遊民の観てきた!クチコミ一覧

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栗原課長の秘密基地

栗原課長の秘密基地

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/11/13 (水) ~ 2024/11/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

地味な題材だし、物語も途中、行きつ戻りつのような展開なのでどうなることかと思ったが、気が付けばラストまで舞台を注視し続けていた。

ネタバレBOX

時間の経過とともに主人公、栗原の心が変化していく様が無理なく自然に描かれていたのが印象に残った。それには登場人物それぞれのキャラクターを明確化することで、栗原の立ち位置がより浮かび上がって見えたこと、また劇中では「良心」の代表のような読者審査委員のトシコやベテラン作家のハナオカを登場させたことが大きく寄与しているように感じた。人物配置の絶妙な脚本には感服するしかない。
終盤の展開(推理作家志望のツジが、一旦は大賞を受賞したコウノに喫茶店で出会って心変わりしたという件)は出来過ぎの感もあるが、見応えのある良い舞台だった。また役者陣の的確な演技がこの作品を支えていたことは間違いない。
ジキルの告白

ジキルの告白

ISAWO BOOKSTORE

サンモールスタジオ(東京都)

2024/11/06 (水) ~ 2024/11/12 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

実際の起こった事件を基にした作品なので、この事件を知らない観客にもその概要を説明するための事実を提示する部分と作品のドラマ性を高めるためのフィクションの部分をどう融合させて一つの作品として見せていくかというのがポイントだったような気がする。

ネタバレBOX

タイトルや内容からドロドロした愛憎劇を想像していたのだがそうではなかった。犯人の大学教員ではなく、その妻や大学関係者に焦点が当てられていた。何故かと思ったが当日パンフの高橋氏の「ご挨拶」で納得した。
実際に作品では犯人の妻の微妙な心の揺れや徐々にずれていく感じが丁寧に描かれていたし、犯人の親友、加納の誠実さや大学関係者の苦悩も伝わってきた。
ただ、被害者の元恋人(宮本)の存在や犯人の妻(純子)が宮本に会いに行くシーンは必要だったのだろうかと疑問に思う。作りすぎの様な感じを受けた。事実に押されてドラマ性が薄まらないようにするための方策だったのか、と思うのは考えすぎか。
いずれにしても変わった視点で描かれた作品は新鮮で刺激的だった。

さようなら、シュルツ先生

さようなら、シュルツ先生

MODE

座・高円寺1(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

33年ぶりに「MODE」の舞台を鑑賞。ああ、こういうテイストだったのか。超現実で摩訶不思議な世界で、昨今なかなか出会えない作風が新鮮で刺激的だった。私などは舞台を観る時、内容に意味を求めてしまい、わからないと「難解だ」と投げ出してしまうのだが、今回は、素直にその世界に身を沈めてトリップ感を味わった方が気持ちいいし自由になれるような気がした。

またこの作品で特徴的なのは役者の身体が前面に出ている点だ。フェティシズム的な表現が多用されているし(観客の眼はどうしてもその部分をクローズアップして見るだろう)、登場人物の奇妙な動きや静止するシーンも多い。普段観る舞台ではこれほど役者の身体を意識していないと振り返って思う。どちらかというと台詞によって人物の関係性や物語の展開を把握することに腐心しているような気がする。圧倒的に聴覚が先行しているのだ。翻ってこの作品は圧倒的に視覚に訴えてくる。
当日パンフで主宰の松本氏が「劇的とは何か、ということばかり考えていた」と書かれている。一般的には「ドラマチック」ということだが、私は以前から「演劇でしかなしえない表現」という風に勝手に解釈している。その意味では今作は十分に劇的であったと思うのだがいかがだろうか。


リング・アウト

リング・アウト

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2024/09/25 (水) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

この団体は3回目の観劇になる。前2作が笑いに溢れ、ダンスシーンなどもありエンタメ感たっぷりだったのに比して、今回は笑いは抑え目でドラマ性が強かった。笑いを期待していただけに少し物足りなったというのが正直なところ。
ただ、物語の中に主要なトピックがいくつか出てくるが、それらを100分という時間にうまく収めて最後は大団円(ちょっと出来過ぎだけど)とするところはロックマン氏のストーリーテラーたる所以か。
特に母娘の惜別のシーンは美しかった。
できれば真正面からのストレートプレイを一度観てみたいものだ。

