最新の観てきた!クチコミ一覧

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『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

『思い出せない夢のいくつか』

どさ回りの落ち目の歌手(兵藤公美さん)が列車に乗っての地方巡業。かつては一斉を風靡したこともあり、それに憧れた歌手志望の少女が今は付き人(南風盛〈はえもり〉もえさん)に。長い付き合いの裏も表も知るベテラン・マネージャー(大竹直〈ただし〉氏)。

兵藤公美さんは室井滋っぽい。会話の雰囲気が小林幸子を思わせる。結婚離婚のエピソードは大原麗子を連想。カンパニーデラシネラ、『気配』で主人公の奥さん役だった。

舞台美術が凄い出来。撒かれた白と灰色の砂利、敷かれた線路、昭和初期の木製の客車。車輪に見立てたバーベルが前後に転がっている。星座早見盤を取り出す南風盛もえさん。三人は蜜柑や林檎を食べながら窓の外の星を探す。煙草を吸いに行ったりジュースを買いに行ったり。

ネタバレBOX

『銀河鉄道の夜』の同人みたいな作品。沈黙の三角関係を深読みする人もいるが、どうもそんな風には受け止められない。足りない話を宮沢賢治の匂いで補完した感じ。

自分的には物足りない。手が合わないのか、この配分が気に食わないのか。『銀河鉄道の夜』のコロンがないと、とても観ていられない薄さ。深読みする程、興味が持てない。

ただ、夢のシーンが秀逸。このワンシーンだけで今作を忘れることはないだろう。

ジュースを買いに行かされる南風盛さん。なかなか帰って来ない。歌手もマネージャーも寝てしまう。すると、客席後ろの通路を通って南風盛さんが現れる。歌っているのは間延びした「星めぐりの歌」。二人に林檎を置いて去って行く。呆然と眺める兵動さん。しばらくして南風盛さんが本当に帰って来る。「あんた、死んだのかと思った!」「死んだのは私の方か?」
深い森のほとりで

深い森のほとりで

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋ホール(東京都)

2024/05/10 (金) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

バングラデシュで待っている人のために、次々直面する困難を乗り越えて、ワクチンつくりに挑む科学者の物語。素直に感動した。運営交付金を減らされる弱小国立大学、金のない人たちが死んでも、多額の資金のかかる薬の開発に腰を上げない製薬会社(「死の谷」という)、海外からは何をしているか見えないガラパゴスの日本の研究者など、新聞かテレビのドキュメンタリーのように今日的実情が盛り込まれている。また、ビル・ゲイツ財団やワクチン開発支援機構など、ハードルは高いが支援の手があることも分かる。2017年2月から2023年3月31日まで、最後の場面ではコロナ禍もかかわってくる。

主人公原陽子(湯本弘美)の研究者歴もきちんと語っている。恩師本田教授(広戸聡)のおかげで今があるという背景が、物語の奥行きを深めている。わきに配された人々も、それぞれモデルがいておかしくないつくり。東大史料編纂所の学術支援専門員という、知り合いの娘さんが来ていて「まさに自分も、作中の産学連携支援の山口さんと同じような立場」と言っていた。女性研究者たちの直面する壁、挫折、それでも持ち続ける研究への思いを、過たず描いていた。

夢と生活のはざまで悩んだことのある、多くの人の心を打つ舞台である。主人公の壁にくじけず挑戦し続ける姿に励ましをもらえるだろう。
俳優たちは、青年劇場らしい楷書の演技で、ユーモアさえまじめさがみえる。看板役者たちは今回はおらず、広戸さん以外は知らない顔だが、よかった。若い五嶋佑菜さんには太めキャラの愛敬があり、八代名菜子さんは清楚な美しさがよかった。

白狐伝

白狐伝

SPAC・静岡県舞台芸術センター

駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場(静岡県)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「アウトサイダーの嘆き」

 岡倉天心が1913年に亡くなる直前に書いた唯一の戯曲を宮城聰が劇化した。「ふじのくに野外芸術フェスタ2024」の新作である。

ネタバレBOX

 舞台上には上下に御簾の掛かった演奏スペースが設置され、草花の意匠をあしらった衝立が目につく。真ん中の衝立の向こうから現れた美加理演じる狐のコルハは、口に青く光る魔法の玉を咥えている。SPACの劇団員による演奏も相まり、白皮の狐姿の美加理は愛らしくも妖しく我々を劇世界へといざなう。

 魔法の玉の力を狙う悪右衛門(動き:貴島豪/語り:吉植荘一郎)は、歌舞伎や京劇を思わせるようなメイクで強いインパクトを与える。悪右衛門一味の放った矢で負傷し窮地のコルハは、土地の領主である保名(動き:大高浩一/語り:若菜大輔)に助けられる。このあたりでいよいよ宮城がコルハの語りで物語に加わり客席が湧いた。

