『ROMEO & JULIET』 公演情報 東京デスロック「『ROMEO & JULIET』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    Korea ver
    ようやく見ることができた韓国版ロミオ&ジュリエット。
    昨年の「大恋愛」の多田演出に惚れこんだ身としては、海の向こうでその完全体が作られて上演されたので、見たくても見れないもどかしさをずっと抱えていました。

    昨年夏、アゴラで映像で上映された時も見に行く事ができなくて臍を噛む思いだったのが、向こうから海を渡ってやって来てくれるというのだから見逃す手はない。
    本当は何回でも見たかったのだけど、都合上1回しか見れなかったのが悔しいくらいです。

    演劇を見ていて、演劇が好きで良かったと感じさせてくれた、夢のような1時間50分でした。
    多田氏のトークでも「ある時期の自分の最高傑作」と言っていたけど、自分にとっては今まで見てきた演劇と呼ばれるものの中での最高傑作です。

    ネタバレBOX

    昨年見た公演で最も感銘を受けたのが「大恋愛」だったけど、今年も「ROMEO & JULIET KOREA Ver」で決まり。
    これ以上のものにこれから先出会えるかさえ分かりません。
    そんな大切な時間を噛みしめながら、味わいながら観劇しました。

    舞台は赤い布張りの座布団のようなもので囲まれた白いマット。
    大音量の音楽と字幕と照明を最大限に使いつつも、それらは全て舞台上にいる役者たちの存在を引き出すため。
    とにかく役者の存在をこれ程強く、生なましく感じる舞台は他にそうないだろう。

    演出が際立った作品作りというと柴幸男氏が最近抜きん出ているけど、柴作品では役者の「個」をあまり感じないという特徴があります。
    音楽も同じビートの繰り返しで機械的なものを意識的に取り入れている。

    多田淳之介氏は演出主導の作品作りでも、役者の「個」「存在」を生なましく引き出す。
    音楽もビートではなくリズム、もっと言うと演奏しているものの「存在」を大切にしている。
    それをどのように引き出すかによって作品の出来栄えが変わってくるのだけど、この韓国版は韓国人俳優の強い身体に支えられて、言語を超えた演劇の根源的なものをアピールしてきます。

    最初は「LOVE」と同じように、人がひとりずつ出てきては立ったり座ったり、笑ったり駆け引きしたり。スクワットを延々続ける肉体の強度も示してみせた。
    そこからふざけ合いが始まったかと思うと今度は叩き合い、争いとなり、それが上手下手二手に分かれると「一幕」が始まる。

    舞踏会でロミオとジュリエットが出会うのが「一幕」だけど、ここではモンタギューとキャピレットの憎しみ合いが強調され、緊迫した空気で一瞬の隙も見せない役者たちの佇まいに見とれてしまう。

    「ニ幕」はバルコニーのシーンを中心としたふたりの恋人の幸せなひと時のシーン。のはずなのだけど、ここでもお互いが怒鳴りあい、甘い恋愛という雰囲気がなく張詰めた空気。
    かと思うと突然ロミオとジュリエットが抱き合って激しく初夜を迎えたり。

    「三幕」からは「大恋愛」をベースに構成されていました。
    「三幕」ではジュリエットの従兄弟ティボルトを殺してしまい追放されるロミオ。
    引き裂かれるふたりの若い恋人。
    だるまさんが転んだで表現されるこの幕は大好きで、思い通りに事が運ばず、思いがけず殺してしまう激情が伝わってくる。
    結局鬼に辿り着くことはなく、ロミオは倒れたジュリエット3人目を背中に背負ったところで力尽きてしまう。この絵がとにかく美しいです。

    「四幕」は引き裂かれたジュリエットの胸のうちが尾崎豊にのって描かれてる。セリフがずっと続くのだけど、たまに歌詞が舞台上の展開を現してたりして、笑ってしまう。
    そして後半は女性たちが出てきて韓国のポップ?にのって踊り来るって倒れてゆく。

    「五幕」。
    ここの最初の演出は「大恋愛」とは違っていたように思います。
    毒をあおって死ぬロミオとその亡骸を見てあとを追うジュリエット。
    最大限に声を張って身体全身で表現する姿が美しい。
    ロレンス神父の「事のあらましを簡単に説明します」
    の後に、スリーンいっぱいに小さな字で書かれたその説明を一心不乱に語ってゆく役者さん。全然「簡単に」じゃないところで場内爆笑。
    最後は下手から上手に向かって、疲れ果てた役者たちが何度も何度も駆け抜けてゆく。

    上演が終わって、終わってしまったことが残念でならなかった。
    ずっと浸っていたい時間だったのに。
    役者さんたちは2度のカーテンコールでその存在を示すだけでなく客席も称えてくれて、本当に素晴らしい役者さんたちでした。

    この韓国バージョンを日本へ持ち込んで上演してくれて、感謝の言葉しかありません。
    ★いくつとかの評価が陳腐に思える程の、次元の違う舞台。
    多田氏にはこういった舞台を期待してしまうので、どうしても最近の新作が歯がゆいのでした。
    でも、これがひとつの到達点なのだから、同じ事はもうやろうとしないのだろうなあ。。。

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    2009/10/29 00:53

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