東京都)

2025/05/29 (木) ~ 2025/06/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/05/31 (土) 14:00

初めての三条会。一人芝居なのかと思っていたら、大谷ひかるさんに、伊藤紫央里さん/関美能留さんの三人による、そう、シンデレラも王子さまも現れ、大谷ひかるさんの曹洞宗の尼僧の修行の途に雑念を抱く、あの千葉なのに東京の名を冠する夢の世界との繋がりを描いた演劇であった。
脚下照顧、この言葉に裏付けられた大谷ひかるの僧侶としての在り様が示される後編と、それに先立つシンデレラとの繋がりの話。禅と大谷ひかるの身体性の融合。
只管打坐、作務、その日常の在り様を修行する姿が在って、法衣の着付け、修行の在り方、壁/樹に向かい合う座禅のすっと背筋通った在り様、解脱への道、そんな法話の様なと思っていると、シンデレラ然とした正に我々が知っているシンデレラが現れてと、俗世と修行が混然と溶け合う、日々が在る 85分だった。
大谷ひかるさんがシンデレラにお茶を点てるシーンがあった。以前、映画「日日是好日」を見た時に勧められた、映画の原作の森下典子さんの「日日是好日 ー『お茶』が教えてくれた15のしあわせー」を読んでいた。劇中だけど、実際にお点前を拝見したのは初めて、で、ずずっってのも。なるほど、これがお茶なんだなと。

産声が聴こえない。

産声が聴こえない。

“STRAYDOG”

サンモールスタジオ(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

一言、圧巻。先日観た『Brother~another father~』も圧巻でしたが、今回の『産声が聴こえない。』はそれに輪をかけて圧巻でした。これはすべての高校生と大学生に観させたいですね。とくに笑いをとるような脚本でも演技でもなく、作品のテーマを愚直なほどストレートに伝えようとしているのがよかったです。役者の演技もすばらしかったし脚本も最高です。心に刺さるセリフも随所にあり私の周りの女性客からはすすり泣く声が終始していました。名作ですね。ロングランで公園していいレベルの作品です。

LAZARUS

LAZARUS

イープラス/キョードー東京/KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2025/05/31 (土) ~ 2025/06/14 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/06/12 (木) 18:00

120分。休憩なし。

北斎ばあさん

北斎ばあさん

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

6/11ミナクル公演(初日のみ3500円で見られる公演)を観劇。さすがの老舗劇団!
脚本、演出、役者どれを取っても間違い無い。特に今回は、代表の横内さんが、劇団員=今回のW主演の看板女優さん2人のために、生前贈与のつもりで書いた脚本(←当日配布物より)というだけあって、根底に人生と愛情を感じた。W主演を務めた女優さんお二人の魅力も存分に発揮されていた。
この生前贈与シリーズ、次回があれば、是非見に行きたい。ミナクル公演しか行けないけど…

黄昏のリストランテ

黄昏のリストランテ

熱海五郎一座

新橋演舞場(東京都)

2025/06/02 (月) ~ 2025/06/27 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/06/12 (木) 11:30

座席1階

伊東四朗を継いで毎年この時期に行われている「熱海五郎一座」。毎回見に来るファンはたくさんいて(年配者が多いが)、あの広い新橋演舞場はほぼ満席だ。

大笑いのポイントはまず、自称高齢者軍団の三宅裕司らレギュラーがどこでせりふを詰まらせ、それをどうカバーするのかという点。ファンはせりふをかまずにそつなく美しくこなすことを期待していない。舞台と客席が一緒になって笑う局面にこそ、満足度は高まる。
そして、この「ザ・喜劇」に参加するゲスト俳優と高齢者軍団とのやりとりだ。今作は羽田美智子と剛力彩芽。タイプの全く違うこの2人を招いたところに、今回の成功の第一歩がある。そして、レギュラーがカーテンコールで口々に言及したゲスト2人の一座への溶け込みぶり。この2人の力が、喜劇のクオリティーを高めたのは間違いない。
三宅裕司曰く、シリーズも第11弾となり、おもしろい場面が作れるテーマはだいたいやりつくしてしまったという。しかし、「まだ、食の分野が残っている」ということで、今作はイタリアン・レストランが舞台だ。羽田美智子は、このレストランのオーナーシェフ(ラサール石井)に復讐をしようと胸に秘めている副料理長の役。剛力彩芽は、コメの転売グループを調べている農水省の役人。それぞれレギュラーにうまく絡んで、重要な役柄をこなしている。

