満足度★
手法で内容をはぐらかしてる感じ
プロットがはっきり提示できていない上に描ききれない世界の人間模様を題材としたために、トリッキーな見せ方に頼りすぎた作り。109分。
ネタバレBOX
基本的な設定がまずまったく伝わらず。
①市はどういうアートプロジェクトとして立上げ、何を目的としたのか。
②集められた芸術家はどういう募集でどんな尺度で選定されたのか。で、選ばれた芸術家は見かけの目的を把握していたのか…とてもそうには見えなかったし。
③近藤の目的の第一期のトレースが真の目的だとしたらなぜ死に至らしめる過程を追うのではなくて、死を定められたアーティストを用意したのか…それだとドキュメントにすらなってないし。
どれもがはっきりしないまま。しかも話自体はこの見せ方だと決して落ちてないし。
アートプロジェクトというわりには日本語が不得意な動かないパントマイマー、自ら腱を切った舞踏家、持参したギターが弾けないミュージシャン、記憶障害の役者、書けない小説家等々まともではない連中を集め、月一で成果を求め、脱落者を選出するというのもこのプロジェクト自体に成果を求められるだろう市側としてもあり得ない設定かと。ましてや脱落制度のない第一期で起こった自殺の再現が目的ならなおさら同条件にすべきなのに…。
最初の方で流れる10分以上もの映像も効果があるとは思えないし、話の中で異種芸術家が最後に選んだ表現方法が映像というのも、なぁ。これは芝居なのに。
結局のところ何を一番描きたかったのか、伝えたかったのかが見えなかった点に個人的に大きく消化不良を感じた芝居だったかと。
満足度★★★
圧倒的セリフ量とスピート゚で演り抜く
史実をそれなりに踏まえつつも荒唐無稽な話を勢いに任せて展開。前の王子公演と似たようなシンプルな八百屋舞台も◎。137分。
ネタバレBOX
登場人物が18人と極端に多いが、どのキャラクターも印象に残るようなつくり。ただ、みんなのストーリーを描いたために謀反を起こすまでの展開が冗長になってしまった分-★。
森桃子さんと村上誠基さんのキャラは男女の入れ替わりが機能しているからまだよいとしてもこいけけいこさんや七味まゆ味さんあたりは普段みられないような役柄とはいえ無理に充ててる感も。もう少し男女比率を考えて構築すべき。
それでも今の言葉を乗せて走りきるこのスタイルは、80年代演劇を知らない中でつくられたものとしてとても新鮮だし、他に似たような劇団が見られない分十分に柿らしいといえるかと。短期間に公演を打っているだけあって進歩も格段に速いし、今後なにをどう見せてくれるのかもかなり楽しみ。
佐藤佐吉演劇祭の開幕としては十分に勢いをつける作品に仕上がってると思う。
満足度★★
演出の目新しさに惹かれるけど、
大勢の女優が次々と歩き進み、その時時のシーンを演じながら成長の過程を描き出す。目先のとっつきはよいが中盤が少し冗長。101分。
ネタバレBOX
女優が入れ替わり立ち替わりで同じ役を演じる手法が、公倍数的に魅力を増すわけでもなく、最大公約数的にキャラクターを確立していた訳でもないのが残念。シーンの肝心な部分のリフレインでは同じ女優を使ったりしてたのだから、もう少し人数を減らして、役者の個性を上手く活かしてもよかった気がする。
最初から最後までほぼ同じ手法だったので、法則と流れが分かってしまうとちょっと変化に乏しくも思えて。途中のシーンのつくりが長かったりしたのもマイナス要素。
満足度★★★★
チームワークの良さで満足度も高く。
気心知れた同世代の劇団員同士は掛け合いとか間が絶妙。なんてことない話だけど、皆のダメさ加減に妙にほんわかさせられる。100分。
ネタバレBOX
皆が書いているように2とあっても全然問題なし。本作だけで十分楽しめる。脚本は決して他で通用するものではないと思うが、個性出しまくりの濃いキャラをまとめ上げるにはちょうどよい匙加減かも。
満足度★★
素直になれない大人のもどかしさ
お互い腹の探り合いばかりで本心を言わないので話が全然進まないのが観てて歯がゆい。演技や台詞回しも作りすぎの感。90分。
ネタバレBOX
演じ方が妙に芝居がかっているせいか、彼らが抱えてる状況や、生活の背景が提示されてるシーンからでは全く見えずに、リアリティを感じられなかったのが残念。
