『泉鏡花の夜叉ケ池』
花組芝居
セーヌ・フルリ(東京都)
2023/12/28 (木) ~ 2023/12/30 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/29 (金) 18:00
劇団の代表作のひとつである作品で過去公演も何度か拝見しているけど、変わらないところも変わったところも愛おしい。万年姥に諭され眷属たちも去ったあと、白銀の鱗を翻して一人舞う白雪の美しさが印象的だった。
学円だけがBGMが流れるたびに訝しそうな反応するのを見て、つい笑ってしまうけど、あれは彼だけが物語の外から来た存在だからなのかな、と思った。そう考えると晃ももう物語から抜けだせないんだな、などと、戯曲の行間に詰め込まれた花組芝居らしさを堪能した。
海をゆくもの
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/12/07 (木) ~ 2023/12/27 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/12/23 (土) 13:00
騒々しく厄介な感じで始まる酔いどれたちのクリスマスは、予想外の展開にゾワゾワしつつ、ラストまでのさまざまな仕掛けを堪能した。
演出とキャストに惹かれて観に行ったけど、これは戯曲もそうとう面白いな、と思った。予想と異なるタイプの物語だったけどとても好みだった。
無駄な抵抗
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2023/11/11 (土) ~ 2023/11/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/11/25 (土) 13:00
電車の停まらない駅。芸をしない大道芸人、占いをやめた占い師。様々な寓意を重ねて描く小さな街の物語は、行き交う人々の誇りや決意を細やかに映し出していく。本当に抗うべきは運命ではなく人間の理不尽さなのかもしれない。
覚え書き的断片。円形劇場めいた駅前広場の美術。登場シーン以外も傾斜面の段差に腰掛けて物語を見つめる登場人物。物語の内と外を自在に行き来する大道芸人。松雪さんのよく通る声。悲劇の合間に綴られるユーモアとペーソス。夜ごとの夢。
キャストが皆さん本当に魅力的だった。
眩く眩む
ムシラセ
劇場MOMO(東京都)
2023/09/06 (水) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/09/09 (土) 18:00
テーマは「集団創作とハラスメントの行先」だと事前に知らされていた。登場人物がみな魅力的で心惹かれるけれど、ハラスメントは確かにあったし、問題や歪みもあった。
それを指摘する人物さえ正義の味方ではない。誰かを責めて済む問題にしなかった誠実さと答えを出さない勇気を感じた。
それぞれの生きてきた(描かれていない)道筋も、創作の場としての会社の中での苦闘も、すべて飲み込むように物語は進み、明確な回答はないなりにひとつの形から次の形へと動いていく。それでも、神崎と赤城のやり取りがとても好きだったな、と思う。
多重露光
(株)モボ・モガ
日本青年館ホール(東京都)
2023/10/06 (金) ~ 2023/10/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/14 (土) 12:00
当たり前のように続く日々の暮らしの中で、主人公や周囲の人々が抱え続けてきたやるせなさや淋しさや憧憬や、その他の名付けようのない思いを丁重にすくいあげ(しかしどこにも行き場は示されないまま)じんわりと沁みた。終盤のある会話がとても好きだった。
漂流する万華鏡【10月公演】
ムケイチョウコク
古民家カフェ 蓮月(東京都)
2023/10/07 (土) ~ 2023/11/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/10/14 (土) 19:30
イマーシブシアターというタイプの作品で、登場人物または黒子として物語の中を主体的に生きる体験が大変に刺激的だった。
一度だけのつもりがついつい追いチケして計4回。病みつきになる魅力的な作品だった。
未開の議場 2023
萩島商店街青年部
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2023/10/31 (火) ~ 2023/11/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/11/04 (土) 18:00
期待を余裕で上回る面白さで、テンション爆上がり。
そりゃあ、よく出来た戯曲をあの魅力的な顔ぶれでやるんだもの、面白くないワケがない。
それぞれしっかり見せ場のある会議劇でキャスト皆さんの魅力が十分に生きた。
六英花 朽葉
あやめ十八番
座・高円寺1(東京都)
2023/08/05 (土) ~ 2023/08/09 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/08/05 (土) 14:00
無声映画からトーキーへ。時代の波に逆らうのか、流されるのか。それぞれの芸と矜持に迷う人々の葛藤に巻き込まれる。物語の構成も台詞もキャスト陣の魅力も楽隊の活躍も、あやめ十八番の真骨頂。あーコレが観たかった。
どうぞどうぞ、お先にどうぞ
大統領師匠
「劇」小劇場(東京都)
2023/07/26 (水) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/30 (日) 12:00
シュールでもない、ドタバタでもない、不条理でもない。道具立て同様、物語の作りもたぶんホラーなのだろう、と思った。
ただ、根底にあるのが悪意や害意でなく善意あるいはもしかしたら愛情なので、楽しく笑えるコメディになってる。
独特のセンスの脚本をスマートな演出と手練れのキャスト陣が立体化して、すごく面白いものが出来上がっていたと思う。
隠し砦の三悪人
『隠し砦の三悪人』製作委員会
明治座(東京都)
2023/07/28 (金) ~ 2023/08/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/29 (土) 12:00
序盤から物語に引き込まれ、2時間55分(休憩含む)があっという間。
上川さんの主役の貫禄と信頼感、風間さんと六角さんの楽しく同時に切実な掛け合い、小林さん演じる姫君の魅力等、キャスト陣の熱演を堪能。扉座陣のご活躍もファンとしてうれしい。
ただ期待が高かった分食い足りない部分も感じられた。
丹下左膳'23
椿組
新宿花園神社境内特設ステージ(東京都)
2023/07/11 (火) ~ 2023/07/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/16 (日) 19:00