期間中の上演回数が多いため、おそらくレギュラーがミスをする場所も毎回違うだろう。この日のマチネは冒頭でいきなりあった。三宅裕司がメンバーのミスを何とかカバーして笑いにつなげるというのがお決まりなのだが、天然キャラクターを割り当てられた羽田美智子が客席と一緒に笑い続け、次のせりふがしばらくストップするという場面もあったようだ(羽田は客席に見えないように背を向けて笑い続けていたらしい)
ハプニングをハプニングで終わらせず笑いの種に変えてしまうのが、一座の最大の面白さ。この点で今作もとても満足できた。
また、「国民的美少女」剛力彩芽もデビューからは結構年月を重ねているが、何と言っても一座の中ではとても若い。切れのいいダンス、派手な立ち回りはとても見応えがあった。

もう一つ、カーテンコールのメンバーのひと言は、これを聞かずには帰れないという面白さで、今作も健在であった。2人のゲスト女優がとびっきりのドレスでカーテンコールに登場したのも、特筆だ。

燃える花嫁

燃える花嫁

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

 今の世界の社会状況を的確に反映している作品。

 笑いというか息抜きの場の独特な筆致はいまいちな気はするものの、
最小限に削ぎ落した情報量での説明設定や時間軸を絶妙に操るあたりは、
クリストファー・ノーランのそれを彷彿とさせる。また、三年ほど前に
青年座に書き下ろされた『燐光のイルカたち』より戯曲のクオリティーが
向上している感あり。

 別の形で外国人との共生社会の在り方や外国人問題の底流に迫り、
民族としての日本人の未熟さやむしろその上をゆく在留(定住)外国人
のしたたかさの一面を垣間見せてくれた、北川大輔 作『未開の議場』とは、
ある意味、好対照の作品。

煙が目にしみる(脚本・演出|堤泰之)

煙が目にしみる(脚本・演出|堤泰之)

ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2025/05/21 (水) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/05/25 (日) 13:00

たぶん二桁回数観てはいるものの気が付いたらここ10年以上観ていなかったがやはり名作。
熟知しているだけに先が読めたりもするが「あー、そうだったなぁ」などと思いながら観るのも一興。「極私的好きな戯曲TOP10」のうちの1本の地位は揺るがずといったところ。
来月観る他団体での上演に対する期待もさらに高まる♪

セザンヌによろしく!

セザンヌによろしく!

バストリオ

調布市せんがわ劇場(東京都)

2025/06/01 (日) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

なるほど!
全く何も知らなかった事が観て判った(というのも変だが)ユニット。多分野融合の舞台というもの自体は初めてではないが、棘がなく、深さはあり、技量は高く、恐らく細部が効いてるのだろう心地よいながらも感覚を刺激し揺さぶるものがある。新鮮。

燃える花嫁

燃える花嫁

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

秀作。
名取事務所の新たな試み、中規模劇場で普段より規模拡大したキャスティングと期待の劇作家ピンク地底人3号の新作は2時間超えの濃密な時間。人物たちが胸に刻まれる観劇の時間だった。拍手。

産声が聴こえない。

産声が聴こえない。

“STRAYDOG”

サンモールスタジオ(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

余韻の残る素晴らしい舞台でした!