話の中心が子供の葬式なのに、周辺の人達が結局身勝手で子供の方を向いていない態度も高齢の役者が演じている芝居としては腑に落ちず。
暗転が多すぎるのもマイナス要素だが、終盤わざと明かりを少し残したまま暗転し、セットが廻り舞台になっているのを見せた演出だけは好感。
満足度★★★★
街の在り方がとてもヘンな船橋。
宿場町でも港町でもなくなり、都度再開発をして成立った街は、歩く度に物語を孕んでそうな奇妙な様に引きつけられる。4800歩。81分。
ネタバレBOX
JRを越えて南北がスムーズに行き来できる大きな道路もなく、土地買収が完全ではないのに民家を残しつつも歪な土地に駐車場が圧倒的に足りないタワーマンションを平気に乱立させる駅周辺、昭和半ばに中層化されたものの、今や2階3階はほとんど使われていない中途半端な建物が新築マンションと昔ながらの家構えの商店の間に残る本町通、街中を流れるにしてはあまりに水位が高い海老川、高架にはしたものの高架下は行き来もできず全然開発されてない京成電鉄、税収があるはずなのに古びてペンキの塗替えもされていない歩道橋や小学校や親水公園の壁。天気が荒れたら危ないだろうに地元民が川を渡る抜道にしている排水機場脇の小径、どれも街としてのビジョンが確立しないままに乱立しているよう。その秘めたドラマ性にはとても興味は惹くがすこぶる交わり難い感じもして。
その中で和装の案内者に連れられ歩く。過去を置いていきながら海まで向かう青い服装の少女を追いつつ。
最後の到達点、夕暮の船橋港で歌われるユーミン。それは「埠頭を渡る風」でもなく「海を見ていた午後」でもなく「翳りゆく部屋」。妙に染みたなぁ。
満足度★★★★★
この公演は観た方がよいと思うな
家公演、初回。6畳の一間の中での距離感で劇団員と話したり、秘蔵映像見たり、各々の出し物を見てみたり。普通に楽し過ぎ。110分。
ネタバレBOX
自宅兼ギャラリーの昭和テイストの一軒貸しの家が会場。旧早稲田通りを北上して大きな交差点の手前のT字路を右折。右に公園のある左の路地に入った左側2軒目が会場の右側二軒目。ちょっと入りくんでるので行く人は間違えないように。
DJ聞きつつ喋りつつ食べつつと普通に楽しみながらあっという間に時間が過ぎる感じ。フレンドリーに迎えられた会場では本当に劇団の皆さんと友達感覚。
フードメニューで用意されているこーじ君のグリーンカレーは絶品なので是非ご賞味あれ。これ、普通に街中でも500円じゃ食べられないと思う。他の食べ物も美味しそうだったよ。
しかし、この公演の場当たりのようで計算されたおもてなしは素晴らし過ぎです。今晩のキャバクラ公演がどんな内容で上演されるのかが逆に気になるなぁ。
ノーマークだった人は今からでもホームページで混雑状況確認して予約すべき。必見公演。
満足度★★★
緊張感はずっと続くのだけれど、
細かい点で腑に落ちなかったり、緩急のバランスも悪かったり。役者も話も用意したモノが完全に消化されなかった印象。105分。
ネタバレBOX
一人の出所を機に4年ぶりに集まった現金輸送車襲撃メンバー。捕まった一人がなぜこのメンツにそこまで執着したのかがわからない。結束力といい、綿密さといい、失敗するのが当然のような連中なのに。
新入りを入れて9人で6億を山分けというプランにも疑問。サラリーマンの10年ちょいの年収のために新しい仕切り屋の完璧とも思えないプランにそう簡単に乗るモノだろうか。まぁ、塀の中で知り合ったプランナーもメンツもみんな成功者じゃないのだから軽々しかったり綻びがあったりするのだろうが。
後半、裏切りが起こるのだが、真犯人を隠すが故に、裏切り者の真の目的が人なのか金なのかが混沌としてしまっている。起きてしまった状況で真犯人がそれでも求めたものはいったい何だったのか?そして最後のシーンも意外。対峙する相手の気持ちとかがもっと描かれていれば納得できたかもしれないのに。
役者、中川、櫻井両氏の醸し出す緊張感と西山氏の軽さ加減はよい塩梅なのだが、こいけけいこ嬢が全然活きていない。彼女である必然性さえ感じない捨てキャラみたいな起用はあまりにもったいなさすぎ。
この劇団の場合、もっとできると思ってしまうため、どうしてもこの出来だと辛口になってしまう。
満足度★★★★
堅実に、でも面白く仕上がってる。
