人間風車
PARCO / CUBE
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2017/09/28 (木) ~ 2017/10/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/29 (金) 19:00
後藤ひろひと「大王」が遊気舎時代に書いた作品をパルコプロデュースで、2000年,2003年に続いて再演だが、観るのは今回が初めて。公園で子ども相手に語るだけの童話作家にファンが現われ、そのファンが巻き起こすホラー系ストーリーで、いやーな感じになります、といっぱい書いてあるけど、思ったほどは嫌な感じにはならなくて、切ないけれど少しハッピーに終わってくれるあたりは、「大王」らしい。カーテンコールで、ミムラが舞台2作品目で慣れていないのか、ニコニコして出て来たのが、むしろ不気味だった。(この人は、初舞台の初日でも共演者に騙されたりして、本当に純粋な人なんだろうと思う)
瘡蓋の底(かさぶたのそこ)
タカハ劇団
小劇場B1(東京都)
2017/09/27 (水) ~ 2017/10/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/09/27 (水) 19:30
終戦後、満州から密入国して日本に帰ろうとする男5人。実は、皆同じ名前の偽造身分証を持っているため、他人を追い落とそうとする。一方で、場面は変わって現代。母が入院したのを機に3人姉妹が久々に集まるが、今一つ仲の良くない姉妹の話はまとまらない。
交互に展開される物語は何でつながるのか、途中で分かってしまうし、とある現象も兆候の伏線が見え見えである。なんとも物足りない。2つの場面の繋がりにこそ、もっと明確なドラマが欲しい。高羽はそれだけの力があるものと思われる作家なだけに、やや残念な気分である。
ワーニャ伯父さん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2017/08/27 (日) ~ 2017/09/26 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/26 (火) 13:30
ケラmeetsチェーホフのシリーズ第3弾。実は、本戯曲を観るのは初めて、だったりするのだが、今までのシリーズ同様、笑えるチェーホフになっているのはありがたい。豪華な役者陣を集めて、ケラ風味をふんだんに醸し出しているのだけれど、そもそものロシアの土地制度やインテリと農民の差が上手く理解できなかった。なぜ、セレブリャコーフの言いなりになるのかなぁ。黒木華が可愛くないとは、とても思えないという違和感もある。でも、よくできた舞台ではあると思う。
エフェメラル・エレメンツ
ティーファクトリー
吉祥寺シアター(東京都)
2017/09/22 (金) ~ 2017/10/03 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/25 (月) 19:00
近未来、人間とヒューマノイドが共生する世界を描く。原発事故の後始末にヒューマノイドを使おうとする一方で、母親役のヒューマノイドを作ろうとするロボット学者、また、家政婦として好みのヒューマノイドを作ろうとするロボット学者、等のさまざまな場面が出てくるが、まだ違和感がある第1幕。その20年後を描く第2幕では、違和感はなくロボットにしかロボットが認識できなくなっている。第1幕80分で14場、第2幕75分で11場という、短いシーンの連鎖で物語を描こうとしたことで、わかりやすく、印象的な舞台になっている。役者陣の衣装やメークも注目である。
ウロボロス
Straw&Berry
新宿眼科画廊(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/18 (月) 19:30
河西祐介は頑ななロマンティストである。そのことを今回も思い知る作品だった。時間軸が前後する展開やエンディングの幸せ感が、余計に全体を包む悲しさ・切なさを増幅させる。やや強引な部分があるけれども、見ておいてよかったと思えた。
SHERLOCKIAN Aの項目
Project S.H
ワーサルシアター(東京都)
2017/09/13 (水) ~ 2017/09/18 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/18 (月) 16:00
シャーロック・ホームズの世界観を借りて、新たな物語を紡ぐ。よくできた脚本で、いかにもホームズな推理や様々な登場人物も、しっかり活かされている。やや、「○○、実は△△」というのが多い気がするけれど、エンターテインメントと思えば許容範囲かと思う。
川を渡る夏
オフィス3〇〇
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/17 (日) 18:00
渡辺えり子が31年前に演劇集団円のため書き下ろした作品をオフィス3○○名義で再演する。「オズの魔法使い」の物語を使いつつ、渡辺らしく、夢と現実/生と死が交錯する不思議な物語だが、演出の稲葉賀恵はある意味、渡辺の脚本を忠実に辿りつつ、独特の世界観を構築することに成功はしている。橋爪功に当て書きされたという小津を若松武史が怪演(^_^;)。老婆と若く死んだ双子の一方を2役で演技するサヘル・ローズはじめ、役者陣は皆しっかりと仕事をしている。描かれた時期を反映したセリフは、若い観客には理解されるのか、やや不安はあるものの、オジサンには存分に楽しめる作品だった。
光、さえも
Ammo
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/20 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/09/15 (金) 20:00
1921年の独立芸術家協会の展覧会に出品された作品を、展示すべきかどうか議論する協会の理事会の様子を描く論争群像劇。こういった、「芸術とは何か」「美とは何か」をテーマにすると、しばしば演劇に戻って自己言及的/自己肯定的になりがちなのだが、そうなっていないところが良い。実話ベースではあるが、創作として人物の描き分けもできているし、役者陣もしっかり演じて熱演。楽しんだ。
ただし、20時開演で1時間56分という長さを考えると、開演が10分遅れ、その説明が全くなかったのは、時間通りに来ている観客をバカにしている/甘えていると思う。