登場人物のつながりなどの構成も見事でした。1人1人の心情を思うと苦しくなりましたが、感情移入するくらい役者さんの演技も素晴らしかったです。

ネタバレBOX

特にみほさんの表情にやられました。
どうにか出産まで至ってほしかったですが、それもみほさんを守るための胎児が選んだ流産だったのでしょうか。

ドクターが言っていたという流産は母親を守るため。という言葉に涙が出ました。
神秘的である妊娠、命、本当に尊いです。
六道追分(ろくどうおいわけ)~第四期~

六道追分(ろくどうおいわけ)~第四期~

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2025/05/28 (水) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

やっぱりくりもんは最高に面白かった
頻発するギャグも(千穐楽ゆえ多かったらしい)「なんだつまらん」とはならずに大いに笑って楽しめた
いつもながらのくりもんダンサーズのダンスも上手く溶け込み、ポンポン進んでともかく飽きさせない
セットもシンプルながら必要十分だし、音響、照明ともツボを押さえている
まさに笑いとペーソスの人情噺
磔になった義賊清吉に槍が刺さる瞬間、花魁お菊がそこに飛び込むラストは涙出たよ
しかしわずか70席の小劇場での4ヶ月8期に及ぶロングラン公演は凄い‼️
4期の千穐楽に立ち会えて幸せ
トリプルコールに手拍子スタオベ、キャスト全員のひと言挨拶も
第一期から走り続けた山田拓未の清吉はこれにておしまい
みんな身体に気を付けてね
第五期も楽しみ

昭和から騒ぎ

昭和から騒ぎ

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/05/25 (日) ~ 2025/06/16 (月)公演終了

実演鑑賞

 小津作品の雰囲気漂う鳴門家の居間に掛けられてある額の書
「翁莎惟恩感」
は、翻案・演出者のさりげない、原作者や翻訳者等への
リスペクトの表れか(例えば、役名の付け方一つとってみても)。
 六割ほどそのまま原作翻訳の台詞を残して台本が構成
されている感触あり。

 ちなみに、翻訳者の方が、自らの新訳・作・演出で上演する公演活動
Kawai ProjectのVol.1で取り上げたのが、今回の原作『から騒ぎ』。

ソファー

ソファー

小松台東

ザ・スズナリ(東京都)

2025/05/10 (土) ~ 2025/05/18 (日)公演終了

実演鑑賞

小松台東の新作。大きなソファーを巡る物語。110分。5月18日までスズナリ。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/06/post-071cb7.html

トイ

トイ

muro式

森ノ宮ピロティホール(大阪府)

2025/05/25 (日) ~ 2025/06/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

このテーマを喜劇にそして誠実に落とし込んでくれてありがとう!喜劇で感動させる舞台が1番すごいと思う!とんかつのコントめっちゃ好きだった!狂気と面白のバランス。
最後直前の井上陽水をなんで陽水だけで言ってたのか自分には十分に伝わった。スーパーラブ舞台。

『流浪樹~The Wanderer Tree~』

『流浪樹~The Wanderer Tree~』

ゴツプロ!

本多劇場(東京都)

2025/06/02 (月) ~ 2025/06/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

とても暖かさを感じる舞台だった。
台湾出身のお二人の日本語を交えた熱演。カーテンコールでウルウル来てしまいました。
役者陣が皆素晴らしく、中でも林田麻里さんが印象に残った。
中津留氏主宰のトラッシュマスターズでよく見る「長台詞による議論」とは趣の異なる、役者の会話のやり取りや細かな演技が良かった(トラッシュでも無いわけではないが…)。
カーテンコールでもお話があったが、この舞台が日台友好につながると素敵だと感じた。

あさがお企画『楽屋』

あさがお企画『楽屋』

あさがお企画

六本木ストライプスペース(東京都)

2025/05/22 (木) ~ 2025/05/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/05/24 (土) 14:00

