反応工程
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/07/12 (月) ~ 2021/07/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/12 (月) 19:00
戦争のもたらす理不尽と不自由を描く秀逸な作品。観るべし。
宮本研の1958年の作品で、九州の軍需工場を舞台にしたベテラン職工から動員学徒までさまざまな人々の群像劇。2幕5場が昭和20年8月7日から始まり、2幕1場で8月10日まで行ったところで、非常に美しい場面転換で昭和21年3月5日で終わる。時期の設定が見事で、広島に原爆が落ちた日の翌日から始まることで冒頭から原爆が話題になる。敗戦後7ヵ月を経た最終場では、みんなのその後、的な展開となり、呆然とするエンディングへと繋がる。
本来は昨年4月に上演する予定だったものを、同じスタッフ・キャストで1年3か月後に上演されるというのは凄い。単に、個々の人々の苦悩を描くだけでなく、戦争の末期でも企業は設けを考えている、という指摘など、強烈なメッセージを持った戯曲である。初日だったけど、役者陣も充実した演技で、見事な芝居になっていた。
1幕1場30分、2場20分、3場35分、休憩20分の後に、2幕1場40分、2場20分、で2時間45分の長丁場だが、全く飽きない。
脱出病棟
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2021/07/08 (木) ~ 2021/07/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/09 (金) 19:00
以前から知っていたが観るのは初めての劇団。シンプルに面白い。
劇小の舞台いっぱいに組まれたジャングルジム様の骨格パイプを、崩れた病院に見立て、事故で崩れた病院から脱出を試みる10人の患者たちによる105分の群像劇。と言ってもスペクタクル系では全然なく、笑わせ系。個々の役のキャラクターが立っているし、流れるようなセリフ回しに役者陣の力量が感じられる。それぞれの患者が病んでる「部位」も面白い。パイプ組みでの「演技」は予想以上に大変だと思うが、最後まで怪我せずに上演してほしい。
七祭〜ナナフェス〜この夏、胸アツ!演劇2本に映画だ、わっしょい!
On7
シアター711(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/08 (木) 19:00
On7の映像と演劇の短篇集。面白かった。
今回は「ナナフェス」と称して、短篇映画と2本の短篇芝居を上演。2本の芝居を繋ぐ芝居もある。映画『うまれる』は内容も映像もシリアスな作品だが、基本的に映画を観ない私が、なぜ観に行かないかという理由を再認識させられる作品で、クウォリティは高いけど、私のテイストではない。5分ほど換気のためと言いつつ映像機器を撤去する時間を取り、連作短篇『祭の前後』のパート1後に、早船聡の作・演出で『夜会』。俳優(渋谷はるか)・付け人(小暮智美)・その姉(尾身美詞)の音楽劇。巧妙な伏線から、ありえない展開に進み、タイトルに収束する流れは見事だった。『祭の前後』パート2をはさんで、土田英生の作・演出で『座れ!オオガミ』。3人の銀行員(安藤瞳・保亜美・吉田久美)が応援に来たスポーツは…、という、これまたアリエナイ展開だが、微笑ましく笑いが起こる楽しい舞台だった。『祭の前後』パート3を経て大団円的終幕。
誰か決めて
吉祥寺GORILLA
王子小劇場(東京都)
2021/07/07 (水) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/07 (水) 18:50
初見のユニットだが、なかなか面白い作品だった。
特殊清掃でバイトする高倉は、特殊清掃ならぬ遺品整理を依頼された現場で日記を発見するが、それに書かれていたのはある男の『人間失格』的な生活だった…、という物語。同じ役者が現在と日記の中の物語の人物の両方を演じる部分があり、その違いも分かりやすく、物語的にもそれなりの伏線の張り方で起伏はある展開だった。ただし、無駄と思うエピソードもあって、130分の長さに冗長感があるとは思う。力量ある役者が演じているし、美術や照明も含め、演劇的には充実していたと思う。
