実演鑑賞
満足度★★★★★
言葉がなくても、伝えられる想いがある。
言葉がないからこそ、受け取れる想いがある。
涙と、泥と、血と。汚れにまみれ、嗤われ見下され、悔しさに吼えても。
それでも決して消えない灯を胸に点し、生きてゆく姉妹。
彼女らを取り巻く愛と、戦いと、慈しみとを「ワードレス殺陣芝居」という形式で描いた『憫笑姫』。
台詞は一切なく、発せられるのは叫び、笑い、泣き声といったプリミティブな感情表現のみ。
舞台装置も至ってシンプルで、書き割りは一切ない。
けれど、聴こえてくるし、見えてくる。
賑やかな城下町のざわめきや、豪奢な王宮の大広間や、土埃舞う戦場に漂う血の臭いまでもが脳内に像を結ぶ。
ミラとエラの姉妹愛。騎士団長との師弟の絆。女官たちとの友情。それらを破壊しようとする王と側近の陰謀と、圧倒的な強さ。
悪役までもが魅力的な人間として活躍し、スピード感溢れる殺陣の中に織り込まれた人間ドラマに自然と涙が溢れる。言葉などなくとも人の心はこんなにも強く動かされるのだ、と初めて知った。
努力し続けた人間が、最後に報われる。
哀しさの中にも優しさと希望とを感じる結末に、心からの拍手を贈った。
そして、次回作品『賊義賊』も観ようと心に決めた。