そのため、本来は星4つとしたいところだが、あえて1つ減らして星3つ。
アンネの日
風琴工房
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2017/09/08 (金) ~ 2017/09/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/12 (火) 19:30
ノンケミカルの生理用品を開発しようとする女性8人の群像劇。初潮の告白から始まり、開発に向かう経緯と多くの困難を乗り越えて進む登場人物達は力強い。男である私には、生理に関して、理解はできるけれど「腑に落ちる」というのは難しいが、それでも、開発に向かう要因になるという状況は充分に伝わる。ともすると深刻になりそうな物語だが、最近の風琴工房らしくエンターテインメントを充分に意識した演出は楽しい。むしろ、プロフェッシュナルのあり方という視点が適切に思える作品だと思う。ししどともこが演じるような存在を出す必要があるのかと、少し心配したが、うまく収束させて取り込む作り方は見事だ。このような凄い作品で空席があったりするのは勿体ないとしか言いようがない。
学園恋愛バトル×3!
劇団だるめしあん
王子小劇場(東京都)
2017/09/07 (木) ~ 2017/09/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/08 (金) 19:30
坂本鈴が書いた短編が3本しかないとは驚いたが、その3本を上演する。どれも古典にプロットを得つつ、現代に振り替えた恋愛に関する作品だが、そのブッ飛びぶりには頭が下がる。そして、それを役者陣もしっかり意識して、あえて過剰に演技することで、大いに笑えるフィクションとして再生されている。実に見事。また明日から頑張ろう、という気にさせてくれる舞台だった。
ハッピーママ、現る。
艶∞ポリス
駅前劇場(東京都)
2017/09/07 (木) ~ 2017/09/11 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/07 (木) 19:30
PTAあるある、を舞台化した印象の作品。本劇団は、なかなかよくできた脚本が一つの売りなのだけれど、それは本作でも生きてる。全体を通して見ると、そりゃないだろ、的な展開もあるのだが、そこはコメディということで許せる範囲かと思う。エンディングは少し希望を見せて終わるあたりはニクイ。
『巨獣の定理』
かはづ書屋
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2017/09/06 (水) ~ 2017/09/11 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/06 (水) 19:30
浜尾四郎「殺人鬼」をベースに、十七戦地が柳井祥緒が書き下ろした脚本を、かはづ書屋が上演する。元々が大部の連続殺人小説だが、殺される人物を登場させず、生き残る人物だけで描いたところが面白い。また、元の小説には2人の探偵が登場し、それぞれが推理を展開するのだが、その探偵さえも登場させない(それでいて、きちんと成立している)のは見事だと思う。脚本の妙だけでなく、舞台美術の美しさや、役者のなりきり感なども、なかなか凄い。面白いものを見せてもらった。それにしても、副主宰の島田は、どんだけ探偵小説が好きなんだよ!(誉めています)
CRIMES OF THE HEART ―心の罪―
シーエイティプロデュース
シアタートラム(東京都)
2017/09/02 (土) ~ 2017/09/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/04 (月) 18:30
70年代のアメリカ南部を舞台にした、三姉妹の物語。良くも悪くも、ウェルメイドという印象の舞台だが、先日急逝した中嶋しゅう原案というのを読むと、ちょっとジンとくる。那須佐代子,安田成美,伊勢佳世の三姉妹というキャスティングはなかなか見事で、少し異種格闘技的印象がある。岡本健一の使い方はもったいないと思う。やや冗長に感じられるのは、小川の演出では良く感じることである。おそらく、丁寧に作ろうとしているからではないだろうか。
お祭りやってるらしいよ
あひるなんちゃら
駅前劇場(東京都)
2017/08/31 (木) ~ 2017/09/04 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/01 (金) 19:30
いつもながらの、ちょっと変わった人と真っ当な人の、会話劇だが、今回は、田代尚子の変なチラシを作る人、宮本奈津美の上下激動女、そして堀靖明の切れ芸が、実に冴えていて、かなり面白かった。
量子的な彼女
NICE STALKER
王子小劇場(東京都)
2016/11/19 (土) ~ 2016/11/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
理系心をくすぐる
最初に「皆さんは量子力学をご存知ですか?」という問いから始まって、とある高校の女子達を中心としたさまざまなエピソードが「理系的な」セリフで展開される。弱点はいっぱいあるが、「理系」でまとめようという、作家イトウシンタロウの心意気と、特に、屋上の先輩を演じた帯金ゆかり・山本光が石澤希代子を問い詰めるシーンのセリフに理系心をくすぐられ、☆5つを付けてみたが…。。
メトロポリス
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2016/11/07 (月) ~ 2016/11/30 (水)公演終了
満足度★★★
何だか分かりにくくて…
サイレント映画の傑作を大きく潤色しての舞台化だが、映画を観たことはない。それが災いしたのか、アングラっぽい潤色と演出で分かりにくい舞台になっている。オリジナルの映画がそうならしょうがないんだが…。役者陣の演技や歌や身体能力は見事だが、何か物足りない感触が残る
さようならば、いざ
ONEOR8
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2016/11/16 (水) ~ 2016/11/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
薮の中か?
