園田喬しの観てきた!クチコミ一覧

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アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

紀元前に書かれた戯曲、そして第二次大戦後にブレヒトが改作した戯曲、そして2016年にお布団の得地弘基によって書かれた戯曲と、長きに渡り紡がれ続ける『アンティゴネ』の物語ーーと言えるかもしれない。近年の演劇界では、こういう「時間軸を超えて複数作家によって描かれた一作」の上演も見かけられる。これもまた、演劇の魅力と言えるかも。

ギリシャ悲劇の『アンティゴネ』を基点に、20世紀、そして21世紀へと受け継がれた、暴力、そして戦争について。

ネタバレBOX

劇中に登場する、とある姉妹が受ける暴力と、その背景にある権力情勢、更に戦争など、直接的な描き方で「人が人へ与える暴力性」を描いている…と感じました。裏を返せば、その暴力から離れる為には?について想像する機会に繋がるかもしれません。劇の内容自体は残忍さが含まれたシーンもあるけれど、見え方は割とドライで、客観的とも言えます。ゲームや音楽など、現代的なモチーフを取り入れたシーンも多く、古代ギリシャから令和の日本まで、長い時間軸を繋げて融合する創作に見えました。
THE STUBBORNS

THE STUBBORNS

THE ROB CARLTON

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

京都を拠点に活動する団体で、僕は初見。ただ、噂は耳にしていて、一度観てみたいと長く思っていた団体さんでした。ボタンのかけ違いや勘違いで笑いが起こる、王道タイプのシチュエーションコメディ。理屈っぽい台詞の掛け合いはコメディ愛好者に好かれそうな作風で、これから東京でも注目を集めそう。僕は好きです。

ネタバレBOX

三人の登場人物は、それぞれ母国語以外の言語でコミュニケーションをとり、三名全員がその「言語」に精通している訳ではない。なので、時々「意味のすり合わせ」が必要となる。三名は(おそらく)大きなビジネスチャンスを抱えており、大事な会議の前哨戦として前日夜に集まった。この席で、日本語の同音異義語などを取り違え、勘違いが連鎖していく。

前半の「言葉の取り違いを中心とした笑い」はよく構成されており魅力的だったが、後半の回想シーンがやや強引な印象が残り、ちょっと勿体無い気も。ただ、後半をより盛り上げるには説明などが長く必要になり、すると余計に冗長になってしまうのかも。シチュエーションコメディを上手にまとめるのは難しい…と改めて感じた。でも、全体的に良作だと思います。
The Human Condition

The Human Condition

人間の条件

テルプシコール(TERPSICHORE)(東京都)

2024/09/25 (水) ~ 2024/09/30 (月)公演終了

実演鑑賞

公演概要などは作品ページを読んで頂けたらお分かりになると思いますが、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をモチーフにした作品です。非常に、非常に残忍な事件であり、報道されたニュースの記憶を辿ったり、(いま実際にWikipediaを読んだのですが)事件について調べたりするだけで心の落ち込みが尋常ではなく、観客にとって受けとめることが困難な一作と言えるでしょう。観劇だけでこのショックですから、創作サイドに立っていた公演関係者各位は、さぞ大きな負荷と対峙されたと想像します。そして、事件を「特異」なものとして取り扱うのではなく、「私たちの問題」として向き合うことを前提に、今作を創作し上演する意味は大きいと考えます。

ネタバレBOX

上演時間は約100分。前半は相模原障害者施設殺傷事件に基づいたシーン・物語が展開されます。事件を起こした男の思想、行動、等々。後半は台詞の量がグッと減り、最小限の台詞で構成される視覚的なシーンが続きます。この「実際の事件に基づいたシーン」と「障害者と健常者が登場する視覚的な抽象シーン(おそらく観客それぞれで捉え方が異なるはず)」という構成が特徴的でした。そして、今作の肝はこの後半シーンにあると考えます。ここで何を思い、何を感じるか? で作品の印象がガラリと変わるでしょう。

個人的には、劇中シーンで極めて限定的に描かれる「障害者の家族の視点」が、質・量共にやや不足している印象を受けました。ここが、私たちが最も不足している情報だと思うので。
三人吉三廓初買

