スーパースター
劇団鹿殺し
青山円形劇場(東京都)
2010/01/21 (木) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★
全力疾走の舞台
鹿殺し2回目です。
前見た時は正直安っぽい美術と一発芸的な個人技のノリで勢いだけで進んでいく舞台に全く興味を持てなかったです。
今回は青山円形劇場というステージを高さ、広さ、360度の視界全てを効果的に使っていて演出力がアップしてました。
話も単純ながらも味わいがあって良いですね。
ネタバレBOX
ただ、やはり個人的にこの劇団は苦手なのだなあ、と感じます。
一昔前の小劇場的なエンターテイメント演劇という感じでしょうか。
演劇を見ているというよりショーを見ている印象が強いのです。
アンサンブルを効果的に使ってバリエーションのある動きを見せていて良いのだけど、何か喰い足りないものを感じてしまいます。
李さんのイベントは最悪。イベントとして成立してない。
ゆらぎり【脚本:成島秀和(こゆび侍)×演出:古川貴義(箱庭円舞曲)】
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★
気軽に楽しめる演劇
役者さんが本当に目の前に居て演じてる。
この空間は舞台と客席を分けるという意識を低くしてくれるので、演劇に普段全く見ない人だったら親しみを持ってもらえるかも。
内容はふたまたの男が優柔不断にしているけどある決断をしてから何かが狂いだす話。
特に新鮮味があると言うわけでもないけど、ドラマとかでありそうな感じで気軽に見れます。
劇場でかしこまって見るのではなく、ドリンクを飲みながら気軽に見れる、そんなお芝居っていいですね。
ただ、どうせならもっと楽しく見れるように、笑いを入れてほしかったです。
75分。
ネタバレBOX
主人公が嘘をつくとき「耳たぶを触る」という癖があるのだけど、ちょっとわざとらしいというか、あざといというか。
あまりに判りやすく耳たぶを触ったり、ラストシーンでは耳たぶを両手で今にもちぎりそうな勢いで触るのだけど、それ以外が自然な演技で進んでいるので、ちょっと違和感がありました。
和知龍範さんの「・・・・・・・・マティーニ」が面白かったです。
バベルノトウ
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/25 (月)公演終了
満足度★★★★
構成に唸った
国道五十八号戦線はずっと見たいと思っていて、今回ようやく見れました。
見終わって、期待以上のつくりの上手さに興奮しました!
緻密な構成の戯曲をうまく作り上げてます。
でも戯曲先行かというとそうでもなくて、登場人物も印象的です。
これからは見れる限り見たいです。
ネタバレBOX
「バベルノトウ」と呼ばれる無害の幻覚作用を起こさせる葉っぱをめぐって、ある製薬会社の研究所と学校とが交互に描かれていきます。
2つのシーンが交互に現れるけど共通して出てるキャストもいるし、でも「先生」だけは何も変わらずそのままで、色々な伏線がうまくちりばめられて、それが伏線のための伏線だけで終わってなくていいですね。
構成も内容も非常に緻密で、作演の力量を感じます。
キャストも魅力的で、福原冠さんの自由な勢いのある演技が印象的でした。
癖の強い演技をされていた中村祐樹さんも思わず目が行く不思議な存在感でした。
今まで見ていなかったことを後悔しました。
演劇を見たことのない、映画好きの人とかに見せてもハマりそうな舞台でしたね。
キミ☆コレ~ワン・サイド・ラバーズ・トリビュート~
シベリア少女鉄道
タイニイアリス(東京都)
2010/01/06 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
片思い、片思い・・・
話だけはずっと聞いていて、ようやく見ることができたシベシア少女鉄道。
トリッキーな舞台を見せるということで、何をやるのかわからないワクワク感がいいですね。
人気劇団だから前売りは売り止めだったので、当日券で入りました。
でも前から2列目で見れたし、当日券でも全然大丈夫ですね。
もう1回は見たいな、と思いました。
それくらい他では見ることができない特殊なスタイルで、しかも楽しい!