めちゃくちゃ面白かった。アングラは祝祭だなーと思った。
夏の野外テントのむき出しの土の上で躍動する人々がときに歌い、ときに踊る。ご存知、丹下左膳の物語のはずが、過去と現在、生者と死者、虚構と現実をないまぜにして新たな物語として立ち現れた。
毎年恒例野外テントの会場も雰囲気があって好き。
いとしの儚
悪童会議
ステラボール(Stellar Ball)(東京都)
2023/07/06 (木) ~ 2023/07/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/15 (土) 18:00
この戯曲の上演はさまざまな形で何度も拝見しているのに、そのたびに泣いてしまうのはなぜなんだろう。登場人物たちの行動にはいろいろ言いたいことがあるのに、それでも琴線に触れるのはもう理屈じゃなのだ、と思った。
ゾロ政がガチカッコよかった茅野さん。演出は華やかでしっかりエンタメ。扉座勢の御活躍も見応えがありました。
『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』(再演)
ムシラセ
駅前劇場(東京都)
2023/07/13 (木) ~ 2023/07/18 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/15 (土) 14:00
観られてよかった。笑ったし、泣いたし、初演のときに見かけたいろんな感想にいまさらながら全力で頷いた。登場人物全員が愛しくなるような舞台。観客も舞台に集中し、ダブルコールの後のアナウンスにも拍手が起きる温かい公演だった。
舞台『異説・狂人日記』
ヨビゴエ
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2023/07/12 (水) ~ 2023/07/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/12 (水) 19:00
面白かった。いや面白いというか、ゾワゾワする感じがけっこう好きだ。
TRPGが原作と聞いていたけど、途中から物語に既視感があって、しばらくしてから(そうか、魯迅だ)と気づく。(←タイトルで気付くべきでした)
野口オリジナルさんがハマり役で、危うさとある種の無垢が魅力的だった。
センセとともに彷徨う105分を堪能した。拝見できなかった別バージョンも気になる。
兎、波を走る
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2023/06/17 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/07/08 (土) 19:00
チケット確保で散々振られまくったNODA・MAP『兎、波を走る』を当日券で観た。
野田氏らしい疾走感と遊び心、メリメリに詰め込まれた多彩なガジェットが、中心となる題材を取り巻き揺り動かしていくのを振り落とされないよう見守る約2時間10分。高橋さんの軽やかな悲劇性が物語を牽引する。
「ここでこの話を終わりにしないで」というフレーズの意味。詩的な言葉遊びの底に切れ味鋭い刃物のように仕込まれた事実。終盤の高橋さんの切実さがしみる。ふいにその名前が、隠喩でも比喩でもなく具体的に示されてドキッとする。
トラ
ハイワイヤ
シアター711(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/07/01 (土) 14:00
「壮絶な」という言葉が思い浮かぶようなイジメが描かれている。
イジメは、舞台の冒頭から過去のこととして語られる。
主人公はイジメられた結果、引きこもってYouTuber的なことをやっており、その中で自分の記憶が誰かの救いになるかもしれない、としてそのことを語るのだ。
半ば顔を隠した奇妙な白い影のようなものが彼の周りでうごめく。
記憶、感情、怒り、後ろめたさ、家族。
そう、家族への思いは、物語の重要な構成要素となっている。
過保護なくらいに彼を愛し、だからこそ傷つけ合ってしまう母。母に寄り添おうとしつつ彼に苛立ち、そしてなぜかスズキと付き合っていた姉。
主人公や姉は少しずつ大人になって、家族間の葛藤から互いを許す余地を見出していく。ラストまで見れば家族の再生の物語であると思える。
ただしそれにしては中学時代のイジメの描写のウエイトが大きくて、本当に描きたかったことはやはりそこなのかもしれない、とも思った。
面白かった、と単純に言ってしまうのはたぶん違う。でも、ある種の思いの強さが伝わる舞台だった、と思う。
仮名手本忠臣蔵
花組芝居
小劇場B1(東京都)
2023/06/21 (水) ~ 2023/06/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/24 (土) 13:30
こんなスタイリッシュな忠臣蔵があるのか。
黒一色の素舞台で揃いの紋付袴の男たちが演じる悲劇はときに重厚、ときに軽やかにテンポよく進む。
古めかしい台詞に血肉を通わせる抑揚や表情。紅ひとつささずに義士と女房を演じ分ける演技力。
義と人情が今もこんなにカッコいい。
当然の結末
シベリア少女鉄道
俳優座劇場(東京都)
2023/06/17 (土) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/17 (土) 18:30
2022年の『アイ・アム・ア・ストーリー』でこの団体の公演を初めて観て、台詞と舞台上で繰り広げられる物語の齟齬に強烈なインパクトを受けた。
で、気になってこの作品も予約した。
2度目となると多少は作風への理解も進み、なるほど!と思いつつ、やはり笑ってしまう。よくこんなことを考えつくものだ。
『SUMMER FREESIA EXPRESSION』
パピプロデュース
萬劇場(東京都)
2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/17 (土) 13:00
魅力的な舞台だった。青春群像劇に止まらない戯曲の仕掛けも高校時代と18年後をつなぐ演出も物語を活かす12人の役柄とキャストそれぞれの持ち味も。
観ながら、笑ったり手拍子したり時に涙をこぼしたり。
言葉にならない思いもしみる。
死んだら流石に愛しく思え
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2023/05/26 (金) ~ 2023/06/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/03 (土) 18:00
MCRの作品はいつも、好きか嫌いかの二元論では語り切れない。やるせない饒舌さとヒリヒリするような切実さ、そして痛みにも似た面白さがクセになりそうで、返って観に行くのをためらってしまう。それでも今日この舞台を観てきてよかった。