三人吉三廓初買

木ノ下歌舞伎

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2024/09/15 (日) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

良い意味で、キノカブ初見の方を含め、様々な観客を招こうとし、実際に招いている公演ではないかと感じました。休憩込みで5時間20分の三幕もの。食事や軽食の機会を設け、丁寧かつ内容充実の観劇パンフレットを配布し、幕見席チケットも用意。そして、目や耳の不自由な方へ向けた音声ガイドやポータブル字幕機の提供など、あらゆる点で観劇環境が整備され、「今日は1日プレイハウスで歌舞伎鑑賞に浸ろう」という気持ちになります。上演も、現代演劇や小劇場が好きな方も、歌舞伎が好きな方も、共に没入できる内容に仕上がっていたと思います。

ネタバレBOX

他のキノカブレパートリーと比べて際立っていたのは、台詞の響きや美しさを届けることに細心の注意が払われていたこと。細やかな抑揚や、原文のままか、現代語に翻訳するか、等々、シーンにおいて「台詞を届ける」ことにこだわりを感じました。和装や洋装の混合やラップ音楽の導入、シンプルながらスタイリッシュな舞台美術など、キノカブらしい見せ方も健在。歌舞伎がもつ魅力を間引くことなく残しつつ、極力現代人に届けやすくバランス調整する手腕も見事です。

三幕ものでありつつ、それぞれの幕に違った魅力があり、演出上も幕ごとの違いを意識しているように感じられました。幕見席チケットの意味はここにあると思います。「あの幕をもう一度観たい!」というニーズもあるでしょうし、それもまた歌舞伎鑑賞の楽しみのひとつと言えます。
リビングルームのメタモルフォーシス

リビングルームのメタモルフォーシス

Precog

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/09/20 (金) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

今年6月に観劇した『消しゴム山』に通じるコンセプチュアルな一作に感じられました。ロジカルかつ未来志向的な演劇実験作。この「実験(実証)」要素が、観客である受け手によって評価の分かれるところだと思います。当日パンフレットやホームページなどに記載されたテキストを読み、創作プロセスなどをある程度頭に入れた上で「…なるほど」と理解の手掛かりを得られる。その難解さが存在することは事実でしょう。ただ、モチーフとして描かれる物語はロジカルに構成され合点のいくものだし、俳優が紡ぎ出すシーンからも大いに刺激を受ける。今作は音楽劇なので、もちろん音楽そのものや、劇中での存在の仕方も興味深い。結果的に演劇的なカタルシスというか、観劇後の満足感が観客の心身にしっかり残る。難解だけどある意味明瞭でもある、でも一人で読み解き理解するのはハードルが高い。だからこそ誰かと語り合いたい作品と言えるかもしれません。

もうひとつイメージしたのは、近年の岡田さんの創作への興味・関心が、これからの社会基盤にフィットする「新しい価値規範」の模索にあるのではないか?ということ。短期間で解答を導き出せる取り組みではないからこそ、岡田さんの作品には常に実験が組み込まれていると感じます。

来てけつかるべき新世界

来てけつかるべき新世界

ヨーロッパ企画

本多劇場(東京都)

2024/09/19 (木) ~ 2024/10/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

2016年初演で岸田國士戯曲賞受賞作品を8年ぶりに再演。ヨーロッパ企画は再演する演目を厳選している印象があるので、この再演も団体にとって意味あるものと推測できます。出演者に変更はあるものの、舞台セットや劇構造は初演を継承しており、良い意味で「メモリアルな演目を再び上演する」ツアー公演なのかも。客席の受け方は、さすがヨーロッパ企画という安定感がありました。

ネタバレBOX

舞台は大阪で、新喜劇×デジタルテクノロジー×ヨーロッパコメディ、という印象。とある串かつ屋さんを中心に、その近隣と串かつ屋を訪れる客たちによる群像コメディ。ドローンが出前をしたり、警備ロボットが活躍したり、下町文化とデジタルの融合による「新世界」をコメディとして描いている。笑いへのアプローチが、やはりヨーロッパ企画特有の手付きで、ファンは安心して観られるし、初見のお客さんにも親しみやすい世界観だと感じました。
バード・バーダー・バーデスト