ネタバレBOX
様々な片思いが交錯する漫画家の仕事場。
「アノ人が気になってしかたがない」という思いは恋心だけではない。
「あの人北斗の拳のケンシロウ?」とか変な一方的な思い込みが交差して、それが同じシーン3回ループの中で2回目から裏の声、心の中の声として出てくるところからこの舞台は動き出します。
それまでは退屈かもしれないけど、そこはグッと我慢。
2回目は1回目に見た同じシーンが全く別の世界に見えてくる片思いの声の交差に爆笑!
3回目は更に同じシーンに裏の片思いの声を被せる2回目の上に、更にモニターに「ラピュタ」の映像が映されて、今見ているシーンのセリフを抜き出して構成してゆくとラピュタになってしまうという職人芸!!
これはアッパレ!
芸術性とか物語とか感動を求める人には合わないかもしれないけど、演劇の多様性をアイデアを盛り込んで最大限引き出しています。
人気なのは納得なのでした。
1時間15分とコンパクトにまとめられているのも良いですね。
LOVE
ロロ
王子小劇場(東京都)
2010/01/01 (金) ~ 2010/01/04 (月)公演終了
満足度★★★
じんわりくる
昨年第1回公演を見て以来のロロでした。
客入りの悪さにちょっと驚いたのですが、正月で帰省したり色々と予定があって忙しいってのもあるんでしょうけどそれにしても・・・。
半年の間毎月演劇をやってきての第2回公演ということでしたけど、回数を重ねただけあって前回見たときより全体的な一体感があって見やすかったです。
ネタバレBOX
今回は演出が奇抜なだけに走らないで、ある程度流れに乗っていたので見ていて楽しかったです。
光をうまく使った演出で、横に広く取った舞台には一枚の屏風のように立てられた大きなむき出しの板に沢山の電球がついていて、それが様々なシーンを照らし出していました。
ただ、物語に興味がない作家さんなのか、全体のイメージから浮き上がるものはあるけど、見ていてのめり込んでしまうものがないのが勿体ないです。
若い役者さんは、魅力的なひとがたくさんいます。
特に女優陣が綺麗で演技力があって魅力的です。
男性人が弱いかなと思ってしまうのだけど、ハルオを演じていた役者さんはちょっと抜けて良かったと感じました。
スポーツ演劇「すこやか息子」
柿喰う客
王子小劇場(東京都)
2009/12/25 (金) ~ 2009/12/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
楽しかったー!
柿を追いかけて2年ほど経ったけど、全く新鮮味が失われないです。
毎回新しい事にチャレンジして、それを自分たちのものとして確立する中屋敷氏の手腕は凄い。
そして今回も中心になっていた深谷さん玉置さん。
演劇への愛が溢れる素晴らしい舞台でした。
ネタバレBOX
エアロビみたいな振りを延々続けて、リズムに乗って笑顔で言葉を発する。
役に固有の名前はなくて、むすこだったり母親だったりという関係性だけを表してます。
セリフも感情を廃して言葉を並べているだけなのだけど、その言葉の選び方、並べ方が秀逸で、一定のリズムに乗って繰り返される動きと言葉だけでしっかり「演劇」してました。
アフタートークで「これは演技力要らないので、沢山の人に広めていきたいです。」と語り、「スポーツ演劇の普及をライフワークにしたい」という中屋敷氏の独創性には頭が下がります。
ぜひ「サラリーマンや公務員の方に、こっちの方が楽しいから仕事なんてやめて演劇やりなよ」と言えるようになるように頑張ってください。
これから半年、東京で柿喰う客を見れないのが残念です・・・。
不躾なQ友
クロムモリブデン
赤坂RED/THEATER(東京都)
2009/12/26 (土) ~ 2010/01/03 (日)公演終了
満足度★★★
クロムらしい!
