満足度★★★★
『出張の夜』観劇
始まる前から冒頭にかけてはアッチ方面の話のようにことさら強調していましたが、決してそのような話ではありませんでした。
ネタバレBOX
舞台には真っ赤な鳥居、始まる前から冒頭にかけて、白い日傘を持った白い洋服の女性が延々とゆっくり歩き、死後の世界のような雰囲気を醸し出していました。その後のダンスパフォーマンスでは、身悶えたりしながら女の情念を表現していました。
物語は、出世のため会社の役員の娘と結婚したものの、頼りの役員が死に、少し出世しただけのお飾り的地位で四面楚歌になっている男が、出張先の地でかつての恋人の部屋に押しかけて愚痴るところからスタート。
女は男と別れて8年、会社は変わったものの、毎日同じルーティンを繰り返すことで男への思いを断ち切ったものの、突然の出現で心が乱されます。男は戸籍を消したいと言い、別人のようになって、あるいは別人になって生きたいのか、そして女と一緒に生きたいのかと考えましたが、男は単に逃げ出したいだけの話で、諦めた男と再会し、やり直すのかと期待したらまた捨てられるというのでは女は心も生活もルーティンに戻すことはもはやできません。女は自殺し、男は浮浪者に落ちぶれるという結末。
身勝手な男に乱され自殺した女の情念は凄まじいものがあったろうと思います。
しかし、アッチ方面を示唆することは全く必要無く、鳥居のある風景の中を白装束で歩き回るようなパフォーマンスは要らないと思いました。鳥居はなぜあったのでしょう。脚本にあったとすると、やはり作者は単にアッチ好きの人だったというだけのことですね。
満足度★★★★★
これがラストシーンかぁ!
スピード感があって、役者さんたちもなり切っていました。
ネタバレBOX
ラストシーンがチラシの図だったとは。構想を考えたときに既にラストシーンが浮かんでいて、最後までブレなかったということですね、素晴らしいです。
前作を観ていたので、ヤクザに見えるが実は警察官、女性のようにも見えるが実は男性ということを刷り込んでいたので、すんなりストーリーに入って行けました。
早口じゃないと終わらないという事情もあるのでしょうが、噛みそうになる一歩手間で踏み留まって、展開もスピード感がありました。捕鯨船を使って建物へ突っ込むなどやることも派手でした。
コロンビア派遣メンバーは敵味方に分かれていましたが、薬物を根絶したいという思いは共通で、彼らの多くの犠牲のもと、武藤組と青葉会を壊滅させました。
梯鳥も犠牲になったような思わせ振りからラストーンへ。薬学部を出て麻取へ入り必ず梯鳥の許で働くのでそれまで命を大切にしてくださいというさくらちゃんが梯鳥に気持ちを伝えるの図でした。
満足度★★★★
2006年度劇作家協会新人戯曲賞受賞作
応募作というのは小屋に掛けることを気にしないで書けること、そして審査員の心をくすぐる要素を入れることが重要だと知りました。
ネタバレBOX
川辺川ダムに反対して民宿を営みながら土地を売らずに住み続けた母の跡を継いで住んでいる女性と川辺川ダムを巡る話。
第一ダムの放水によって夫(主人公の父)が死んだこともあって母親はダム建設に反対していたとのことでしたが、反対と言いながら第一ダムと第二ダムは既にある、また主人公の思い出の地は土地が掘り起こされていたなどの経緯から、ダム建設はもう既定路線のことで、工事がどんどん進んでいる過程の中での話かと思ってしまいました。
母と学者との20年近く前のドロドロした関係は分かるとして、娘と学者が妙な関係になりかかることは理解出来ませんでした。
ふすまを開けたらそこは廃墟だったという、実際の舞台で見たら強い印象が残るようなラストシーンでしたが、何も学者を幽霊にしてまでことさら寂寥感を煽るほどのことは無いと思いました。
