言い訳のカフネ
創造Street
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2023/02/24 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
かなりユニークな展開でストーリー的に魅せる。そして深まる謎もそのうちSF的モードに突入。1000年後の世界に移住する魅惑とは何か、個人的にも自問したりして、そしてラストへ。
そこで僕たちが見たものは意外なもので、作者のストーリーテラーたるところを垣間見る。やはり演劇は自分の世界をはぐくみ、爆発させるもの。その王道は行ってます。
面白かったです。
たこ焼きの岸本
関西芸術座
ABCホール (大阪府)
2023/01/13 (金) ~ 2023/01/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
美味しいタコ焼きの店を守っている女性のもとに10年ぶりに息子が帰ってくる。そして孫まで連れて、、。と、話の芯はきっちりと通っているので、演劇的にも十分鑑賞に値する脚本である。
こんな、気楽な感じで生きて生きていけたらいいなあと思うのは私だけであろうか。いい舞台でした。
継ぐ者【3日夜回~4日公演中止】
和太鼓GIG
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
演劇に、和太鼓、バレエなど多彩なパーツをフルに駆使し作り上げた芸術品であります。ストーリーもファンタジック、ミステリーでもあり実に楽しい2時間でした。
演劇の可能性を追求したその野心に拍手。2時間はあっという間でした。これだけ輻輳した構成の演劇なのに、練習たっぷりなのか、俳優陣の演技は無駄が全くなく、完成感も感じられ充実していました。いい演劇日和でした。
パレードを待ちながら
劇団未来
未来ワークスタジオ(大阪府)
2022/11/04 (金) ~ 2022/11/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
珍しいカナダが舞台の演劇だ。時は第2次大戦末期。残された女たちの戦争の実態が鮮明に描かれる。
今のウクライナ情勢を見るにつけ、どこの世界も戦争が起こっていたらあり得る話だ。女性だけの話だから、男性たる私が聞いていて、前半は少々退屈気味。それでもけっこう美人ぞろいの女優さんたちの演技がすごい。見ていて怖いぐらい。
後半になって、それぞれ人の女性たちの苦悩が浮き彫りにされていく過程は圧巻であった。そしてラストの題名通りのパレード。今までの女たちの感情を吐露してもうすごい。喜び、悲しみがごった返している、、。
あゐ ばさみ
劇団光合聲
大阪市立芸術創造館(大阪府)
2022/01/08 (土) ~ 2022/01/10 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
珍しく、マンションでの二人の死体から始まるミステリーを加味した愛憎劇。楽しめました。開場すると舞台に二人の死体が。それを観客は眺める。そして劇は始まる、、。
二人の親子と時計屋の男性との三角関係をテーマに、重苦しいけれど複雑で繊細な愛の姿が醸し出される。それと並行してこの事件をスクープして、真の人生の姿を知ろうとする記者の懊悩が描写される。
私としてはこの三角関係はよく理解できた。そういうこともあるわいと、彼らの心情のさざなみを想う。よくできた脚本だ。ただ、一方、記者の苦悩がそれほど伝わってこない。愛の分析だけでは物語としては不足していると思ったのかもしれないが、どうなんだろう、、。
途中、母親の別の恋人との諍いで冒頭の殺人光景を勘違いさせる取り組みなど、ミステリー的にもはっとさせるなかなか秀逸な脚本に拍手をしたい。
後、照明がイエローを主体としたものなのだが、最後まで少々暗く、もうちょっと明るくして俳優たちの顔の表情をよく見たかった感もあります。
この劇団はずっと見てますが、なかなかイケマスよ。今日もルンルンです。
The Merchant of ZIPANG
劇団五期会
ABCホール (大阪府)
2021/12/03 (金) ~ 2021/12/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
関西の名劇団。劇団員数も多く、いつも力作を届けてくれる。そして今回は、、。
シェイクスピアのあの有名な「ベニスの商人」の日本版。といっても、そこは五期会、かなりアレンジしたコメディ劇にしつらえた。何といっても、中世の時代に物部氏と蘇我氏の葛藤が設定されているのでユニーク。脚本も超長場だが最後まで丁寧な進み方で飽きない。本当に面白かった!
