
夜曲
アカズノマ
新宿村LIVE(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/03 (日)公演終了
満足度★★★★
横内謙介さんが約30年前にお書きになった戯曲を七味まゆ味さんが演出。主人公のツトムを石塚朱莉さんが演じる。
放火魔の少年と奇妙な少女が焼け跡で出逢ったいにしえの物語。ドラマチックな中に痛みもあれば毒もある。観ているうちにツトムも観客も傍観者ではいられなくなる。

アリはフリスクを食べない
やしゃご
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/08/31 (土) ~ 2019/09/10 (火)公演終了
満足度★★★★★
この人の創る舞台は、なぜこんなにも切実なのだろう。「リアル」などという言葉はいまさら使いたくないけれど、でもその言葉がこれほどピッタリくる芝居を私は他に知らない。
知的障害のある兄と、その兄の世話をするために司法試験を諦めた弟の暮らすアパート。
弟の婚約者、兄弟がアルバイトしている工場の社長や同僚。兄弟の幼馴染やその他彼らの周囲の人々。登場人物それぞれの言葉や行動にウソがない。いや、そんな簡単な言葉では伝えきれない不思議な真実味がある。
母を亡くしてグループホームに入っていた兄とともに暮らすため司法試験を目指すことを諦めた弟。しかし、婚約者の両親の反対にあってとうとう兄と離れて暮らすことを決める。その決断に向かうまでの細やかな機微を伝えるいくつもの場面。
一方で、兄の側の想いもなおさら丁重に描かれていく。自分自身に対する歯痒さ、彼自身の恋、苛立ちや不安。
小さなアパートの中で人々は言葉を交わし、迷い、喜びや悲しみ、怒りなどと明確に名付けることのできない曖昧な思いを抱えて繋がっていく。
ままならないこの世界で生きる人々の息づかいが聞こえる。そういう時間だった。

喫茶ティファニー
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/04/11 (木) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
懐かしい雰囲気の喫茶店の店内で繰り広げられるささやかな物語は、いくつもの重い課題を我々に突きつける。
マイノリティであること。
知ってるようで全然知らなかった。こんな身近にこんな歴然とした人種問題があるということを。
重い題材と劇中の人々が抱える困難については、観ている最中から自分でも調べてみたいと思わされた。
そして、それじゃあ普通って何?日本人って何?そんなことを当たり前に考えさせる作劇が見事だった。
しかも、劇中の人々の佇まいや感情の動きの自然さ会話の切実さを丁重に描くことで、中心に据えた題材に留まらず、多くの人が共感しうる普遍性を持つ作品となった。

怪人と探偵
PARCO / KAAT神奈川芸術劇場 / アミューズ / WOWOW
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2019/09/14 (土) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
子どもの頃夢中で読んだ怪人二十面相シリーズがオトナのエンターテイメントとしては鮮やかに蘇った。予告状・元華族の令嬢と大富豪の婚約者・孤島のアジト・怪人と探偵の対決など、歌やダンスに彩られた懐かしい探偵小説的世界を堪能する約2時間50分。

「紙屋悦子の青春」
劇団東演
東演パラータ(東京都)
2019/09/21 (土) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★
名作戯曲の機微を切なさも笑いも含めて丁重にすくい上げた、胸に迫る1時間40分。直接には描かれない戦争の過酷さや理不尽さ。波の音や桜の花に託す人の想い。誰かを待つ食卓の風景が日々の暮らしの象徴のように描かれて愛おしい。

冒険秘録 菊花大作戦
劇団ヘロヘロQカムパニー
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2019/09/28 (土) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
横田順彌さん原作!
日本を揺るがす大事件に尽力を請われた快男児たちが巻き起こす波乱万丈の痛快活劇。荒唐無稽ながらキッチリとツボを押さえた、どこか懐かしい王道エンタメ。2時間20分という長めの尺もあっという間だった。

そう思うなら、尚更。
小岩崎小企画
新井薬師 SPECIAL COLORS(東京都)
2019/10/11 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★
共感したり怖かったり愛しくなったり、バラエティに富んだ5つの作品による約100分の短編集。4人のキャストそれぞれの魅力を間近で堪能できる贅沢な時間だった。

終夜
風姿花伝プロデュース
シアター風姿花伝(東京都)
2019/09/29 (日) ~ 2019/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★
1日2公演の日がない理由が観てみてわかった気がした。3時間40分の長尺だから、というのももちろんだが、なんていうか感情の振り幅の大きい、エネルギーの必要な芝居だ。4人それぞれの歪みや、やり場のない鬱屈が言葉となって迸る。ガッツリと見応えがあった。

ナイゲン 暴力団版
日本のラジオ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2019/10/23 (水) ~ 2019/10/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
開場時間ギリギリに到着し、入場順を決める抽選で07番をゲット。3年生チーム(元のナイゲン的にいえば)の対面の席へ。序盤は予想以上にナイゲン。しだいに日本のラジオ色が強まってラストの落とし方も見事。面白かった!

