満足度★★★★
素数の証明
面白い。130分。
ネタバレBOX
シカゴ。偉大な数学者・ロバート(佐藤誓)が狂った末に死ぬ。父の面倒をみるため、青春を捧げた娘のキャサリン(清水穂奈美)は色々な喪失感を抱え、姉・クレア(李千鶴)の同居の話に反発する。葬儀の日、キャサリンとロバートの弟子・ハル(金丸慎太郎)は結ばれキャサリンの表情も明るくなる。キャサリンから、世紀の数学的証明が記されたノートをみせられたハルは、ロバートの偉大さを再度讃えるが、キャサリンはそれは自分が書いたものだと言い張る…。
父から数学者としての才能を引き継いだにも関わらず、姉がNYに転居してしまったゆえ、父の面倒を見続けるため碌に大学もいけなかったキャサリンの鬱憤が爆発する中盤。好きじゃないクレア(数学も碌に知らない)から疑われ、好きなハルにも疑われ、それでも自分の証明だと激昂するキャサリンの、理解されないもどかしさとか寂しさとかプライドが胸を打つ。
父が狂ってしまったシーンも挿入しハルたちが数日で検証を試みたことから、キャサリンの証明であることに信憑性が出てきたところで幕。
父の面倒をみつつ書いたその証明は、孤独なキャサリンの存在(意義)の証明のようなもので、その存在に光が射し始めるといった話。証明することで世界(他人)に認められる人間の孤独と再生を描いたようにみえた。
満足度★★★
スナップショット
面白い。140分。
ネタバレBOX
L字な客席挟み込みの舞台。演者が色々動くので見にくいことがないのがいい。
二十数編の小作品群というのか。つながりあったのかもしれないけど、ちょっとボリュームがあるかなと。もうちょい時間的にコンパクトなのが良かったな。客側に半カラミな演出とか、ちょこちょこユニークなとこもあるのも○。ゆるめに刺激的な印象。
役者はみんな達者だった。
宇宙の話から復縁を迫るキテレツな女の子(菊池佳南)のは率直に面白い。相手の伊藤毅?のリアクションとの相性もいい。伊藤のパンク話も好きかな。
満足度★★★★
女の子ver(たくとEND)
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。90分。
ネタバレBOX
転校の多かったさおり(佐山花織)は、かなこ(松田彩)とかにいじめられてた小学校時代に、たくと(橋本昭博)の絵に救われていた。高校生になって、たくとに影響され絵を描いていて、ごろう(藤井悠平)と付き合いだしても、どこかでたくとを想うさおりは、かなこの話を聞いて雨の中新宿へ向かい。会えるかもわからないたくとを探し、そして出会う…。
出会いとすれ違い(親のコネでたくとに仕事の便宜を図ったことがバレた)を経て(時系列をバラして)、当日の客がたくとと付き合うかごろうと付き合うかを選択するというスタイル。たくとと一緒になったさおりは二人で絵を描き幸せな笑顔を見せるという話。
話的には、落ち着いたような印象。悪く言えば(舞台的には)平凡な気がする。時系列を入れ替えているせいか、どーなるんだ的な感覚も薄め。
ただ、タイトルにある「もしも」を印象付けるような作風は良かった。さおりが雨の中たくとを探し出会った「必然」のくだりも面白いと思う。「手を差し出したから…」というトコは、「もしも」という言葉をひっくり返すパワーを感じた。
ポップな空間を作り出す手腕は相変わらず上々。ところどころの照明具合もいいし、さおりが空間に絵を楽しげに描くシーンとかいい感じ。序盤のOPのような音楽とパフォーマンスが入り混じったシーン(しゃぼん)とかとても好き。
満足度★★★★
愛情
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。90分。
