アジアの予感…がある。
岸田理生を偲び毎年行われているフェスティバルでの特別公演。
スタッフは演出のキム・アラだけでなく、
舞台美術・パク・ドンウ、
音楽・演奏・キム・キヨン、
映像・チェ・ジョンボム、
衣装・キム・ジヨン、
と、スタッフを韓国から迎えている。
特に秀逸だったのは、舞台美術と音楽。
オープンスペースの小劇場に、
両脇に客席が作られ、
真ん中が舞台空間となっている。
普段使わない大戸が開かれたままで、
これもまた、舞台装置として使われていた。
床面に、新聞を敷き詰めてあり、
出入りが四方からという、
自由な使い方がされていた。
舞台奥中央にグランドピアノが置かれ、
その生演奏による音楽、歌が、
非常に印象的。
アングラっぽい雰囲気の空間でありながら、
古さを感じない。
むしろ、おしゃれとさえ言える。
これだけでもお値打ちでした。
俳優陣は、質的には多少ばらつきがあるものの、
音楽に載せて動き、セリフをしゃべるので、
その統一感が、心地良い。
ベースにあるのはもちろん、
シェークスピアの『リア王』。
しかし、ラストは見事に書き換えられている。
リアを救うべく末娘は死に、
リアもまた死んでしまう。
そこにはない救いのなさは、
混沌を思わせる。
回復の兆しは、観客にゆだねられたようだった。