新版 オグリ
松竹
新橋演舞場(東京都)
2019/10/06 (日) ~ 2019/11/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
いろんな意味でボリュームたっぷりのエンターテイメントで、4時間20分という長尺なのに終わるのが寂しく感じられた。扉座勢のご活躍も堪能。杉原さん演出だっけ……とうなずける場面もあり、会場を出てから(そういえば歌舞伎だった)と思い出すなど。

『獅子の見た夢~戦禍に生きた演劇人たち』
劇団東演
東演パラータ(東京都)
2019/11/16 (土) ~ 2019/11/28 (木)公演終了
満足度★★★★★
昭和19年から20年にかけて三好十郎の『獅子』を上演しようとする苦楽座=桜隊の苦闘と悲劇を描く。重い題材を誠実に取り上げ現代への警鐘を鳴らす。個性豊かな登場人物と劇中劇の生かし方が見事。

最後の伝令 菊谷栄物語
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/11/27 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
さまざまな場面からしだいに浮き上がってくるのは、人がなぜ舞台を必要とするのか、ということ。過酷な人生を歩んできた少女が、ふと立ち寄った劇場で見つけた何か。誰かの人生に輝くような瞬間を生み出す魔法の時間。そんな、舞台への希望を描く物語でもあったかもしれない。

『傷だらけのカバディ』
楽団鹿殺し
あうるすぽっと(東京都)
2019/11/21 (木) ~ 2019/12/01 (日)公演終了
満足度★★★★
パワフルでエネルギッシュで、馬鹿馬鹿しさと切実さが同居する不思議な舞台。なぜだか中盤から涙が出てしまってしかたなかった。濃過ぎる登場人物たちが愛しくなるような物語。

新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~
劇団扉座
座・高円寺1(東京都)
2019/05/11 (土) ~ 2019/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
じっとしていられなくてつい劇場に駆けつけてしまうやうな感じを久しぶり味わった。
再々演ながらキャストも大きく変わり、より力強く心を揺さぶる作品となっていた。

月がとっても睨むから
Mrs.fictions
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2019/08/03 (土) ~ 2019/08/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
少年に対する性的犯罪というデリケートな題材を、この団体らしい軽やかさと誠実さで描き出し、罪を償うこと、赦すことあるいは赦さないことについての物語に昇華させて魅力的だった。

しだれ咲き サマーストーム
あやめ十八番
吉祥寺シアター(東京都)
2019/07/19 (金) ~ 2019/07/24 (水)公演終了
満足度★★★★★
江戸風俗が現代まで続く架空の日本で、落語家の跡目争いから始まる色と欲との物語。
趣向が盛りだくさんで、舞台の面白さの大盤振る舞い、という印象だった。

殊類と成る
劇団肋骨蜜柑同好会
Geki地下Liberty(東京都)
2019/12/05 (木) ~ 2019/12/10 (火)公演終了
満足度★★★★
面白かった。いや面白いというか、だいぶ迷子になりつつ観ていた。エピソードと寓意の森林を歩きながら自分がいま(物語の中の)どこにいるのか見失い、進むうちに来た道と行く道が見えてきた気がした。帰りの電車の中で登場人物一覧を眺め、なるほど、と思ったり。
最後まで観て登場人物の人となりや関係がわかった上で、もう一度観てみたかった。もろもろの都合でリピートできないのが残念。でも、その代わりというわけではないけどとりあえず台本を予約した。

少女都市からの呼び声
流山児★事務所
Space早稲田(東京都)
2019/12/06 (金) ~ 2019/12/18 (水)公演終了
満足度★★★★
アングラ感満載の、奇妙で猥雑で詩的で切ない物語。
手術中の男の腹から見つかったのは、生まれなかった少女の黒髪。眠りの中で男は少女の生きる街へと旅立つ……。
田口を演じた井村さんの透明感のある雰囲気が虚構と現実を行き来する役柄によく似合った。雪子役の山丸さんはあどけなさの中に奔放さと脆さを感じさせる。フランケ役の伊藤さんの存在感、有沢役の山下さんの誠実な印象、他のキャストもそれぞれに個性的で魅力的だった。

義経千本桜
花組芝居
あうるすぽっと(東京都)
2019/12/13 (金) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
花組芝居『義経千本桜』全段通し。場面ごとエピソードごとのメリハリとテンポの良さで長いはずの物語がいつのまにか終わっていた。
役者陣の所作の美しさ台詞の確かさにいまさらながら目を引かれる。特に源九郎狐を演じた谷山さんの凛々しさとユーモアのバランスが絶妙だった。

彗星はいつも一人
ことのはbox
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2019/12/12 (木) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
テンポの良い進行や少し不思議な設定で描かれるのは長い年月ある人を思い続けた1人の女性の物語だった。
笑い多めに進む前半から、様々なパーツがピタリとハマって積み上げてきた想いが明かされる後半へとストーリーに引き込まれ、観終わった後も温かい余韻が続く。