昨年の初演も観ていたが終盤の「ある時点」まで女優A・Bの顔を見せない演出が特色にして秀逸。そしてその後に展開される「アレ」も楽しい。
この会場、1年間延命との噂も耳にしたのでもしそれが事実なら来年もう1回観たいなぁ。

昭和から騒ぎ

昭和から騒ぎ

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/05/25 (日) ~ 2025/06/16 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

シェイクスピアの戯曲を昭和の時代設定に落とし込むという大胆なアプローチは、
とてもユニークで面白い試みでした。
違和感なく馴染んでいたら本当にすごいことだと思いますが、
今回はあえて勢いとノリで押し切るような演出が多くて、
そこが逆に笑いにつながっていたように感じます。

ごり押し感も含めて楽しめるつくりだったので、
型にとらわれない自由さと遊び心に、観ているこちらも自然と引き込まれました。
こういう解釈ができるのも舞台ならではの面白さですね。

ユグドラシル

ユグドラシル

劇団KⅢ

座・高円寺2(東京都)

2025/06/05 (木) ~ 2025/06/07 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/06/06 (金) 19:00

 劇のタイトルが『ユグドラシル』ということから北欧神話のユグドラシル(日本語に訳すと世界樹ともなる)に関するエピソードと、この劇を観るより大分前に貰ったチラシに書かれていたあらすじやCoRichに載っていたあらすじに書かれていた「創造」といった言葉もキーポイントになる事から、キリスト教の旧約聖書の中の天地創造〜アダムとイブが蛇の誘惑(実は悪魔の化身とも)によって禁断の果実(真っ赤な林檎)を食べたので、神様から楽園を追放され、荒野を彷徨い歩くといったところまでの創世神話の2つを下敷きにした上で、荒廃し、水も殆枯れ果て、食物も余り育たず、極端に地球温暖化が進んで、異常気象が続く、さらに少子高齢化が突き進み、人が木になってしまう奇病が瞬く間に人類に浸透し、村や街から荷物をまとめて、ここよりかはまだマシであるはずの新天地を求めて、若者や女子どもは出ていった壊滅的、絶望的、僅かな希望さえ残っているとは言い難い近未来が舞台のハイファンタジーと、あらすじからは読み取れて、実際観に行ったら、私が頭の中で描いていた世界観とほぼ合致していた。

 地球温暖化が行き着く所まで行ってしまって、異常気象も相まって、作物はほとんど育たず、僅かに村に残った人たちは村長含め毎日腹を好かせ、その上水がほとんど取れなくて貴重なので、本当は喉を潤したくても、僅かな水で村長含め我慢し、その上に、木になってしまう奇病の原因とされる村の近くにある森を立入禁止区域としたり、劇中出てくる空気感染や濃厚接触といった言葉、18、19世紀等に流行った疫病対策に使われたカラスのような不気味な形をした鉄のガスマスク(効き目があるとは到底思えない)が出てきたりと2020~2022年末まで世界を、社会を恐怖と混乱、不安に陥れ、なかなか治る感染症なのかさえ予測不能だったCovid19を彷彿させ、近未来の明らかに現実離れしたことがまかり通るファンタジーなのに、どこかリアル感があり、シリアスだった。
 勿論、大いにくだらなくて笑える場面も多かったが。
 ハードコア·メタル、ラウドロック、それに加えてヴィジュアル系といった要素が色々絡まったロックバンドと劇の組み合わせだったが、全然違和感なく、寧ろロックと劇の役者との劇中少し関わったりするのも含め、お互いに切磋琢磨し合って、良いコラボレーションだった。
 