かげきなデイリープレイス

かげきなデイリープレイス

演劇集団イヌッコロ

ザ・ポケット(東京都)

2024/09/18 (水) ~ 2024/09/22 (日)公演終了

実演鑑賞

「ヤクザが演劇」という設定が充分に納得できる内容かどうか、がこの作品のポイントだと思って観劇に臨んだが、やはり違和感が残った。結局、最後までそのモヤモヤ感が払拭できず、皆さんのように笑えなかったというのが正直なところです。ひたすら「笑い」が主だからか、物語自体にも魅力を感じなかった。(中途半端な終わり方だし)ただ、これだけ次から次に笑いを繰り出してくる発想力と役者の表現力には心から拍手を送りたい。

青い!大劇場結婚式(「劇」小劇場)

青い!大劇場結婚式(「劇」小劇場)

藤原たまえプロデュース

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/06 (木) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

終始ドタバタしていて落ち着かない。ストーリーは極めて単純で面白みがない。その分、奇抜な演出とクセ強めのキャラで楽しませようという事か。少々奇を衒っているような気がする。

ネタバレBOX

出演者は結婚式場と控室を行き来するわけだが、(「控室」側の芝居を観てないのではっきりと言えないが)皆訳もなく何となく行ったり来たりしていたような気がする。2劇場同時上演だからそこに意味を持たせてほしいと思う。
作演出の山崎氏は「観客を楽しませること」を第一義としているようだが、私には「笑い」を押し付けられているような気分にもなった。
まあ、藤原珠恵さんが仰るように「お祭り」だと思って楽しんだほうがよかったのかな。
マーヴィンズ ルーム

マーヴィンズ ルーム

劇団昴

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2024/05/24 (金) ~ 2024/06/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

病や生きづらさを抱えた人々が織りなす物語でありながら、ユーモアを交えて明るくカラッとした作風。日本人作家だったらテイストが違っていたかもしれない。

ネタバレBOX

日本の俳優が外国人を演じることに少々抵抗があり、翻訳劇は数える位しか観ていなかったが今回その偏見は完全に払拭されたと言っていい。そう感じさせるほど俳優陣は役名そのままで舞台に立っていた。

内容からいえば、少し出来過ぎできれい過ぎる嫌いはあるが、そこには「愛」が溢れていてなんだか胸を打ってくるから不思議だ。

当日パンフで演出の田中氏が触れていたタイトルについて。確かに舞台の中央にマーヴィンの部屋があるので観客の視界には常に分厚いすりガラスが入ってくる。当のマーヴィンは声はすれども姿は見えず。何故このタイトルなのか疑問だ。明確な答えは出てこないが単純に考えれば(ベッシーの白血病発症が契機ではあるものの)マーヴィンの存在自体が離れ離れだった家族を繋ぎとめ再生へと導いたと考えられなくもない。
天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

様々な点で考え抜かれ作り込まれた舞台だと感じた。
開演前のBGM、劇中での言葉遣いや会話の内容、客室乗務員の制服は「時代」を感じさせる。コックピットを模した舞台装置、冒頭の機内アナウンス、音響や照明、そして「楽園」という劇場が持つ濃密感そのものが飛行機内という「場」を感じさせる。
必定、観客は「よど号」の乗客と化している。臨場感や緊迫感が半端ない訳だ。

物語は歴史的事実を正確に追いながら、登場人物の心の機微にも触れていく。速いテンポのセリフの応酬はますます緊迫感を高める。演者さんたち、見事だったな。犯人役の杉浦さんは口角泡を飛ばしていたし、客室乗務員役の吉水さんは終始、目が潤んでいるように見えた。運輸大臣役の斎藤さんの狡猾さも見ものだったし、指導教官役の下平さんのらしさも光っていた。

そして何より吉水さんの脚本がなければこの作品はこの世に生まれてこなかった訳です。脚本の力を改めて感じました。

観終わった時には何時間も経過していたように感じた(大げさでなく)のだが、劇場を出て時計を見たら2時間経っていなかった。これぞ舞台のマジックだ。映像では決して味わうことのできない感覚。これは演劇初心者の人に観てもらいたい作品だなあ。



いちかと華子~ばあちゃんの匂いと宝物~

いちかと華子~ばあちゃんの匂いと宝物~

東京カンカンブラザーズ

ザ・ポケット(東京都)

