#10の観てきた!クチコミ一覧

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葬送の教室

葬送の教室

風琴工房

ザ・スズナリ(東京都)

2010/10/06 (水) ~ 2010/10/13 (水)公演終了

無題
 不覚にも号泣した。この作品は実際の事故を題材にしているけれどフィクションだという。しかし下手なドキュメンタリーよりずっと伝わってくるものがあったと思う。

 私も理系でかつて研究職にあった人間だから、この作品の主人公に感情移入するのは容易だ。いつまでもクヨクヨしていても仕方ないし、死んだ者は帰ってこないのだから、事故の原因究明や生存率向上を図るための努力をしていくべきだと考える。そして、ヒステリックに泣きわめき続けるような人を愚かだと見下してしまう。この作品を観るまでは、そんな自分は冷静で正しいと思っていた。

 しかしこの作品を観て初めて、泣き続ける人の気持が理解できた気がする。合理的に割り切ることができない心情が“見えた”気がする。共感できるかどうかはわからないが、合理的に割り切ることだけが正しい姿勢ではないということはわかった。

 嗚咽が漏れるほど泣いた芝居は初めてだ。なぜそんなに涙が溢れたのかわからないが、多分、凄まじい悲劇が語られているのに悪者が一人も登場しないからだと思う。

4-doors

4-doors

サマカト

シアターシャイン(東京都)

2010/09/29 (水) ~ 2010/10/03 (日)公演終了

無題
 「ひとつ屋根の下」「箱」「変換な本音」「不親切なダイジェスト」の4話オムニバス。4話合わせても90分程度に収まる小品集。いずれも、どこかズレた人たちによる奇妙な会話劇。そのズレ具合が絶妙で笑いを誘います。

  projectサマカトポロジーから改名してサマカト。略したような感じですが、そもそも元の名前も何かわかりません。過去2回観劇して2回とも気に入りましたが、今回はそれらほどのインパクトはありませんでした。まあオムニバスだと個々の話は軽くなりますので、ちょうどよい濃さだったかもしれません。

九月の遠い海

九月の遠い海

菅間馬鈴薯堂

王子小劇場(東京都)

2010/09/30 (木) ~ 2010/10/06 (水)公演終了

無題
 1959年から1960年にかけて小学生と教師だった登場人物たちのエピソードと、大人になった1980年にその頃を回顧するエピソードから構成される。当日パンフレットの挨拶文に「極太の筆で書きなぐったような荒筋と稚拙でちぐはぐな劇構成」とあるように、かなりダイナミックな作品だった。

 明らかに大人の役者が小学生を演じると、大劇場ならともかく小劇場ではどうしても滑稽な印象を避けられない。それを補うには子供らしい動作、つまりちょこまかした素早い動きと感情に任せた大きな声が必要だろう。だからきっと出演者は体力の限り動いていたと思われる。

 残念ながら、ノスタルジックな背景を懐かしいと感じるほど自分自身がまだ年をとっていないせいか、あまり世界に没入して鑑賞することはできなかった。

乳水

乳水

鳥公園

d-倉庫(東京都)

2010/09/23 (木) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

無題
 サイトとチラシで印象の異なる文章が書かれている。舞台から受ける印象はまたさらに違う。『藪の中』のように各自の視点から描かれる構成を取っているが、実際の描き方はむしろどれも客観的だ。とはいえ真相らしき視点が無いまま終わるのはやはり『藪の中』だ。

 鳥公園は、乞局で役者をしていた西尾佳織が独立して作った団体とのことで、その演出は乞局に似た印象を受けた。ただ、乞局のように嫌な登場人物ばかりというわけではなく、むしろ弱くて流されてしまった人たちのようであり、断片的には感情移入できなくもない。

 家族とか親子を題材にした作品は個人的に痛いのだが、特にこの作品は子供のいない夫婦が発端になっているため、なんとも切ない。そして物語としての味はとても苦い。嫌いじゃないが。苦い。

ЖeHopмan【シャハマーチ】 下北盤

ЖeHopмan【シャハマーチ】 下北盤

電動夏子安置システム

Geki地下Liberty(東京都)

2010/09/21 (火) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

無題
 彼らがなぜそんなことをしなければいけないのか、どういう経緯でその立場になったのか、誰がこのゲームを作ったのか、一切の説明抜きにいきなりゲームが始まる。映画『キューブ』を彷彿とさせる状況の中で、登場人物たちは必死で勝とうと模索する。