病気を持っていたのに飲酒運転で人を死なせて刑務所に入っていた父が死んだ、という知らせを受けた姉弟と、叔母2人、そして、それそれのパートナー。誰が悪いのか、というのは本作のテーマではないが、それが徐々に明らかになりつつ、変化していくという展開が、田村らしい物語作りで、非常に面白く見せてもらった。本当のことが最後まで分からないと思わせておいてのラストシーンの衝撃が凄い。
『愚図』
KAKUTA
あうるすぽっと(東京都)
2016/11/10 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
お見事!
2014年の『痕跡』で鶴屋南北賞を受賞した痕、再演モノを経ての書き下ろし作品だが、桑原らしい感触の芝居である。さまざまな一見無関係に思えるエピソードで始まり、それらが収束していくという構成も見事だし、少し笑わせ、しょうがないなぁと思わせ、そして切なく終わる展開も見事だ。何よりも寂しい人への暖かい眼差しが感じられるのが良い。KAKUTAにしては、そう多くない人数での群像劇だが、メインの夫婦を演じた林家正蔵・千葉雅子の組み合わせが実に良い。
それにしても、1日に観た青☆組の吉田小夏と、桑原が、どちらも平田オリザ女子高生企画の『転校生』に出ていたというのは、興味深い。
一人芝居ミュージカル短編集vol.1
一人芝居ミュージカル短編集
アトリエ・カノン(東京都)
2016/11/03 (木) ~ 2016/11/15 (火)公演終了
満足度★★★★★
平板だが巧みで見事
音楽家の伊藤靖浩が、一人芝居のミュージカルを年に10本書いて10年続けて100本のプログラムを作ると言う企画の第1弾。イサドラ・ダンカンを描いた「それでも私は踊りつづける」福麻むつ美、ジュディ・シルを描いた「生殺しの蛇」ハマカワフミエ、バルバラを描いた「piano black」岡田あがさ、の3本を観たが、どれも興味深い作品に仕上がっていた。ただし、ミュージカルということで、物語の複雑さはあまりなく平板で、むしろ歌を使った表現に気を遣ったように思えた。驚くのは、イサドラ・ダンカン,バルバラという有名な2人に挟まれたジュディ・シルを取り上げた点。必ずしも有名でない70年代の女性シンガー・ソングライターを取り上げたのは、伊藤でなく演じたハマカワの要望だという。
ただし、上演順には疑問があり、数多くのミュージカルを経験した福麻をトップに持ってきたのでは、ストレートプレイ中心のキャリアのハマカワ,岡田は歌ではツライ気がする。その分、演技で魅せる2人の印象は強烈だった。その意味で、3者3様の魅力をしっかりと感じさせてくれる上演だった。
ラズベリー
sleepwalk [スリープウォーク]
APOCシアター(東京都)
2016/11/08 (火) ~ 2016/11/14 (月)公演終了
満足度★★★★
アンサーなんだろうか
河西が国分寺大人倶楽部時代に書いた傑作『ストロべリー』へのアンサーだということだが、男女7人という点以外は大分違う気がする。20代で書いた『ストロべリー』の尖り具合に対し、本作はいかにも「あるある」な物語が展開され、最後は河西の「照れ」を示すと思われる「オチ」がある。アンサーだと言わずに、普通に上演していれば、余計な事を考えずに楽しめる作品だと思う。