私も含め、チケットの配券ミスがいくつかあったこともあって、ダダ漏れ的に5分押しというのは、ややいただけない。
ウィルを待ちながら~インターナショナル・ヴァージョン
Kawai Project
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/07/06 (火) 18:30
面白いけど、思っていたものとは違った。
2018年に初演された作品を、国際演劇祭に招待されたことで「~インターナショナル・バージョン」として改変して上演したものだが、初演を観てないので改変の内容は分からない。シェイクスピア学者の河合祥一郎が企画し、脚本・演出を担当し「シェイクスピア全40作品から名ゼリフを集めて1本の芝居に仕立て上げた」と言っているが、シェイクスピアでない部分も多い。原型は『ゴドー…』のようだし、メタ演劇的な要素もある。田代隆秀・髙山春夫という演者はベテランだし見応えある舞台を作ってはいたが、2月に観た『テンダーシング』のようなものを予想していたので、ちょっと肩透かし感がある。
銀の骨
やみ・あがりシアター
王子スタジオ1(東京都)
2021/07/02 (金) ~ 2021/07/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/04 (日) 14:00
ある意味オシャレな芝居に仕上がっていた。
やみ・あがりシアターの番外公演シリーズの第2弾。多分初めて観る演者の久保磨介の原案を、笠浦が脚本にして演出する。シルバーアクセサリーの店員と技術者を久保が演じ、さまざまな客との対話で紡ぐ70分。対話の相手の性格が浮かび上がる脚本と演出と演者の技術で、物語がしっかりと立ち上がる。オチもなかなかのもので、とても「オシャレ」な芝居だと思った。
バクで、あらんことを
くによし組
王子小劇場(東京都)
2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/04 (日) 11:30
Bも観た。
先日Aを観て流れを知っていたので、冒頭から細かい台詞が工夫されていることに気づいた。知っている役者が多いBだが、感触は変わりなく、でも、菊池美里の存在感が強烈だなと思った。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/03 (土) 18:00
3度目の観劇。もう言うことなし、の作品だと改めて思った。
笑わせておきながら最後でドッキリなモノを持って来る巧さがスゴイ。結末のネタがネット上で漏れていないこともスゴイ。
バクで、あらんことを
くによし組
王子小劇場(東京都)
2021/06/30 (水) ~ 2021/07/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/07/02 (金) 16:00
Aチームを観た。
面白い、と言っていいのか分からないけど、面白い80分。観て損はない。
近年の國吉は、自身がそうだったような生きづらそうな人々を描いてて、結果として随分と社会性のある芝居を書くようになったと思う。本作もその一つ。シュールで、筋を追おうとすると難しいのだが、観終わると言いたいことは分かる。「面白い」という表現が適切とは思えないのだが、ほかに言いようがないのが國吉の作風とも言える。くによし組を観始めた時の「○○あるある」的な作品とはちょっと違うテイストが出てきているが、國吉の中では同じ物を書いているのだろうな、とも思う。
夜会行
鵺的(ぬえてき)
サンモールスタジオ(東京都)
2021/07/01 (木) ~ 2021/07/07 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/07/01 (木) 19:00
スゴイものを観た気がする。観るべし(前売券完売だが当日券で是非)!
