誤解
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/10/04 (木) ~ 2018/10/21 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/19 (金) 18:30
カミュの作品を稲葉賀恵の演出で上演。母(原田美枝子)とホテルを経営するマルタ(小島聖)は、旅行者を殺しては金を取り、美波の国で過ごすことを夢見ている。そこに泊まりにきた男は、実は、20年前に家出して成功した息子(兄)だった…、という展開が凄い。抽象的なセリフが多いが、それに一定程度リアリティを持たせる演出の努力は買うが、翻訳劇にありがちな、文化的な違いを乗り越えきれていないようには思う。ただ、セリフのない使用人の小林勝也が最後の最後に放つ一言は素晴らしい。公共劇場ならではの豪華で繊細な美術や照明は見事としか言いようがない。
咲けよ、酒よ。
ソラカメ
「劇」小劇場(東京都)
2018/10/17 (水) ~ 2018/10/21 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/18 (木) 19:30
中途半端な印象が残る勿体ない芝居だった。居酒屋での乾杯シーンから始まり、仕事も恋愛も巧くいっている彩英子(江田恵)が実は家庭に問題を抱えて悩んでいるという設定から、さまざまな展開を呼ぶ。友人との酒、恋人との酒、一人で知ってる店で呑む自棄酒、など、さまざまな酒飲みシーンが出てくるのだが、どれも少しずつしか物語が進行しないのが焦れったい。もっと、スッキリいろいろなものを提示していけば、もっと面白い舞台になったのに、と思う。
The Dark City
温泉ドラゴン
ブレヒトの芝居小屋(東京都)
2018/10/15 (月) ~ 2018/10/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/16 (火) 19:30
昭和23年の「本庄事件」を扱った作品だが、事件そのものは知らなかった。ヤクザが支配する本庄の町で、朝日新聞の記者が元ヤクザの議員に殴られ、立ち上がる…という物語。現在と昭和23年の時間軸が何回も前後し、役者はそれぞれの時期で異なる役割を演じるが、そこをシッカリ演じられるだけの力量の役者が集まっていた。シライ自身は「社会派」と呼ばれることに戸惑いを感じるそうだが、それが見える、家族の物語として出来上がっているのは巧かった。ただ、当時の記者たちが、やたらと「民主主義」を言うのは違和感があったが、それが語れる時代になったことの誇りが出ているからでは、とは、観劇後に話した方の意見で、腑に落ちた。大久保鷹の存在感は見事としか言いようがない。
セイラム
sortie
新宿眼科画廊(東京都)
2018/10/12 (金) ~ 2018/10/16 (火)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/14 (日) 17:30
不思議な感触の芝居だった。肋骨蜜柑同好会が作った架空の田瓶市を舞台に展開される、ある種の幻想的な物語。この田瓶市を共有する芝居は3団体目だそうで、ホームページもあり、本格的な架空化が見事だ。最後まで解けない謎もあり、よく分からないままに終わるが、面白いとは思った。特に終わり方の突然さもちょっとステキだ。つついきえの過剰な演技と、沈ゆうこのごく普通の演技の差も興味深い。
華氏451度
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2018/09/28 (金) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/14 (日) 14:00
壮大な舞台である。レイ・ブラッドベリが1954年に書いたディストピア小説の舞台化で、原作は読んだが、映画や舞台では見たことがない。3面が巨大な本棚に囲まれた舞台美術にまず目を奪われるが、そこで演じられる芝居も長塚が脚本で白井が演出というだけの価値はあり、ほとんどの役者が2つ以上の役を演じることで、逆に深みが出てきていると思った。特に、美波が正反対の重要な役を演じるあたりを見ると、この人は本当に巧い役者になったなと思う。草村礼子のセリフがないのに存在感を示すところも見事だと思った。
パパは死刑囚
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/10 (水) 19:00
「笑える社会派」らしい作品だった。自分が父母だと思ってた両親が、実は叔父と叔母で、本当の父が母と義父を殺して死刑囚として収監されている男が主人公。その男が結婚する式で、新婦の父に、そのことを伝えるか、という問題が軸になるのだが、それを笑い飛ばして上演するのは、いかにもこの劇団らしい。ただし、登場人物が多すぎて、余分なサイドストーリーがあるのは勿体ない。また、エンディングは一寸ドキッとさせすぎな気がする。
再審請求中の死刑囚の死刑を執行してしまうなど、問題点がいくつも残るが、そこは敢えてそうしたのだ、と思いたい。
竹取
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2018/10/05 (金) ~ 2018/10/17 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/09 (火) 19:30