 禁断の果実(真っ赤な林檎)を未知の木になってしまう奇病の抗体とすべく、今までずっと奴隷商人の頭領シニアから重病患者、重傷者、負傷者等を森の中にある父の代から続いている研究所で、極秘に人体実験を繰り返していた表の顔は村の村長の兄ウツギ、そしてこの物語のキーポイントとなる木になってしまう奇病を治すための抗体を作る為の犠牲者で唯一の生き残りのスノウ、同じく禁断の果実(真っ赤な林檎)を狙う奴隷商人の頭領で隣村の酋長、目的の為なら手段を選ばず、利己主義で自信家、野性味溢れ、冷酷非道な男シニア、その後を追うシニアの手下で幹部のオトギリ、アザミ、新鮮な水を探していた事がきっかけで、スノウと出会い交流する、村思いで、天真爛漫、怖いものなしで距離感ゼロの村長ウツギの妹でこの物語の主人公ミズキ、ミズキの仲間で変わり者で学者のシャガ、いつも2人に振り回されている機械工の娘でカッとしやすいレモン、そしてウツギの妻で、ハッキリと物怖じせず言いたいことを言う、夫婦喧嘩が耐えないロメリア、こういった個性豊かで、存在感があって、アクの強い登場人物たちが、スノウや禁断の果実(真っ赤な林檎)を巡って話が展開し、スノウや禁断の果実(真っ赤な林檎)を巡ってウツギやミズキたちとシニアたちが対立し、やがて破滅していくといった終わり方に、救いがないほどに人って強欲で、自分のことしか頭になくて、他人より自分さえ良ければといった感じに、超少子高齢化で子どもや若者、若い女性がほとんどいなくなった世界であっても、醜い争いを繰り返し、ちょっとした嫉妬や何かをきっかけに戦争や紛争って起こるんだなと感じた。そういった意味では、あらゆる動物の中で、愚かで馬鹿で、本当に救いようのない生物は人間くらいのものかとも感じ、暗鬱とした気分になった。
 さらに、物語の最後でミズキがシニアに拳銃で撃たれ、瀕死のスノウと共にその犠牲を基に、その身体に大きな根を張って、巨大な緑の葉っぱが生い茂る巨木となるという主人公たちが殺されてしまうのは悲しい。
 しかし、巨木となって地球温暖化が軽減され、世界で起こる争いが少しでもなくなり、平和と自然の恵によって、少子高齢化にも歯止めがかかるのかも知れないと考えると、確かに悲しい悲劇的な結末だが、それにどうにも個人的には誰かの犠牲の元に成り立つ豊かさや平和とはと考えてしまうので納得はしない。
 それでも多少の希望というか、一筋の光が差すような終わり方に、現実世界も、この劇で描かれているほどじゃないにしろ、暗くて、陰鬱で、余り良い未来が思い描けない、戦争や紛争も世界各地で起きていて、不穏で、日本の与党の政治家も腐りきっており、一体何を信頼したら良いのやら分からない時代だからこそ、多少の希望を見いだせた気がした。
 
 劇中の無茶振りなシニア役工藤竜太さんのアドリブやそれに一瞬困惑するもコナンのモノマネで(地味に上手かった)乗り切るアザミ役の葉月さんの即応力も目を見張るものがあり、面白かった。

Blue moment

Blue moment

Theater Company 夜明け

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2025/05/29 (木) ~ 2025/06/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/05/30 (金) 14:00

 この劇『Blue Moment』の感想を公開で、UPしたつもりでしたが、非公開になっていたようなので、UPし直しました。
 感想の内容は全く非公開だった時と変わらないのですが、見ていただけると嬉しいです。
 非公開だった時と違って、今回こそはちゃんと公開にできていると思います。