結局、妊娠したことで国土交通省のダム担当の職員を夫にして私生活は充実、民宿や叔父さんの土地を売って数億円を手にしてしばらく傍観、最終的にはダムはできず、将来土地を買い戻して民宿を再開、事情通のこの夫婦は最強の錬金術師です。
アフタートークで、妊娠のことを安易に取り入れる傾向があるというお話が坂手洋二さんからありましたが、執筆時から受賞時にかけて嶽本あゆ美さんは実際に妊娠されていたということで、坂手さんも、『まほろば』におけるそんなバカなということも一概には否定出来ないと認識を改めたとのことでした。それでも妊娠を男女の駆け引きに都合よく使うことは嫌いのようで、平田オリザさんの作品を観てまた使ってると思ったことがあったそうです。
アフタートークを面白く拝聴して、その後『阿房列車』を観て、作者の日常過ぎるぐらいの日常に非日常を混ぜる手法に、また使ってると思いました。
満足度★★★
やはりベタ
前向きに、第一歩の始まりです。
ネタバレBOX
食堂兼居酒屋の女将さんや周囲の人たちの、今後どう生きていこうかと思考しながら暮らす日常を描いた人情話。
ゆとり世代の会社員、良かったですね。一緒に仕事したいとは思いませんが、ぐだぐだでしれーっとしていて面白かったです。
重たい過去を引きずっている男、妊娠したかもと心配している女、結婚したい男、夫の浮気を疑いもやもやしている女、色々な人々が集います。
プレゼントの時計と妊娠検査薬がごちゃごちゃになってトラブルを引き起こす手順はお見事でした。
女将さんの会社を辞めた理由を吐露するシーンに、バリバリこなす女性とばかり思っていた彼女にもそれなりの苦労があったことが分かりホッとしました。そして、おばあちゃんが死んだこの機会に、友人の誘いを受けもう一度社会に出て働こうと決意しました。
夫の浮気に悩んでいた女性も、考えて決断するのは自分にあると気づき、夫とじっくり話し合う決心ができました。
それでも、予想外のことも含めて想定内というか、居酒屋が舞台だとやはりベタで、この程度の人情話にしかならないものだと痛感しました。
満足度★★★★
ポップ
レンガ坂の煉瓦も見えていました。
ネタバレBOX
明日中野ウエスエンドスタジオで初日が開くというのにまだ最後のページを書くことができない作家さん、閉店後に練習と称して食材をくすねツタヤのバイトの女子にハンバーガーを食べさせあわよくばと考えている店員、中央線のトラブルで帰宅できずに戻ってきた夢遊病壁のある店員、近所の寿司屋の職人、浮浪者、劇団員、スナックのホステスなど閉店後のハンバーガーショップに予想以上の人たちが押し掛けてくるコメディ。
きちんと対価をもらって初めてプロと呼べるんだ的な、食べ物を扱う職人の心構えを説いた店長さんの言葉は心に沁みました。カッコ良かったです。自分もホステスに奢ってやろうとしていたことがすぐにバレてしまい、カッコ付かなくなってしまいましたが、プロ職人としての気の緩みがあったとしても、店員の何周も先を行っていることは良く分かります。
そんな店長が店を閉めたいと考えていたとは、スナックでの寿司屋さんと店長との会話などからホステスは察知していたのでしょうか。ちょっと唐突感はありました。
どんどんコスプレになっていくなど見た目ポップ、ツタヤのバイトの子がレンガ坂を下っていくので入り口はどうだったかなと考えていましたが、帰りにレンガ坂沿いに通用口らしきものを発見、納得しました。
作家さんから夢オチの話がありましたが、夢でしたシャンシャンは一番嫌いなタイプのお芝居で、私はアリス物と呼んでいます。
満足度★★★★★
天皇の人間宣言が全て
医者の思い、僧侶の思いが伝わってきました。
ネタバレBOX
横一線にテーブルを並べ、新平民と呼ばれた人、議長、僧侶、警察署長、芸者などが座って食事をする風景に医者の心意気が伝わって来ました。