「空耳タワー」を見逃したので、今回はとっても楽しみにしてました。
赤坂REDシアターというのもクロムモリブデンのポップな印象に合っていて良いですね。
ただ、暗幕で覆っただけの背景が格好悪いなあ。
衣装も凝ってたけど、今回舞台セットがイマイチだった気がしました。
今回板倉チヒロさんが出ていなかったのが残念でした。
でも、劇団員の方はどの方も魅力的で、素晴らしい!
客演さんはかなり人によって差が大きいけど、北川大輔さんの帰国子女キャラが異様に面白かったです。
中川智明さんは何だかやりづらそうに見えました。
ネタバレBOX
とてもクロムモリブデンらしい舞台で、現実と虚構が入り混じって、それが現実世界に影響を与えてゆく話。
こういった虚実入混じりの話だとクロムの奇怪なキャラがすんなり受け入れられるので、お得意のパターンといったところでしょうか。
森下亮さんの売れない漫才師が一番強烈だったけど、幸田尚子さんが良かったです。なぜだか目が離せない狂気が素敵でした。
キレイじゃなきゃいけないワケ
TPT
ザムザ阿佐谷(東京都)
2009/12/29 (火) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★
高畑こと美さんが良かったです。
サスペンデッズで爽やかで純真な妹役を好演されていた高畑こと美さんが出るということで、初TPTでした。
海外の高品質な戯曲を日本で上演してくれる団体としてずっと気になっていたし、見たかったのだけどようやく見ることができました。
ただ、自分が期待していたTPTとはちょっと違っていたみたいです。
今回はコメディーだからでしょうか。アメリカのコメディーは日本人と感性がズレるので、そのまま受入れられないんです。
ネタバレBOX
扱っている題材は面白いと思います。
付き合っているカレに自分の容貌を「普通」と言われてしまった女性。
「見た目は普通」とは言っても、やはり彼女の事を愛している男。
男の同僚で、付き合っている彼女がいながらも他の若い女にちょっかいをだしてゆくプレイボーイ。
そして美しい容貌を持っていて、子供の頃から周囲から特別に扱われてきた女性。
その4人が織り成す男と女の微妙な関係の物語。
ザムザという決して広いとは言えない劇場ですが、会場に入るとステージ側は別世界というような、アメリカの夜のブルーカラーの職場と工場を思わせる冷たい感触漂うセットが組まれていて期待が高まりました。
ザムザ特有の「靴を脱いで上がる」というのがないのも見やすくてよかったです。
TPTはもっと思い重厚感のある戯曲をやるのかと思っていたので、軽さに驚いた。
翻訳ものらしい言葉の堅さとかはあるけど、役者は本当にそういう人いるな、と思わせるような、個性的で活き活きとした人物になっていました。
ただ、ありふれたストーリーが不満。
顔の美醜で喧嘩をして分かれた彼女。
分かれて他の男をみつけて、再会するたびにどんどんきれいになってゆく。
それに引き換え男はいつまでもウジウジした感じで。
1時間範囲内に収めてくれたら見やすかったと思うけど、これで2時間きっかりは正直キツイです。
セットが良くても、役者が良くても、肝心のストーリーがこれだと、ザムザの背もたれのない席での腰の痛みばかりが気になってしまった・・・。
役者さんは好演です。
高畑こと美さんは、最初出てきた時はギャルっぽい格好で唖然としてしまったのだけど、出てくるたびに綺麗になっていって、それにつれて精神的にも女性として成長していく役を好演されてました。
あと山田ジルソンさんが魅力的で面白いです。
『カガクするココロ』『北限の猿』
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/12/26 (土) ~ 2010/01/26 (火)公演終了
満足度★★★
「北限の猿」
ある生物学の研究所を舞台にした一幕もの。
でも、研究室そのものではなくてロビーのような部屋が舞台で、様々な人が出入りするこの空間は暇人の集まりの様相。
実際の研究者の姿というのを良く知らないので、これだけ見ると学問を志す人たちって暇人なのだなあ、と思えてしまう。
いや、実際は寝る間も惜しんで研究や学問に取り組んでるんでしょうけど。
そう考えると何だかリアルな会話劇の上でリアルじゃない世界が展開されてるような気がしました。
ネタバレBOX
青年団は客入れのときから舞台上に役者さんがいて、既に舞台の時間は始まっているのだけど、開演するまでの間はただ役者がいるだけだったり、どうでもよい事を発したりしてるだけで、時間もスローに過ぎていきます。
それはそれでリアルなんだと思います。
でも、開演したとたんにそれまでの時間の進み方とガラリと変わって、次々と人が出てきてはテンポ良く会話が進み、お話が進んでいく。
その差の不自然さが前から違和感があったのだけど、今回は特にそれを強く感じてしまいました。
何だか舞台上の世界が作られた世界にしか見えませんでした。
しかも研究所が舞台なのにどの人も研究者に見えない。
セリフを喋っているだけとは見えないけど、専門家のようにも見えませんでした。
最後の、間引きする習慣があるという猿のマネをしてイスの間を飛ぼうとするのまでいくと不自然すぎて、演出なのか戯曲なのかわからないけど違和感を抱えたままの鑑賞となったのでした。
「カガクするココロ」はこれの姉妹編らしいので、それも見てどう感じるかかな?