ネタバレBOX
退職金2000万を強奪された譲治(水越健)は、バラバラになった家族の幸せを取り戻そうと、野口(遠藤昌宏)の誘いに乗り、タイジン(たたいてかぶってじゃんけんぽん)の企画に参加する。顔出しはまずいので、マスクを被り愛情仮面と名乗り、後が無い人生から抜け出すべく戦いを決意する。真面目に生きることしかない譲治の唯一の特技である誰にも負けないじゃんけん能力でトーナメントを勝ち進むが、準決勝で面倒見の良い猿渡(有村優太)と対戦することになる。いままでピコピコハンマーだった武器がナイフに変わり苦悩する譲治は、あいこで時間を稼ぎ、ナイフの柄で猿渡を撃破する。やっぱり不遇な人生を歩んできた企画参加者のサユ(山中沙織)の据え膳も喰わず決勝に臨むが、武器が拳銃に変わることとなる。そして息子の直樹(桜井翼)が対戦相手として目の前に現れる…。
常勝の譲治は一発目で負け、直樹が銃を譲治に突きつけると、後日談のようなシーンに変わり、幸せを取り戻した家族の姿があわられる。実際は、譲治は、妻・今日子(金魚)に抱かれヒーローとして死んでいた…という展開。
話の展開自体は好み。中盤からどんどん面白くなった。マスクな譲治の姿がどんどんかっこよく見えたとも言える。
金が無くなったことでの家族の崩壊と復元への希望、そして終焉という箇所で厚く描写してもらったら更に良かったかな。譲治が(家族にとっての)ヒーローとしてよりグッとくるラストシーンになったと思う。譲治の作文が直樹との戦いで流れるが、唐突といえば唐突かなと。全編通して家族の中の譲治という位置づけをハッキリさせてもらったほうが好みだった(今日子との回想もそうだし直樹との繋がりとかも濃い目で)。なんとなく、金が原因で人生破綻しそうな「男」というように見てしまってた。
とはいえ、家族のためであっても命を捨てる行為がヒーローなのかという正論もでそうだけど、劇中であった「正論は控えめに言え」という風情で良いかなと思う。
満足度★★★★
旅立ちの歌
面白い。130分。
ネタバレBOX
グッドマン(橋本一郎)の父が死に王位不在となった国で、グッドマンは王様になる人間を選定すべく森に試練をもうけ、目ぼしい国民を(目的を明かさず)送り込んでいた。ルーシア(前田無有子)の妹・エミリー(まじまあゆみ)は、母イエーダ(比嘉建子)の病に効くからと青い草をとってくるように言われ森に入る。2年前に森に入ったルーシアと関係のあったハワイ(あや)の助力などで試練を突破していくエミリーは、(皆と)生きるため牛を殺し試練を突破、王に就く…。
不真面目な雰囲気の立ち上がりから徐々に登場人物の思惑が見えてきて、話の面白さがアップする。正義一辺倒なグッドマンに対して、エミリーの父ロイゼン(草野智之)や部下シュナイル(石毛セブン)は、人間の黒い部分の必然とそれを飲み込んで生きていくことを舞台で提示する。牛を殺したエミリーやエミリーの不正を黙認しろとエルザ(石川幸代)に金を渡し続けるグッドマンの娘アリ(柳瀬晴日)は、ロイゼンが言ったように、墓場までそれを持っていく覚悟でもって明日を生きていく。
笑えるところもしっかり散りばめ、その実、成長することの苦々しさを見せてくれたいい作品。
クールビューティなハワイの、コミカルなつかい方が上手い。十徳ナイフでノック(葵めぐみ)にワー(だったか)と向かってくとことか最高。
開演押しますアナウンスから小芝居(結構面白い)に入り、本編に繋げる手法は良かった。いい感じに序盤の舞台の空気に馴染めたというか。
EV前の受付は、きちんとEVに乗った順で受付しますというアナウンスをすべきと思う。
満足度★★★★
太陽風
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。