一日で天下を取る方法は無いと思うべしですね。理想を実現するためには何をしてもいいというのは行き過ぎです。ましてや人を殺してまでして実現しようとするのは正当ではありません。
医者が言ったように、私たちは常に理想を持ち、主張して、そして人間の一生は短いですから次の世代、さらに次の世代に期待するのが、まどろっこしいようではありますが、法治国家、民主主義社会での生き方のように思えます。
僧侶の、現世利益を否定して、普通にまともなことを考え行動し、それでいてふと思ってしまう自分もいて、苦悩する姿は素晴らしかったです。
幸徳秋水も医者も、期待した次世代の暴走に足をすくわれた感がありました。天皇の人間宣言を引き出すためとはいえ、爆弾に手を出しちゃあいけませんねって思いました。毅然としていてほしかったです。
満足度★★★★
耽美派
独特の兄妹愛なんすかね。
ネタバレBOX
耳の聞こえない妹を溺愛するアキラ、生まれてすぐに障害が分かったのか親も出生届を出さなかったようで、名前もその存在すら秘匿されていたような感じ。妹が20歳になったとき、綺麗な音色のオルゴールを贈り、次は完璧な子として生まれようと兄妹は列車に轢かれて心中。
今度は目の見えない琴美を溺愛する兄、二人は心中した兄妹の生まれ変わりか、妹が20歳になったとき、綺麗な絵画を贈り、次は完璧な子として生まれようと兄妹は心中。
先の心中ではアキラの同級生の一人が駅のホームで目撃、ニ番目では同級生たちが列車の窓から目撃するような形でしょうか、同級生を絡ませて膨らみを持たせた印象でした。
ところで、開場時から役者さんたちは舞台上に座って瞑想するような雰囲気でスタンバイしていました。私はいつも開演までの30分が退屈なのですが、若い役者さんにとっては私の50分ほどにも感じる時間を何もせずにじっとさせる苦行を強いているようにしか思えませんでした。
可哀想だから止めたらと思いました。
満足度★★★
ベタ
予定調和な展開には冗長さを感じてしまいました。
ネタバレBOX
先ず気付いたことは、 BOX in BOX THEATERでその前に行われた『千年マチコ ~銭湯編~』とほとんど同じセットだったということでした。同じアリー・エンターテイメント、上手い工合に節約していました。
国道沿いに大規模なショッピングモールが計画され、それに反対しようとする元応援団員たちの話がメインの人情コメディ。
以前の作品で後半急に幽霊に恋するようなホラー的な展開には驚きちょっと引いてしまいましたが、かと言って今回のあまりにもベタで予定調和な展開は冗長で、インターネットによって話題になり大勢の人が銭湯に押し寄せるなどと都合良すぎる展開には腹立たしさも感じました。
満足度★★★★★
一難去ってまた一難
警察トレーラーのタイヤのゴムの臭いも漂ってくる臨場感溢れる作品でした。
ネタバレBOX
犯人との会話から情報を得る能力は大したもんでした。一難去ってまた一難、次から次へと問題が起き、最後はプラスチック爆弾を爆発させるかという緊張の中、SITの突入を回避して無事解決させました。
そもそも、引きこもりの青年が一度バイトをしたときに若い女性から優しくされたと勘違いしたことが発端となり、ダンス教師がその女性を弄んだと思い込んで懲らしめようとダンス教室に乗り込んだのが事件の真相でした。
その女性からキモいなんて言われたら立つ瀬もありませんが、世間慣れしていない引きこもり故の悲劇でした。
ひぐっちゃんは本当に心配した通りのひぐっちゃんでした。強請られて便宜を図るとは。警察官たるもの、そして我々一般人もですが、常に身奇麗にしておかなければならないと痛感しました。
満足度★★★★
シュール、おバカ、??