 会話による頭脳ゲームなので、チェスや将棋のような戦略に加えて心理戦が繰り広げられていく。もちろんこんなゲームは知らないし、ルールはあまりに複雑で憶え切れない。私も含めて多くの観客は恐らく、ルールを知らずにアメフトを観戦するような感覚で観劇していただろう。ある意味、ルールを知らなくても駆け引きは楽しめるということを示してくれたのかもしれない。

 割と大勢の登場人物が同時に舞台上にひしめき合っているが、意外とすっきり整理されており混乱なく追いかけることができた。ふたつのチームのそれぞれを主役にしたふたつのバージョンがあり、残念ながら片方(Mバージョン)しか観られなかったが、まあ半分以上は楽しめたと思う。

「美しきラビットパンチ」

「美しきラビットパンチ」

ゴジゲン

駅前劇場(東京都)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/26 (日)公演終了

無題
 予定調和的な展開をすべて破壊して、脳内お花畑で踊り狂い始める様子はドラッグのようだ。本気でラリって見る夢はこんなものじゃないだろうけれど、一体どこへ行ってしまうのかわからず呆然とさせられる気分は悪くない。

ブレヒトだよ!ー京都・北九州公演ー

ブレヒトだよ!ー京都・北九州公演ー

劇団衛星

KAIKA(京都府)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/20 (月)公演終了

無題
 劇団衛星の団員は何人か知り合いがいるのですが、公演は初観劇です。やや古典的な(いかにも演劇的な)演出で物語を丁寧に描いており、京都の劇団としてはオーソドックスな印象を受けました。

 銀行から融資を受けようとするある劇団の主催と、銀行強盗のプランを練る別の劇団の主催。そもそもタイトルからして思い切り演劇を前面に出しているように、演劇そのものが主題になっている作品です。下手な劇団が劇中劇をすると内輪受けに近くなりますが、今回は幸いそういうことはありませんでした。

黒い紙と3つの箱ー京都・北九州公演ー

黒い紙と3つの箱ー京都・北九州公演ー

ユニット美人

KAIKA(京都府)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/19 (日)公演終了

無題
 ユニット美人は長久手で開催された演劇博覧会カラフル3で観たきりで、気になりつつも観る機会を逃していました。結局大阪を離れた後、今になってやっと本公演が観られました。

 半ばオムニバス形式のコント集なので、物語に対するこれといった感想はありませんが、単純に楽しめました。いわゆる女芸人的な痛さは(無くはないが)少なく、スマートにまとまっていました。結成から5年以上ですが、まだほとんど他に例がないタイプのユニットでしょう。

 劇団衛星から女優二人がスピンオフして作ったユニットで、今回は本体の公演と同じ日程でしたから、二人は他の役者の倍くらい覚えて練習しなくてはならなかったと思います。まったくお疲れ様です。

NMS_3『幸福論』

NMS_3『幸福論』

石原正一ショー

ACT cafe(大阪府)

2010/09/18 (土) ~ 2010/09/18 (土)公演終了

無題
 ここに出てくる二人はどちらも悶々とした生活を送り、時々爆発しそうになっている。どうしたらそこから抜け出せるかも判らない。そんな状態を解決するというより折り合いをつけるような手段に出る。

 気分としてはなんとなく共感できるけど、今の自分と重ねられるわけではない。その微妙な距離感を噛み締めながら観劇しました。

アラン!ドロン!

アラン!ドロン!

猫のホテルプレゼンツ 表現・さわやか

駅前劇場(東京都)

2010/09/01 (水) ~ 2010/09/14 (火)公演終了

無題
 オムニバスのように様々なエピソードが連ねられていく。最初のシーンで脇役だった人物が次のシーンでは主役になるといった形で、登場人物はゆるやかに繋がっている。主役だった人が他の場面ではどうでもいいような脇役になって出てきたりもする。特定の主人公がいないので、ある意味見やすかった。

 「苦笑系コントユニット」と銘打つだけあって、確かに苦笑だ。爆笑ではなくクククッとした苦笑が多い。だからお笑いが好きな人に自信を持っておすすめとはいかないが、個人的には爆笑コントより好みでもある。

 裏の事情はわからないけれど、舞台を見る限りでは作っている人達自身がとても楽しんでいるように感じられる。その楽しい雰囲気が客席まで伝わってくるのだ。全部ひっくるめて心地良い空間が作品になっており、その場に居合わせて良かったと思う。

