
1
穴熊の戯言は金色の鉄錆
MCR
ハマってしまって3度観劇。毒のある台詞と本質的には優しい芝居の真骨頂。
脳腫瘍で入院中の小野(小野ゆたか)は既に認知に問題が出ていて、主治医の見た目を間違えるほど。そこから高校時代に戻って、妻のゆかり(帯金ゆかり)との馴れ初めからのあれこれでのドタバタ。大笑いさせておいて、最終盤での種明かしでドン底に突き落とす展開で驚く。巧妙なセリフで、矛盾なく展開される見事な脚本と、役者陣の巧みな演技で、切なさを感じさせてくれるエンディングへと向かう。いいものを見せてもらった。

2
幻魔怪奇劇「DGURA MAGRA―ドグラ・マグラ-RE/再演」
PSYCHOSIS
見損ねた旗揚げ公演の再演だが、爆音の音楽と激しい照明も含めてとても面白く観た。
スタイリッシュなアングラ、と呼んでいるユニットが夢野久作の奇書に挑んだ旗揚げ公演を見損ねたことが一生の不覚と思っていたが、再演で観ることができた。原作に2度ほどチャレンジしたが読破できないほどの奇妙な作品。精神病院で目が醒めた男は記憶を失っていたが、医師と看護師が現われ、さまざまな回想や幻想的なシーンが続く。そもそもの戯曲は月蝕歌劇団の高取英が書いたわけだが、一定程度分かりやすく展開されており、これを旗揚げに選ぶ構成・演出の森永理科の判断がまず凄い。スタイリッシュな舞台上のムーヴィングが爆音の音楽や激しい照明と相まって、ある意味とてもお洒落な作品になっている。
この劇団は、開演前の並びや場内の誘導を役者陣がやるのだが、そこからして芝居の感触を感じさせてくれるところも良い。推しの大島朋恵が誘導を巧くやってるのを観るのも楽しい。

3
白貝
やみ・あがりシアター
いやー、また笠浦の「アタマオカシイ」(誉めています)が炸裂してる。
何が何だか分からない展開の中に隠された2重の謎。一つ目の謎が、なんでなかなか解けないんだ、という謎に上書きされ、最初は何が何だか分からなくなるけど、後半で一気に回収される。笠浦はやっぱり頭オカシイ(誉めてる)。

4
『意味なしサチコ、三度目の朝』再演
かるがも団地
2021年に初演された作品を再演で、初演も観ている。笑って切なく希望もある。とても良い。
元地下アイドルで現派遣社員の幸恵(波多野伶奈)は、田舎の能代市の団地が取り壊されるので荷物の片付けに帰るが…、の物語。幼馴染みの何人かと久々に会い、親友のサチコ(村上弦)の事を思い出し、子どもの頃のことや、アイドルに憧れて東京に出てからのことなど、回想と現在を取り交ぜて、失ったものや成長したもののアレコレを思いつつ、最後は前を向く。初演から特に変えているところはないのだろうが、時が経って感触は変わった。初演の感想で「物足りない」と書いたエンディングがとても良く感じる。タイトルもとても良いのに気づいたりもした。初演と全く同じ役者陣で上演するという偉業をなしとげているが、劇場のサイズが変わって舞台美術や照明等も進化してて、とても良い舞台だった。都合で千秋楽しか観られなかったのだが、できれば3回くらい観たい作品だった。
初演を観て、劇団「かるがも団地」を知り、その後の全作品を観ているのだが、10本に1本くらいしか星5を出さない私が7作品連続で星5という驚異的な気に入り方の劇団になった。また、波多野伶奈という希有な女優を知ったことや、抜群のコメディエンヌにして優秀な制作である宮野風紗音を知る等、思い出深い作品が蘇り、なんだかいい気持ちで帰路に就いた。