ネタバレBOX
ウェゲナー(丹羽隆博)…学者。大陸移動説を検証する。
エリザ(斉藤優紀)…ウェゲナーの助手。やる気をなくしたウェゲナーにハッパをかける。
敬虔な女(新本明恵)…キリスト信者。ウェゲナーの元彼女。
悪魔(古崎彩夏)…悪魔。
オーストラリア大陸(辻明佳)…ウェゲナーとエアーズロックにいく。
南極大陸(金子優子)…マグマの熱を下げ?地球の磁場を変えて一度地球を終わらせようとする。
南アメリカ大陸(愛梨)…アフリカ大陸が好き。
北アメリカ大陸(小松金太郎)…南アメリカ大陸が好きだけど、失恋して原爆を使用する。
アフリカ大陸(熊谷裕弥)…南アメリカ大陸が好き。
ユーラシア大陸(長野諒子)…竹やりで闘う。
ウェゲナーとエリザが時空を超えて大陸移動を検証し、地球のピンチを救う…。地球科学的な話は詳しくないけど、小難しくなく抵抗なくつくられてて良かった。
歴史的な流れと擬人化された大陸たちの関係性とかの間をぬうように、ウェゲナーとエリザの二人が冒険するような展開。人間と地球の関係が良い悪いでなく、過去から伝わって先に進むというテーマに繋がってる、その惹きつけ方が上手いなと。
ウェゲナーとヒットラー(偽)のアクションは見ごたえあった。ここらへんからノッてきた。舞台が加速された感じというのか。オーストラリアとユーラシアの戦いシーンも熱のこもった感じが伝わってきてよかった。
ウェゲナーとエリザのコンビはどちらもいい演技だった。北アメリカ大陸のいやーな感じも上手かった。
話にノレるまでに一つ二つ惹きつける要素があってほしかったとは思う。
満足度★★★★
ココ
面白い。80分。
ネタバレBOX
へんしんをテーマ?に人間が存在する概念めいたものを描いたような作品。
小難しいことしてないけど、ちょこちょこ感覚にひっかかるような見せ方をするところに惹かれる。どきどきわくわく感というか。次は何するんだ的な。興味を湧かせる力はすごいあると思う。
教育的道徳的女教師(野上絹代)が、ふっきれたシーンは単純に面白い。大道寺と山崎の小学生演技も良かった。
ATの岩井秀人の作家や役者らにつっこんでいくスタイルは面白い。あと、催眠術師の話は笑えた。作品でボツになったという「ハエ」ネタは面白そうと思った。
満足度★★★★
モンド
面白い。80分。
ネタバレBOX
モンドセレクションを愛でる芸人らの集まりに新人・孝太郎(井田雄太)が加入する。そこに、ハル(久保雄司)の相方・宗助(柴田順平)とハルの恋人・シオリ(丸山奈緒)がやってくる。モンドに入れ込む面々を理解できない宗助は単独ライブを控えながらネタ作りをしないハルにイライラするが、3年連続金賞受賞のチョコパイを食すと、モンドの魅力に襲われてしまう。ハルにイライラするシオリは、チョコパイを人質に宗助を連れて逃げる。戻ってきた宗助は、ハルに勝負を挑み、ハルに100均のチョコパイを食べさせ、ハルのモンドしか食べない誓いを破らせる。のたうつハルだったが、その内には長く芸人やってて売れないもどかしさが波打っていた…。
相変わらずニヤニヤさせてくれる。序盤ののっそりしたような独特な空気感が終演時には客席を暖かく満たしてくれる。
モンドセレクションという微妙な題材ではあるけど、たべっこどうぶつとチョコパイ(雪見だいふくも)で、しっかり笑いに繋げていた。まあ、微妙な題材のほうが劇風に合ってる気もするけど。
しっかり笑わせてくれたけど、ブレイクできない芸人の焦りとか迷いとかともっと絡めてほしかった。「自分と闘っている」ハルの部分で、そこらへんの熱をもっと感じたく思った。まあ、面白かったからいいけど。
モンド愛好会の5人が壁向いて振り返るシーンは大いに笑った。