Sea on a Spoon

Sea on a Spoon

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了

無題
 これこれ、こういうのが観たくて小劇場に通ってるんだよと納得した。最初は穏やかで優しそうに見えた人々の、ドス黒い本性が次第に明らかになっていく緊張感。誰が誰と結託して誰を裏切っているのか。さらに悪いヤツがいるかもしれないという不安。正しい者が最後に勝つなんて保証のないシリアスさ。

 原子力発電所のある町が舞台で、一見社会的メッセージ性のある作品のように見えなくもないけれど、原発はあくまでもモチーフであり、描いているのは人間の怖い姿。ぞくぞくする作品でした。

ネタバレBOX

 ところで、町役場の菊池役を演じていた佐伯佳奈杷さん、前半は今時のかわいい女の子という顔だったのが後半ジワジワと恐るべき正体を現していくのですが、最初のシーンからなんとなく悪役臭がただよってました。計算ずくなら怖い演技力です。初見な気がしなかったのですが自分の観劇記録に名前が見当たらず。
泥と蓮

泥と蓮

企画集団DOA

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/09/03 (金) ~ 2010/09/05 (日)公演終了

無題
 父親の形見の箱を探して廃坑になった炭鉱の奥に歩みいった青年が、タイムスリップ?して新選組と出会い、様々な事件に巻き込まれていく物語。原作と脚本のどちらの問題かわかりませんが、観終えて正直なところ「???」という印象でした。

 新撰組を題材にした芝居は駄作になりがちと言うジンクスを昔どこかで聞いた気がしますが、本作もその轍を踏んでいるようです。役者の演技や個々のシーンの演出は決して悪くないのに、全体としてまとまっていない。張った伏線も回収できてないし、展開が残念すぎる。

 雰囲気的にかっこいいシーンばかりを無理矢理つなげたような印象を受けました。その割に人物背景の描き方が浅いので感動も軽い。説明が省けるから新撰組という有名人を使ったのではないかとすら思えます。

 そして一番残念なのは、主人公の存在意義が見当たらないこと。こういう話では普通、主人公が徐々に成長してくものだと思うのですが、それがちっとも感じられない。また、新選組の人々が彼をなんで受け入れるのかも不明なままで、消化不良でした。

 殺陣は悪くなかったと思いますが、普通の殺陣よりラスト近く、ダンスのような振り付けで戦闘シーンが描かれた場面があり、個人的にはこれが一番良かったと思います。

UFOcm

UFOcm

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

無題
 駄弁芝居と自称するだけあって、ゆるくてぬるい、テンションの低い不条理系。4年前に観た「地獄にて」以来2度目のあひるなんちゃらですが、だらだらしながらも飽きさせない構成は好みです。

 芸術系でないのはもちろん、エンタメ系としても首をかしげざるを得ないぬるさ。私が芝居を見始めた90年代はこういうのが結構あったように思うのですが、最近は少なくなりました。需要は低いのかもしれませんが、変えずに続けて欲しい劇団です。

あやかし相談承りマス。萬屋ツジモリ

あやかし相談承りマス。萬屋ツジモリ

回転OZORA

「劇」小劇場(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/31 (火)公演終了

無題
 妖怪と少女の友情?物語。土地に取り憑いて人間を追い出していた妖怪が、ある時引越してきたラーメン屋の娘だけは違っていて、彼女のために頑張って・・・という感じ。物語としてはまあまあベタなもので、特別目新しいものはありません。しかし変な小細工なしでストレートかつ丁寧に描いており、好印象でした。

ガラパゴス

ガラパゴス

少年王者舘

ザ・スズナリ(東京都)

2010/08/19 (木) ~ 2010/08/24 (火)公演終了

無題
 見てるだけでトランス状態に引き込まれる少年王者舘の空気は健在。特に後半のダンスは、最初のうちは色々考えながら見ていたのですが次第にぼーっとなって飲み込まれました。

 ただ、いつもは昭和前半くらいの空気で満たされているのに対し、今回は現代の言葉が強く入り込んでいました。前回の「夢+夜」の前はかなり間が空いてしまったのでひょっとしたら最近はそういう傾向があるのかもしれませんが、個人的には前作くらいの方が好みでした。

奇妙奇天烈ファンシーハウス in大阪 (公演日は24日!15時と19時からです!!)

奇妙奇天烈ファンシーハウス in大阪 (公演日は24日!15時と19時からです!!)