 夜明け前。
かすかに揺れる潮風の中、一台の古びたバイクが静かにエンジンを鳴らす。
ハンドルを握る男の背に、そっと寄り添うように腰かけた、不思議な少年。ふたりを乗せたその影は、星々の名残をなぞるように、かつての夢の境を越えてゆくといった抽象的、観念的であり、詩的美しくどこか儚さ、淡い感じがCoRichのあらすじを読んだ感じだと感じ、あらすじの最後のところに載っていた謎の少年と50代くらいの中年男性との会話のやり取りが、非常に何処か不思議で謎めいた感じがしたので、勝手にこの作品はサンテグジュペリの『星の王子さま』に出てくる年齢不詳で砂漠のコブラに噛まれたが、例え肉体は滅びるとも、もっと観念的であり抽象的な何か、魂とも違う、確かに存在するがもっと軽くて、人間の眼には見えず、聞こえない神聖な何かとなって自分のいた星に一旦帰っていた星の王子さまがふとしたなにかの拍子で、昔に出会った飛行士の孫と今度はバイクに乗って実際に旅をしながら、飛行士の孫のアイデンティティーや自分探し、過去に対する後悔といったことと徐々に向き合わせていくと言った話かと思って、期待して観に行ったが、違った。

 バイクに乗った中年男が海辺で突っ伏して眠っていると、不思議で神秘的な好奇心が旺盛で、汚れがなく、躊躇がなく、純粋無垢で、何処か怖いもの知らずな感じの全身青い格好をした年齢不詳な少年がどこからともなく現れ、主人公の50代くらいの中年男性Kに話しかける場面から物語が始まるといった物語の始まり方的には、サンテグジュペリ作『星の王子さま』と偶然かも知れないが、良い意味で確かに似通っていた。
 だが劇が進むにつれ、主人公の50代くらいの中年男Kが青い神秘的で何処か不思議な少年を流れ的に乗せて走るが、そのバイクで走っている道は湘南の海沿いを走っているのが次第に分かってきて、その終着点として江ノ島線電鉄(通称江ノ電)にバイクごと突っ込んで自殺を図ろうとしていることが分かってきた。自殺に向けて助走をつけてバイクを最大出力で出して道路を疾走している間に、バイク後部座席に座った青い少年の人智を超えた不思議な力なのかも分からないが、走馬燈のように主人公の中年男がお腹にいた時から、生まれた直後、ただ普通に純粋で真っ直ぐで、おバカだった小学生時代、自分家の屋根裏に秘密基地を作ろうと準備を整えていたら、屋根裏からとあるカセットテープが見つかって、そのカセットテープに録音されていた音声が元で父親の不倫がばれ、両親が離婚し、その後の小学生高学年になると、何もかもから逃げたい一心でか、バスケットボールにのめり込む。
 中学になると、地元の湘南にある学校ではなかったのもあって、周りがすぐ友達ができるなか、クラスで孤立していたが、天真爛漫で優しい女の子に声をかけられ、片想いをし、下心丸出しで入った吹奏楽部。しかし、そのうち本当に音楽にのめり込み、地元のオーケストラの門戸を叩く無鉄砲さと、ひた向きで真っ直ぐで、猪突猛進だった中学時代。中学卒業式の日に後輩の女の子に告白されるも、自分が片想いしている吹奏楽部の女の子との約束の為振るが、その後前に告白した際に受験期間なのを理由に吹奏楽部の女の子に断られたが、卒業式後に映画を一緒に観に行き、もう一度告白するがものの見事に振られる。しかも吹奏楽部の春ちゃんが好きといったのは、高校生でロードバイクを嗜む何やらヤンキーめいた先輩だったというショック。