不思議な舞台だった。マイム系の小野寺修二が作る、現代能楽集の第9弾だが、小林・貫地谷という俳優、小野寺のカンパニーによく出るマイム系の藤田・崎山、大駱駝艦の小田、能の佐野、打楽器奏者の古川というメンバーによる、一種の異種格闘技戦のようにも思え、監修の野村萬斎の狂言的な演技もあり、何とも言えない舞台だった。発話はあるが、セリフとして説明するものではないので、みんなが知ってる物語である、というところが大前提の作品に思えた。ゴム状の紐を巧みに使った舞台美術と照明・音響等のコラボレーションは、さすが公共劇場だけのことはあると思う、美しい出来だった。
はしらない
劇団スポーツ
王子小劇場(東京都)
2018/10/04 (木) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/06 (土) 19:00
勢いはあるが、スジは通っていない印象である。高校のとき、何となく軽音楽部を作ったメンバー4人の一人が結婚するというので、集まるが、その内の一人は呼んでいない。その事情を回想する、というのが芝居のほとんど。個々の場面は面白いが、全体として不要な部分が少なくないし、回収されきれないエピソードも多い。アフタートークで、元芸術監督の玉山氏が面白いと絶賛されていたが、光るものはあるものの不十分な印象が拭えない。
開演を10分以上も押して、理由を一切言わないというのは、客をナメきっている。学生の劇団だから、というのは、言い訳にならない。
月極セイラ ゴールデン★ベスト
Dr.MaDBOY
スタジオ空洞(東京都)
2018/10/03 (水) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/10/04 (木) 19:30
チラシの80年代感に惹かれて観劇。やや勿体ない印象が拭えない。若くして死んだアイドル月極セイラの関係者が集められるが、その人物達が次々に死んでいく…、という謎の提示は悪くない。また、それぞれの関係者のセイラ像が異なることを5人の女優にセイラをやらせることで表現するというのも悪くない。ただし、謎は最後まで明確には解けてないし、失踪した上野はどうしたのか、等、回収されないエピソードが多いのが勿体ない。女優さんは皆さんキレイでアイドル感満載なので、女優ファンには最前列で観られることを勧める。後、役者の名前だけでなく、配役表が欲しい。
ミカンの花が咲く頃に
HOTSKY
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2018/10/03 (水) ~ 2018/10/07 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/03 (水) 19:30
東九州縦断高速道路の計画地に入った集落の人々の物語で、実話ベースだと言う。公的なものとの対立に軸を置くのではなく、村落の共同体としてのあり方を、広い意味での「家族」ととらえる視点が興味深い。東京から実家に戻る役の本多真弓が「異物」として存在することで、その辺を明らかにする役割を演じた。明樹を客演に得たことで、ジェスト・ダンスという動きと歌という表現に広がりが出た。
やっぱり!おれたちにあすはないっすネ
なかないで、毒きのこちゃん
ザ・スズナリ(東京都)
2018/10/01 (月) ~ 2018/10/02 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/01 (月) 18:00
再演だが初演は観てない。スズナリの受付の階段に並ぶと、階段の下で大声で話しているのが聞こえ、あ、芝居が始まったのか、と分かる。受け付けてロビーに入ると、そこでも芝居が始まっていて、スズナリ全体を使っての芝居が始まる。メタ演劇にこだわる、毒きのこちゃん、らしく、随所で役者が芝居をしていて、全部を観るのは無理だが、奈落に降りて芝居を観られたのは良かった。試みとしては興味深く、面白くもあるのだが、次から次へメタの手法を考えるのは、なかなか大変だと思う。
トップガールズ
道頓堀セレブ
コフレリオ 新宿シアター(東京都)
2018/09/28 (金) ~ 2018/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/09/28 (金) 19:00
フェミニズムの視点を持つ女流英作家キャリル・チャーチルの作品に、関西女優陣のユニットがチャレンジしたが、面白い舞台だった。2011年にシス・カンパニーが寺島しのぶ主演で公演した同戯曲を観たが、それとは全く違った舞台になっていた。2幕のやや長い作品なのだけれど、セリフを被せたり一部切ったりしつつ、関西弁に直して上演するなどの工夫で2時間におさめた。そして、シス・カンパニーの作品は最終場に向かって収束していくような演出だったのに対し、道頓堀セレブの本作は、最終場までネタが分からないという演出になっていて、こちらの方が秀逸だと思う。重い役を背負う山本香織・宮川サキの2人を中心に役者陣が見事だ。
2年前の『楽屋』フェスティバルに参加するために作ったユニットだそうだが、今後も活動を続けてほしい。
父が燃えない
箱庭円舞曲
浅草九劇(東京都)
2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/27 (木) 19:30
私の好きな箱庭だった(^_^)v。火葬場の待合室を舞台に、父が亡くなり、兄妹弟と兄嫁、叔父など親族が集まり、火葬が終わるまでの会話を丁寧に紡ぐ。父を巡る思い出やら、家族の有り様やらの会話だが、ありそうもない話題や設定でもありそうに思わせる所が古川らしいところで、その古川マジックが炸裂し、葬儀の話なのに笑いが起きる。役者陣も見事に古川ワールドを再現しているが、微妙なポジションの役所を演じる井上が面白い。エンディングは、私の箱庭史上、1・2を争う美しさで見事だった。