色々あった短編集。
ネタバレBOX
『シチュエーションコメディレクイエム』(脚本・演出:アガリスク冨坂友) ハジメがデート中に列車の中で二股の彼女に出くわしてしまったことによるドタバタ悲劇。頭がぶつかると心が入れ替わる良くありがちな前提ですが、そのスピード感が凄くて、演じている人も作者も本当に大変だったと思います。人同士ばかりじゃなく、イスとも心が入れ替わったりするところが新しく、もう誰が誰だか収拾がつかなくなったところで、演出と言う手法を使って強引に解消した結果、そして、したたかな後藤という男のせいで、最終的にハジメの心はイスに取り残され、後藤は後藤自身とハジメの姿をした後藤という二人分を獲得しました。二股のバチが当たったような、ハジメの心はもう二度と世に出ることは無いでしょう。何ともシュールな結末は素晴らしかったです。
『トリッパー1、2、3』(脚本・演出:両方) おバカな女子高生が海外旅行する話。おバカで楽しめました。
『ナイトステーション』(脚本・演出:コーヒー宮本初) 死後の世界へ向かう最後の駅での心残りの人との別れを惜しむような話。分かりづらく、言われて初めてそういった世界なのだと理解しました。お尻を丸出しにしたりして、アガリスクコーヒー祭りに色を添えていました。
役者さんの交流など面白い面はありましたが、最後のグリーン色の人なんて自己満足だけのようでしたし、完璧に成功したとは言えませんでした。
満足度★★★★
幽玄の世界
味わいました。
ネタバレBOX
途切れ途切れのような発声法による歌唱は初めて聞くもので新鮮な驚きでしたが、あれがポーランド語だったのでしょうか。途中、チェロも琵琶の音色のようなときもあり、能の現代版のような幽玄の世界を演出するのにとても合っていました。
山賊が横行するような乱世の時代です。人の生首でお人形さんごっこのような、ままごと遊びのようなことをするとは残酷な話ですが、サロメ然りで洋の東西を問わず昔はそんな人もいたのでしょう。
満足度★★★★
おどろおどろしく
全体に暗くて重たい話でした。
ネタバレBOX
団地創世記における団地とまだ森の残る周辺地域との、人的、地政学的、因習的差異が表現されていました。
役者さんたちが中央に集まってそしてバラけると、森は森ですが、必要な役者さん以外が木になることでシーンが変わるという手法は素晴らしいと思いました。
別に子どもたちの父親を殺したわけではなく、夫を亡くして酒浸りになっている奥さんを好きになっただけなのに、マヨワの逸話とは異なるのに殺されちゃって、本当にあのおっさんは可哀想でした。
最近、ダンス好き、お面好きが顕著になり過ぎているように感じました。
満足度★★★
天然か
ひっそりと世に紛れて暮らしているのかと思いましたが、大丈夫かいなと思うくらい濃いキャラでした。
ネタバレBOX
2200年以上前に船で外国人がやって来て村人全員にごちそうしてくれたのですが、不老不死の薬を探し求めていた外国人の陰謀で食べ物には毒が入っていて、一点食いをしていたマチコさんだけが生き残った結果、人魚の肉が不老不死の薬だと判明したそうです。
それから幾星霜、ギターを持ったスナフキンみたいなヒッピー風な出で立ちと甲高い声に違和感を覚えましたが、今は武道館ライブを夢見ながら気になる子孫のところを尋ね歩く旅をしているマチコさんです。現在の日本人のほとんどが子孫ということですから、今後のシリーズ化の材料には事欠きません。
伏線を必死で回収するように、お風呂屋さん兄弟の危機を救い、銭湯のお客さんの恋の手助けをしたりしましたが、結局のところ不老不死の身をバラしてしまいました。
水戸黄門の時代なら黄門様とバレても次の土地でご隠居さんで通るかもしれませんが、今の時代はそうはいきません。あっという間に全世界的に顔が知れてしまいます。何とかバラさずに去っていく奥ゆかしさがほしいと思いました。
満足度★★★★
『うそつき』観劇
題名に身構え、引っ張られ過ぎました。
ネタバレBOX
砂漠と港があるので中東かと思いましたが、地球の場末、アフリカ北東部辺りの雰囲気でしょうか。スコピオという敵が攻めてくる直前のカルタゴという町のカルタゴ・ノヴァというガソリンスタンド兼飲食店が舞台。