 保名は許嫁の葛の葉(動き:美加理/語り:宮城聰、共に二役)と彼女の誕生日を祝っているところを、葛の葉に横恋慕する悪右衛門一味に屋敷を侵略され、彼女を奪われてしまう。野外劇場の舞台機構をフルに使った軍勢や立ち回りは見ごたえがあった。葛の葉の破れた片袖を握ったままさまよい歩く保名を救うため、コルハは葛の葉そっくりに姿を変え保名を山中の隠れ家に匿う一方、悪右衛門を罠にかけ崖から突き落とす。

 葛の葉に姿を変えたコルハは保名とのあいだに生まれた幼子を育てながら静かに暮らしていたが、ある日保名の留守中に家の前を通った巡礼の一隊から、保名を探すことを諦めた葛の葉が明日剃髪することを知らされる。恐れおののくコルハを美加理の動き、宮城の語りが絶妙なコンビネーションで表現しここが一番の見ごたえがあった。心を決めたコルハは保名に万感を込め最後の願いを告げる。

 昨年の『天守物語』同様に人間界と自然界の対立と調和に通じる作風ながら、本作が特徴的なのは人間にも狐にもなりきれないのコルハのアウトサイダーとして嘆きである。古典芸能の世界で散々描かれてきた世界に、現在私たちが直面している人種間やジェンダーなど、さまざまな状況を重ねて観られる、きわめて間口の広い上演であった。

かもめ

かもめ

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「愛情と承認の物語」

 ドイツの演出家であるトーマス・オスターマイアー率いる劇場、シャウビューネが2023年に初演した『かもめ』である。初演からわずか1年あまりの来日に満場の客席が大いに湧いた。3時間半の上演が苦にならない充実ぶりである。

ネタバレBOX

 いつもの静岡芸術劇場の舞台上に馬蹄形に客席が配置され、奥のホリゾント幕前には数脚の木製の椅子や机、ビーチチェアやカウチが置かれている。定刻になるとホリゾントには墨絵のような筆致でゆっくりと山肌が、つぎに大樹が描かれて、ここが自然のなかなのだとわかる。

 幕開きから意外だったのは平時から喪服を着ていることを嘆くマーシャ(へヴィン・テキン)と彼女に叶わぬ思いを寄せる教師のメドヴェージェンコ(レナート・シュッフ)の対話がボールを蹴りながら交わされた点である。まったくしめっぽくないばかりか演技スペースと近い客席にもボールが届くことになり戸惑いの笑みがこぼれる。この軽さと親密さが本作を貫く新しい感覚である。登場人物がまとっている衣装も現代の我々のそれと大差ない。これは誰しも経験しうる物語なのだという主張がここでわかる。

 とはいえ大筋はほぼ原作通りである。作家志望の青年トレープレフ(ラウレンツ・ラウフェンベルク)が恋人で女優志望のニーナ(アリナ・ヴィンバイ・シュトレーラー)に屋敷の庭で組んだ仮設舞台で新作を演じさせる様子を、トレープレルの伯父で屋敷の主であるソーリン(トーマス・バーディンク)をはじめ屋敷の人びとが鑑賞するも、トレープレフの母で女優のアルカージナ(シュテファニー・アイト)に失笑され上演を取りやめてしまう。原作ではニーナがトレープレフの書いた抽象的な台詞を謳いあげるが、ここではトレープレフはマイクを客席に向け小鳥のさえずりのような声を集めたり、全身タイツで世界創生のときにいたのであろう原始生物を演じたりしていてキワモノ感がより強く出る。

 挫折感に苛まれ森の中に迷い込むトレープレフをよそに、女優としての野心に満ちたニーナはアルカージナの愛人で新進気鋭の作家トリゴーリン(ヨアヒム・マイアーホッフ)に強く惹かれる。原作では30代の設定だが、後の幕で「年寄り」「理髪店のおやじみたいな髪型」と揶揄されるくだりがあった。この設定変更によってニーナの先行世代への羨望、もっと言えばファザーコンプレックスに近い感覚がより強く出るようになった。

 シュテファニー・アイトのアルカージナは貫禄ある大御所女優というよりも女盛りといった感覚で、マーシャの若さへの嫉妬やニーナとトリゴーリンが惹かれ合うことへの焦りの芝居が印象深い。自殺未遂をしたトレープレフの包帯を取り替えるときに互いに激しく罵り合うやり取りも、愛する息子への忠言というよりはまるでもう一人の若い恋人を批難しているように見えた。そうなるとトレープレフもアルカージナに対して、一人前の男として認められたいという願望を強く抱いているように見えてくる。これらの人物のやり取りを観るにつけ、『かもめ』は世代間対立の物語という側面だけでなく、愛情の行き違いから起こる承認の物語でもあるのだということがわかってきた。

