ちはやの観てきた!クチコミ一覧

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ある女子大生の誘惑

ある女子大生の誘惑

絶対♡福井夏

スタジオ空洞(東京都)

2023/01/24 (火) ~ 2023/01/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/01/29 (日) 15:00

本筋の合間に差し挟まれる、ちょっとした会話までもが面白い。
時に風刺的だったり、時にサブカル好きのツボを刺激したり。
そして、レポートの課題がのちのち伏線として回収される構成がおしゃれ。

「女子大生が単位を取るために教授に色仕掛けで取り入ろうとする」というストーリーの性質上、必然的に性的な展開になるのだけれど。
ウエットないやらしさがなく、下ネタもウィットに富んでいるので、男女問わず楽しめる作品だと思う。

教授、姫川さん、萩原くんの奇妙な三角関係が、教授室という限定された空間の中のみで展開されてゆくため、客席側からは彼らのやりとりを覗き見ているような感覚になった。
ホワイトボードによる時間経過の演出もシンプルでありながら、萩原くんの心境を表す装置として効果的。特に、「金」の書き方で彼のやきもきした心情がよりリアルに感じられた。

教授の、姫川さんへの感情が変化していく様も、自然な危うさがあって、こちらまで冷や冷やしつつもわくわくしてしまった。

何より、姫川さんの引力が凄い。
気弱そうな第一印象とはうらはらに、目的のためには手段を選ばない強かさ。恐れを感じつつも魅入られてしまった。

このあと彼女は無事内定と単位を勝ち取れるのだろうか?
想像の余地を残したラストも秀逸。

最初から最後まであっという間の70分、楽しいひと時だった。

禁猟区

禁猟区

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2022/12/22 (木) ~ 2022/12/30 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

降り注ぐ言葉のシャワーは、祝福か、呪縛か。
開放的なようで閉塞的な商店街で繰り広げられる、不思議な人間ドラマ。

独特の言い回しとリズムは、肌に合えば心地よく。
ユニゾンと掛け合いと、独白とで展開されていく過去のトラウマと現在の怪奇のコントラスト。
終盤に向かうにつれてさらに加速するセリフのBPM、つられて高まる心拍数。

商店街を一直線に駆け抜けたような、疲労感と息切れとがいつしか癖になり。
劇場で何度観ても配信ヘビロテ必至な中毒性。
2022年の観劇納めに選んで後悔のなかったクオリティ。

初体験

初体験

柿喰う客

全電通ホール(東京都)

2022/11/05 (土) ~ 2022/11/05 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

世間では、「推し活」という単語が浸透していて、誰かを応援することがキラキラした趣味のように受け止められる。
けれど、お金を出して他人を消費するのはグロテスクな行為でもある、というのを改めて思い知らされる作品だった。

推す側から見られるのは、推される側のほんの一部でしかなくて。
そのわずかな面に「物語」を見出すことで、偶像を狂信的に崇めている。
そして「物語」は自然に生まれるものだけではない。演出され、作り出されたものの可能性だってある。
けれど、そんなことはきっと、「推し活」という括りの中ではどうでもいいことで。

「この作品はフィクションです」と繰り返されるフレーズが脳裏から離れなくなる頃には、過去も今も夢も幻想もすべてがドロドロに溶け合って区別がつかなくなって。
その曖昧で不安で、けれどどうしようもなく愛おしい感覚は、愛にも似た執着とよく似ているな、と感じた。
いや、むしろ、執着も憧憬も未練も嫉妬も献身も、そのすべてが愛だったのかもしれない。
不思議に爽やかな終わり方に、救いを見出していいのか悪いのか。戸惑いながらもリフレインするあの歌を帰り道に口ずさんでみた。

荒人神 -Arabitokami-

荒人神 -Arabitokami-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/12/21 (水) ~ 2022/12/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

5ヶ月連続上演「五彩の神楽」最終作。
1作品でも観ていたらより楽しめる、という言葉を信じて全作品追い続けた5ヶ月目。
期待以上のものが、そこにありました。

初めて五彩の神楽に触れる観客にも楽しめるよう配慮がされながらも、ここまでずっと観てきた人間には「ご褒美」としか言いようのない仕掛けが織り込まれていて。
シリーズ集大成としての自信と情熱を感じる構成でした。

人間の記憶は脆く、薄れやすい。
けれど、それを補うかのように音楽で、モチーフで、演出で、衣装で。
繰り返し思い出ごと呼び起こそうとする試みに、8月に、9月に、10月に、そして11月に戻ったかのような錯覚を覚えました。
暑い夏に「憫笑姫」から始まった五彩の神楽が、寒い冬にアツい「荒人神」で締めくくられる。
長い人生のほんの5ヶ月のことだけれど、きっと、あの光景とその時の感情とをわたしは忘れないと思います。