レズビアンの新田(笠島智)が恋人の笑里(福永マリカ)と住む部屋が舞台。笑里の誕生日を祝うためレズビアン仲間が集まる。遼子(奥野亮子)と廣川(ハマカワフミエ)が来るが、話題の中心は廣川の新しい恋人の理子(青山祥子)。集まった5人は取り留めのない話を続けるが、30分ほど経って新参者の理子の問題が話題になると…、という展開。スケールの大きな作劇が続いた鵺的だが、今回は小劇場ならではの会話劇を展開し、70分強の舞台は基本的にリアルタイムで進む。5人のキャラクターが際立っているし、力量ある魅力的な女優陣が演じることでそれはよりハッキリする。誰が言うことももっともで、誰が正しいと言うわけでもなく、それぞれの生き方は認められるべきだと思える。レズビアンの話と思っていると、もっと普遍的な人間の生き方の話になっているあたりが見事である。珠玉の台詞が並ぶ。
こういう芝居が観たい。☆15くらい付けたい気になる。
別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2021/06/25 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/06/27 (日) 13:00
4本の通しを観劇。
燐光群が昨年の『天神さまのほそみち』に続いて別役実作品を扱う。昨年観てフィットすることは分かっていたが、今回もフィットして面白い。ただし、スズナリのイスに4時間座るというのは、予想はしていたがツライ(;/_;)。
A『いかけしごむ』(60分)/『眠っちゃいけない子守歌』(50分)
休憩15分
B『舞え舞えかたつむり』(55分)『この道はいつか来た道』(50分)
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/06/26 (土) 18:00
2度目の観劇。やはりいい。
2度目なので、いろいろと調べて観に行ったが、やはり生の言葉の強さに圧倒される。
高橋一生はもちろん凄いのだけれど、今回も橋爪功・白石加代子の傘寿コンビが強烈な印象を与える。一人だけ若い前田敦子がいい仕事をしているし、いいポジションを貰っているとも言える。
猫を探す
このしたやみ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/06/25 (金) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/06/25 (金) 19:00
初見の劇団。京都を中心に活動する演出家・役者2人のユニットらしいが、力量があることは分かる。
こふく劇場の永山が書き下ろした不条理な幻想譚で、独特の趣きはあり楽しめる舞台だけれども、残念ながら私のテイストではないです。
「TABOO」
TEAM空想笑年
王子小劇場(東京都)
2021/06/23 (水) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/06/25 (金) 14:00
初見の劇団だが面白かった。
劇団名にある通り、笑いをねらった劇作。2組のヤクザが演劇コンクールに参加し、最優秀賞を取った方が縄張りを治める、という設定はムチャクチャだが、それなりに説得力ある物語を展開させてくれる。TABOOは何か、は、すぐ分かるけれども、それも予定調和的な感じで受け入れ可能。工夫もあり役者の力量もあり、充分楽しめる120分だった。暗転が多い演出だけは気になってしまった。
黄色い叫び
TRASHMASTERS
サンモールスタジオ(東京都)
2021/06/23 (水) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/06/24 (木) 18:00
初演から何回も観ている戯曲だが、迫力があり重厚で優れた舞台だった。観るべし!
2011年の4月、中津留lovers名義で上演され、震災から1ヵ月で「災害」を扱った作品というので話題になったが、中津留loversでの再演やトム・プロジェクトのプロデュースで何回か上演されたものの、中津留の本拠地であるTRASHMASTERSでは初めての上演。他のユニットに書いた戯曲をトラッシュがやるのは恐らく初めてではないか。部分的に改作はされているが、大筋は変わっていない。133分。
田舎で災害に慣れてしまった人達と、東京に出ていて正論を言う匠、そして匠を応援する何人かの対立を描く前半の青年団の会議。そして後半は災害が起こり…、という展開だが、説教臭い展開ではない。匠が感情的になっている様子も描き、よく練られた戯曲だが、本作では個々の人物のキャラクターがより際立ち、見事な作品になっている。どの役者も熱演だが、嫌な役回りを演じた長谷川景と、看護師を演じた福永理未が特に光った。
キネマの天地
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/06/05 (土) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/06/12 (土) 18:00
スゴイ芝居を観た!観るべし!
1986年の映画「キネマの天地」の続編として井上ひさしにより書かれた戯曲だが、趣きは全く違った推理ドラマになっている。4人の女優の鞘当てから始まり、推理劇として展開して、どんでん返しの連続で、本当に面白く最後まで観ていられる。前半の女優陣の「争い」が面白く、「下手な新人女優」役を演じる趣里が特に面白い。とにかく観るべし!