劇団ぎゃ。

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2010/04/10 (土) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

無題
 女の子4人による楽しいコスプレ芝居を観たつもりで帰りましたが、うまいことごまかされて本質を見逃していたことに2日経ってから気づきました。怖い話です。

 ネタバレになるので詳しい内容は語りませんが、親子(母娘)関係の暗い面をさんざん見せつけられて、最後に与えられる小さな救いにすがりたくなる物語でした。

 毒々しい内容が軽いノリで演じられていました。でもやっぱり楽しい観後感です。福岡の劇団なので大阪ではなかなか観られないと思いますが、今回観られて良かったと思います。

モテハン・オンライン

モテハン・オンライン

ファントマ

ABCホール (大阪府)

2010/04/03 (土) ~ 2010/04/05 (月)公演終了

無題
 「ダメ男が波乱万丈のバーチャル世界で鍛えられて、現実世界でもちょっとだけ成長する」という構図はまあベタですがお約束としてありでしょう。現実・バーチャル・回想シーンなどが交錯しますがわかりやすく表現されており、エンターテイメントとして楽しめました。

 ただ2階席で舞台から遠かったため、なんだか楽しい雰囲気の場所を遠くから眺めているような感覚になってしまうことが何度か。1階席が盛り上がっているのに2階席はそれほどでもなかったりしたので、やはり距離は大事だなと思いました。

教育

教育

夕暮れ社 弱男ユニット

大阪市立芸術創造館(大阪府)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

無題
 物語の内容はどうあれ、この作品のチャレンジは舞台配置に尽きる。スペースの中央に客先が四方を向いて組まれ、役者はその周囲をぐるぐる回りながら演技し続ける。

 ひたすら回り続けているので役者は体力勝負だろう。しかし細かい演技はほとんどなく、セリフだけで語られているに等しい。いや、細かく演技していたのかもしれないが、全体の三分の一くらいしか視界に入らないので、よくわからない。

 この舞台配置をとることで何が得られたのか。当人達は色々狙ったことがあったのだろうが、本作について言えばアイデア倒れな感が否めない。物語としては“客席を中央にしてぐるぐる回る”というスタイルで見せる必然性もないし、観客としてはどのみち全体が見えないのだから眼前の役者も見る必要を感じなくなり、むしろ全体の「音」を聴くために目を閉じてしまった。

 とは言え、このアイデアは一発ネタではない。上手に発展させれば色々なことができるのではないか。偏った視界になるのは円形劇場だって同じことなのだ。どうせならぐるぐる回ったりせず、本当に一部しか見えない作品にしても良かったのではないか。

 しかも全体を見ることができないと言ってもこのスタイルなら、振り返れば真後ろ以外は見える。客が能動的に動かなければ見えないし動けば見える舞台というのは、今までなかったように思う。せいぜい花道くらいだろう。

 せっかく面白いスタイルなのに戯曲はさほど練り込まれている感じがしなかった。だから本作自体が成功していたとは言えないが、次はもっと上手に工夫して挑戦してもらいたいと思う舞台だった。

UBUROI

UBUROI

マレビトの会

ART COMPLEX 1928(京都府)

2010/03/26 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

無題
 物語の内容は問題ではなく、演出が圧倒的だった。こんなヘタウマな芝居で、基本的に無表情で棒立ち、セリフ棒読み。多少動きがあるところでも操り人形のようにギクシャクした身振りだけ。本当に下手な役者たちがこれをやったら金返せレベルになるだろう。それでちゃんと観客を魅了する舞台ができているのだからたいしたものだ。

 しかし残念ながらこれは一発ネタだろう。同じことを別の戯曲や役者がやっても面白くはない。本作を知らなければ楽しめるだろうが、基本的に二度使える手ではない。そういう意味で、本作を観られたのは幸運だったと思う。

クリスチネ

クリスチネ

トリコ・Aプロデュース

アトリエ劇研(京都府)

2010/03/23 (火) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

無題
 タイトルはイプセンの『人形の家』の登場人物の名前ですが、作品の内容とはほぼ無関係だったと思います。シチュエーションは微妙に関係あるような気もしますが、人形の家をちゃんと読んでいないので語れません。

 芝居は優しい不条理系とでもいうような内容。空き家になっているはずのある部屋に集まった男女4人。ラジオから流れてくる“むちゅうじん”の話を背景に、いずれもどこか変な4人の物語がつづられる。

 “むちゅうじん”を漢字でどう書くのかわかりませんが、人としてダメな感じがむんむんする登場人物たちの、とぼけたやりとりと緩く不条理な空気はとても心地よく観られました。

 結局何がなんだったのか、全然わかってませんが。

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