俳優陣もみんなカッコよく、舞台で見栄えする。今回は特に衣装が素晴らしく、見ているだけで楽しい。
こういう演劇の基本を土台に、常に演劇を追及している劇団は大阪でも稀有な存在である。次回も期待する。
書く女
劇団未来
未来ワークスタジオ(大阪府)
2021/06/18 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
樋口一葉の伝記ものだが、想像をはるかに超えて明るくキュート。じめじめしたところが全然ない。恋にも恵まれず、生活は貧しく、それでも書き続ける一葉。24歳でこの世を去るが、現代から考えるとホント大人ですね。
そんな一人の女性の生きざまをダイナミックな演出と粋のいい俳優陣で見せてくれる観客にとっても至福の時です。主役の一葉は断トツの出来だが、妹役の人が後々印象に残ります。
小さな狭い舞台も工夫していろいろ見せてくれます。愛情がこもってますね。秀作!
判で押したような
劇団さんばれんてぃーの
STAGE+PLUS(大阪府)
2020/02/29 (土) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
Sstageplusに急な会場変更したのに、その影響も感じさせないステキで優しく、それでいてかなり鋭くイタイ作品です。
何気ない学校の事務所シーンに何故かいる判人形さん。これがキーだったんだね。若い人でないと思い浮かばない小道具や設定が観客をくすぐる。
だんだん深刻になってくる過程も見事で、この劇団が演劇そのものを知っている。素晴らしい出来です。
フライングチェック
第2劇場
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2020/02/28 (金) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
シリアスな演劇をやったり、コミカルなものも取り入れたり、バライティに富む実力劇団である。好きな劇団だ。
そして今日はコミカルで、ひょうきんで、途中ではダンスもあるエンタメ劇なんだが、そこは第2劇場、軽そうに見えさせて、実は真空の人たちを描く。
ペースにつられて軽くストーリーは流れてゆくが、主人公たちの行動の意味は結局不毛・不条理と化す。不思議な演劇。いつもこういう演劇マジックで、ポカ~ンと劇場を後にする。大人の劇団である。
ハルカのすべて
ももちの世界
神戸アートビレッジセンター(兵庫県)
2020/02/07 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
ももちでは2作目。前作はラスト少々分からず、今回逆に期待を持って観ることに。
会場の広さ、俳優陣の多彩、映画へのオマージュ、音響の俳優によるアカペラ化(これがかなり効果を上げる)、そして何より地底人3号の脳内イメージの拡散という大胆なテーマ手法がぐんぐん我々観客の心をわしづかみにする。
もう圧倒的で、映画好きの吾輩はそこにフェリーニの8・2/1からはじまる映画の諸作品を感得し、俳優で揺れ動くモンタージュとしてしかと確認した。
今でも僕の脳内はこの作品の音楽が明瞭に流れており、演劇のもたらす可能性を強く感じることとなる。地底人3号の脳内と観客とは一体化し、素晴らしい世界を構築した。演劇を見ていてよかった。ほんとそう思える。地底人3号に感謝!
狭間の轍 【大阪公演】
ゴツプロ!