満足度★★★★
羊
面白い。30分。
ネタバレBOX
ひつじと羊飼いのナチュラルテイストなパフォーマンス(毛を刈る、乳搾り、おしっこ、食事)が続いたと思うと、1階に狼?が出現。エスカレータを降りていき、パニックになったひつじ達は柵の外へ逃げ出す。狼に一匹捕まって噛み付かれているところに羊飼いが叫び、ナベを打ち鳴らしながら狼を追っ払い、皆引き上げていく…という30分。
フリースペースで活きる作品。スローで平坦といえば平坦だけど、なんとなくニヤニヤしてしまう面白さがある。狼がエスカレータを降りてくるシュールな感覚と、ひつじとか羊飼いのナチュラルな感覚の融合とか気に入った。
無料ってこともあるけど、子どもでも大人でも気軽に楽しめると思う。
満足度★★★★★
讃美歌
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。100分。
ネタバレBOX
フサエ(松本哲也)…97歳。県庁勤務時、ナンパされて結婚した。クリスチャン。
真知子(山像かおり)…フサエの娘。夫が失踪した。フサエを介護する。久美子と康太が心配。
久美子(笹峯愛)…真知子の長女。夫の転勤のためドバイ行きを決意する。頼りない康太にイライラしている。
康太(野本光一郎)…久美子の弟。東京でバイトリーダーしてる33歳。久美子と不仲。下北で購入したパーカを愛用。
信夫(佐藤達)…久美子の夫。変わり者。久美子の不完全な掃除について幸せを感じる。
聡美(伊達香苗)…一人っ子であったためキリスト教の神父の道を歩む。結婚したい35歳。
須藤(尾倉ケント)…フサエの施設のスタッフ。聡美の彼氏。暴走族であった頃、光といい仲だった。年上好き。
光(富永瑞木)…真知子の兄の子。お見合いから逃げてきた。
宮崎県の老人施設の一室。久美子のドバイ行きを受けて久美子や康太が帰省し顔をあわせるが、ピリピリしたまま。フサエの面倒をみてた真知子が腕を骨折し、日本から離れたくないけど離れなきゃならない気持ちの久美子は、いつまでもフリーターで子どもな康太に怒りをぶつける。康太は大丈夫だと啖呵をきり、母子で寿司を食べながら、信夫の悪口に花が咲く。宮崎に戻った?康太はたどたどしくもフサエの世話を焼き、フサエは夫にナンパされた話を康太にきかせる…。
笑いと苦々しさと暖かさがミックスされた、上質な家族物語。役柄と話も、いい感じに混ぜ合わさってる。テンポも良い。
久美子らの話とは別に、聡美と須藤が言い争った中の「親は遠くにいる子の話しかしない」というセリフが響いた。微妙にこどもで、心配が絶えない康太のポジションが効いてる。親の心子知らずな、ガーンと響く感じが非常に気に入った。
真知子を演じた山像が上手い。とっても。信夫のキャラもいい。気色悪さと飄々とした雰囲気のバランス感覚とか。
寿司食べながら信夫の悪口を話てたという康太に、楽しかったでしょとあっけらかんというフサエに笑った。あと、啖呵切った後に牛が歩いてるとはしゃぐ康太に対して「もー」と久美子に言わせるセンスが抜群と思った。
満足度★★★★
青が散る
面白い。130分。
ネタバレBOX
「Don't Be a Stranger!」(二十歳の国)
安東(亀山浩史)…バスケ部に原とともに入るもサボりだす。小西と付き合うも納得いかず別れる。
和田(水野拓)…あだ名・ベン。カラオケは嫌い。吉井への想いを秘める。
小西(井上みなみ)…寂しがり性質。安東にふられる。木村と仲良しだったけど木村が妬まれた際に疎遠となる。隠れ巨乳。
滝沢(斉藤マッチュ)…若干不良。卒業できなかった。カラオケが好き。
木村(湯口光穂)…バンドやってるノブナガ君と付き合ってるという噂を広められ、ハブにされる。
