実演鑑賞
満足度★★★★★
世間では、「推し活」という単語が浸透していて、誰かを応援することがキラキラした趣味のように受け止められる。
けれど、お金を出して他人を消費するのはグロテスクな行為でもある、というのを改めて思い知らされる作品だった。
推す側から見られるのは、推される側のほんの一部でしかなくて。
そのわずかな面に「物語」を見出すことで、偶像を狂信的に崇めている。
そして「物語」は自然に生まれるものだけではない。演出され、作り出されたものの可能性だってある。
けれど、そんなことはきっと、「推し活」という括りの中ではどうでもいいことで。
「この作品はフィクションです」と繰り返されるフレーズが脳裏から離れなくなる頃には、過去も今も夢も幻想もすべてがドロドロに溶け合って区別がつかなくなって。
その曖昧で不安で、けれどどうしようもなく愛おしい感覚は、愛にも似た執着とよく似ているな、と感じた。
いや、むしろ、執着も憧憬も未練も嫉妬も献身も、そのすべてが愛だったのかもしれない。
不思議に爽やかな終わり方に、救いを見出していいのか悪いのか。戸惑いながらもリフレインするあの歌を帰り道に口ずさんでみた。