イノセント・ピープル 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    外国人が登場する芝居は翻訳劇だという思い込みがあった。だがこの作品は日本人の脚本でアメリカ人を描き、それを日本人の役者が演じるという極めて珍しいパターンだ。さらに、作品に登場するのは原爆製造に関わった科学者たちとその家族。私などは原爆と聞けば広島、長崎の惨状がすぐ思い浮かぶだけで被害者の視点でしか見てこなかった。それを加害者であるアメリカ側の(それも原爆製造の当事者) 視点から描こうというのが画期的だ。これらは特筆すべき点だろう。日本人を悪し様に言うシーンなどはインパクトがあってすごく嫌な気分になった。

    役者陣には各々の役柄を深く掘り下げ、それを忠実に体現しようという姿勢が強く感じられ、重いテーマとも相まって舞台に独特の緊張感が漂っていた。観ているこちらも自然と居住まいを正し舞台に集中でき、ある意味とても心地よい緊張感だった。

    ネタバレBOX

    印象に残ったのは何といっても最終章である加害者側のブライアンと被害者側のタカハシが対峙するシーン。被爆地の惨状が語られた後の「謝罪はないのか」のタカハシの問いかけに口ごもり何も答えられなかったブライアン。その時彼の胸に去来していたものは何だったのか。そして孫娘のハルカとの初対面。彼女は身籠っている。なんとブライアンはゆっくりと彼女に近づきながらその腕を真っ直ぐにそのお腹に伸ばしている。
    何ということだろう。生まれ来る命には慈しみを持って迎えようとしているのに原爆の犠牲になったあまたの命については一顧だにしない。彼は先祖から繋いだ命を3代先まで繋ごうとしている。片や自らの命も全うできなかった人々のことを想わずににいられない。これが戦争という魔物が生み出した歪んだ「イノセンス」なのか。人間の持つ二面性を鮮やかに描き出している。

    最後、ブライアンがハルカのお腹に触れる寸前で暗転となり、銃声(?)のような音がしての幕切れ。彼に鉄槌が下されたのだろうか?。いずれにしても心に残るラストだった。

    この機会がなければ出会えなかったであろう作品。感謝です。今後のCoRich舞台芸術!プロデュースに期待します。

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    2024/03/25 13:23

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