吉井(石川彰子)…ベンと仲良し。バレンタインに原に告るも逃げられ、ショックから登校拒否になる。
原(竜史)…バスケ部主将。安東のことを気にかける。青春をバスケに捧げるも怪我をして気持ちの行き場がなくなる。
歌ありダンスありのホロニガ話。話自体等身大で地味でもあるけど、胸に迫る感が上手い。メンタル的に成長できてない安東とかその安東に上手く接せられない原とか、地味でひょうきんでタフそうな吉井の失恋とか、人間関係に嫌気がさす木村とか、いいトコついてる。ヒネリがない分ストレートに響いてきた。タイトルも。
「学級崩壊」(うさぎストライプ)
亀山…医者?湯口と一晩ともしたけど、ふられた。
水野…患者。たぶん容姿がくずれるような奇病にかかってる。
井上…学生時代、若干ハブられてた。アイドル志望だけど、卒業後、風俗店に勤務。斉藤と動物園に行く。
斉藤…医者? つまらん話をする湯口が理想と語る。
湯口…斉藤の彼女。亀山をふって、斉藤とも別れる。
石川…水野の妻。水野のいじわるな要望にも応えつづける。
竜史…作家死亡?学生時代はイケてた。余命短い。井上に思いをよせる。
いないかもしれない(動)と同じようなスタイル。独白とパフォーマンスの構成。ノート千切って投げ合ってって演出に、人生の乱雑な楽しさと寂しさが垣間見える。くしゃくしゃになった気持ちのぶつけ合いというのか。
バックグラウンドをちょっとだけ見せる独白スタイルは好みだけど、骨子が見えにくいかなと思う。もうちょい鋭く浮き彫りした形で提示してほしかった。
スクワット演出はなにげに好き。井上が斉藤の紙くずをハシハシ払うのがかわいい。
満足度★★★
禁断の言葉
面白い。75分。
ネタバレBOX
相変わらずしゃべっていることが良く聞き取れない舞台。4つの作品をひとまとめにしたということだけど、元ネタすら良く知らない。そのくせ惹きつける要素があるのか、眠くなることもなくただただ演技(と映像)を見つめてしまった。
一応、聖火ランナーな金正恩?(宮崎吐夢)の登場からコインロッカーに捨てられたうちの一人(佐々木幸子)との戦いのシーンは愉快だったけど。
もうちょい妙な演出に振れてもらったほうが全般的に楽しめたかなと思う。
OP前の北区?の子供の映像はなにげに面白かった。禁断の言葉がクリ○リスだったのにはニヤっとしてしまった。
満足度★★★★
白鯨
面白い。120分。
ネタバレBOX
日露戦争後の日本の僻地。断崖の地にある海賊と奴隷(海女)の末裔たちで構成される村・獄崎に、政府の任命を受けてある企業(玄海憂鯨社)が視察にくる。なんとか認められて繁栄を得ようとする村民らだったが、企業からは海女に潜りをしろと依頼がでる。村民らから蔑まれている海女に対して不安を抱く村民を気にするでもなく、一番の潜り手であるイサナ(椎名りお)が潜ることになる。難所での潜水に難儀しイサナは溺れてしまうが、その祖母(鈴木めぐみ)が潜水し目当ての石を取って戻るも死んでしまう。企業もこの村から手を引きかけるも、繁栄を願う村民の心に応え、掟を破りイサナは何度も海に潜り石を取りつづける。企業から認められることは間違いなしと喜ぶ村民らだったが企業(国)の狙いに気づき、一転企業と戦うことを決意する…。
戦いが始まってからのダイナミックな舞台効果と紙吹雪効果で舞台を盛り上げる。獄崎と海女がメインの舞台ではあるが、玄海憂鯨社会長を演じた板垣桃子の堂に入った気迫がやはり凄い。双方の鍔迫り合いで盛り上がったという感じである。ちなみに言えば、同秘書の池下重大の落ち着いた(それでいてひょうきんな)演技も素晴らしい。逆に言えば、獄崎や海女の(若手の)気迫がもっとあってほしかったかなと思う。まあ、話的にも、ほぼ部落の中だけで生活していた獄崎や海女の日常の幸せを願う心と、日本の未来を憂う会長の心意気の差という表現ともとれるけど。
