水の孤独×蝶の哭く空
白狐舎
東京おかっぱちゃんハウス(東京都)
2019/08/02 (金) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/02 (金) 18:30
二人芝居2本立てで50分×2。緊張感ある舞台だった。2作とも、死者が現われて配偶者と語り合う型式。『水の孤独』は東日本大震災で行方不明だった夫の骨が発見されたところで、夫が妻の前に現われる。『蝶の哭く空』は地下鉄サリン事件で20年間植物人間だった妻が死に、葬儀から帰った夫の前に妻が現われる。型式は同じだが、夫婦の愛情を感じる前者と、愛憎を表現する後者の違いは場の空気にも現われ、興味深く観ることができた。
フローズン・ビーチ
KERA CROSS
シアタークリエ(東京都)
2019/07/31 (水) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/01 (木) 18:30
言わずと知れたケラの岸田賞受賞作。やはり戯曲がよく、面白い。2002年のナイロンによる再演を観たが、そのときにケラ自身は本作の再演はこの年が限界と言っていたと思う(2003年が第3幕なので)。それを、KERA CROSS と、演出こそ鈴木裕美だがケラの名前を冠して上演するというのは、実は一種の冒険なのだろう。非常に多くの劇団に上演され、役者・演出等で質が変わってしまう作品だが、初舞台のブルゾンちえみも健闘し、良い舞台になっている。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/28 (日) 13:30
勢いで千秋楽に3度目の観劇。前日に観たのと大きな違いはなくて、ただ、何も考えずに笑っていればよいコメディ。無理矢理な終わり方も、古典喜劇だと思うと何故か許せる。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/27 (土) 13:30
前楽に2度目の観劇。改めて観てみると、アドリブかのように演じられていた部分も脚本に組み込まれていたのだと分かる。公演期間を通して、役者の連携も一層しっかりしてきて、より面白くなっている。
深情けシスターズ
演劇ユニット「みそじん」
OFF OFFシアター(東京都)
2019/07/24 (水) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/26 (金) 19:30
みそじんらしい「いい話」だった(^_^)v。愛媛の田舎町の銭湯を舞台に、母と銭湯を継いだ姉、東京に出てグラビアアイドルをやってる妹と、銭湯に来る人々の絡み合いを、ニシオカ・ト・ニールが描く。ニシオカの脚本は、流れはスムーズなのに、起伏がしっかりあり、自然な物語となっていて、いつも感心させられる。今回も、登場人物のキャラがきちんと書き分けられているし、役者陣も適役としか言いようのないキャスティングで、役者2人のユニットとは思えない底力を感じる。特に、母親役の矢野の演技には、ホッコリさせられた。
余計なことだが、銭湯の中に張り紙がいっぱいあるのに、開いてる時間の掲示がないのは、やや違和感がある。あれば、姉がどんなに長い時間働いているかが、分かりやすいのに、と思った。
古~inishie~
エヌオーフォー No.4
シアターサンモール(東京都)
2019/07/24 (水) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/25 (木) 19:00
初見のユニットだが、小野寺ずるが出るので観に行った。シンプルに面白かった。10周年記念公演を前に空中分解した劇団の団員達が、荷物置き場にしていたスナックの立ち退きで、片付けのため5年ぶりに集まる。芝居を続けているもの、定職についているものなど、それぞれの立場の違いを超えて昔話をする内に徐々に明らかになる、団員達の間の細々としたエピソードが、いかにも現実にありそうで小劇場ファンの自分としては興味深く観ていられた(10年で紀伊國屋というのは、ちょっと無理がありそうだが…)。ただし、最終盤のあれこれは、伏線が充分でなく唐突感が否めないのが惜しい。
『その森の奥』『カガクするココロ』『北限の猿』
青年団国際演劇交流プロジェクト
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/07/23 (火) 19:30
『北限の猿』Bバージョンを観た。平田オリザの科学シリーズとして1992年に初演されてから、青年団以外も含めて、多く上演されているそうだが、初めて観た。平田の同時多発会話を使いつつ、猿を人間に近づけようというプロジェクトに関わる人々の群像劇。猿に関する話をしていると見せて、実は現実の人間関係を扱っているようなダブルミーニング的セリフも多く、最初に振ったエピソードを最終盤で回収するような丁寧さも見せる。
骨と十字架
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/07/06 (土) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2019/07/12 (金) 19:00