2024/03/27 (水) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

老舗クラブ『アカシア』を彩る人々をキャストの皆さんは魅力的に演じていたし、一つの世界が出来上がっていたと思う。反面、脚本は少々空回りしていた印象をぬぐえない。

全体的に見ると、短いエピソードをいくつもつなぎ合わせて一つの物語にしたようで流れがスムーズでない。メインキャストの「いちか」及び「華子」と亡くなった祖母との生前の交流が描かれていないため、クライマックスの再会(?)のシーンで感情移入できない。祖母の化身である新人ホステス(月下ひまり)の登場が唐突だし、彼女がいくらか大人びた物言いはするものの祖母を感じさせる何か(言葉遣いとか立ち居振る舞いとか)が表現されていたのかわからない。(観ている方はそもそも祖母がどんな人だったのか知らない)「香水の匂い」や「娘に対する呼び方」で孫たちに祖母と気付かせるのはいかにも即物的で興を削がれる。

以上、思いつくまま気付いたことを書いた。ハートウォーミング的な作品に仕上げたかったのかも知れないがそこまでたどり着いていなかったように思えてならない。もっと情緒が欲しかった。


イノセント・ピープル

イノセント・ピープル

CoRich舞台芸術!プロデュース

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/03/16 (土) ~ 2024/03/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

外国人が登場する芝居は翻訳劇だという思い込みがあった。だがこの作品は日本人の脚本でアメリカ人を描き、それを日本人の役者が演じるという極めて珍しいパターンだ。さらに、作品に登場するのは原爆製造に関わった科学者たちとその家族。私などは原爆と聞けば広島、長崎の惨状がすぐ思い浮かぶだけで被害者の視点でしか見てこなかった。それを加害者であるアメリカ側の(それも原爆製造の当事者) 視点から描こうというのが画期的だ。これらは特筆すべき点だろう。日本人を悪し様に言うシーンなどはインパクトがあってすごく嫌な気分になった。

役者陣には各々の役柄を深く掘り下げ、それを忠実に体現しようという姿勢が強く感じられ、重いテーマとも相まって舞台に独特の緊張感が漂っていた。観ているこちらも自然と居住まいを正し舞台に集中でき、ある意味とても心地よい緊張感だった。

ネタバレBOX

印象に残ったのは何といっても最終章である加害者側のブライアンと被害者側のタカハシが対峙するシーン。被爆地の惨状が語られた後の「謝罪はないのか」のタカハシの問いかけに口ごもり何も答えられなかったブライアン。その時彼の胸に去来していたものは何だったのか。そして孫娘のハルカとの初対面。彼女は身籠っている。なんとブライアンはゆっくりと彼女に近づきながらその腕を真っ直ぐにそのお腹に伸ばしている。
何ということだろう。生まれ来る命には慈しみを持って迎えようとしているのに原爆の犠牲になったあまたの命については一顧だにしない。彼は先祖から繋いだ命を3代先まで繋ごうとしている。片や自らの命も全うできなかった人々のことを想わずににいられない。これが戦争という魔物が生み出した歪んだ「イノセンス」なのか。人間の持つ二面性を鮮やかに描き出している。

最後、ブライアンがハルカのお腹に触れる寸前で暗転となり、銃声(?)のような音がしての幕切れ。彼に鉄槌が下されたのだろうか?。いずれにしても心に残るラストだった。

この機会がなければ出会えなかったであろう作品。感謝です。今後のCoRich舞台芸術!プロデュースに期待します。
オプティーマへようこそ!

オプティーマへようこそ!

A.R.P

シアター・アルファ東京(東京都)

2024/01/24 (水) ~ 2024/01/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

皆さん仰るように王道の青春ストーリーではあるが、実際に舞台作品にするとどれだけ観客に伝えられるかというのは難しいところだろう。だがこれを見事に舞台上で体現して見せてくれた俳優陣、ダンサー陣に心から拍手を送りたい。登場人物それぞれのキャラが確立されていたし、ダンスも半端なく素晴らしかった。各演者の持つパワーが結集して舞台上からとてつもないパワーが放たれていた。

好きなシーンがある。オプティーマのオーディションでMVPを受賞した夏美たち4人が踊るシーン。踊っている途中で彼女がそれまでかけていた眼鏡を右後方に投げるシーン、これにはシビれた。見せかけの自分を脱ぎ捨て本来の自分に生まれ変わったのだ。
極上のエンタテインメントを堪能しました。次回作も期待します。