バード・バーダー・バーデスト

南極

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/09/19 (木) ~ 2024/09/23 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

素直に「いい狙いどころだなぁ」と感じました。生演奏ありの学園青春群像劇。けれど登場するのは肉食、草食など各種恐竜たち。学園ものなので、生徒たちの日常、冒険(修学旅行)、感情のすれ違い、未来、等々を描いていて、内容盛り沢山。全体を整えるバランス感覚もよく、演出家が各所へ目を光らせているのだろうなぁ、と想像しました。

ネタバレBOX

学園青春もので、音楽劇でもある。恐竜モチーフにしたことで、戯画的に表現されることが強みになっており、ちょっと強引なフィクションや描写もスッと飲み込むことができる。リアルを表現する非リアル。「演劇的な嘘の付き方」が上手いと感じました。登場人物たちがそれぞれ楽器を持ち、全員で生演奏するシーンが美しかったので、あのシーンをもう少し長く見たかったのが残念。(パッと切り替えて次のシーンに移ってしまう)。演劇としての魅力を多く含んだ上演で、全体的に好印象でした。
バサラオ

バサラオ

劇団☆新感線

明治座(東京都)

2024/08/12 (月) ~ 2024/09/26 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

上演時間は休憩込みで3時間半強。たっぷり魅せて満足感高しの「新感線的王道」をひた走る公演だと感じました。新感線の魅力は、物語、演出、音楽、俳優、殺陣、外連味、熱量などの要素をひたすら合体させて創りあげる「巨大合体ロボ」的なものだと考えているのですが、今作はそれらがガッチリ噛み合う総合力の高さがうかがえました。「さすが新感線」と言いたいです。

ネタバレBOX

主演の生田斗真さんの存在感が一際輝いている。そして、あの熱演をほぼ毎日、多い日は2ステ、日々務めているのは本当にすごい。物語は、登場人物たちによる裏切りの連続が紡ぐ盛者必衰の物語と言え、流転する展開に引き込まれました。ハードロックも実に新感線らしく、劇団が目指す完成度は十分達成していると言えるでしょう。
三ノ輪の三姉妹

三ノ輪の三姉妹

かるがも団地

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2024/08/31 (土) ~ 2024/09/08 (日)公演終了

実演鑑賞

タイトル通り「三姉妹」のお話であり、三姉妹含む家族の物語。章立てしてあり、一人ずつ人物を描いていき、終章で全体をまとめあげる構成。家族の人物相関が描かれる群像劇で、ねじれた糸の塊が少しずつ紐解けていき、登場人物の内面や物語の全容が明らかになっていく。

ネタバレBOX

母親の病気をきっかけに、あまり反りが合わない三姉妹のコミュニケーションが徐々に復活していく。三姉妹の性格や思考は家族関係から影響を受けており、それぞれがそれぞれの「心の闇」や「寂しさ」を抱えている。不器用ながら実直に生きようとする三姉妹の心根は根本的に善人で、それらがじんわりと客席を包み込むような物語……と感じました。

ただ、演出面で個人的にあまり馴染めないシーンが多く、僕自身がうまく飲み込めなかったことが残念でした。
ガチゲキ!!復活前年祭

ガチゲキ!!復活前年祭

『ガチゲキ!!』実行委員会

アトリエ春風舎(東京都)

2024/08/08 (木) ~ 2024/08/18 (日)公演終了

実演鑑賞

三人の劇作家、三つの団体によるオムニバス企画公演。1回で3作分の短編(ダイジェスト版だったりアナザーストーリーだったり)が観劇できる上演と、1作ずつ観られる上演があり、観客それぞれがタイムスケジュールを組むことが可能。会場はアトリエ春風舎。三団体共通のテーマは「月9」。こういうテーマ設定はやや珍しいかも。