十二人ものとしても当時の日本男子らしさを反映させながら、飽きずに最後まで惹きつけている。判断の切り返し材料も◎。122分。
ネタバレBOX
被告、裁判長、検事、弁護士、時に証人までを登場させたことでワンシチュエーションでなく、場に変化が出来て効果的だった。
陪審員は全員がうまくキャラを書き分けられてたとまではいかないけど、主要な人物は展開の状況を左右するのに十分に色づけされていたと思う。
話の語り部役の大家仁志さんの一人数役もの活躍が違和感もなく好演でした。
満足度★★★★
大きな嘘が乗っかった街を歩く。
あり得ない嘘をあたかも事実のように語りながら、成り立ちの違う3つの町並みを歩き渡る。視界の変化が面白い。7200歩。90分。
ネタバレBOX
25年も前に作られた白髭団地の墨田区、20年前は空き地だったところから開発された新興の団地・マンション群の荒川区南千住、町工場が時代の変化と共にマンションに変わっていった足立区千住、どの地域も隅田川沿いであるものの、橋がなかったために交流もなかった街々。今回のポタライブでは近年作られた橋を渡ることでこの地域の違いをはっきりと見せてくれる。その場所の選び方がすばらしい。
今回は視界が開けている場所が多く、パフォーマーの運動量はとても多くて大変そう。観ている方は広い視野で大きく街と芝居を見られて、開放感をも伴って楽しめた。
最後に見せるある事件の起きた場所は、今は普通に誰も足を止めることなく。でもそこは昔のまんまの雰囲気で。時間の変化の強弱も感じさせてくれて◎。
…でも物語として今でも野生のゴリラが生息っていうのはどうなんだろ(^_^;)
満足度★★
肝のアイデアはよいと思うけど、
最初の頭の体操的ネタの掛け合いのテンポは何か期待させてくれたけど、話としては広がることもなく淡々と流れてしまった印象。102分。
ネタバレBOX
せっかくクセのある役者陣が集まっているのにそのパワーが発揮されなかった感じ。会話劇で展開する同じような設定だったら、青年団の「S高原から」の方が何倍もドラマ性があるだけにもう少し違った料理法はなかったのかなぁ、とも思ったり。
満足度★★★
設定の大きな嘘が効果的に牽引
あり得ないような状況に歪んだ人々という関係性が話に興味を持たせるが、小さい嘘に違和感があり、人物描写も薄く。103分。
ネタバレBOX
闇の仕事の有り様や絵本作家の描く絵本、片松葉で歩行する患者等細かい点で不自然さを感じてしまい、それが話に深みを増すどころか逆効果に思えてしまったのが残念。
人物描写も新入りのバイトを掘り下げるでなく、かといってかっちりと人物像が浮かび上がるほど描いていたキャラもいないので、見終わっての印象がとても薄い。かなりおどろおどろしい設定に普通に見える曰く付きの人物ばかりを登場させたのだからもう少し焦点を絞ってもよかった気がする。
満足度★★★★
興味を惹かせる脚本の力量が○。
ホテルの一室という難しいワンシチュエーションながらも自然な出入りと巧みな展開で語りすぎない話にぐいぐい引き込んでいく。110分。
ネタバレBOX
デリヘル嬢と画家の接点とか、作家と画家の関係性とか、細かい点で提示しない部分が余計に考えを巡らせてあれこれ深読みしてみたり。少しずつ全体像が見えていく構成も◎。
ホテルマンと清掃員のシーンはちょっと余計なトコもあって△。彼らは最後の清掃員の一言まではベッドメーキングの笑いのようにちょっとしたエッセンスでよかった気も。
満足度★★★★
脚本がよいだけに安定した出来。
出演者にMONOの影がかなり色濃く見えてしまう部分もあるが、それでもちゃんと消化した上で自分達の作品に仕上げている。107分。
ネタバレBOX
一人金替さんとは違う色を出していた小須田さんが印象的。芝居を締める役割をきっちりと担っている感じ。
満足度★
作為的なチープと結果チープは違う。
間にコンピの漫才?を挟みつつ、死について描いた5本のオムニバス。力量以前の適当な美術・衣装や演技には閉口するばかり。77分。
ネタバレBOX
狙った脱力感とヘタウマとはとても思えない。吉田麻生の名前からなにかやらかしてくれるかと思って期待していたら大きく裏切られた印象。学期末のクラス会で仲良し仲間が勢いだけでやってしまった劇、という感じ。少なくともお金取って見せるものとして昇華してほしい。
満足度★★★★
1日で何人動員できるんだか?