乾かせないもの【御来場有難うございました】
机上風景
タイニイアリス(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
共感を越えて
「見る」という言葉では失礼なくらいにこの舞台は観客を引き込んでいました。
もちろん自分もそんな中のひとり。
戦争に送り出した夫の帰りを待つ女性たちの話。
最初に明るい希望が見えたからこそ、あまりにつらい話に、登場人物たちを何とかしてやりたくて仕方がない。
けど何もできない自分。
短くまとめられた作品には全く無駄が無く、小劇場でこれだけの作品を見ることが出来て嬉しくて仕方がない。
大きな劇場で有名な役者たちが出て有名な作家、演出家が作ればまた全く異なる作品になるのだろうけど、商業演劇だとゴテゴテと無駄が付いて本筋がぼやけてしまうところを、一直線に、真摯に描いた作家、演出、役者陣に感謝です。
ネタバレBOX
話の転換のため仕方がないとは思うけど、その場面のピークの時に暗転して切り替わってしまうと心の切替ができなくて困りました。
暗転はもう少し少ない方が、自分的には違和感なかったです。
でもそれも小さな事。
とにかく作品が素晴らしかった!
こういった舞台こそ、劇場で演劇を見たことの無い人たちに見てもらいたいです。
欲望貴族
角角ストロガのフ
王子小劇場(東京都)
2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了
満足度★★★★
やっぱり角角ワールド
第1回公演からみさせていただいてると、その移り変わりとかスタイルの変化とかまで含めて楽しめて、こういった楽しみ方も演劇ならではかな。
今回の角角はエログロを廃して「少年犯罪」をテーマに持ってきた作品ということで作風の変化に注目してみてました。
演出手法や戯曲の構成とかは基本変わってないし、やはりスピーディーに同時多発かつ同時進行で進むフォーマットはそのままだし、劇場に大掛かりな具象美術を作るあたりもそのままに。
でも、音楽の選び方とか使い方、映像の使い方、細かい照明の使い方等、確実に進歩を感じる作品でした。
達者な役者さんたちの魅力を最大限に引き出してるところも素敵です!