ネタバレBOX

三団体とも自分たちの特徴を活かした創作になっており、それらを見比べたり、初見の団体に触れられる機会を得ることが、この手の企画公演の良さ。個人的にはくによし組の『重い愛』が印象的でした。「出産後の母親が抱える鬱々とした感情や愛情が子どもの体重を重くしている」という設定のSF的な一作。母の愛情が深まるほど我が子の体重も増え、生後三ヶ月で40キロ以上に増量。夫婦や周囲の人々の心のすれ違いを不思議な情感で描いている。
邦子狂詩曲 クニコラプソディー

邦子狂詩曲 クニコラプソディー

東京芸術劇場/ヨウ+

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/08/09 (金) ~ 2024/08/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ダンス公演で意外と例が少ないのが「テキストを多用するダンス公演」で、今作はそれに類する一作だと感じました。物語性は勿論のこと、モノローグやダイアローグを用いつつシーンを展開するダンス。上演は2作品からなる連続上演(休憩アリ)で、前半と後半でアプローチが異なる点も興味深かったです。前半はテキストと身体表現の二重奏のような、後半はそこに更に音楽、映像、視覚的なアイディアなどを取り入れ、舞台表現の総合力を提示した、という印象。遊び心も感じられる、全体的に伝わりやすい公演だと思いました。

はやくぜんぶおわってしまえ

はやくぜんぶおわってしまえ

果てとチーク

アトリエ春風舎(東京都)

2024/08/01 (木) ~ 2024/08/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

昨年上演された作品が早くも再演、とのこと。僕は初見でした。タイトルから連想するのは「我慢を強いられていることへの耐え難き怒り」で、それを思うだけでも胸が痛い。

舞台は、私立の女子校(中高一貫校?)の教室。放課後を過ごす五人の生徒と一人の教師による会話劇。校内のイベント「ミス・ミスターコンテスト」が突如中止になり、その話題と、生徒たちの日常を綴りつつ物語は進んでいく。

ネタバレBOX

公演資料に「性的マイノリティに対する偏見・差別」や「性自認のゆらぎ」などが登場すると明言し、明確な目的意識を持った創作で、作り手たちの思い、願いが存分に込められた力作だと感じます。その上で「問題を可視化・認識してもらうために伝わりやすさを極力意識した」という点も深く納得して観劇しました。アフタートークで語られた内容も、的確な言語化によるトークセッションで理解しやすかったです。その上で、僕自身に必要なアップデートができているか? 問題をしっかり認識して心に刻めたか? など、様々な想いが頭の中で駆け巡りました。

物語終盤に、生徒たちの担任教師(学校のOG女性)が極めて不用意な発言をしてしまう。それを聞いた生徒を絶望の淵に追い込んでしまう発言を、担任教師は有益な助言のつもりで語る。この構造がとても恐ろしく、問題の当事者でない無自覚な大人は、こういう行為に陥りがちなことが何より恐ろしい。僕自身もこういう発言をしてしまう可能性は高く、自分ごととして観劇しました。
PLAY!!!!!〜夏の夜の夢〜

PLAY!!!!!〜夏の夜の夢〜

CHAiroiPLIN

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2024/08/02 (金) ~ 2024/08/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

原作はシェイクスピアの『夏の夜の夢』。余談ですが、昔は夏季になると『夏の夜の夢』上演が増えた印象があるのですが…、最近はそうでもないのかも。作品は「おどるシェイクスピア」シリーズ、ダンス公演にリクリエイション。群舞シーンも多く、華やかな見応えもありました。

ネタバレBOX

原作を大胆にアレンジし、団体のオリジナリティが多く注入された一作に感じました。良い意味で『夏の夜の夢』にとらわれ過ぎない姿勢に好感が持てます。原作がかなり有名であることも、この姿勢の一因になっているのかも。モチーフは人気ボードゲームの「人生ゲーム」。ルーレット、コマ、マスなどを活用し、夏の夜の夢の世界観をリクリエイションしています。登場人物の「人生」における浮き沈み・好不運などを意識した創作に見え、観客との共感性も高いと感じました。
或る街

或る街

はちみつ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2024/07/18 (木) ~ 2024/07/21 (日)公演終了

実演鑑賞

団体名が「はちみつ」。なかなか大胆な命名だと感じます。僕は初見の団体でした。バス停にて次のバスを待つ男。男をバス停まで道案内した女。バス停のベンチには持ち主不在のトランクバッグ。バスはなかなかやって来ない。しばらくすると、女の知り合いらしき別の女が、バス停付近でお茶会を開こうとする……。