タイトな舞台ではあった。実在の人物や事件に題材を取る劇団「パラドックス定数」の主宰の野木萌葱の書き下ろし新作は、イエスズ会司祭であり古生物学者でもあったテイヤールを軸に、信仰と進化論の対立を描く。クリスチャンではない私(と多くの観客)にとっては、違和感、というほどではないが、素直に腑に落ちて来ない題材を選んだことで、評価の難しい作品になってしまった気がする。演出は新国立劇場の芸術監督である小川絵梨子が担当するが、特別なことをしているわけではないように思う。テイヤールの置かれた立場や周囲からの処遇を軸にするのではなく、テイヤール自身の内面の葛藤を扱っているように思えて、それが巧く表現されきれていない気はした。
民宿チャーチの熱い夜17
デッドストックユニオン
ウッディシアター中目黒(東京都)
2019/07/10 (水) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/11 (木) 19:00
初見の劇団だが、かなり面白かった。主宰の渡辺熱がライフワークとしている、沖縄の教会跡に作られた民宿「チャーチ」を舞台にした連作の17作目という、ある種の定番的公演。民宿を運営する人々、泊まりに来る人々の関わりを描くコメディだが、沖縄という独自性を出したいというのが渡辺の思いなのだろうか。今回は、沖縄の独立というキーワードはあるが、正義のあり方というのがメインテーマと言える。役者陣もしっかりした演技を見せるが、終盤の大事なセリフを渡辺自身が語るところは、やや勿体ない。笑えるセリフがいっぱいあるのだが、他の客が笑わないのは何故なのだろう…。
恋のヴェネチア狂騒曲
シス・カンパニー
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/05 (金) 18:30
とにかくとても面白く、楽しい2時間半だった。18世紀の古典喜劇をベースにしつつも福田ワールドが炸裂し、マンガチックなセリフ・演出をする一方で、古典的な側面もしっかり大事にする。役者陣もきちんと演技し、役割を果たしている。特にマンガチックな側面を担うのが賀来賢人と池谷のぶえだと思えるが、この2人はサイコー。主演のムロツヨシも、カワイイ!、と言いたくなるような存在感が見事だ。
三人ヨシコ
888企劃
王子小劇場(東京都)
2019/07/02 (火) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/07/02 (火) 19:00
他劇団が2017年に上演した作品を、主宰の馬原の演出で上演する。何を言いたいんだか、焦点が絞れていない感じが勿体ない。山岳ライターの梢は雲取山の取材中に迷い、吸血鬼が棲む館を訊ねる。吸血鬼といっても、人間の血を吸って吸われた人間が吸血鬼になるというわけではなく、梢は怖い思いをするわけではない。3人いるヨシコの中から吸血鬼の母「セイコ」になる1人を選ぼうというのだが…、という不思議な物語。オープニングが非常に美しく、エンディングが切ないあたりはよいのだが、余分なエピソードが多く、細かいギャグもすごく面白いわけでないあたりが残念。
You're a Good Man,Charlie Brown
Sweet arrow Theatricals
シアター風姿花伝(東京都)
2019/06/27 (木) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/06/30 (日) 19:00
とにかくとても楽しい舞台だった。観るべし!有名なコミックのピーナッツ・シリーズをミュージカルにしたものだが、劇場に入るなり、舞台美術も含めてマンガチックな世界に入り込むようになっている。元が4コママンガなので、短いシーンの連続で繋いで、さまざまな有名なエピソードを歌って踊って演技する。衣装も演技も、マンガの世界観を描くのに成功してて、見事な作品だった。
渡りきらぬ橋
温泉ドラゴン
座・高円寺1(東京都)
2019/06/21 (金) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/28 (金) 19:00
女性初の劇作家である長谷川時雨の評伝劇、というより、彼女が創刊した雑誌「女人藝術」を取り巻く人々の群像劇だと思う。面白い。明治末期という時代背景や「青鞜」の平塚らいてうや樋口一葉に関して知っていないと分からない部分もあるように思うが、そのあたりの作劇は巧い。女性の役も男性が演じるという手法は、演出のシライケイタが当パンで語っているように、「男らしさ」「女らしさ」でなく「人間らしさ」という形の表現を目差しているように思えた。
山兄妹の夢
桃尻犬
シアター711(東京都)
2019/06/26 (水) ~ 2019/06/30 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/27 (木) 19:30