近鉄アート館(大阪府)
2020/02/06 (木) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★
明治27年、北海道江差に集まる出稼ぎ漁師たちの実生活から明治という時代性を問う野心作である。労働歌とともに彼らの内実が明かされてゆく。それそれの過去を抱えた男たち、この年は日清戦争が勃興するときでもあった、、。
戊辰戦争はもうこの年代ではかなり前のことだと思っていたが、人斬り〇〇と訳された男たちの苦悩が吐露されると、彼らにとっては全然過去のことではないことが現代人の我々にもショッキングであった。そう、戦争が終わって20数年というのはまだまだ戦争の惨禍が直近のことだったんだね。
そういうあの時の時代を力強いソーランン節が彼らの心根を駆け巡る、、。
TRANS(トランス)
をまちながら
未来ワークスタジオ(大阪府)
2020/01/31 (金) ~ 2020/02/03 (月)公演終了
満足度★★★★★
この作品は以前東京で見て感心した覚えがあります。芥川の「藪の中」に似ていそうで、あれは誰が嘘を言っていたのか分からない摩訶不思議な世界でしたが、今回はだれもが嘘を言っているわけではない。3人の話、それぞれがみな真実だとしたら?といった感覚であります。
逆転逆転で、実に演劇的にも面白いし、3人芝居なのでじっくり彼らの演技も堪能できる。セリフも多いし、実はこの劇結構難しいのではないかと思う。でも、これだけ面白いと、観客席との一体感がありますね。そこも、この演劇の魅力。たいして小道具もいらないし、実は何回も見ている人が多いのかも。
大西千保さんの声がハスキーで魅力的。こういう役柄は女性一人の彼女が重要ポイントであります。男性二人も見事。いい舞台でした。
ベルナルダ・アルバの家
関西芸術座
ABCホール (大阪府)
2020/01/17 (金) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★
女だけの家。当主が亡くなり長い年月全員喪に服している。だから、性的抑圧も甚だしく、長女の結婚話がきっかけに彼女たちは爆発する、、。
それでもこの舞台の真打、ラストの女性たちがそれぞれ発露し、哀しい事件につながる過程はやはり演劇的高揚を感じる。
役を演じることの喜びは女優陣全員から感じられた。ロルカの3大悲劇に取り組む気力は十分感じた。
動くな点P!
劇団 ユニットWOW!!
天満天六・音太小屋(大阪府)
2019/12/13 (金) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
よく考えられたサービス精神いっぱいの脚本です。コメディを前面に出し、退屈なんか絶対しない演劇づくりを目指しているかのような、ほんわかコメディで、90分があっと終わる。
終わったかなと思ったら、本当の終わりがまた待ち受けていて、かなり観客を受けを考えている演劇だと思う。その努力を買います。
これ から の町
南船北馬
ウイングフィールド(大阪府)
2019/12/13 (金) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
6人の登場人物。それぞれ個性があり、というか皆それぞれに毒を持っている。それが大小であるかは問わず生きているのが人間なのだ。
この劇ではそれに加えて言葉、方言、言語を問題にする。関西弁から、俄然標準語に変わりそして最後は人間の発する言葉ではないような言語まで登場する。観客は何事かと驚く。
斬新な劇であるが、言語の流転と町への居住の意味をこれほど考える劇は少なく、作者の感性の鋭さに驚く。
俳優陣はみな達者。一人一人の演技構成も面白く、感心する。出口弥生さんの達観した迫力と小演劇随一の美貌を誇る桂ゆめさんを久々に見られてご満悦。
笑箪笥
あみゅーず・とらいあんぐる
ウイングフィールド(大阪府)
2019/12/06 (金) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
アミューズ恒例の歳末公演。いつもはさりげない人生の機微を感じてその年を終えるのだが、今年は大竹野作品でどうなることやら、と少々危惧もし楽しみでもあったが、やはりしっとりとした大竹野作品となっていた。この辺りはアミューズの感性が突出しているからだろうか、、。
主要女優のうち、笠嶋千恵美が重要な主婦の役柄で、残りの条あけみさんと思い野未帆さん、中村ゆりさんは黒子役だったり、狂言回し役だったりしていたが、それなりに楽しく舞台を引き立てる。
大竹野作品は登場人物が少なく、俳優の出番が少なくなる傾向があり、どうしても内向的になりますね。とはいえ、今年も随分見たけど、ネ、。
IBUKI
Y’s ExP.