Family~冬は君を真っ白に染める~

Family~冬は君を真っ白に染める~

ヒューマン・マーケット

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2024/01/23 (火) ~ 2024/01/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

Familyシリーズは前回が初見だが、今回は前回感じたホームドラマ特有のアットホーム感がなく残念だった。それは単純に登場する家族が「鈴木家の父と長男」1組だった(前回は鈴木家の夫婦、佐藤家の兄弟、リカーショップ「二木」の夫婦の3組)こと、また作品のテーマがややシリアス寄りだった為だろうか。

その他気になったのは前々回位から登場の謎の黒づくめの女の正体が明かされたこと。以前鈴木商会に勤めていた「ゆうみん」なる営業担当の女性の姉だという。(彼女はホームページの人物相関図には載っていない)謎の女がしつこく鈴木商会のバイト面接に来た理由も明かされるが、なんだかボヤっとしていて判然としなかった。
それでいえば、鈴木家の長男、高信が1年ほど失踪していて帰ってきた理由もなんだかわかったようなわからないような感じだった。佐藤家次男、正夫の 恋人の登場もなんだか唐突で今回の脚本には納得いかないところが多かった。

ストレンジャーズ イン ザ ナイト

ストレンジャーズ イン ザ ナイト

スラステslatstick

駅前劇場(東京都)

2024/01/16 (火) ~ 2024/01/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

これは必要最小の出演者と舞台装置で、SF映画の世界を舞台で再現しようとした画期的な試みである。

物語自体は作・演出の入江氏が当日パンフで「プロレス好きの中学生が考えたようなストーリー」と書かれているようにある程度展開が見えている分、面白みに欠けていたように思う。だがその分、役者陣の熱演がそれを補って余りあった。特に野口かおるさん。その独特の表情やセリフ回しは昔と寸分違わず、いやむしろパワーアップしていた。(今作の役柄のせいもあるだろうが)

当日パンフで中村なる美さんが書かれていた「お芝居に対する愛」、感じましたよ。

GIRLS TALK TO THE END vol.4

GIRLS TALK TO THE END vol.4

藤原たまえプロデュース

OFF OFFシアター(東京都)

2023/11/01 (水) ~ 2023/11/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今シリーズを初観劇。期待はしていたけど想像のはるか上を超えてきた。傑作です。後半の怒涛の展開たるや...。一瞬たりとも目が離せない80分。「括目せよ」って感じです。

実は劇場がOFF・OFFシアターと知って「代表作なんだし、もっと広いところでやればいいのに」と思っていたのだが、いやはやとんでもない、このキャパがベストマッチなんだと観終わってから思う。女子6人の会話を覗き見ているようではないか。前回のvol.3はシアター711だったようだが、あそこは多少奥行きがあるからOFF・OFFの方が舞台と客席が近くてこちらの方が相性が良かったかもしれない。何しろこの作品はセリフは言うに及ばず、役者の表情の変化も見逃せないのだ。
そういえばこの間『演劇ターン』を読んでいたら、ある団体を主宰する女優さんが「この作品は絶対この劇場でやりたいと思った」みたいなことを書いていたことを思い出した。作品と劇場の相性ってあるんだな。

小劇場演劇を愛するすべての人に見てもらいたい作品だけど、小さい劇場で公演期間も短いし、せめて末永く再演を重ねてもらうことを切に願う。最高でした!



 

とのまわり

とのまわり

山田ジャパン

シアター・アルファ東京(東京都)

2023/10/04 (水) ~ 2023/10/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

芝居全体を通してみると、コメディ感がプンプンするくらい匂うのに終盤の肝心なシーンでは観客の心をグッとつかんでくる何とも不思議な魅力に満ちた舞台。もし、自分が余命わずかだったらどうするだろうかと考えさせられた。やっぱりこういうシンプルでストレートなメッセージが一番観るものに届くのかもしれない。

話は飛ぶが昨日、亡き奈良岡朋子さんのドキュメンタリー番組の録画を観ていたら、彼女の口から『芝居臭い』というワードが何回か出てきた。常々、芝居臭くならないように心掛けていたようだ。そういう意味では、役者が肩の力を抜いて芝居臭くない芝居を見せてくれたように思う。