なお、亡くなった「父」の年齢が私に近く、若干身につまされるような感触も残った(^_^;)。
あじのりの神様
あひるなんちゃら
ザ・スズナリ(東京都)
2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/09/26 (水) 19:30
いつもながらの「駄弁芝居」だが、珍しく時間軸が前後する。現代のケンイチ(根津),ミツオ(小野)を軸にした場面と、彼らの子ども時代、つまり、その親の世代の場面が交互に登場する。微妙にズレてる人達のゆるい会話と、実際にはいないだろうな、と思えるような人達の言動が、いつも通り面白く、80分ノンビリと過ごした。ただ、以前は70分を目指していたように思うが、近年80分と伸びているのは、何か理由があるのだろうか。
ドキュメンタリー
劇団チョコレートケーキ
小劇場 楽園(東京都)
2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/09/26 (水) 17:00
フリージャーナリストが雑誌の依頼で、非加熱製剤に関する内部告発を緑十字(劇中では「グリーン製薬」)社員の話を聞く内、731部隊に関する話題を聞かされ、かつて731部隊にいた老医師の話を聞き、記事にしようとするが…、という物語。いかにも、の題材を、劇団員だけで緊張感ある85分にまとめてあるが、やや中途半端な印象は免れない。11月に上演するという『遺産』とのセットで評価されるべき作品だと思う。
出口なし
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/08/25 (土) ~ 2018/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/24 (月) 14:00
東京千穐楽に3度目の観劇。テンポがどんどん良くなり、78分ほどになっていた。力量ある役者のやり取りを観るだけでも面白いのだが、メインで2人が会話しているときの3人目の表情が興味深い。そこまで計算されて演出されているのだろうと思うと、演出の小川の力量も見事だ。大竹・段田のべてらん勢に負けない多部の演技力にも驚かされてしまう。
上空に光る
やしゃご
アトリエ春風舎(東京都)
2018/09/13 (木) ~ 2018/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/21 (金) 19:30
秀逸な作品だった!青年団若手伊藤企画が、青年団リンク「やしゃご」となっての旗揚げ公演。津波被害に遭った大槌町の民宿を舞台に、死者と語り合う「風の電話」のエピソードも交えて、経営する姉弟妹、宿泊者、その他の周辺の人々の「今」を描く群像劇は、前半は、ドタバタも含めて、ある意味で淡々と進むが、半分進んだところで物語が急に動く。全体として、忘れてしまうこと、忘れてしまいたいこと、忘れられてしまったこと、そして、忘れてはいけないことなどを考えさせられる芝居になってる1時間50分だった。
役者はそれぞれ見事だが、軸となる坂倉奈津子がいい表情の演技を見せる。彼女の初舞台の初日を観たものとして感慨深い。
四天王~エレメンタルフィクサー~
X-QUEST
シアターサンモール(東京都)
2018/09/20 (木) ~ 2018/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/09/20 (木) 19:00
いつも通りのダンス&アクションなのだが、物語にも凝ってる気がした。孫悟空、アラジン、ピーター・パン、桃太郎という小説の登場人物のその後が語られるが、それは改竄されたものだった、というネット社会を巧く利用した展開は、4人(グループ)の特性を活かして、物語を動かす原動力になっている。ダンス&アクションのクオリティもいつも通り高く、楽しめる2時間だった。
出口なし
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/08/25 (土) ~ 2018/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/18 (火) 19:00
2度目の観劇。初日よりスピード感が増して、セリフの応酬のテンポが速くなっている。その分、観客が笑えるシーンも増え、全体で80分。面白い芝居だが、割高感がやや勿体ない。
チキン南蛮の夜
くによし組
ギャラリーしあん(東京都)
2018/09/19 (水) ~ 2018/09/20 (木)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/19 (水) 19:00
くによしワールド炸裂の大傑作だった!可奈子,チキン南蛮の霊,インコのピースケ,二股男の佐山の4人(?)のキャラがしっかり立ってて、スピード感ある物語を展開される。チキン南蛮の霊がストーリーを語ったためか、展開がとにかく早いが違和感がなく、どんどん苦笑させられたり爆笑させられたりの1時間だった。エンディングも途中で振ったエピソードの回収になっているし、セリフも計算されている。特に、インコのピースケを演じた小林は登場した瞬間に、インコかな?、と思わせる風貌と演技力が見事だが、セリフのキレは、この人ならぬインコのが最高だと思う。
とにかく傑作だが、平日2日で夜の回が1回しかないというのは、何とも勿体ない。