mari_actorの観てきた!クチコミ一覧

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ジゼル・ヴィエンヌ『こうしておまえは消え去る』

ジゼル・ヴィエンヌ『こうしておまえは消え去る』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/03 (水)公演終了

満足度★★★★

日本では中々出会えないと思う。
男と女と暴力と殺人、そして森と霧。日本人の感覚だと中々産み出せない作品だと思う。

まず、装置に度胆を抜かれる。

あれ、

にしすがも創造舎に森が出現してました。

どこから持ってきたの!?ってゆー大木がにょっきり、にょき生え。踏みしめた落ち葉の音すら超リアル。

それらを覆い隠すように時折、出現する霧。

半端ない霧。

音楽がまたカッコいい。

森を怖いと感じるアノ感覚を、廃校の体育館で再現しちゃったのがトテツモナイ。

日常の中から非日常へ踏み込んでしまって「不味いぞ」と分かっているのに引き返せない、不安なんだか、通り越して気持ち良くなっちゃってんだかってゆーアノ感覚が鮮やかに甦らされる。

そして俳優の存在。
台詞を発さなくとも雄弁に語られる身体を通して、舞台の森を更に身近に感じる。


東京の都会ど真ん中の室内で森を体感する不思議な舞台でした。

視覚と聴覚を完全に支配される、それは美しい舞台でした。

ロジェ・ベルナット『パブリック・ドメイン』

ロジェ・ベルナット『パブリック・ドメイン』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

池袋西口公園(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/28 (日)公演終了

満足度★★★★

本当に西口公園で驚いた。
『出演者はアナタ。実物大ボードゲーム演劇が池袋に登場!』
フェスティバル/トーキョーの総合チラシに書いてあった煽り文を見てから気になって仕方なかった。

観てきました。というよりは、参加してきました。がしっくりとくる作品でした。

何だか精神分析のテストを受けてるようだった。膨大な量の中に、大事な質問が入り交じっているんじゃないかと思わせられる。

私と何かを測る非常によくできた物差しって感じ。

価値観だったり人生観とか、他人と測って分かること。集団対個人、生まれた場所によって考え方はぐっと変わるってことを目の前で認識しました。

設問が用意周到で感心した。時に皮肉やブラックジョークが効いていて面白い。またどんな立場でこの作品を楽しむのかも、観客それぞれの選択次第なんだなぁ。

1人で行って十分楽しかったけど、カップルで行くと更に楽しめたと思います。

ネタバレBOX

「拳銃を持ったことはありますか?」

って質問に反応する人がぽちぽちいて驚いた。でもこれが、アメリカやスペインだったらもっとたくさんの人が反応したのかなぁ。

印象が残った質問
「あなたは芸術家ですか?」
「あなたの外見は、あなたの地位を本来より低くみせていますか?」
「あなたの発言や考え方には、親の責任がありますか?」
「あなたはマイノリティですか?」


何の質問がひっかかるかで、また人によるんだろうなぁ。

観劇後は「劇場とは何か?」を考えさせられました。

「何の為に劇場へ足を運ぶのか?」

舞台と客席の境界をとっ払った空間で問われたことに意味があるんでしょうね。

BATIK『あかりのともるかがみのくず』

BATIK『あかりのともるかがみのくず』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2010/11/09 (火) ~ 2010/11/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

きらきらひかる、ファンタジー
<おかあさん>をテーマに繰り広げる130分の大作。


ダンスの公演を観て初めて号泣した。私たちは皆、母から産まれてくるとゆー当たり前で当たり前じゃない奇跡の一瞬に涙したんだと思う。

静寂と喧騒を繰り返す様は祝祭と葬列が入り混じった、さながら命のパレードのようである。

<母>なるものを突き詰めた黒田育代の思考の旅を追体験する舞台。拒否反応を起こす人もいるであろうってほどの強烈な世界観。

包み隠さず曝け出された生々しくも不思議な空間に引き込まれました。

黒田育世の圧倒的な存在。
赤いワンピースを纏った彼女の奔放な動きに目が離せなかった。

『あかりのともるかがみのくず』……不思議なタイトルだなと思っていたけれど、鑑賞後は納得のタイトルになりました。なるほどなぁ。



鑑賞後、色んなことを考えたくなる舞台でした。

ネタバレBOX

言葉の効果が素晴らしかった。

アフタートークで黒田育世さん自ら「身体を追い詰める為に言葉を使う」と言っていたけれど。

その追い詰められた肉体から発する言葉の力に圧倒される。

クライマックスに叫ぶように繰り返される言葉は一連の詩のようである。
その一部の、

「私に宿るはずのお母さんのお母さんのそのまたお母さんになっても良いように、赤い獣になって待っています」

この言葉が強く印象に残る。合わせ鏡のように果てなく続く命の廻りをよく表現しきったなと思う。


幕切れ後、舞台上に無数に咲いた赤い花が、水に浮かぶ蓮の花のように美しかったです。
『りすん』

『りすん』

七ツ寺共同スタジオ

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2010/10/21 (木) ~ 2010/10/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

「りすん」のこと。
天野天街の演出で夕沈が振り付けするので見たいと思い。東京には来ないらしいので。じゃ行くか、名古屋。とするっと決断。

原作の小説好きな友人を道連れにいざ名古屋。

私はその小説を全く読んだことがないんだけども、地の文が無くて台詞だけなんだそうです。実験的な小説を書く作家だそう。

ま、胸を膨らませていざ観劇。中に入って衝撃。七ツ寺共同スタジオが予想よりも小さくてびっくり。なのに大入り満員、開演時間になっても客足が絶えない。
や、よくお客さん全部はいったなぁ。


舞台は病院の一室、カーテンで仕切られたベッドの上には入院している妹、傍らには兄。

繰り広げられる会話、会話会話。

繰り返され意味が変化していく言葉、ループする時間が進み変化し境界が曖昧になる。


全てが絶妙なバランスで成立している。

兄妹の会話がエキセントリックで美しい。

とんでもないことが起きているのに、それが普通にみえてしまう不可思議。

会話に内包されたモノが
琴線をチクチク刺激する。

分からないけれど、胸にこみあげてくる『うわ~っ』て気持ち。

頭で理解するのでなく肌で感じる舞台である。

衝撃の2時間10分。
とんでもないものを観てしまった。

名古屋まで足を伸ばした甲斐がある、素晴らしい舞台でした。それは間違いがないのです。今現在、自分の中の今年の舞台ベスト1でございます。

ネタバレBOX

出鱈目に歌うビートルズ「べいべな」って響きがほどく優しくて好きでした。

夕沈ダンスと文字の投影がクライマックスを否応なく盛り上げていて良かった。「宇宙って狭いね」って台詞とは裏腹にものすごく広がりを感じて、そのギャップに胸が締め付けられ涙が出そうになりました。



幕切れ。兄が1人舞台上に立っている。客席から妹の声「ポンパッ!わたし、そとにでれたよ」

このラストが幸福な結末なのか残酷なのか、悲しいのか、切ないのか。


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