 2年後にソーリンの体調を気遣い屋敷に戻ってきた人々が再会し、シャムラーエフ(ダヴィット・ルーラント)がトレープレフが撃ち落としたかもめの剥製をトリゴーリンに見せるくだりも原作通りだが、台詞をいくつかカットしてトレープレフが自身に向けた銃声が鳴り暗転して幕を閉じる。ここでもう一捻り、現代における上演意義を示してもらいたかったというのは叶わない願いか。

(あたらしい)ジュラシックパーク

(あたらしい)ジュラシックパーク

南極ゴジラ

王子小劇場(東京都)

2024/03/28 (木) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「独自の劇世界が描く青春模様」

 2020年に『贋作ジュラシックパーク』を発表した脚本・演出のこんにち博士が新たに取り組んだ作品である。

ネタバレBOX

 物語は全4話であり、全編を通し映画『ジュラシック・パーク』で紹介された方法を模して新しく作られたというパークで展開される(この設定がまずおかしい)。第1話「お天気ボックス」は新しいジュラシックパークで生まれ育った主人公・湾田ほんと(端栞里)とその同僚や友人たちの日常が描かれる。できる仕事人を夢見る湾田だが同じ「小型草食恐竜管理室」チームのアルミ(九條えり花)に任された仕事を台無しにしてしまい、微山治夫(こんにち博士)には先を越され、リーダーのメガマック(TGW-1996)からの評判もよくない。窮地に陥るとAIコーチの明星(井上耕輔)を呼び出しては助けを乞うことがお決まりである。仕事終わりに友人のドゥドゥ(古田絵夢)と語らう時間が息抜きになっているが、同僚たちからはあまり評判がよくない。

 たまたま花形部署の「大型肉食恐竜管理室」に欠員が出たため手伝いに来たワンタだったが、そこで働くシャークウィーク(瀬安勇志)と自分のスキルの差を思い知らされる。そこへパーク外からやってきた中黒二鳥(ユガミノーマル)が、塗れば剛毛が生える「オオカミ男クリーム」のセールスを装い園内に侵入する。中黒は恐竜の胚を盗み出そうとするも、ワンタたちの仕事の失敗に巻き込まれ散々な目に遭ってしまう(第2話「オオカミ男クリーム」)。

 ある日湾田はコピー人間造りを企んでいる浮卵博士(和久井千尋)と遭遇する。その半年後、パークには湾田と姿がそっくりだが格段に能力の高いワンダー(揺楽瑠香)が入ってくる。この半年間に同僚たちもそれぞれ能力があがり、湾田はひとり不貞腐れ気味だ(第3話「人間製造機」)。そこに来た博士は自作の人間製造機を使えば、湾田とワンダーの脳みそを入れ替えることができると話を持ちかける。一度はその話に乗った湾田だったが、自身の決断には迷いがあるようで……(第4話「エアポッツ」)。

 全4話の物語は湾田の成長物語として一本筋が通っており、ほかにもさまざまに小ネタが仕込まれているため単独でも愉しめるようになっていた。他の誰も真似できない独自の作品世界を創造した点は注目に値するが、満場の客席に過不足なく伝わっていたかは疑問が残る。ジュラシックパークの設定であるとか科学技術の説明に馴染むまでかなりの時間を割かなければならなかった点に加え、小手先のギミックにこだわりすぎるあまり各登場人物の掘り下げが浅く、肝心の若者の成長や青春模様が十分に描けていたとはいいがたい印象を受けた。終盤で湾田が漏らす、自分が凡庸な人間とわかりきっているが特別でいたいという嘆きは万人の共感を得るものだし、最後にとる選択も納得がいくものであるため惜しい。

 ジュラシックパークのセットや恐竜の模型など手作り感あふれる舞台美術は手が込んでおり、プロローグの出演者による合奏を含め、作りたいものや見せたいものを舞台に上げたのだろうなと深く得心した。しかし実際に紙製の素材でできた恐竜や作り込んだ特殊効果を舞台に上げても、映画のそれと比べれば見栄えで劣ってしまうのはわかりきった話である。だからこそ舞台上では俳優の芝居と観客の想像力に託し、たとえば暴れまわる恐竜の様子を語り物のようにして伝え、生々しい恐怖感を与えるという手法も考えられたのではないか。
天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

「客席をハイジャックする歴史劇」

 1970年3月31日に発生した日本赤軍によるよど号ハイジャック事件に取材した作品である。2022年に新型コロナウイルスのため上演中止になった公演のリベンジとなった。

 客入れでかかるサイモン&ガーファンクルの曲が往時を思わせ、機内アナウンスを模した上演前の案内が客席を劇世界へといざなう。楽園の二面舞台最奥を操縦席に見立て、そこから対角線上を飛行機内と見立てることで、客席がハイジャック犯に占拠されたかのような気持ちにさせる空間設計がまずうまい。

