
海の夫人
ハツビロコウ
「劇」小劇場(東京都)
2026/09/29 (火) ~ 2026/10/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
なかなか上演されないイプセンの作品を観られたのはありがたい。これまで観たことがなかったし原作を知らないのでハツビロコウ独自の解釈というのがどこなのかはわからないが、凄く良い作品と感じた。最後も、ハッピーエンドのようで決してそうではなく、皮肉にも新たな「取引」が始まっているし、いかにもイプセンらしい浮かれない冷たい視線が感じられる。タイトルはこういう意味だったのか。謎の船員の不気味な存在は、「さまよえるオランダ人」を思わせる。
演出や演技はシンプルで抑制的だが非常に上質で、余計なものがなく静かに進行する舞台のおかげで、あまり接する機会のないこの作品の姿が良く伝わったのではないか。

女中たち
3/3姉妹
ザムザ阿佐谷(東京都)
2026/09/17 (木) ~ 2026/09/22 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
非常にシンプルな上演ゆえに、この作品の不条理劇のような難解さや複雑さに初めて気づかされた。誰に向けられたのか、誰の立場で発せられたのかが曖昧なセリフが結構あって、よく考えないと(よく考えても)意味が判然としない、というか。シンプルで手堅い上演ゆえにどういう作品なのかがあらためてわかってくる、という印象。

Silent Night 〜沈黙の夜〜
Mido Labo
雑遊(東京都)
2026/09/16 (水) ~ 2026/09/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
半分朗読、半分普通の演劇、という感じか。もともとこのユニットは原作小説の地の文を生かしてその世界観を大事にするコンセプトらしい。過剰な演技動作や舞台装置は抑制され、小説の読者としての観客に語りかけてくるようなスタイルが印象的で、シンプルゆえに原作小説の深さがより味わえる。
取り上げられた作品はいずれもミステリー短編の圭作で、心理の機微とあっと思わされるどんでん返し的な落ちなど、原作小説の世界にどっぷり浸ることができた。

ガリレイの生涯
劇団俳優座
シアターX(東京都)
2026/09/07 (月) ~ 2026/09/16 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
原作を読んでいないので、どこまでがブレヒトのオリジナルでどこからが演出なのかわからないが、非常に興味深い作劇と構成、進行になっているし、意外な脚立の使い方とかいろいろアイデアが含まれている。二重の廻り舞台か。何と言っても主演の斉藤淳氏が実に素晴らしい。いつもよりかなりのしゃがれ声だったが、公演を重ねているうちに声が嗄れてきたのか、それとも役作りで意図的にあのような声に作っているのか?いずれにせよ美声よりこんなしゃがれた声の方がいかにもガリレイらしいリアルさがあった。ストーリーのクライマックスはガリレイの自説撤回だが、そこに至るまでのプロセスの方も面白かった。

神のみぞ知る死
劇団papercraft
シアタートラム(東京都)
2026/09/06 (日) ~ 2026/09/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
不思議な物語で、まったく人と変わりない姿の神たち(でも何か力というか変な影響力はもっているらしくも見える)が出てきて人と関わり、何だかよくわからない気まぐれのような展開をみせる。いわゆる新興宗教の教祖たちは、ぞれぞれこんなどこにでもいそうな神たちの一人なのだろうかと想像してみる。短めの場面が次々連ねられて少々非現実的な不可思議な物語がランダムウォークのように進んでいくように思えたが、現代作品でしばしば見かけるスタイル。

ハード・プロブレム
劇団青年座
吉祥寺シアター(東京都)
2026/09/05 (土) ~ 2026/09/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
脳科学や進化生物学の用語や理論がふんだんに出てくるが、それがストーリー展開にどう絡むのかが今ひとつわからないまま唐突にデータ操作と養子の素性のエピソードが現れ、話に一区切りついて終わってしまった印象。劇中で繰り広げられるハード・プロブレムに関する議論のセリフの応酬はまあまあ面白かったが。話の展開の上で役割のよくわからない登場人物もいる(作者はどういう意図でこの人物を出したのだろう)。結局、ハード・プロブレムについて主人公はどんな考えを持つに至ったのか。データ操作や養子のことがハード・プロブレムに関わる問いの答えの一つなのか、とも思えたが、よくわからない。AIの時代になり、AIが主観を持ち得るのか、といった問題にも関連しそうな、時流にのる興味深いテーマであり、それもあって青年座はこの台本を取り上げたのだろうと思う。

舞台「キリシマサトル、青春の蹉跌」
株式会社GEトラスト
新宿シアタートップス(東京都)
2026/09/02 (水) ~ 2026/09/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
興味深い題材を取り上げていて期待して観たが、今ひとつ話が深まらない印象。キリシマサトルが50年間考え続けたこと思い続けたことがあるはずだが、その内面がイマイチ掘り下げられていないというか伝わってこなかった。ダンカン氏の自然体で訥々とした演技はこの作品にピッタリと思えたが。狼のメンバーの狂信的ではあるがどこか普通の活き活きした若者たちの演技も良かった。

運命の力
東京二期会
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2026/09/03 (木) ~ 2026/09/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ヴェルディのオペラの中でも音楽が最も劇的なものの一つ。
初日を鑑賞。 開幕直後だけなぜか声が通りにくく感じたが、その後は問題なくレオノーラ、カルロ、アルバーロいずれも良かった。演出は鑑賞の妨げになる寸前のギリギリのレベル。合唱団が出てくる場面の扱いがどうにも違和感あり。音楽はこんなに素晴らしいのに。オペラにおける演出とは一体何なのだろう。