板垣という男が訪ねてきて、ギーコに金を貸していたと言われても、顔に大怪我を負い整形して全く別人の顔になったという話にしても、どこかに整形の痕跡でもあって然るべしとも思うし、客観的に判断する材料がなく、全ての状況がよく分からない中では誰が嘘つきなのか想像のしようもなく、もどかしさを感じました。
スランプの作ったクッキーをギーコが自分の名前でお菓子コンクールに応募したなんて一昔前にありがちなクソ野郎な出来事だと思いましたが、ナイルが作ったエレファントという人間そっくりで腕力のある身代わりロボットの存在が明らかになり、そもそもが近未来、場末の雰囲気と現実とのギャップには大いに騙されました。
医療も発達していることでしょう。ギーコがエレファントだと聞いてもそれでも愛し続けると言うし、板垣の整形は本当のような気がして来ました。
で、実はギーコは人間で、スランプがエレファントでしたということでしたが、ギーコが私はそのことについて何も言っていないわよ発言は、脚本上に矛盾が無いことの作者の表明かもしれませんが、言い訳がましく聞こえました。それに、嘘つきと嘘をつくは少し違うような気もします。
スコピオの攻撃でカルタゴの町の人口が四分の一になるという話も、エレファントを使った数字のアヤかもしれませんね。
満足度★★★★★
滅びの美学
ドミノ倒しが一つ一つゆっくりと倒れていくような印象でした。
ネタバレBOX
二人に風俗店を任せたヤクザが消えた一つ出来事がきっかけとなって少しずつ動き始めました。
ファッションヘルスの個室を使ったヤクの密売が発端となってヤクザが殺され、対立する組同士の抗争もあって下っ端が殺され、その恋人が仇を討ったり、その女性の朦朧とした目付きを見て自分の過去の真相に思い至った店長がやけを起こしてヤクザの中堅どころに殺され、共同経営者で店長にプラトニックな片思いの男がこの中堅どころを殺害し、登場人物のうちヘルス嬢一人を残し、全員が破滅しました。
滅びの美学、カッコ良かったです。バットでボコボコに殴り殺す音に、男の店長に対する愛を感じました。
ヤクザの世界ではヤクの売買を勝手にやることが一番の御法度だと理解しましたが、なるほど小遣い稼ぎもできず、常に兄貴分からギャンギャン締め付けられるだけが仕事の下っ端ではヤクザのなり手もないとテレビで言っていたのも分かります。今やヤクザの世界も高齢化、老々介護の世界のようです。
あやちゃんのプロフィール欄で、芸能人で誰に似てるって書くところは、榮倉奈々ちゃんって書けばいいと思いました。
満足度★★★★
少し分かりかけてきたような
岸田理生の世界を少し垣間見た気分になりました。
ネタバレBOX
血の繋がらない娘を殺すために、大量に飼っていたウツボを捨て、満足の行く吸血魚が出来上がるまで改良を重ねる父親。殺せる日が来るまで育て続ける父と、殺される日が来るまで成長し続ける娘の関係には奇妙でおどろおどろしい緊張感があります。
父と娘と若い男とでドロドロした家族関係を築き、もう死ぬことのない死後の世界で永遠に生きようとする娘らに対し、死んだら眠るものとの固定観念を持っている一般人は永遠の眠りにつきます。
こうした家族関係の築き方は身毒丸のようでもあり、アッチ方面好きな岸田理生の死生観を少し垣間見た気分になりました。
満足度★★★★★
『Rabbits Rash Rapidly』観劇
川添美和さんの魅力いっぱい、いいっす。
ネタバレBOX
Kawaiiかどうかが判断基準の全て、アリスことヒロコの人生。お姉さんはウメコだっけ。38歳まで惰眠、壁を突き破ろうとするウサギを見て可愛いと思って可愛いを求めて一念発起するもあっという間に54歳に。可愛い時期は短いどころか、人生そのものが短いことに気付かされ落ち込むも、それは私か、例のウサギが一つの壁を打ち砕いて次の壁に挑戦する姿を見て、いくつになっても好きなことを追い求める生き方こそがKawaiiのだと再び前向きになるアリス、かな。
川添美和さんのツンデレというかデレツンというか、ぶりっ子的お芝居口調からてめぇこのやろ的な小声本音トークへの切り替えの早さは天下一品。衣装も可愛くて色っぽくて、『Madman Moody Mood』とは大違い。
ヨオーッ、こんな川添さんが見たかったです。楽しくて最高ーッ!