ネタバレBOX

 機長の石田真二(祥野獣一)と副操縦士の江崎悌一(北川サトシ)により運航されていた日本航空351便は、赤軍派を名乗る田宮貴麿(杉浦直)らによってハイジャックされ、北朝鮮へ向かうことを強いられる。客室乗務員の神木広美(秋月はる華)は乗客の命を最優先に他の客室乗務員と奮闘するが、新米の植村初子(吉永雪乃)はオロオロするばかり。その頃地上では日本航空専務の斎藤進(高橋亮次)が対応に苦慮するなか、運輸大臣の橋本登美三郎(齊藤圭祐)の代わりに政務次官の山村新治郎(山村鉄平)が自ら人質になることを申し出る。しかし山村には他に隠している家庭内の苦慮があった。

 事件にかかわった人物を実名で舞台にあげた勇気には感服したが、この上演を通して伝えたいテーマが見えてこないため、調べたことをただなぞっていたようになってしまった点が残念である。また状況の変化がすべて台詞で説明されてしまうため劇的な効果を殺いでしまっていた。さらに機内の様子や航空会社、関係省庁や議員が行く末を見守る様子に加え、乗組員のプライベートの描写が入ってきたことで情報が錯綜し、観ていて混乱した。いっそ機内の様子に的を絞ったほうがより緊迫感が増しただろうに残念である。

 俳優は皆健闘していたが、説明的な台詞のために深い共感を呼ぶようなものが少なかったのも残念な点である。そんななかでも実行犯に一時的に共感する様子を見せる沖宗陽子を演じた岡田さくら、冷静な指導教官深澤聡子を演じた下平久美子が印象に残った。
雨降りのヌエ

雨降りのヌエ

コトリ会議

扇町ミュージアムキューブ・CUBE05(大阪府)

2024/03/09 (土) ~ 2024/03/30 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「待ちわびていない兄の再来」

 扇町ミュージアムキューブのオープニングラインナップとしてまるまる1ヶ月、さまざまな企画を詰め込み劇団が総力をあげて取り組んだ公演である。

ネタバレBOX

 全4話からなる『雨降りのヌエ』は、長兄の四宮幸人が亡くなった2124年10月5日の21時に弟妹に起きた出来事を描いている。どの話にも共通して、客入れの挨拶を終えた若旦那家康が「私は死にました」と舞台に上がると物語が始まり、「兄」として物語に介在し続ける特徴がある。

「第夜話 縫いの鼎」は4番目に生まれた次女の優香理(三ヶ日晩)と夫の壮太(山本正典)が離婚届に判を押そうとすると、横から兄がくまさん判子を押してきて妨害する様子をコミカルに描く。二人とも幸人が亡くなったことはわかっているし、その場に立ち妨害行為をしてくる点も納得済みであるというところがこの物語の奇妙な点である。優香理は幸人の葬式に行こうとしているが、急に兄思いになった彼女の異変を壮太は見逃さない。どうやら家族にとって兄は邪険の対象だったことがここで示唆される。壮太の不倫を疑う優香理は葬式に行こうとしない彼を咎め、やがて矛先は兄へと……互いの腹を探ろうとする言葉少なな問いかけの応酬と、電動ケトルで湯を沸かす音でできる間が、この夫婦の心情を台詞以上に物語っていて面白い。

 急にSF色が濃くなる「第空話 盗んだ星の声」は、火星へと旅立つ宇宙船での珍事を描く。末弟の和(吉田凪詐)と並んでの宇宙船の最低客席に寝転ぶ友人の高橋隆也(まえかつと)は、傍らにいる兄がずっと自分たちを眺めている様子を気味悪がっている。3年かかる航路の最中は冷凍冬眠が必要のようで、あらかじめ必要な薬剤を渡されたのだが、英語の取扱説明書が読めない高橋は薬剤を全て飲んでしまい体が硬直しかかりパニックに陥っている。地球に何の未練もない二人のヤケクソ、体を固めた状態で寝場所を行き来する様子は面白かったが、ちょっと元気過ぎるように見えた。

「第蓋話 糠漬けは、ええ」は幸人のすぐ下の弟の康雄(大石丈太郎)が営む占いの館「きら星」が舞台である。息を吸うようにぬか漬けを食べる訪問者の楓智子(川端真奈)は、その臭いに子どもの頃兄から受けたトラウマティックな仕打ちを思い出した康雄に不機嫌な顔をされる。智子はやがて自分は体を乗っ取られて火星人になったことを告白し、和の火星への航路を案じる康雄を戦慄させる。いつの間にか兄の頭には宇宙人のツノが生えており、彼もまた火星人になっていたことが明かされる。今から100年後に訪れる火星人の侵略、黙示録的な未来世界がコミカルに描かれる。