海神の怒りとかカミカゼ(台風)の影響もあったが、結局村民らはちりじりとなり、時代が進み公園となった地で独りイサナは果てるというラストで、時代の流れに個が飲み込まれ終幕となる。なんだかんだで気を抜けない緊迫し、時に派手な演出の120分でありながら、ラストの静かでスッと飲み込まれるようなラストが素晴らしいと思う。終わりととるべきか始まりととるべきか。
満足度★★★★
治療
面白い。120分。
ネタバレBOX
浅井(いしだ壱成)…教師。ZRに一度だけ?参加し、輪姦に加った。
今岡(大佐藤崇)…熱血系教師。実はロリコン気味。
野々口(三濃川陽介)…冷ややかで熱意のない教師。
三代(ジジ・ぶう)…教師。娘がZRの被害者。浅井を追い込む。
山野辺(山中アラタ)…ゴシップ雑誌編集。ZR問題について、逮捕されなかった人間を取材する。
香(椿かおり)…ZRでの勧誘や見張り役だったが逮捕はされず。レーシックより優れた視力回復治療法を確立する。
山口(山口奈緒子)…上手くいってない際に出会った香に憧れた助手。香を自分のことのようにサポートする。
暁実(辻井彰太)…香の息子。ZRの件でいじめられ、また逆にいじめを行う。
スーフリ事件をモチーフに過去の過ちが現在に襲い掛かってくる恐怖、家庭や人生を破壊する恐怖を描く。
母がサークルに関与してたと発覚して身も心もボロボロになる暁実が不憫といわいえ、狂っていく様は面白い。そしてそれに対する浅井の振る舞いがまた面白く描かれる。
一回だけの過ちなんだと嘆く浅井が徐々に追い詰められいくかと思えば、しれっとヒールな表情を見せる。クラスメイトが飛び降りたことで暁実に自首を薦め、香の良心をねじ伏せ、三代に娘はサークルの見張り役だったと告げる。
レーシック問題や教育現場のイザコザとかマスコミの犯罪への姿勢など色々ぶっこみ120分に纏め上げる手腕は見事。複数のエリアで展開する物語も見にくくなくスピーディでさえある。
悪な表情の浅井が立ち回る終盤のアクションとかいい味付けと思う。ラストの表情の意味深さもいい。結局、人が過去の悪行をホントウに反省することなんてあるのかと疑ってしまうような展開。時が人を変えるなんて間違っているのだろうかと。
満足度★★★
Mrs.fictions×鋼鉄村松
面白い。
ネタバレBOX
「毒を飲むより苦しいなんて」(Mrs.fictions)
熱意もなく流されるように生きている死彦(須山造)と同じようにコレといった意思のない儚奈(長谷美希)の恋愛を描く。
ATで言ってたとおり、ロミジュリをやるというより、その苦しさのエッセンスを抜いて構築した作品。バイトの先輩らに誘われて参加したバンドにのめり込むでもなく、なんとなく儚奈と付き合いだした死彦が、バンドが脚光を浴びはじめた矢先に脱退する。ギターロミオ(岡野康弘)の分ってくれる人に言えという言葉に押され儚奈に会いに行く。熱烈な想いが双方にないけど好きだという、微妙な感覚を打ち明けた二人は、ロミジュリの(マイナーなシーンの)芝居を楽しむ…。
ちょこちょこ笑わせてくるセリフの面白さとか設定の面白さは相変わらず。話的に面白いわけでないけど。
むしろ、生きていくのが苦手な二人を軸にした地味で冴えないラブストーリーというとこがいいトコ突いてると思った。こみ上げてくるような感覚に乏しく主体性が薄い人間の苦悩。原作が、両家の確執を投げてでも一緒になりたいと情熱的(非理性的)に動くに対して、なんと曇り空みたいな二人だろうかと思う。けれど、そこんとこがとても気に入った。
「家族がやたら恋愛に理解のあるロミオとジュリエット」(鋼鉄村松)