ネタバレBOX

カテゴリ的には「不条理演劇」と言えるでしょう。別役さんや宮沢さんを連想させる筆。物語の起伏は少なく、比較的なだらかに進んでいく。後半は現実社会との接点をうっすらと感じさせるワードが散見し、とはいえ強く結びつけることなく、暗喩というか、観客の想像に委ねられる。不条理で、はっきりした掴み所が少なく、キャッチーな作風ではないものの、逆にこの作風を掲げる若い団体も少なく、大きな個性・武器になり得る。世の中の反応に媚びることなく、自分たちの「好きな演劇」を追い求める姿勢に好感が持てます。
野外劇『パレード』

野外劇『パレード』

公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター

境南ふれあい広場公園(東京都)

2024/07/13 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

以前は「しあわせ学級崩壊」というカンパニーの主宰として作・演出を担っていた小西力矢さんによる公演。コンセプトは「広場×不条理演劇」。会場はJR武蔵境駅から徒歩1分の公園。僕が観劇目的でこの駅を降りたのは初かも。

ネタバレBOX

会場は外周に沿って白いベンチが一周しており、観客らしき人たちはそのベンチに座っていました。公園中央にはカラーコーンで仕切られたアクティングスペースが。小西さんが「もっと舞台に近づいて大丈夫です」とアナウンスすると、観客は中央に集まります。小雨が降ったり止んだりの天気のなか、17時に開演。コンセプト通り「広場×不条理演劇」で、台詞の意味は分かるが、設定はやや不条理。無料の野外劇で、通りすがりのファミリーなどが観ることを想定すると、不条理演劇のバランス加減が肝。不思議で不条理のお話を上手にまとめて観客に伝えていたと思う。演劇が街に溶け合うとき、演劇が良い意味で「場所に依存する」ことの価値を考えます。小さなお子さんが騒いだりすることなく真剣な眼差しで上演を見つめている姿が印象的でした。
心の声など聞こえるか

心の声など聞こえるか

範宙遊泳

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/07/06 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

タイトル『心の声など聞こえるか』の意味を、観劇後に何度も噛みしめる作品だと思います。隣同士の二組の夫婦。両家の交流はほぼないものの、ゴミ出しのルールに関してのみ、意見の食い違いがあった…。

ネタバレBOX

隣家のゴミ出しに納得のいかない妻は、ゴミ出しを監視し、ゴミ袋を拾って帰り中身を検証する。大きくルールを逸脱していないことを自認する隣家の妻は、それら苦言や監視に辟易していた。やがて、ゴミ出しの件でしっかり話し合おうと、ワインを手土産に夫婦揃って隣家を訪れるのだが……。

二組の夫婦を演じた4名の俳優たちがキャッチーな存在感を放っていて、非常に見易い印象を受けた。劇作である以上、ややトリッキーな内容もあるが、現代を象徴する等身大の夫婦として、共感しながら見る人が多かったと思う。物語の展開も最後まで予想できず、興味深く観劇できました。

劇中には「現実」パートと「妄想」パートがあり、それらが交錯しながら物語は進んでいく。妄想にも、理想を練り込む登場人物もいれば、悲劇や自虐を練り込む登場人物もいて、そういう差異も興味深い。タイトルの「心の声」が何を指しているか?は複数の解釈ができ、そういう点もよく出来ていると感じる。シンプルな本音かもしれないし、願望や渇望かもしれない。劇中であまり丁寧に説明していない点が、全編への良いアクセントになっているように感じられた。想像する余地が残っていることが嬉しい。

あと、ラストシーンは良い意味で予想外でした。
音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

音埜淳の凄まじくボンヤリした人生

ほろびて/horobite

STスポット(神奈川県)

2024/06/21 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

初期作品のリクリエイション版。近年のほろびて作品とは少し印象が異なり、新鮮な気持ちになりました。STスポットの使い方として珍しい舞台セットで、俳優との距離も近く、全体的に良い緊張感のある上演でした。