 5人きょうだいの真ん中、長女の理子(花屋敷鴨)と兄の分身(原竹志)との対話「第形話 温温重」を観ると、四宮家における幸人の立ち位置がより鮮明になる。運転中の理子は幸人の分身と子どもの頃父親が起こした事故のことや、その父親の葬儀で見せた幸人の暴挙を咎める。幸人の分身はただ無表情に受け流すだけで、その様子に腹がたった理子は幸人の分身をクッションで散々に殴りつける。やがて理子はトランクのなかにある兄の遺体を県境に捨てにいこうとしているのだと告げる。かたくなな理子に対して幸人の分身がとる行動が常軌を逸してくる。いまにも泣き出しそうな理子を演じた花屋敷と、ずっと舞台上にいる若旦那同様に無表情ながら次々におかしな行動をとる原演じる兄の分身の腹のさぐりあいは見ごたえがあった。ドライブ中にサザンオールスターズの「希望の轍」がかかり、サビに入るタイミングで消音したり、扉の開け閉めや灰皿を回収する擬音を台詞で言ったりするなど、ここでも音とその間が台詞以上に雄弁である。

 本来不在であるはずの兄の幸人が常に物語の中心に位置し、死してなお弟妹たちに影響を及ぼし続けている4作を観ていて、私はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を想起した。4人とも兄の再来を待ちわびてはいないものの、生前素行がよくなかったからむしろ亡くなってくれて嬉しいかと思いきや、いざいなくなったらその不在に苛まれている点では、ウラジーミルやエストラゴンと近い心持ちだろう。しかしいつまでもやって来ないゴドーとは異なり、可視化された兄が具体的に行動を起こしていた点が独特である。その意味では別役実の『やってきたゴドー』の展開に近いものを感じた。

 番外編の「第糸話」は楽屋落ちとSFの要素を融合させた人形劇である。消息を絶った若旦那家康を探す劇団員たちの珍道中を、映像とアテレコでリアルタイムに紡いでいく。途中に入れ込む音楽やテレビアニメのパロディなど、手数の多い遊びを好き放題やっていて面白い。

 充実した短篇公演を敢行しただけでも瞠目だが、ほかにもトークショーや公演準備の公開、過去公演のリーディングや公開デッサンなど、企画力の高さが伺える内容であった。
新ハムレット

新ハムレット

早坂彩 トレモロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/03/22 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「開戦間際の風景」

 太宰治が太平洋戦争開戦間際の1941年7月に発表した初の書き下ろし小説であり、レーゼドラマである。

ネタバレBOX

 中盤までの大筋はほとんどシェイクスピアの『ハムレット』通りであるが細部が異なる。デンマーク国王のクローヂヤス(太田宏)は先王亡きあと間もなく王妃のガーツルード(川田小百合)と結婚した。そのことを受け王子ハムレット(松井壮大)は義理の父と実母に心の距離ができてしまう。侍従長のポローニヤス(たむらみずほ)の息子レヤチーズ(清水いつ鹿)のように遊学へ出かけることもできず、ポローニヤスの娘で恋人のオフィリヤ(瀬戸ゆりか)との関係もぎくしゃくしている。親友のホレーショー(大間知賢哉)から先王の幽霊が出るという噂を聞いたハムレットは、クローヂヤスに疑念を向ける。

 本作の特異な趣向は、序盤に登場する男(黒澤多生)がナレーターのような役回りで作品を進行している点である。男は原作にある「はしがき」を読み上げて作品解説を加え、作中描かれている内容を要約し観客に伝えてくれる。男が初登場時の人物の名前や役柄を読み上げたとき、ティンカの音とともに和洋折衷の衣装を身にまとった人物に光が指し、顔を上げる演出が『忠臣蔵』の「大序」のようで面白い。このように物語の語り部として作者つまり太宰治自身を舞台に上げたことでメタフィクションとしての趣が強くなっている。木製の足場で組まれた舞台機構を回転させながらその近辺で物語が進行するというのもこの傾向に拍車をかけた。上演するには長すぎる部分を男の語りで端的に済ませたことで観やすくなったという利点があり、作品が書かれた1941年の時代状況を踏まえたうえで鑑賞するという意識もまた持ちやすくなった。

 また、たむらみずほ演じるポローニヤスの存在も本作の興味深い趣向である。作中ではハムレットにけしかけ王殺しの劇中劇に加わり、怒りを買ったクローヂヤスに思いの丈を述べたあと殺されてしまうという役回りである。これだけだとただの悲劇の登場人物だが、侍従長というよりは田舎侍のような風体、ガニ股でコミカルな動きでこの役を演じたことで、あたかも道化のようにももう一人の狂言まわしのようにも見えて面白い。