5
帰還の虹
タカハ劇団
戦争画を扱った秀作。重い題材で迫力ある舞台になっていた。
2014年に下北沢駅前劇場で初演された作品の再演で、初演も観てるがよく覚えていなかった。1944年を舞台に藤田嗣治(劇中では藤澤元善・古河耕史)を取り巻く、戦争画に関わる人々のあれこれ。笑いを誘う熊本(津村知与支)という存在はあるものの、題材は重く特に終盤はシリアス。絵画(さらに芸術)と戦争の関わりについては、登場人物それぞれの正しさがあり、どれも頷けるものだし、どれが正しいと言えない面がある。役者陣も素晴らしかったという前提で、高羽の脚本がいい。

6
星降る教室
青☆組
ラジオドラマの舞台化だが、景色が立ち上がってより深い作品になっていた。
主宰で作・演出の吉田小夏が、2016年にNHKラジオドラマとして書き下ろした作品を自劇団で2024年にリーディング公演(観ている)、同じメンバーで今回舞台化した。演技と言うよりムーヴィングとでもいう感じの作劇だが、リーディングでは観客に想像させる部分が大きいように思ったが、今回はより場面が立ち上がって、説得力のある作品になっていたように思う。心優しく帰れる芝居だった。

7
パンセク♡
spacenoid
LGBTQ+を題材に、コメディタッチながら真剣に扱った快作の再演。とても良くできている。
作・演出のニシオカ・ト・ニールが、自身の劇団で2018年に上演した作品を改訂しての再演で、初演も観ている。とても良く出来た戯曲だし、題材も作りも攻めているが嫌味はない。良い人ばかり出て来るけど、みんなが幸せになるのは難しい、という展開で、6人とは思えない深みのある作品だった。アイドル系の若手2人を巧く使うベテラン勢というキャスティングもまた見事。ママ役の柿丸をもっともっと観たかったなぁとは思う。

8
絶滅のトリ
だいだら
ONEOR8の2010年の作品を、小劇場系の達者な役者を集めて上演したが、ちょっと笑えて切ない物語。
観ていないと思ってたONEOR8の初演を観ていることが、始まって分かった。絶滅危惧種の鳥であるオウカンチョウが住む島で、オウカンチョウを観察し保護する仕事をする施設で働く若い男女の群像劇で、諸事情で「おばさん」のノグチ(吉水恭子)が島に来たことから物語は動き…、の展開。初演の感想に「微温湯的生活の問題は、中途半端なことではなく、抜け出せないことである、ということを、改めて思い出させてくれる」と(MIXIで)書いたのだが、今回もその感触がよく出ていた。吉水を除いては観たことがない役者陣だったが、小劇場で経験を積んでいるらしいことが良く分かる素敵な舞台だった。終盤、「木綿のハンカチーフ」が流れる3分強の間に台詞なしで物語が展開されるところが特にイイ。エンディングの希望ある感じも良い。

9
蜥蜴の夜は虹色
MCR
お気に入り劇団の新作は、笑えて切ない。
高校生の奥田(奥田洋平)は同級生のヤリマン徳橋(徳橋みのり)に告白するが、その理由は…、から始まる物語。他人を嫌な気持ちにさせないために自分を押さえる…、みたいなことって誰でも有るのだと思うが、それを極端にするとどうなるか、の思考実験のようにも思える芝居だった。途中で櫻井が笑い出したときには驚いたが、続いて堀も、で思わぬ展開もあり、面白く観た。それにしても澤は犯罪者の役を降られることが多いが、本当にそう見えるところがなかなか。
上手のライトがチカチカしていたが、何かの不調だったのだろうか。

10
糸洲の壕 (ウッカーガマ)
風雷紡
重い題材が重く演じられるのだが、息を呑んで観ていられる。
戦争末期の沖縄・糸州の壕の野戦病院の物語。学徒動員で看護に派遣された「ふじ学徒隊」の女生徒たちが体験した物語を濃密に描くが、肯定的な展開だけでなく、葛藤も反発もしっかり描くあたりがいい。しかもそれを現代の祖母(下平久美子)と孫(吉水雪乃)の回想風にしたことで、ちょっとだけホッとできる作りになっている。25人の登場人物は多いが、そのそれぞれの物語を描く脚本も見事だが、広い舞台で演じる役者陣も見事。開演の5分前から登場人物達が舞台に現われ、ちょっとずつ演じていくあたりで、自然に物語に入るのも巧い。