TACCS1179(東京都)
2019/11/28 (木) ~ 2019/12/03 (火)公演終了
満足度★★★★★
演劇では珍しい実生活・いわゆるファッションアパレル系のビジネスもの。女性ファッションを生み出すそれぞれクリエイターたちの悩みおよび葛藤を2時間、まさに直球で描く。
これはでもファッション界だけの出来事ではなく、ビジネスに生きている人すべてが日夜抱えている悩みであることに気づく。わかりやすく、かなり深く一人の女性の心の奥底に入り込んでいるので、親近感が湧く作りになっている。
実際、今仕事に悩んでいる人たちには生きる勇気が与えられたのではないだろうか。テーマが演劇では稀有で面白い。
花町オペラ
ギリギリCUBE
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2019/11/03 (日) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
WEAVECUBEと崖淵五次元って共演も多く、最初違いが分からなかった時代もあったっけ。ところが今回が初めてのコラボだという。何だか不思議です。
出し物は「本能寺の変」前後の戦国絵巻。でも、全然難しくはありません。なんと、信長が愛に生きる話って、それだけで十分驚きませんか?
俳優陣は僕の好きな人ばっかりで、みんな芸達者。しかも魅力的な人ばっかり。これを見ないでどうするかい!
2時間の時代劇は正直多少気になったけど、全然そんなこと全くなく、人間を明るく、大きく、やわらかく、爽快に描いてゆく。花街の話なのに全然暗くなく、もうまっしぐらに前向きなんだ。現代の暗さを忘れるかのように、こういう演劇を見ていると、てんで朗らかなので、僕の表情は舞台に釣られて崩れている。
脚本のユニークさも秀逸だが、12人の俳優陣の人間性が際立っているなあ。彼らの演技が倍々ゲームとなって何かを作り出した、そんな感じがする。素晴らしいの一言!
Vanities
Stargazy
難波サザンシアター(大阪府)
2019/11/01 (金) ~ 2019/11/03 (日)公演終了
満足度★★★★
女性劇である。3人は仲良し。高校時代はチアリーダー。そのまま大学に進学し寮生活。そして社会に出てそれぞれ実人生を歩んで久々に再会することに、、。その10年間を綴ってゆく。
観客席はほぼ女性で占める。18歳から22歳までの1幕・2幕は男性たる吾輩からすれば饒舌なセリフの応酬で女性観客ほど楽しめない。でも彼女たちは逆にぐんぐん乗れる何かがあるに違いない。女性ならではのセリフがガンガン噴き出てる。ちょっと遅れ気味な吾輩。
そんな雰囲気をぶっ飛ばすような第3幕。あれほど仲の良かった3人も卒業してからはそれぞれの実人生が彼女たちに牙を向けていた。6年ぶりに再会を果たすも、もはや昔の輝かしい時には戻れない。むしろまだ28歳、人生の絶頂期なのに、彼女たちはもはや老残の匂いさえする。現実は彼女たちをむしばんでいた、、。
壮絶な劇です。でもこれはおそらくコメディなんだと思う。だったら、こうして人生を味わうこともいいのではないか、そんな気持ちを抱え劇場を出ました。秀逸な演劇です。
憧れのデコラティブライフ
テノヒラサイズ
HEP HALL(大阪府)
2019/10/25 (金) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
定番といえば定番だが、コメディの基軸がしっかりしているので安心して見られるし、登場人物も一人一人個性豊かに書かれているので豊穣感もある。これは湯浅氏の並大抵ならぬ演劇への愛であろう、それが観客にストレートに伝わるのがうれしいね。
ラスト近くからばたばたとみんな100%のハッピーエンドをもらって終わるが、少々駆け足過ぎると思ったが、舞台に至福感はみなぎっていた。たまにはこれもよかろうと、いい休日を過ごした余韻が強く残る。
全員分け隔てない配置の妙もさることながら、この劇団の仲の良さをつくづく感じ取れるいい舞台であった。