 幕切れは戦争が始まりレヤチーズの乗った船が沈んだ知らせを聞き、自傷行為に走るハムレットのもとへガーツルードの入水自殺の報が入るという、太宰独自のものである。中盤まで登場していた語りの男はいつの間にか消えて、太宰そのひとが投影されているかのようなハムレットの嘆きが耳に残る。開戦と同時に訪れるカオスは作品が書かれた時代、そして現代と二重写しになっていて見応えがあった。
後鳥羽伝説殺人事件

後鳥羽伝説殺人事件

Alexandrite Stage

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2024/05/04 (土) ~ 2024/05/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白かったです。

ハムレット

ハムレット

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2024/05/07 (火) ~ 2024/05/26 (日)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★

今回は、体調のせいか前半はのれなかったのだが、後半は舞台のセリフがビンビン響いてきた。とくに4幕4場のハムレットのいわゆる第4独白ははっとさせられた。イギリスに派遣される途中、ポーランドへ向かうフォーティンブラスの軍勢を見て、大した意味のない狭い土地をめぐって戦争する愚を語り、つづいて「思考の4分の1は知性だが、残りは臆病だ」という。ハムレットが自分の不行動・逡巡を、知性のもつ臆病さ(慎重さ)として自省する。400年前より、人々の教育程度があがり知識は増えたが、行動力の落ちた現代の我々にとって刺さる話だ。「これでいいのか、いけないのか(小田島雄志訳)」の、死(自殺)の誘惑とたたかう第3独白より、よっぽど重要だと思う。
実はこの第4独白、主に3種の原テキストのうち、Q2にはあるが、最も完成形とされるF1にはない!!!! この重要な独白がないバージョンが基本テキストとは!。当然、現在の上演でもカットされる場合がある。

「ハムレット」はなぜこれほど評価が高いのか。私は今までぴんと来なかった。今回、知性に足を引っ張られて行動できない姿が、非常に現代的であることに気づいた。シェイクスピアの主人公の中でも、これほど知的で内省的な人物はいない。レアティーズが父の怪死を知って、民衆をたきつけて王宮を攻めてくる単純な行動とは、まさに対照的だ。ハムレットはそれでいて退屈な人物ではなく、諧謔や機知もある。与えられた任務(運命)の重みに加えて、人物としてのふくらみと面白みがある。この芝居はハムレットの比重が大きすぎて(出番もセリフ量も)ハムレット役者次第で芝居の成否が決まる。怖い役でもある。(頭はいいが、他人を陥れるために知性を使うイアーゴ―とも違う)

結局ハムレットは最後まで復讐を行っていない。クローディアスを討つのは、彼らの罠にはまった怪我の功名にすぎず、みずから能動的に行動したものではない。レアティーズとの試合に向かう「覚悟が肝要だ」という肝のせりふも、実は受け身の姿勢である。どんな事態に臨んでもひるまない、ということである。演出の吉田鋼太郎は、ハムレットは「人を殺すとはどういうことか」に真っ向から挑み、「殺してはいけない」ということを描いたと述べている(パンフレット対談)。

その通りだが、一方、ガートルードの寝室で、物陰に潜んでいた人物(ポローニアス)のことは、何度も短剣でめった刺しにしている(今回の演出)。明らかに殺意が見えた。それは、相手を王と思ったからと語る。復讐を遂げようと思ったからというわけだ。(しかし、ここに来る途中で、祈る王を見て通り過ぎてきたのだから、自分より先回りしていることはあり得ないとわかるだろう。芝居には出てこないが、ハムレットはどこかで寄り道していたのか。それはさておき)つまり「殺すことを否定する」のと矛盾する。このようにシーンとシーンの間に矛盾があるのが、ハムレットの難しいところだ。だから、答えが出ない。そして、そのわりきれなさが「ハムレット」がいつまでも演じられ、語られ続ける理由なのだろう。

柿澤勇人のハムレットは予想以上によかった。登場した宴会の場で、本当に聞こえないほどの小声。亡霊の「誓え~」への反応の速さ、第4独白のしみじみした語り等々。墓場で「俺はオフィーリアを愛していた!!」と力いっぱい叫び、オフィーリアの遺体を両手で抱え上げ仁王立ちする姿は、心技体の一致した名場面である。オフィーリア(北香那)の狂乱の場も、バレエのように回り、舞い、幼子のように歌う。広い舞台いっぱいに舞う姿は可憐で美しく、素晴らしかった。

すぐ吉田羊の「ハムレットQ1」がある。見て、何を感じることになるだろうか。

ネタバレBOX

前半1時間45分(休憩15分)後半1時間35分とかなり長い舞台。ガートルードの寝室の場(3幕4場)のハムレットが入ってくるところで前半を幕にし、後半はシーンを少しおさらいして、そこから再開する。流れを途切れさせないための工夫だろう。通常はその前の、王の祈りの場までで区切ると思う。
除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