不思議な芝居だったけど、それがいつもの桃尻犬だと思う(^_^;)。オープニング、別れ話をする兄とその元カノを、妹とその友人が回想する、というシーンで30分使うあたりがすごい。不条理のようでいて、筋が通っているようでもあるが、やはり不条理。回収されないエピソードも出てくるのだが、全体が不条理なので、それが気にならないで、最後まで飽きずに観ることができた。終わり方がスガスガしい。
トリコロールスター
X-QUEST
王子小劇場(東京都)
2019/06/15 (土) ~ 2019/06/26 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/25 (火) 19:30
『なにもない空間の男』を見た。そもそも3本立てなる企画そのものが無謀とも言えるのだけれど、それをやりきるのがスゴイ(*_*)!。本作のみ新作で、他の2作とは全く傾向が違う。劇作家の男を軸とした物語は、単純に見えてそうはいかないあたりがトクナガらしい作りで巧妙(^_^)v。衣装もシンプルで、ストーリーも分かりやすく、1日で一気に観たが、これが最後で良かったという気がする。
トリコロールスター
X-QUEST
王子小劇場(東京都)
2019/06/15 (土) ~ 2019/06/26 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/25 (火) 16:00
『ベニクラゲマンの憂鬱』を観た。面白かった。これも2014年の作品の再演で、初演も観ているが、たしか、このときには既に現在の四角いリング型式に移っていたと思う。ベニクラゲの細胞を埋め込まれた男(ベニクラゲマン)を軸とした物語だが、トクナガらしい台詞の美しさと、ダンス&アクションが光る。エンディングは、少し切ないあたりもなかなかいい。
トリコロールスター
X-QUEST
王子小劇場(東京都)
2019/06/15 (土) ~ 2019/06/26 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/25 (火) 13:00
『金と銀の鬼』を観た。良かった(^_^)v。初演は、2004年のザ・ポケットだったと思うが、観て、野田チェイサー的だったトクナガらしさがよく出た、言葉遊びと動きが印象的な作品だったと思った記憶がある。プロセニアム型式の劇場で数回上演し、現在の四角いリング型式に移ってからも何回か、少しずつ変えて上演されているが、やはりよくできた戯曲だと思うし、それがメンバーが変わってもキチンと作れる力量は流石だと感じた。
雪女
URARA
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/06/24 (月) ~ 2019/06/24 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/06/24 (月) 20:00
URARAこと、大沢由加子による一人芝居。1ステージのみの公演だが、興味深い舞台だった。ストーリーはよくある雪女の物語だが、岸田理生が歌語りの形で書いたが上演されなかったと言う作品なのだそうで、歌が入るのが特徴。URARAは路上一人芝居を中心に活動しているらしく、一人という点では慣れているように思う。開演前に、世田谷シルクの堀川炎に会ったのだが、堀川のソロユニットだった頃の世田谷シルクに似ている印象を持った。
Rock Opera『R&J』
ネルケプランニング
日本青年館ホール(東京都)
2019/06/14 (金) ~ 2019/06/23 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/19 (水) 13:00
『ロミオとジュリエット』をロック・オペラにするという試みを、鈴木勝秀の脚本と演出というので、観に行った。かなり面白かった。時代を近未来にして、2つの家の対立を、不良と警察(国家権力)という構造にしたことで、現代的な解釈も加わった。主人公の2人、ロミオとジュリエットの性格が、通常のものとは大分異なっているけど、そこが逆にロック・オペラというスタイルに合ってる。若手も頑張っているが、陣内孝則・コング桑田などのベテラン勢の存在感と活躍も嬉しい。
こっちみてるの、しょうこ
やみ・あがりシアター
小劇場 楽園(東京都)
2019/06/12 (水) ~ 2019/06/16 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/06/16 (日) 17:00
やみ・あがりシアターの作品は、会話劇ながら、会話のズレを巧く使うところが面白いと思って観ているのだが、その意味で本作は相当程度成功してる。ファッション・ショップの店長の「しょうこ」とガラス職人で工房の社長の男の、奇妙な一致感による共闘の顛末を描いているのだが、この2人と周囲との落差が大きく、演劇的な面白さがいっぱい含まれている。作・演出・主宰の笠浦の作品は、妙に懲り過ぎることがしばしばあるのだが、本作は程良くアレンジされていて、分かりやすい。