普通じゃない普通

普通じゃない普通

劇団水中ランナー

駅前劇場(東京都)

2023/07/05 (水) ~ 2023/07/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

葬儀場に偶然居合わせ家族に、いかに自然に会話が生まれ、そこにドラマが成立していくのかが最大のポイントだと思いながら観始めたのだが、私の目には不自然な感じが最後まで拭い去れなかった。加えてテンションが高い登場人物が多く(特に小林家の次男の代行を務めた新原などは泣き上戸にも程がある。これじゃコントだよ。)落ち着いて観ていられなかった。終盤になって、タイトルにつながるようなシーンや新原英太郎の役割が明らかになって、いろいろ考えて創作したんだろうなあ、とは感じたが、全体的にもドタバタしていて作家の意図が伝わりづらい。

チョビ

チョビ

ここ風

シアター711(東京都)

2023/07/05 (水) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

現在と過去を交錯させながら、主人公チョビと彼女を取り巻く仲間や家族を淡々と描いていく。さして大きな事件が起こる事もなく、ありふれた会話、日常風景が続き、この先どうなることやらと思っていたが終盤になってそれが杞憂であったことを思い知らされる。登場人物各人のキャラクターとチョビとの関わりを丁寧に描くことでラストのどんでん返しが生きてくるという訳か。この不意打ちを喰らって完全に持っていかれる感覚を舞台で味わったのは十数年ぶりのだろうか。(東京セレソンDXを思い出す)

とは言え、惜しむらくは結論に至るまでの物語の道程に起伏が少なく多少冗長に感じる点。笑いの要素を増やすなり、エピソードを差し挟むなどピリリと効いたスパイスが欲しかった。

何はともあれ「風味絶佳」の作品であることは間違いない。ごちそうさまでした。

黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

出演者が女性だけの芝居は久しぶりだ。女性が本来持つパワーや明るさが、個性的なキャラクターたちによって存分に発揮されていて楽しい。彼女たちの「孤独」が刑務所という閉鎖的な空間で奇妙な「連帯」を生み出すという物語の流れもスムーズだ。それぞれの犯行に至る経緯が劇中劇で紡がれるが、人間の「弱さ」をまことにわかりやすく描いていて興味深い。(女子高生の自殺を止めようとする「こと美」の件は他のエピソードより長めに感じた。)一人四役の大石ともこの奮戦に拍手!。 

独りの国のアリス〜むかし、むかし、私はアリスだった……〜

独りの国のアリス〜むかし、むかし、私はアリスだった……〜

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2023/06/15 (木) ~ 2023/06/19 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千秋楽の《Team葉》を観劇。
初日のコメントでこのチームの演技の硬さが指摘されていたが、楽日はテンポよく観ていて特に気になる点はなかった。私自身、ファンタジーには興味が湧かないので、物語自体をどうこう言うつもりはないが、奇抜な服装や声高な会話は「奇妙な世界」を表現するには十分だったと思う。今回の収穫はアタシ(アリス)を演じた花房里枝さん。歌も良かったが、終盤の独白シーンの最後のセリフ、「一人でも笑って生きていくわ」(正確に覚えていないがこんなニュアンスだった)。これが圧倒的な説得力で軽い衝撃を覚えた。今後の彼女に注目したい。
この団体の鑑賞は今回で3作目だが、毎回、作品の持つ魅力を最大限に引き出し観客に提示しようとする姿が感じられるし、キャスティングの妙も光っている。

Family~明けてほしくなかった梅雨~

Family~明けてほしくなかった梅雨~

ヒューマン・マーケット

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2023/06/13 (火) ~ 2023/06/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「Family」シリーズ、初観劇。観劇中は鈴木家と佐藤家がごっちゃになっていたが後で当日パンフで理解した。確かに分かりやすい芝居で最後まで楽しめた。

ネタバレBOX

照明の暗転や音響がない舞台は極めて珍しい。でもセリフのテンポ、役者の出入りのタイミングがいいので不足感はない。物語はちょっとして事件が起こったりしてホームドラマにありがちなパターンだが、(ちょっとクサいけど)素敵なセリフが散りばめられていたり、個性的でひたむきなキャラクターを役者陣が好演していて、スッと心に入ってきてジンワリ浸み込んでいく佳作になっている。全身黒ずくめの謎の女がいい触媒になっており、まさに“雨降って地固まる”だ。今後の展開にも期待したい。

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