除け者(ノケモノ)は世の毒を噛み込む。

キ上の空論

新宿シアタートップス(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

キ上は何作か観ているけれど、中島氏が「今、僕ができる最高傑作」と言うように、確かに傑作だと思う。もちろん、好き嫌いはあるだろうが。
前作『けもののおとこ』も観劇したが、個人的には圧倒的にこちらが好みである。
寝取られの性癖や医療機関を通さない精子提供など、なかなかセンシティブで重いテーマだが、演出がポップなので必要以上に暗く重厚になることもなく、性的なシーンも軽やかでコミカルですらある。
ラストがいい。
観劇後は、心が重いような、でもどこかふわふわしているような、不思議な感じがした。
役者陣は皆とてもいい。それぞれの静と動の表現が素晴らしい。

ネタバレBOX

『ピーチオンザビーチノーマンズランド』の三崎(女)と、星野(男)が結婚し、30代の夫婦として登場するが、ピーチに出ていた役者が違う役で出ていたり男女逆で出ていたりするので、ピーチを観た人は混乱しないように、ピーチの配役は忘れて観ることをオススメします。
TOMORROW

TOMORROW

劇団伽羅倶梨

KARAKURIスタジオ(大阪府)

2024/05/10 (金) ~ 2024/05/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ああいうことが出来たらいいなあと思った。
人が人を成長させる、日頃からのコミュニケーションは大事。
故人を思い出して、涙が止まらなかった。
結局は本人がどのように受け止めるかですね。
お芝居観られて良かったです。
ありがとう😀

609号室からの脱出/ 口を開け、息だけを吐け

609号室からの脱出/ 口を開け、息だけを吐け

演劇集団nohup

RAFT(東京都)

2024/05/11 (土) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

演劇集団nohup&劇団よけいの事 の2団体によるコラボ公演。公演は4回だけだが、すべて満席(完売)。勿論 作・演出は別々だが、どちらの作品も基本は会話劇。当日パンフに nohup主宰の朝比奈史樹 氏が「約10年ぶり、大学以来となる志島との合同公演」と記している。どちらも会話劇だが、ラストの観せ方が違うため印象は全然異なる。

まず「609号室からの脱出」は、登場しないヒロインが2人の男をラブホテルに閉じ込めて といったコミカル調の物語。ラストは、そのような状況になった事情などの謎解きと脱出を…。一方 「口を開け、息だけを吐け」は、今事情を反映させた内容で 途中からサスペンスミステリー調になる。ラストは観客に問い掛けるような。端的に言えば「609号室からの脱出」は人間ドラマ、「口を開け、息だけを吐け」は社会(世間)ドラマといった印象を受けた。その違いをコラボ公演として観せる好企画。

チラシ(裏面)に あらすじが書かれており、「609号室からの脱出」は 2人の男がラブホテルの一室で交わすチグハグな会話、その漂流するような内容から夫々の境遇と状況が浮き上がる。「口を開け、息だけを吐け」は、当日パンフに 劇団よけいの事 主宰の志島はこ さんが「6年ぶりの作演となり、その間に世は刻々とナイーヴになり、様々な痛みが可視化され続けている。本作は器用に生きられない人々の痛みを描いている」といった旨を記している。勿論 コロナ禍のことで、不寛容な世の中になったことを意識しているだろう。息を吐け どころか生き苦しさがしっかり描かれた作品。

因みに、演劇集団nohupは「サイボーグ会社員 美々美」で グリーンフェスタ2024 優秀賞を受賞した新進の劇団。今後 注目していきたい。
(「609号室からの脱出」50分、「口を開け、息だけを吐け」60分 転換兼休憩5分) 追記予定 

ナマリの銅像

ナマリの銅像

劇団身体ゲンゴロウ

新宿スターフィールド(東京都)

2024/03/27 (水) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/03/27 (水) 19:00

重い年貢にあえぐ農民の不満のはけ口としてのパチンコ屋での煽り放送を担当していたバイトの若者を天草四郎とすることで、彼の言葉が神の言葉として受け入れられる過程を描き、島原の乱の裏側に迫った意欲作。
着想の巧みさが物語の展開と見事にマッチし、そこにパチンコ屋で落ちている玉を拾って聖像を造る孤児を絡ませて、息詰まる舞台を創り上げていた。

もう、どうにもトまらないっ!!

もう、どうにもトまらないっ!!