 敢え無く中学時代の淡い青春も終わりを迎え、今までの過剰な自信も消え失せ、自身をなくし、高校生になると、七三分けにして、普通になる。しかし、電車の中で出会った受験生の女の子のイヤホンから漏れてくる音楽と女の子が気になって、黙っていられなくなり、またしても情熱的に勢いで、メールを後で送ってもらうことを半ば強引に取り付ける。そういったところから彼女との関係が始まり、彼女と同じ高校に受かりたいと考え、彼女が目指す高校に一緒に受かれば自分がもっと彼女と話す時間ができるようになると思い、わざわざ今通っている高校を中退して、猛勉強して湘南の地元の自由な学風で有名だが、超難関高に何とか受かるという奇跡としか言いようが無い母親も呆れる猪突猛進ぶり。彼女と仲良くなって、だんだんお互い打ち解けてくるようになると、彼女がじつは重い持病を抱えていること、その持病は手術をすれば治るが、親が許さないこと。両親が新興宗教をしており、父親が教祖であり、自分は2世であること、結婚や恋愛も信者以外としてはいけないことなどの秘密が彼女の口から暴露される。そんなの許せないと思った主人公は彼女の両親が信者を集めて説教をする教会に踏み込んで反論しようとするが、逆に彼女と引き離され、彼女は説教壇より奥に生まれ変わるのがどうのとか、身を清めるとかいったことから、信者たちと彼女の父親によって連れて行かれる。それでも最後に彼女は主人公に力なく微笑みかけるが、それが彼女の笑顔と、彼女自身を見た最後となる。
 彼女を金も権力なく、勇気もなく無力だったことから救えなかった自分の不甲斐なさ無力感と公開に打ちひしがれて、音大目指すも、明らかに自分より優秀で裕福な家庭との圧倒的な落差を見て夢破れ、音大を中退し、知り合いがやっているという劇団に入る。
 主人公は今度は劇団内で同期の気が合い、愚痴も言い合うことができ、腹を割って気兼ねなく話せる女優と飲み友であるうちに、いつの間にか恋人同士になるが、演劇では食えいないと思った主人公が、副業としてマルチ商法に手を出し、劇団の仲間とも険悪になり、そのうち劇団の女優の彼女から別れを切り出され、振られる。
 しばらくは意気消沈しているが、仲間の励ましもあり、劇団を主宰の知り合いと1から始めるが、今度は主人公は裏方に徹する。
 30代くらいになって、劇団もだんだんと大世帯となり、主人公も劇団内で演出も任されるようになり、ある時高校で演劇をするワークショップに出向き、高校生の劇の演出をすることになったが、そのことがきっかけで、高校生で劇団の事務所を叩き劇団員になった女子高生のやる気と元気があって行動力がある女の子のことを気にかけるようになり、そのうち結婚する。
 歳はお互い離れているが好き同士で、仲睦まじく、子どもも生まれ、共働きで、大変ながらも、ささやかで幸せな時間の筈だった。しかし第2子がを身籠り、その子は主人公と彼女との子ではないことが夫に黙っていること、隠していることの罪悪感から正直に実は同じ劇団内の劇団員と不倫関係にあったことが暴露され、主人公は茫然自失となり、バイクに飛び乗って…。
 といったような壮絶で激的で、もはや取り返しのつかない、全然救いようのない過去が流れるように見えては消えていくという、サンテグジュペリの『星の王子さま』より、余程大人で、世知辛い内容であまりの救いのなさに衝撃を受けた。
 しかし、青い少年が、劇団の元高校生の妻が劇団員との不倫で宿して、堕胎した子どもで、その青い少年が最後のほうで言う「次生まれ変わって会えなくても、何度も生まれ変わることは出来るんだから、きっといつかはお父さんとその息子として会うことだって、運命の巡り合わせ的に、可能性はきっとあるよ」といった自殺した主人公の魂に言う励みの言葉が、よくよく文脈を考えて捉え直してみると、少しのお互いの救いにもなっていないのに、愕然とした。

 しかし、幻想的、詩的、観念的で、美しく淡いファンタジックな作品なのにここまで現実を突きつけ、僅かな救いさえ用意せず、観ている側をも絶望のドン底に突き落とす、笑いもほとんどない作品に愕然とさせられた。でも、実際の人生の場合、よく劇や映画で見るほど、ハッピーエンドでもなく、過激なバッドエンドでもないと思うので、ある意味現実の上手くばかりも行かないし、かと言って闇の住人に引きずり降ろさられる、連れ去られるといったこともない人生を移してるろも思えて、衝撃は大きかったが、こういう劇の終わり方もありかもと感じた。

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