タイトルの通り、双方の家族が恋愛に理解があったらというスタイル。理解があっても結局原作とおりになる運命なのかという展開かと思ったら、理解のある家族の策で二人は結ばれるという結末。
素直に楽しかった。スピード感も良く、ロミジュリの悲劇の根源?を覆す恋愛に理解のある家族という設定がうまく機能してた。
満足度★★★★★
ポイズン
面白い。110分。
ネタバレBOX
マツエ(森啓一郎)…司法試験を諦め地元・合手内でライフバリュープランナーを起業、町長に当選する。表向きバイタリティ溢れる町長だが、密かに国政に向けて進み続ける。
アスナ(鈴木アメリ)…マツエの妻。子沢山。
アシデ(嶋村太一)…代々町長の家の長男。やりたいことよりも敷かれたレールを歩くような人生を送ってきた。
サホ(今城文恵)…アシデの妻。色々我慢してきたがアシデが落選し、自分が必要とされていないとヒステリーになる。
アリト(秋本雄基)…アシデの年の離れた弟。小説家志望のニートだったが、マツエのアドバイスで発電士となる。選挙時にマツエを応援しアシデから憎まれる。
イロマス(松下太亮)…アスナの実弟。マスコミ業。マツエにおんぶの形で生きているが、マツエの影響力を支える。ドS。
ヨタ(森田祐吏)…アリトの先輩。植木職人だったがマツエのアドバイスで発電士に転職。無免許事故で片足に障害を負う。
ユリ(葛堂里奈)…ネットアイドル。イロマスの紹介で芸能デビューした。
テオ(田所二葉)…町役場勤務。アシデとは古い付き合いでアシデが初恋の人だった。町長となったマツエと衝突する。
ヒクロ(村上航)…地主。元小説家。自分の弱さを認めた。
ヒクロの話から兄であり元町長のアシデに想いを伝えるアリトだったが、出て行けと一蹴されてしまう。くすぶっていたアシデだったが、妻の想いや弟へ想いをぶつけたことから一転、反マツエ派として再度町を二分する戦いに突入する。どちらに付くべきか迷うアリトに自分の小説「ぺんぺん草」を渡すヒクロ、というところで幕。
マツエが妙に熱い言葉と演技で人の心を掴む序盤から橋○市長を想起させる弁論で町を動かし始める中盤、見えない気持ち悪さが感じられるいい空気だった。
冴えない町に弁舌のたつマツエが新風を起こすが、その裏にある影に気づき始める人間も出てくる。アシデは腐り、サホもヒステリーになり、アリトはヨタの件で小説家を再度目指し始め、テオはアシデにボヤく。
サホだったかテオだったかが言った「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ」のとおり、理由はさまざまだけど言いたいことも言えない鬱憤が充満するストレスフルな状態から、人と人との心がぶつかりエネルギーが生まれていく過程が面白い。人の死を描くことなく生を鮮やかに描写した手腕がいい。
半世捨て人なヒクロからちょっとだけマシと言われたアリトが、どんな生き方を選ぶのかを見せずして終わらせるとこもいい。
110分あっという間だった。
満足度★★★
30代
面白い。130分。
ネタバレBOX
ヴァイオラ(平岩紙)がオーシーノ公爵に助けられ部下になりシザーリオ(男)として生きていく。公爵の想い人・オリヴィア伯爵令嬢(延増静美)に公爵の想いを伝えにいくが、オリヴィアはシザーリオに恋してしまう。公爵に想いを寄せるシザーリオは届かない想いを胸に困惑する。ヴァイオラの双子の兄・セバスチャン(富川一人)もまたアントーニオ(羽鳥名美子)に助けられて、同じ町に辿りついていたが、二人の見た目が同じことから誤解が生まれ…。
シェイクスピアはあんまり知らないし外国人の名前が苦手でもあり、序盤ピンとこない感じもしたけど、徐々に引き込まれていった。座り演技部分が観にくいのが非常に残念だけど。