ネタバレBOX

登場人物は4名。父、息子、父の弟(伯父)、義理の弟(義理の伯父)。母は、どうやら亡くなっているようだ。ちょっと変わり者の様子を見せる父だが、父と息子、二人の生活は落ち着いていた。時々父の物忘れが露見する程度。そこへ父の弟がやってきて、これから離婚をするためしばらく実家に住ませて欲しいと頼みこむーー。

物語は静かに流れるが、観客の頭の中にも、少しずつ「共有できるもの」と「共有できないもの」が降り積もっていく。体験として「共有する」ものが演劇だとしたら、極めて演劇的な実験作だと感じました。言語が通じたら、文化が同じなら、同じ風景を見られたら、共有できるかもしれない。けれど、その逆なら…という。
OVERWORK

OVERWORK

キュイ

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2024/06/28 (金) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

現代人における「労働」に関する連作短編集。連作は多角的に観劇する機会に繋がるため、テーマが明確な場合はより刺激的。

ネタバレBOX

印象的だったのは、「仕事内容より労働環境や対人関係にスポットが当てられている」という点。仕事は「賃金を得る手段」として割り切られ、そこに論点はなく、職場の人間関係に辟易し絶望する登場人物たち。労働含めた社会の構図に対して諦めきったドライな視点が現代の歪さを象徴する。ここから先の希望がほぼ見えない「世界」と、現代人はどう向き合えば良いのか…。良い意味で息の詰まる上演でした。
ナイロン100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」

ナイロン100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2024/06/22 (土) ~ 2024/07/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ナイロン100℃初の時代劇。劇作家として幅広い作品群を持つKERAさんなので、少し意外な気もするし、楽しみでもある。公演チラシのテイストから「ナンセンス強め」を想像しましたが、やはりナンセンス度合いは高く、時代劇×ナンセンスな笑いという珍しい一作。ナイロンらしいとも言える。

ネタバレBOX

「江戸時代の思い出」というと、明治時代を生きた人が過去を回想する…という設定が想像できるが、今作は、「江戸時代の侍が自身の思い出話をしようとして、途中を飛ばそうと時間を先送りしているうちに、なぜか令和の思い出話を語ってしまう」というトリッキーな設定。つまり、江戸と令和を行き来する展開になる。ただ、この時間往来がずっと続く訳ではなく、数々のナンセンスが全編至る所に散りばめられている。あの手この手で「ナンセンスな笑い」が繰り広げられ、その手数の豊富さは「さすがナイロン」と言いたい。この笑いも、力技よりも巧みの洗練さが感じられ、どこか上品にすら感じる。これらは劇団員をはじめとした出演俳優の洗練によるものかもしれない。ラストシーンは余韻の残る爽やかな印象で、やはり全体的に上品な一作に感じられた。
きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年開催された『CoRich! 舞台芸術祭! 2023春』のグランプリ受賞作品。の再演です。受賞作バージョンも観劇しています。その時の会場は三鷹のSCOOL。今回はアトリエ春風舎。舞台美術もリニューアルし、空間の使い方も異なり、新しいシーンも挿入されるなど、再演として基本的な構造を踏襲しつつ装いも新たになった印象を受けました。

ネタバレBOX

「きく(聞く)」をテーマに様々な角度から提言・実演・検証するパフォーマンス的上演。アドリブに見えるシーンも多いが、かなり緻密に構成された台本のもと上演していると想像します。上演形式の新しさも感じますが、とはいえ、こういうスタイル自体も増えているし、今後も増えていくと予想。個人的にすごく印象的だったのが、黒板を使って物語の一部を説明しようとするシーン。予備校の授業のように展開され、内容をまとめ、ポイントを絞り、明確な答えを導き出す。これらのシーンが反面教師として挿入され(←僕にはそう見えた)、このシーンのおかげで、今回の上演に大きな意味が追加されたと感じます。互いに聞くこと、互いに理解すること、それが明確にまとめられ、端的な言葉で伝えられた時、その意味合いのなんと味気ないことか…。改めて、コミュニケーションの本質・正体とは? という問答が自分の脳内を駆け巡りました。

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