ネタバレBOX
「NB法」という、未成年者の犯罪は親が代わりに刑に処されるという世界での話。
そうなると子供たちが悪い事をして親がその代わりに罰を受けて、というのがパターンかと思っていたら、むしろ子供たちの方が犯した罪の意識に苛まれて葛藤と共に生きていて、親の方が罪の意識が薄くて実はとんでもない親たちだった事がわかってゆく。
その展開が複雑な同時多発で進んで行くので理解がなかなか難しいのですが、分かってくるとこの作品で描きたい事がすっきりと見えてきて、意外とスッと中に入ってくる感じ。
父親の存在が舞台中も存在としても大きくて、役者さんがとても魅力的に演じられていたのが印象的でした。
というか、どの役者さんも魅力的なんですよねー。
小劇場であんな水槽を舞台に持ってくるだけでも大変だと思うけど、最後水槽に入った聖奈さんの存在と、それを一心不乱にデッサンする次男の姿の異様さが引き立って、面白い演出だなあと感じました。
今回はエログロを廃したということで、見やすかったです。
次回以降もこういった方向で行ってくれた方が、奇抜さよりも物語に集中できて良いと思います。
ただ、演出的にわかりづらい部分も多々あって、宗教関係の描写と三男の話が良く理解できない部分が多かったのも事実で、三男が目をくりぬかれたというのはアフタートークを聞いて初めて理解できました。。。
ルデコでやった短編は、時間的な制限と舞台装置的な制限から、無駄を排して、それでも角角の世界がしっかり作られていたので、あの方向性での本公演も見てみたいです。
キスイイキ
風花水月
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/11/19 (木) ~ 2009/11/24 (火)公演終了
満足度★★★★
思いがけず良質な静かな演劇
田舎で危篤の父と、久しぶりに集まった家族。
地元に残って父の面倒を見てきた兄には、東京へ出て行ってめったに帰ってこなかった弟夫婦の姿が無責任でうらめしくて。
地方の抱える問題や親の死、そして介護というこれからの社会が重く受け止めなければならない問題が込められている作品。
こういった静かな演劇は好きですが、こういった良作をルデコで見れるとは思わなかったです。
時間泥棒
たすいち
王子小劇場(東京都)
2009/11/19 (木) ~ 2009/11/22 (日)公演終了
満足度★
若いなあ
+1は2回目の観劇。
最初は早稲田で見て、今回はもう王子小劇場。
ある意味+1という早稲田系の劇団としては勝負の本公演!
のはずなんだけど。。。
ネタバレBOX
舞台セットは相変わらず凝っていて、開演前はワクワクしていたのだけど。
始まってみると、その舞台のつくりのせいか、ほぼ舞台中央でのみ芝居が進行していて、途中踊りやフォーメーションを組むところがあっても演出が単調かな。
「探偵」といって記号的にホームズを思わせる格好をさせるのも安っぽい気がする。
カメラで時間を盗むというけど、それならもっと観客があっと驚くような活用法を見せて欲しかったです。
予定調和なストーリーも「ファンタジー」と括れば良いものでもなく、やや安っぽく感じられた。
役者も作・演出も学生演劇の域を出ていないんじゃないかなと感じました。
カメラの持ち主が見える、死んでしまった女性役の方だけは演技に安定感があって良かったですけど。
最後まで話に入っていく事ができませんでした。
さっそく1月にも王子でやるみたいですが、正念場な気がします。
東京裁判
パラドックス定数
pit北/区域(東京都)
2009/11/13 (金) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
緊張感タップリ
東京裁判での一幕を、想像力を駆使して立体化した傑作。
パラドックス定数は作品の波が結構激しいと思います。
でも、こういった密室でのワンシチュエーションの実録ものは外れがありません!
前々から評判の高かった「東京裁判」。
再演してくれて本当にありがとうと言いたいです。
ネタバレBOX
たった5人の役者と机とイスだけなのだけど、まさに広い裁判場が目に浮かびます。
舞台にはいない判事や裁判官相手に、時には喧嘩を売り、時には異議を申し立て、あの手この手で28名の無罪を勝ち取ろうと戦う5人の男たち。
心理戦や論述がパラドックス定数の魅力だと思います。
だから、裁判ものがこの劇団の代表作になるのはある意味順当なのでしょう。
しかし、そんな中にもしっかり笑いを盛り込んでいるあたりも素晴らしい!