頑張った人が、頑張って、報われる。
そしてその傍らには、自分の絶対的な味方になってくれるかけがえのない誰かが寄り添ってくれる。
5作品を通して繋がっていったテーマが、これからの人生のどこかで、そっと背中を押してくれるでしょう。
五彩の神楽に出会えてよかった。そして、壱劇屋東京支部に出会えてよかった。そう、心から思えたひとときでした。

戰御史 -Ikusaonshi-

戰御史 -Ikusaonshi-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/11/23 (水) ~ 2022/11/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

構成の9割以上が殺陣という、恐るべき運動量の作品。
しかし、その中にもしっかりとしたストーリー性とテーマが存在し、観たあとに色々と思いを馳せる余白がありました。

顔無し、野武士、女頭領、狂人、そして名もなきアクションモブたち。
すべての登場人物が武器ごと、人ごとにバリエーション豊かな殺陣で魅せる総力戦は、人格の入れ替わりというギミックを丁寧に演出しながらも、物凄いスピード感と熱量で。
ひとりひとりの実力と、体力、そして積み上げられた日々の稽古によって生み出された、最大級のフェス。
心拍数を上げる選曲も最高!

岡村圭輔と、小林嵩平。
なにかと対になる二人の、それぞれの魅力の対比も鮮やか。
満を持してのキャスティングはエモさ全開で、何度観てもテンションの上がる濃密な時間を過ごすことができました。

心踏音 -Shintouon-

心踏音 -Shintouon-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/10/19 (水) ~ 2022/10/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

光を知らない男と、声を奪われた女。
ハンディキャップを持つ男女が出会い、ゆっくりと愛を育んでいく様子が優しく、美しく、丁寧に描写されていて。
それだけに突然の悲劇に、自分まで突き落とされたような気持ちになりました。

復讐を誓い、鬼と化した男の痛々しいほどの戦い。
その裏にあった、周囲の思惑。
謎が解きほぐされた瞬間の驚きとカタルシスは、「これを知った状態でもう一度最初から観たい」という欲望を掻き立てるほどの大きさを持っていました。

今回の再演に際して追加された演出は、挑戦する勇気と実力に感嘆するほかないもので。
殺陣の激しさと、人の心を描く繊細さを両立させた、稀有な舞台だったと思います。
演じる人間、そして物語を作った人間の優しさと体温とを感じる作品でした。

賊義賊 -Zokugizoku-

賊義賊 -Zokugizoku-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/27 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

開幕からのコミカルでダンサブルな滑り出しに、一気に物語世界へ。
ストーリーも愉快痛快、明朗快活。台詞はなくとも伝わる、クリアなメッセージ。
赤い血しぶき、過去と現在の切り替え、背中に重ねる故人の影。
舞台上での表現の限界に挑戦し続ける「人間CG」と呼ばれる技術にも目が離せません。

不殺のヒロイン、それを追いかける同心。
因縁を感じさせる黒ずくめの賊、厄災のような強さを誇る頭領。
絡み合った縁の糸が少しずつ解きほぐされるうちに、陰と陽のコントラストが際立ってきました。
明るいだけではなく、心の奥にぐっと斬りつけるような感傷に、いつしか涙がこぼれ落ち。
それでも爽快な後味は、人情噺を聞いたあとのそれに似ていました。

主役を演じた小玉百夏さんの弾ける笑顔がとにかく魅力的で。
強くてキュートなヒロインって素敵だな、と改めて思った作品でした。

憫笑姫 -Binshouki-

憫笑姫 -Binshouki-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/08/17 (水) ~ 2022/08/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

言葉がなくても、伝えられる想いがある。
言葉がないからこそ、受け取れる想いがある。

涙と、泥と、血と。汚れにまみれ、嗤われ見下され、悔しさに吼えても。
それでも決して消えない灯を胸に点し、生きてゆく姉妹。
彼女らを取り巻く愛と、戦いと、慈しみとを「ワードレス殺陣芝居」という形式で描いた『憫笑姫』。

台詞は一切なく、発せられるのは叫び、笑い、泣き声といったプリミティブな感情表現のみ。
舞台装置も至ってシンプルで、書き割りは一切ない。
けれど、聴こえてくるし、見えてくる。
賑やかな城下町のざわめきや、豪奢な王宮の大広間や、土埃舞う戦場に漂う血の臭いまでもが脳内に像を結ぶ。

ミラとエラの姉妹愛。騎士団長との師弟の絆。女官たちとの友情。それらを破壊しようとする王と側近の陰謀と、圧倒的な強さ。
悪役までもが魅力的な人間として活躍し、スピード感溢れる殺陣の中に織り込まれた人間ドラマに自然と涙が溢れる。言葉などなくとも人の心はこんなにも強く動かされるのだ、と初めて知った。

努力し続けた人間が、最後に報われる。
哀しさの中にも優しさと希望とを感じる結末に、心からの拍手を贈った。

そして、次回作品『賊義賊』も観ようと心に決めた。

ネタバレBOX

王がミラに手を差し伸べ、二人が踊るシーンがとても好きでした。偽りの笑顔とわかっていても、その優しげな眼差しに毎回ときめかずにいられなかった……。

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