満足度★★★★
衝撃の真実!
いずれ真相は明らかになるでしょう。
ネタバレBOX
殺意が死ぬとは、殺したい人を殺し終えて満足したのでもう殺意はありませんという意味でした。んなあ、ちょっと強引。
遺産は総額50億円でした。長男ですら1億円程度と予想していたのですから全員の驚きは当然ですが、預貯金や有価証券は少なく、ほとんどが駅から30分の距離にある土地だとすれば、ある程度予想できたのではないかと思います。
いわゆる本家を守るという考え方は分かりますが、ヤクザに殺されるかもしれない五男や資金繰りに苦しんでいる長男が素直に帰って行ったのはちょっと不思議でした。有価証券の処分ぐらい言ってもバチは当たりません。それに相続税の支払いでいずれ不動産の一部を処分せざるを得ないようにも思えます。そうなったら、遺留分のことも再浮上するでしょう。
老眼になった父親が青汁用野草とトリカブトを間違えて飲んだ事故死として処理されそうですが、真相は自信のない次男が妻と農地を守るために仕組んだ事件でした。
そもそも柄に毒の付いたうちわは警察が押収しているはずなのにとは思いますが、弁護士の服毒事故でさらに捜査は進むのでしょう。筆跡のことと言い、いずれ真相は明らかになるでしょう。
満足度★★★★★
千秋楽
ちょっと悲しい側の、スケールの大きな物語、とってもいいです。
ネタバレBOX
かつて四季のあった星で過ごし、今は一年に秋が三回ある星の誰も住まないニッポンにいる女性、どっちが地球なのか頭がクラクラしますが、遠い遠い未来の昔話のお話です。
最初の男と女の会話からは原発事故のことがとんでもない誤解だったかと思いましたが、終盤の会話からはやはりそれでも良いのだと思い直しました。
これだけは言っちゃいけないような気もしますが、アテ書きの妙、大西さんは本当にゾウガメにピッタリでした。福寿さんも藤川さんも。そう考えると、林さんの柴犬のワン公も見たかったなと、松本さんには申し訳ないですが今さらながら思ってしまいます。
満足度★★★
腹が立ってきた!
立場立場でやるべきことがあります。
ネタバレBOX
作者の意図が柴多准教授の懲りないダメさ加減を表現するお芝居だとしたら大成功だったと思いますが、遺跡の発掘現場における柴多准教授を中心とした群像劇のようなものを意図していたと考えると、柴多の管理能力の無さ、発掘責任者としての自覚の無さ、そしてみんなから指摘された後もまだ続く責任者としての自覚の無さには腹が立って腹が立ってしょうがありませんでした。
最初、発掘品捏造事件の話、まさに柴多が当事者の話かと思いました。そうしたら、あの捏造事件以降、土中で土器が見つかったら権限のある人が先ずその状況を確認することが徹底されたという会話があり、事件を踏まえた後の話だということが分かりました。
だとしたら、なぜ柴多は一人で作業するかなあ。発掘責任者が疑惑を持たれちゃお終いでしょう。捏造だけではありません。盗むことだってあり得るのですから。
刑事だって二人で行動するし、サラリーマンだって大事な交渉事には二人で出掛けたりするし、複数の立ち会いの下で証拠能力が高められるとか勘違いが防げるとかそういうことであって、能力がある人は一人でできるとかそういう問題では無いということが芝多には全く分かっていないのが不思議でした。
ま、実際の現場では一人で作業することはあり得ないと思いますが。
一所懸命やるのが偉いのではなく、発掘責任者、現場作業員、補助員、それぞれが立場立場の仕事をすることが大事なんですね。そして芝多の場合には夫としての立場もありました。立場が分かっていない芝多は発掘責任者失格、夫も失格、即退場を命じます!
トルコの宗教遺跡の周りを発掘しても何も見つからなかったことで、集落ができてから宗教が発生したという従来の常識が覆り、採集狩猟時代に宗教が発生したものと考えられるというエピソードは含蓄のある話でした。