次もこれだけの作品を見せてくれる保障はどこにもないけど、期待してしまいます。
ブロークン・セッション【公演終了・ありがとうございました】
elePHANTMoon
サンモールスタジオ(東京都)
2009/11/18 (水) ~ 2009/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★
生理的に迫ってくる
ようやく見れました、初エレファントムーン。
15分やルデコでやった短編は見てるけど、本公演は初です。
で、今まで短編で描いたイメージとは大きくかけ離れない、ゾワゾワと生理的に迫ってくる舞台でした。
ネタバレBOX
前半結構普通に淡々と過ぎていくのだけど、中盤あたりのハマカワフミエさんが出てくるくらいからグッと集中度が高まります。
贖罪と猟奇、どちらにテーマの重きがあったのかわからないけど、自分としては贖罪に重きがあったと信じたい。
セリフの途中に「ダリオ・アルジェント」を持ち出してホラーのストーリーのなさを肯定する部分があったけど、この話はもっと深みがあって、単なるショッキングな舞台を提供しているわけじゃないと思う。
次回はもっとストーリーのある舞台が見たいなと思いました。
動員挿話【公演終了!ありがとうございました】
サラダボール
アトリエ春風舎(東京都)
2009/11/21 (土) ~ 2009/11/25 (水)公演終了
満足度★★★★★
楽しい演劇
あなざ好きなので当然見に行ってきました。
普段のあなざと違って座席がひな壇固定だったのでどうなるのかなと思ってましたけど、やっぱり楽しさは変わらず!
そして西村氏演出と思われる後半のスタイリッシュなシーンの印象深さ。
ふたりの演出家の化学反応が大いにプラスに転じた傑作です!
役者さんもどなたも自分で自分を輝かせていて、素敵でした。
ネタバレBOX
小ネタ満載な前半が特にあなざっぽくて楽しい!
そして段々話が深刻な方へと移っていくのだけど、亡霊なのか、ひとりの兵隊が常に舞台上にいて、チョッカイを出すけどそれは舞台上に影響を与えたり与えなかったり。。。
「動員挿話」は読んだことないし舞台で見るのも初めてなのですが、スッと世界観に入っていけた感じです。
ラストで奥さんが自殺してしまう前の繰り返し。
異なる角度で何度も何度も見せてくれるそのシーンの重さ、悲しみがズンズンと伝わってきました。
この企画、これからもシリーズとして続けてくれたら毎回見にいくけど、常に新しい事に取り組もうとされる方々だから二回目はないんでしょうねえ・・・。
水飲み鳥
ユニークポイント
学習院女子大学 やわらぎホール(東京都)
2009/11/14 (土) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★
リアルかつ何気ない空気
ユニークポイントの舞台は大きな会場で作りこんだ舞台をやる時と、こういった小作品をやる時とあります。
大きな舞台もその良さがあるのだけど、個人的には小作品が結構好きです。
広島、静岡で公演を行ってきての東京公演との事で、初日から安定した舞台が見れました。
ネタバレBOX
高校時代の友人の死をきっかけに、12年ぶりにかつての友人たちが集まって、それぞれの現実と向かい合う1時間10分程の小作品。
舞台の上に客席を設けて、実際の演者は畳6枚の上という特殊な舞台。
正直ちょっと客席が狭苦しいです。
短い舞台なのに途中で身体がつらくなって集中できなくなってしまったのが残念。
でも、お芝居はいつものユニークポイントの重厚な会話ではなくて、もっと軽くて自然な言葉で、目の前の役者さんたちが自分たちと同じ世界に息をしてるんだと言う事が感じられました。
たまに言葉が書き言葉になってしまって本がチラついてしまうのが残念だったりもするのだけど。
極たまに。
次々とやってくる高校時代の仲間たちとの会話は他愛もなく、時にコミカルに進んで見ていて暖かい気持ちにさせられます。
でも、中盤に死んでしまった高校時代の友人のカレシが現れてから空気が変わってきて、「嘘」と断りつつ本当の事を語りだします。
本音が出てきて、実はこの葬式に来たのは誰かからお金を化してほしいから、とあからさまにお金を要求する旧友。
30歳になった彼らには実際には現実の波が痛いほど打ち付けているのでした。
ラスト、部屋の主で主人公の森が目覚めると、昨晩の事が夢だったかのように誰もいなくなっているという辺りが寂しさを感じさせるのでした。
終演後、ロビーへ出ようとすると上演台本を無料で配布していました。
これは嬉しいサービスですね!