全然テイストの違う3本を用意して、怪しさと後ろめたさが同居する空間で待って、観る作品は完成度高し。今回はセットが素敵。各5分程。
ネタバレBOX
通路の幅いっぱいに作られた覗き穴の壁が迫ってくる機構は、これから始まる観劇への高揚とアクティングエリアの確保という両方に効果的に作用してるアイデアの賜物のような秀逸さ。
最初に穴を覗いたときの、トランスするような光と音の演出が素晴らしい。穴の目隠し板に反射して見える覗いている自分の瞳が、「この眼で覗くんだなぁ」という罪悪感にも似た気分を増長させる。
作品は、
●男と女
いきなり提示される不条理な設定。それを素直に受け入れられたとき、立場が逆転した状況には奥深さを感じるはず。
●君の胸に抱かれたい
少年誌に勢いだけで書いた2、3ページのヘタウマ漫画のような展開。でもそのバカさ加減と青くさい素直さには清々しささえも覚える。
●冥土の果て
清水那保と大塚秀紀の二人の役者にKOされるような作品。清水の視線と、大塚の異なる道に踏み入れてしまうときの表情は演技とわかっていても目を奪われる。
初日の夕方までの様子だとタイミンクが゙よければほとんどすぐに、悪いと1時間ほどの待ち時間での観劇になっていた模様。定期的に休憩時間が設定されているので、自分のタイミングで観劇を予定していても、まずは会場に行って混みようと休憩時間のタイムテーブルを確認すべし。
満足度★★
いたたまれない程の気まずさ。
計算していたとしても微妙な関係性の危ういバランスの連続は、物語を浮き彫りにするにはあまりに説得力なく、不十分で。120分。
ネタバレBOX
始終張りつめた空気で満たされてる芝居だけど、決してよい緊張感とはいえず、グダクダな各人の切迫感が作り出しているのでのめり込むこともできず。
物話は妻が死んだ日と3年後の同日を交互に提示するのだが、3年後の女性監禁の現実に至るまでの理由と真実が3年前の話の中では語りきれていないので、結局輪郭がぼやけてしまっている。
話の落とし処もいきなり持ってこられたみたいで、それでよいの?とも思ってしまう展開で合点がいかず。
最後、夫がずっと探していた爪切りが見つかるのだが、これに何かを投影したり重ねたりしているつもりだとしても、背景が弱すぎて効果的に見えないし。
時間軸を動かして、余計なシーンを入れるのだったら、もう少し焦点を絞ってほしかった。
満足度★★★
歩いていく道道にシーンを重ねる。
多くを語るでなく、物語を想起するわけでなく、所々のよい感じな場所に役者が絵を作って。かなりスマートなポタライブ。5800歩。77分。
ネタバレBOX
当日は曇り。気持ちよく身を委ねてしまいたいような場所に役者が寝てしまうパフォーマンスだったので、晴れてたらもっとよかったのになぁ、なんて思ったり。
起点がひばりヶ丘駅というので行き先はひばりヶ丘の果てのひばりが丘団地。この団地、戸数4割減での完全建て替えが決まっているとはいえ、既に新しい建物が建っている団地の真ん中の公園でさえ遊具のメンテナンスがされておらず、古い建物も半数以上が退去している中にまだまばらに住んでいる住人も居て、団地自体がこの先どういう方向でコミュニティを形成しようとしているのか全くビジョンが見えない不思議な状態。まさに夢の公団の行き着いた果てみたいな感じ。本当に再生するのか?という嘘くささも案内人の口から出るホントやウソのひとつのようで。
満足度★★★★
決して胸の空く作品ではないけど
始終舞台上に提示されるエゴや悪意の表し方が秀逸。ベースをしっかり作り、破綻ないように近未来を描く手法も手慣れてきたか。70分。
ネタバレBOX
オリンピック、エネルギー問題、そして中国と今年のキーワード的話題を取り込んだ上でその先の危うい日本を描く。あっちゃいけないけどあっても不思議のない状況と徐々に増してゆく緊張が舞台に求心力を生んでいるよう。
主人公だけ普通で、変わりゆく状況に変えられてしまっている人々のぶつかり合いは面白いものではないが、挟み込まれるくすぐりがうまくバランスも保ってて。
今回は時事問題を取り上げたことでチャリT企画の作風と少し似てしまった感じだけど、ここ数作の流れで北京蝶々の方向性は見えてきたみたい。
満足度★★★★
吉祥寺の雑踏が舞台空間に。
木室陽一氏の周りだけ流れる空気が違うよう。スピードの強弱、高さの変化を自分なりの位置取りと距離で楽しむ逸品。2200歩。54分。
ネタバレBOX
駅改札口から始まり駅ビル地下を巡るコース。人と人との間をすり抜けたり、止まったりと自由自在に動くさまを連れられるわけでもなく追っていく。コース取りといい、スタイルといいポタライブの新機軸とも思えるほどの斬新さが◎。
普段から吉祥寺ロンロン(駅ビル)はよく利用しているのだが、自分も知らない階段があったのにもビックリ。
自分は14時の回で観たのだが、たしかに上演時間によって街を歩く人も変わるので見える様子も変わっていく。その時間なりのポタライブを見せるのは面白い趣向だと思う。
このポタライブ、最大で8人を引き連れる回もあったらしいが、できるだけ少人数で観た方が引率感もなく、自由度高く雑踏に紛れるのでより楽しめるのでは、と思った。