つちのこ
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2010/06/04 (金) ~ 2010/06/13 (日)公演終了
嘘は、最後まで、ね。
一度ついたウソは、
最後まで突き通さなければならない。
そのついたウソが大きければ大きいほど、
罪は………重くなる。
1972年の岐阜の片田舎のとある村。
幼なじみの3人の男は、
不法投棄の取り締まりで拾ってきたタンスの中から、
金の延べ棒を見つける。
何とか3人はそれを自分たちのものにしようと画策するのだが…。
そんな折、旅館営む男の大学時代の友人が、
突然宿泊客としてやってくる。
恋人、親、兄弟、様々な人を巻き込みながら、
最初の嘘が、
ついに手に負えないほどの、大きな嘘へとふくらんでしまう。
上演時間が少し長いなぁ、ということを除けば、
かなりの秀作でした。
セリフも違和感ないし、
何よりウィットに富んだ会話(けしておシャレではないが)と、
上手な仕掛け。
観る方を飽きさせない。
演出も、俳優も、
いかにもこの脚本が好き、
という遊び心も含めて、
良いアンサンブルができていた。
もう少し、
笑いを獲れたのに!
なんて思ってはいけないけど、
それもまた、次を期待しちゃうドラマの作りのせいかなぁ。
リア
理生さんを偲ぶ会
座・高円寺1(東京都)
2010/06/24 (木) ~ 2010/06/27 (日)公演終了
アジアの予感…がある。
岸田理生を偲び毎年行われているフェスティバルでの特別公演。
スタッフは演出のキム・アラだけでなく、
舞台美術・パク・ドンウ、
音楽・演奏・キム・キヨン、
映像・チェ・ジョンボム、
衣装・キム・ジヨン、
と、スタッフを韓国から迎えている。
特に秀逸だったのは、舞台美術と音楽。
オープンスペースの小劇場に、
両脇に客席が作られ、
真ん中が舞台空間となっている。
普段使わない大戸が開かれたままで、
これもまた、舞台装置として使われていた。
床面に、新聞を敷き詰めてあり、
出入りが四方からという、
自由な使い方がされていた。
舞台奥中央にグランドピアノが置かれ、
その生演奏による音楽、歌が、
非常に印象的。
アングラっぽい雰囲気の空間でありながら、
古さを感じない。
むしろ、おしゃれとさえ言える。
これだけでもお値打ちでした。
俳優陣は、質的には多少ばらつきがあるものの、
音楽に載せて動き、セリフをしゃべるので、
その統一感が、心地良い。
ベースにあるのはもちろん、
シェークスピアの『リア王』。
しかし、ラストは見事に書き換えられている。
リアを救うべく末娘は死に、
リアもまた死んでしまう。
そこにはない救いのなさは、
混沌を思わせる。
回復の兆しは、観客にゆだねられたようだった。
峯の雪
劇団民藝
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2010/06/22 (火) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
セリフの美しさ。
とある九州の片田舎。
窯業の町。
戦争の波が荒く押し寄せ、
自由な焼き物が許されない時代になっていた。
そんなある日、
陶工としてはをはせている治平もとに、
奇妙な焼き物依頼がやってくる。
そこへ満洲へ行っていたという次女が帰国し、
良からぬ噂が……。
はたして、その真相が明らかになると、
戦争というものを実感することになっていくのだった。
三好十郎の骨太な戯曲。
戦争から遠く離れているような、
片田舎の市井の人々が、
ゆったりした時間の流れが変わっていくことに、
うすうす気づいていく。
また一方では、
その中心の人間が“陶工”という芸術家であるところが、
画一的になっていく“国民”の姿を浮き彫りにしていく。
手堅い作りで、
ドラマとして十分楽しめるが、
今、なぜ、三好十郎か、
という部分が希薄なため、
物足りなさが残る。
僕たちの中の龍之介
劇団キンダースペース
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2010/07/01 (木) ~ 2010/07/04 (日)公演終了
初観劇です。
初めて観た劇団です。
小劇場スペースに、
竹やぶなど、わりにしっかりした装置。
芥川龍之介の『魔術』『龍』『白』という、
いわゆる童話と言われたもの小作品を3つ。
童話と言っても、
そんなに子ども向け、という雰囲気ではないけど。
思いのほか、小劇場風の芝居ではなく、
しっかりした新劇風の臭いが漂う。
ところどころやりすぎる俳優がいるが、
全体的には好印象だった。
非常に硬質な、
倫理的な刺激を受ける作品群だが、
教条的になっていないとこが秀逸でした。
ベーシックすぎて、多少退屈するところもあるが、
空間をうまく支配していて、
小劇場ならではの魅力も発揮していた。