チャイニーズスープ【作:平田オリザ×演出:柴幸男】
元祖演劇乃素いき座+龍昇企画
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/11/10 (火) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
企画自体に圧倒される
20年という時間が込められた今回の上演。
19年前に書かれた戯曲を、オリジナルキャストで再演。
しかも戯曲を書いた平田オリザさんが改変して、演出するのは27歳の柴幸男さん。オリジナルの戯曲が書かれた時のオリザさんの年齢。
演じる役者は50代と70代。
ベルリンの壁崩壊から20年後の、旧東西のスパイがイスタンブールのレストランでスープが出てくるのを待つ話。
ただそれだけなのだけど、やはり時間の重みというものを感じずにはいられないのでした。
ネタバレBOX
スープを実際に作りながら演じるのだけど、たまにセリフの間が長い部分なんて、セリフを忘れてしまったのかな?と思ってしまう。
でも、そんな事許せてしまう暖かさがありました。
どんなに才能がある若い役者でも、これだけ年齢を重ねて人生経験を積んだ役者の存在には敵わないですねえ。
そこにいるだけで既に演劇なんだもの。
60分のコンパクトなふたり芝居でした。
この雰囲気、好きです。
いらない里
ホチキス
吉祥寺シアター(東京都)
2009/11/07 (土) ~ 2009/11/15 (日)公演終了
満足度★★★★
充実のエンターテイメント
吉祥寺シアターが狭く感じるほど隅々まで使い切った舞台。
あの抽象舞台を更に使い切る役者。
どこまでもパワフルで、どこまでもエンターテイメント。
安心して楽しめる作品でした。
主演の村上さん、素敵です。
脇を固める加藤さんの安定感、児玉さんのキレのある変態的な演技、山崎さんの細かい仕草のコミカルさ。
全てがホチキスらしさを満たしてくれて、更に客演陣が幅を広げていました。
とにかく役者人の充実した舞台です。
ネタバレBOX
コストカッターの宮本が逆にクビを切られて実家に帰ってくる。
家に居場所は無く、ひょんなことから落ち目の天文台の再建に乗り出す事になるのだけど。。。
話は単純なんだけどファンタジックで、父と子、姉と妹、地球人と宇宙人まで関係が広がってゆく。
コストカットの話が拡大して最後は地球自体の査定というところまで話がいく、スケールのおっきなお話。
とにかく役者人の魅力に尽きます。
どの役者もその人の魅力的な部分が引き出されていたと思います。
話はもう少し縮めてほしい気もするけど、十分楽しめるので問題なし。
『ROMEO & JULIET』
東京デスロック
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)
2009/10/24 (土) ~ 2009/10/28 (水)公演終了
満足度★★★★★
Korea ver
ようやく見ることができた韓国版ロミオ&ジュリエット。
昨年の「大恋愛」の多田演出に惚れこんだ身としては、海の向こうでその完全体が作られて上演されたので、見たくても見れないもどかしさをずっと抱えていました。
昨年夏、アゴラで映像で上映された時も見に行く事ができなくて臍を噛む思いだったのが、向こうから海を渡ってやって来てくれるというのだから見逃す手はない。
本当は何回でも見たかったのだけど、都合上1回しか見れなかったのが悔しいくらいです。
演劇を見ていて、演劇が好きで良かったと感じさせてくれた、夢のような1時間50分でした。
多田氏のトークでも「ある時期の自分の最高傑作」と言っていたけど、自分にとっては今まで見てきた演劇と呼ばれるものの中での最高傑作です。
ネタバレBOX