Silent Scenes
ゼロコ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/06/11 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/06/11 (金) 19:00
初見のユニット。男性2人によるパフォーマンス。面白い。
パントマイム等の動きを元にした、角谷将視、濱口啓介によるフィジカルシアターデュオ、だそうで、ノンヴァーバルでのパフォーマンスの90分。オープニングアクトの後、「図書館」「ある男の1日」等、タイトルに応じたテーマ性・ストーリー性のある演技で見せ、笑わせてくれる。技術的に高度なことをするワケではないが、構成の妙で笑える演技になっているものの、こうするんだろうな、と伏線が読めてしまうものの結構あった。
https://www.zeroko.net/wp-content/uploads/2021/01/P_ME3628-1-scaled.jpg
常連のお客さんと覚しき観客が結構いて、いつものアゴラとは若干雰囲気が違っていた。それほど面白いと思わない場面でも大声で笑うなど、「いいお客さん」に恵まれているのだろうか。
THE Negotiation:Returns
T-works
サンモールスタジオ(東京都)
2021/06/01 (火) ~ 2021/06/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/06/02 (水) 19:00
関西を中心に活躍する丹下真寿美のユニットだが初見で、再演だが初演は観てない。おシャレで、でもおバカなところもある、面白い会話劇だった。
合併交渉のためにホテルに来た、フォスター社の社長アレック(三上市朗)と秘書ドナ(丹下)、および、シュミット社のCEOアリソン(山崎和佳奈)とCOOウォーレン(森下亮)だが、互いに相手を先んじようと色々な手を使う内、交渉はおかしなことに…、の物語。おバカの方向が関西テイストだなぁと思いつつ、面白く展開される物語に引き込まれ108分がアッと言う間に過ぎていった。全体にオシャレなテイストで展開され、場面転換も、ホテルの従業員に扮した2人がオシャレに行なうなど、観ていて気持ちの良い楽しい舞台だった。空席があるのが勿体ない。
かつて石原正一ショーで観て気になっていた丹下が確実に成長していたことが嬉しい。
本来なら星4つはあげたいところだが、シリアスな場面で「いさぎがいい」というトンデモナイ台詞を聞いたために、星1つ減じた。
フェイクスピア
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2021/05/24 (月) ~ 2021/07/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/29 (土) 18:00
NODA・MAP1年半ぶりの新作は、昔の遊眠社に似たテイストの作品で面白かった。
ふんだんに盛り込まれた言葉遊びが生き生きと展開され、ただただ笑っていると、最終盤にシリアスな流れになるという流れは、古いファンにとっては堪らない展開である。高橋一生が主演ということになっているが(実際に力演なのであるが)、今年80歳を迎える白石加代子・橋爪功コンビが実質的な主役だと思った。白石は出番が多いわけではないが、重要なセリフを発する。アンサンブルや舞台美術も見ごたえがある。ここ数年の作品で最も私にフィットしたNODA・MAPである。
蝶のやうな私の郷愁
ひなた旅行舎
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/05/26 (水) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/05/28 (金) 19:30
本ユニットの東京初登場。面白かった。
抽象性と具体性のバランスの取り方が巧い。松田正隆89年の作品(99年に改編?)で、いろいろな所で上演されている作品だが、私は初見。KAKUTAの多田香織とFUKAIPRODUCE羽衣の日高啓介が演出の劇団こふく劇場の永山則夫と作るユニットが、昨年の4月に宮崎で上演した後、コロナ禍で流れた東京と三重での上演をするという1年がかりでの作品だが、その分しっかりと熟成されていたように思う。台風の中、アパートに帰宅した夫と妻のとりとめもない会話の中に、時折紛れ込む思い出の部分、という作りと言えようか。思い出の部分には抽象性があり、具体的な夫婦の会話の部分との落差を、発話でしっかり切り分ける、役者2人の力量が光った。
冒頭、夫が妻を背負って、一方が「Yesterday Once More」を歌いながら他方が抽象的な言葉を投げるシーンで「タンスが2点」という表現を聞き、言葉の選択がテイストに合わず(「2棹」だろう)興覚めしてしまい…。