海ねこ症候群

シアター711(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/10 (金) 13:00

95分。休憩なし。

ゴースト&レディ

ゴースト&レディ

劇団四季

JR東日本四季劇場[秋](東京都)

2024/05/06 (月) ~ 2024/11/11 (月)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/10 (金) 18:30

175分。休憩なし。

なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/05 (日) 13:00

130分。休憩なし。

貧乏神シャバダバ

貧乏神シャバダバ

近藤一彦プロデュース

オメガ東京(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/11 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

小泉瑠美さん出演。
オメガ東京は荻窪の住宅地にある地下の小劇場。見やすくて好きなところです。上演中に客席パイプ椅子の音がギシギシ聞こえますが、それも味だと思うようにしています。

演目はコメディで、死期の迫る老女の「徳大寺」家が貧乏神にとりつかれるお話。公式には「裕福な家族が貧乏神と過ごすワンナイトカーニバル」と。全員が個性的でおもしろい人ばかりです。
ちなみに「徳大寺=とくだいじ」の漢字はどこにも書いてないので不明だったのですが、いろいろ探したところ柊木みずほさんのSNSで「徳大寺美咲」と書かれていたのを見つけた次第です。

うみぐちうみ さんはプロフィールに「20代から乳母・老巫女と、老け役の怪演で評価を得る」とあります。「菅生ゼミ休講のお知らせ」や天才劇団バカバッカさんの舞台で何度も拝見していますが、ご自身もおっしゃっている「おばちゃん」役がお見事です。ときにものすごい表情をしたり、巧みに演じられています。

小泉さんの舞台出演は一昨年の朗読劇「たすき」以来、演劇としては8年前の「口紅」以来です。ブランクはまったく感じさせません。特徴的な低いお声で、イメージ通りの強い女性を演じられました。
終演後にフリーの面会があり、小泉さんとお話させていただくことができました。久しぶりの舞台であったけれども厳しい稽古のおかげで感覚が戻ってしっかりできた、というようなお話をうかがえました。2012年の「ファミリー・ウォーズ」のお話をするとすぐに「赤城美香!」と役名を言ってくださったり、昔からのファンとしてはとても嬉しい時間でした。
余談ですが、自分は小泉さんのアイドル時代にあった握手会などのイベントに参加したことがありません。アイドリング!!!卒業後の2011年舞台「銀座の恋人たち」で面会させていただいたとき、小泉さんから握手の手を差し伸べてくださり、感動したことを覚えています。今回も同様に差し伸べてくださり、13年ぶりの握手に感激しました。

思えばコロナ禍になってから、役者さんと握手すること自体がずっと無かったなあ、と。そういう意味でも感慨深かったです。

ネタバレBOX

橋本樹 :貧乏神
星野光代 :老女(当主)
小泉瑠美 :母(当主の実子)(茜)
藤原シンユウ :父(婿)
柊木みずほ :娘(姉)(美咲)
水嶋ミナ :娘(妹)(アリサ)
うみぐちうみ :徳大寺家の家政婦(ハットリ)
長万部純 :借金取りの銀行員
工藤俊作 :音楽プロデューサーを名乗る詐欺師(サイトウ)
吉田来深 :弁護士を名乗る詐欺師
吉永真希 :遺言書を管理の人(公証役場?)

当主の老女は死神に、翌日の昼ごろが死期と告げられる。
死神に示されておどろおどろしく登場した貧乏神の風ぼうは、若い可愛らしい女性。
貧乏神は何もしない。徳大寺の人間にだけ見える。
母(老女の実子)はヘリコプターで登場。それを見て33+1人の借金取りが押しかける。
父(婿)は結婚前に6人の女性に結婚詐欺をしていたかと思いきや、誰もそう思っておらず、今でいう投げ銭だった。取り立ての弁護士を名乗る女性が実は詐欺師。
妹は歌手になれると思って金品を渡していた男は実は詐欺師だった。
ひきこもりの姉は実はクローゼットで会社を経営していた。妹と詐欺師のことも調べて知っていた。
母の資産が大量にあることが分かり、貧乏にはならないとたかをくくった。
老女の遺言書では、全財産が実子に相続されることになっている。
最後に何もしなかった貧乏神は姿を現して強烈な風を起こす。
シーンが変わって、死神が老女を迎えに来る。

それで、ぷつんと終わります。
老女が死んでも貧乏になるということは無いはずですが、そこは見る人に委ねられたのだと解釈しました。
なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かった。4つの時代が重なった時間SFコメディ。風呂敷の畳み方の肝となったアレは、あの時間SF舞台のリスペクトなんかな。めちゃくちゃ粋だった。

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/05/10 (金) 19:00

『想い出せない…』を観た。静かな演劇だが、起伏はある。(3分押し)72分。
 1994年に緑魔子を迎えて書き下ろした作品。「芸能人」の由子(兵藤久美)と古株マネージャーの安井(大竹直)と若い付け人の貴和子(南風盛もえ)が列車で旅する間のさまざまな会話。由子の芸能人というキャラクターのせいもあって、会話の起伏は『阿房列車』より大きいが、エンディングの美しさはまた一味ある。

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