演技自体上手いんだろうけど、やや固い気もする。ヘンテコなメイクを筆頭に崩した感のある舞台で見やすく楽しめたが、演技力があるだけにもっとバカっぽいはみ出し方してもよさげかなと。演奏で始まり演奏に終わるけど、そんな味付けがもうちょいあってもいいかなと。
苦悩する真っ当なキャラであるヴァイオラを演じた平岩のまっすぐな視線が美しい。あと、オリヴィアに片思いな執事・マルヴォーリオを演じた町田水城と道化・フェステを演じた竹口龍茶が印象的だった。
満足度★★★
ちゃぶ台
面白い。80分。
ネタバレBOX
とめ(木内里美)…84歳。リサイクル業。リアカーを押してタバコを売って禁煙を励行する。肺がんで死に行く夫に最期のタバコを吸わせなかったことを後悔する。納豆を愛する。
夕子(桜井由利子)…40歳。恋人も夫もなく、ネットの世界で生きていたが、ネコを助けた際に事故死する。とめにしか姿が見えない。コンビニを愛する。
元気で朝食をしっかり食べ感謝の心を忘れないとめに対して、顔色悪く朝食はセブンスターとコーヒーという夕子の対比から始まる。食=生というテーマもいいけど、序盤はやや退屈に感じた(すわり演技で手元が見えにくいのが残念)。とはいえとめの古きよき日本的なばあちゃん像とパワフルな演技はうまい。
夕子が幽霊と認識されてからの動きが加わってからが面白い。夕子の人生と後悔とウェディングドレス、とめの後悔とボリュームが増していき、映画シーンや酒盛りに続く。戦艦ヤマトはあんまり知らないけど、「生」を得た夕子ととめがリアカーを押す終盤のシーンが美しい。とめの表情が非常にいい。そして、とめと別れた夕子は階段を一歩ずつ上がるように成仏する…。
生身(リアル)で幸せを得ることと後悔することの両面の良さを提示する作品。いやみな感じがなく説教くさくないのがいい。
朝食に納豆を食べたくなる舞台だった。
満足度★★★
ミラクル
面白い。90分。
ネタバレBOX
リアル脱出ゲームに参加したメンバーが、謎を解きつつ過去の清算と時空を超えた騒動に巻き込まれる…。
拓美(瑛希)…理系男子。クリスと結婚する。その子が未来でエネルギー革命的発明をしたため、命を狙われる。
クリス(白玉さゆり)…元いじめられっこ。ゲームを利用し、クラスメートへの復讐を考えるが。
矢沢(佐久間咲斗)…クリスの元家庭教師。みさきの婚約者。クリスの悩みを聞かなかった。
みさき(新川ほなみ)…クリスの同級生。いいとこのお嬢さん。クリア後自分の夢を追い始める。
なお(福井利之)…クリスの同級生。性同一性障害を乗り越え女になる。
尾山(平野勲人)…ゲーム参加者。実は未来の拓美。クリスらの危機を救う。
謎の女(CR岡本物語)…未来のクリス。
脱出ゲームの密室性とリアルにあったいじめ(とその陰惨な空気)を徐々に混ぜていく感じがうまい。そこからSFな展開に突っ走り前向きなエンディングを迎えるという一連の流れがいい。
いじめられていた人間といじめていた人間が10年の時を越えて再会するという、ヒリヒリした感覚とかSFな展開になってからのハラハラ具合がもっとほしかったかなとは思う。人間ドラマなとこが大げさにならなかったのは良かった気もするし、ややあっさりすぎな気もする。
短めな時間ながらのめりこめたし、楽しめた。笑えるとこがもっとほしかったけど。CR位の笑える存在感は流石と思った。
満足度★★★
花巻
面白い。60分。
ネタバレBOX
歌と朗読と芝居と音楽で魅せる60分。宮沢賢治の世界というものがよくわかってないけども、不思議と楽しめた。「月夜のでんしんばしら」とか「ポラーノの広場」とか。構成・演出が素人でも楽しめる作ってあったのがよかったのかな。
なにげに衣装・照明・美術が好み。単純に美しいと思った。