昨年見た公演で最も感銘を受けたのが「大恋愛」だったけど、今年も「ROMEO & JULIET KOREA Ver」で決まり。
これ以上のものにこれから先出会えるかさえ分かりません。
そんな大切な時間を噛みしめながら、味わいながら観劇しました。
舞台は赤い布張りの座布団のようなもので囲まれた白いマット。
大音量の音楽と字幕と照明を最大限に使いつつも、それらは全て舞台上にいる役者たちの存在を引き出すため。
とにかく役者の存在をこれ程強く、生なましく感じる舞台は他にそうないだろう。
演出が際立った作品作りというと柴幸男氏が最近抜きん出ているけど、柴作品では役者の「個」をあまり感じないという特徴があります。
音楽も同じビートの繰り返しで機械的なものを意識的に取り入れている。
多田淳之介氏は演出主導の作品作りでも、役者の「個」「存在」を生なましく引き出す。
音楽もビートではなくリズム、もっと言うと演奏しているものの「存在」を大切にしている。
それをどのように引き出すかによって作品の出来栄えが変わってくるのだけど、この韓国版は韓国人俳優の強い身体に支えられて、言語を超えた演劇の根源的なものをアピールしてきます。
最初は「LOVE」と同じように、人がひとりずつ出てきては立ったり座ったり、笑ったり駆け引きしたり。スクワットを延々続ける肉体の強度も示してみせた。
そこからふざけ合いが始まったかと思うと今度は叩き合い、争いとなり、それが上手下手二手に分かれると「一幕」が始まる。
舞踏会でロミオとジュリエットが出会うのが「一幕」だけど、ここではモンタギューとキャピレットの憎しみ合いが強調され、緊迫した空気で一瞬の隙も見せない役者たちの佇まいに見とれてしまう。
「ニ幕」はバルコニーのシーンを中心としたふたりの恋人の幸せなひと時のシーン。のはずなのだけど、ここでもお互いが怒鳴りあい、甘い恋愛という雰囲気がなく張詰めた空気。
かと思うと突然ロミオとジュリエットが抱き合って激しく初夜を迎えたり。
「三幕」からは「大恋愛」をベースに構成されていました。
「三幕」ではジュリエットの従兄弟ティボルトを殺してしまい追放されるロミオ。
引き裂かれるふたりの若い恋人。
だるまさんが転んだで表現されるこの幕は大好きで、思い通りに事が運ばず、思いがけず殺してしまう激情が伝わってくる。
結局鬼に辿り着くことはなく、ロミオは倒れたジュリエット3人目を背中に背負ったところで力尽きてしまう。この絵がとにかく美しいです。
「四幕」は引き裂かれたジュリエットの胸のうちが尾崎豊にのって描かれてる。セリフがずっと続くのだけど、たまに歌詞が舞台上の展開を現してたりして、笑ってしまう。
そして後半は女性たちが出てきて韓国のポップ?にのって踊り来るって倒れてゆく。
「五幕」。
ここの最初の演出は「大恋愛」とは違っていたように思います。
毒をあおって死ぬロミオとその亡骸を見てあとを追うジュリエット。
最大限に声を張って身体全身で表現する姿が美しい。
ロレンス神父の「事のあらましを簡単に説明します」
の後に、スリーンいっぱいに小さな字で書かれたその説明を一心不乱に語ってゆく役者さん。全然「簡単に」じゃないところで場内爆笑。
最後は下手から上手に向かって、疲れ果てた役者たちが何度も何度も駆け抜けてゆく。
上演が終わって、終わってしまったことが残念でならなかった。
ずっと浸っていたい時間だったのに。
役者さんたちは2度のカーテンコールでその存在を示すだけでなく客席も称えてくれて、本当に素晴らしい役者さんたちでした。
この韓国バージョンを日本へ持ち込んで上演してくれて、感謝の言葉しかありません。
★いくつとかの評価が陳腐に思える程の、次元の違う舞台。
多田氏にはこういった舞台を期待してしまうので、どうしても最近の新作が歯がゆいのでした。
でも、これがひとつの到達点なのだから、同じ事はもうやろうとしないのだろうなあ。。。