冬物語
G.Garage///
すみだパークシアター倉(東京都)
2026/08/26 (水) ~ 2026/08/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「冬物語」は『おとぎ話』の比喩であり、そんなわけでこの作品には現実離れしたご都合主義的なところがあるとされる。そのため、下手な演出や演技で観たらいささか興ざめになることもあるが、G.GARAGE///の現代的テイストの演出とシェイクスピアに手慣れた演技で観るとそんな感じはまったくなくなり、むしろ現代にも通用する価値を持った作品と感じさせられてしまう。いつもながら高水準の公演で、シェイクスピアの深い世界にどっぷり浸ることができた。

月を抱く人魚
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2026/08/07 (金) ~ 2026/08/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
たぶん「浅茅が宿」と怪異な古典作品が持つ独特の雰囲気に着想を得たものと思われるが、雨月物語を現代に甦らせたというほどではないし、他の話からの鱗の引用も単にワードとして使われるだけで物語としての意味はない。ストーリー展開はいささか支離滅裂感があるが純粋に夏場のエンタメとして観るのが良い。相島氏と松岡氏がなかなかの存在感で舞台が引き立つ。

卓
風雷紡
小劇場B1(東京都)
2026/08/12 (水) ~ 2026/08/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
作者が描きたかった要素や雰囲気はわかるが、それがあまりストーリー展開に反映されておらず、並べられた場面の意味が薄い印象。作者が書きたかったエピソードを必ずしもそれと合わない横溝正史的な世界に入れて混濁させてしまったような気がしてならない。

隔たる
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2026/08/06 (木) ~ 2026/08/12 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
主人公を演じる宮越氏が入魂の熱演で圧倒される。最前列の席で観ていたが、一人の女が背負ってきた過去と今ある存在感を凄い迫力で表現している。
死刑制度と贖罪が可能かという決して答えの出ない問題が扱われているが、必ずしも特定の立場に依拠した単純な答えを提示しようとはしておらず、無責任や他責や永遠に続く苦しみを描き、演劇として深みを感じる。
でもでも、通り魔的に4人も殺したとなると、さすがに死刑しかないのかな、という気も。
ところで、死刑制を廃止している国・州は世界でも多くあるが、そういう国でも、殺人容疑者の逮捕の現場で警察官の命令に従わなかったら即射殺されるのが当たり前と聞く。そうやって犯罪者を現場で裁判抜きで殺しているから死刑制度があまり必要でないのかもしれないのかな、と思ったりする。死刑に値するよっぽどヒドイ奴はもう現場で殺しているので。

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ロング・クリスマス・ディナー
当然だが『わが町』に何となく似ていて、ここでは描かれる時間が90年に引き延ばされ、上演時間は3分の1ぐらいに凝縮され次々と時が移る。短編にもかかわらず登場人物がたくさんいるのに、俳優の役がひとつも被らない。
ラスト・ヤンキー
上演時間がたった20分で、ひと山来たところで終わってしまう。この20分の中にも見事に社会の矛盾が提示されるが、もう少しこの二人の会話を聴いてみたいと思わされた。

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
パッシング・バイ
半分リーディング公演+半分普通公演のような印象で、二人の俳優は途中から台本を全然読まずに、手に持つこともほとんどなくなり、普通に演技していた。なぜリーティング公演にしているのだろう。
見ていてずいぶんイライラさせられるカップルだが、彼ら自身もほぼ常にイライラしているが、その彼らの関係が終わるまでの数ヶ月を淡々と描いている。
ナディア
これもなぜリーティング公演にしているのかよくわからない。短編なのがもったいないような宗教絡みの重いテーマと思うが、短い作品の中に振幅のある展開がある。ムスリムの中にもいろんな立場があること、家族関係の変化、娘の葛藤など、もっとじっくり観てみたかった気もするが、なかなかの佳作。やはり年配二人の俳優の味わい深い演技が印象に残る。

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
命を弄ぶ男ふたり
奇妙なシチュエーションで、短い中に目が離せない展開があって面白く、引き込まれる。
口に花を持つ男
こういう役は、渡邊りょう氏は実にうまい。
不毛ドライブ
訳ありで腹を探るように核心部分の周囲をぐるぐる廻りながら微妙な感情の揺れ動きが顕されていく流れが面白い。金髪男の、ただヘラヘラしているだけではなくて、どこか腹に一物ありそうな不気味なしつこさの演技が良い。

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ストロンガー
この二人芝居ではしゃべらないほうの役の演技がやはり難しいと思われる。本舞台では、何を考えているのかわからないというか、迷走しているような印象。以前観たものはスタンスが一貫していて心理がわかりやすかったが、しかしそのため単純すぎるというか陳腐な芝居になってしまっていた。やはりこの作品はなかなか難しいらしい。
トライフルズ
まさに佳作。短編のために青年座の津田さんを使うのはもったいない気もするが、そのおかげで短編ながらしっかりした重い作品になっていた。

血の婚礼 【劇団うつり座】
劇団うつり座
上野ストアハウス(東京都)
2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ロルカの原作をよくこんなふうに独創的に脚色できたものだと感嘆させられた。単なる舞台の日本への置き換えというところをはるかに凌駕し、いろんな要素を含んで観る者の感性を刺激する。朗々とした謳い文句や運命を操る魔物が出てくるのはマクベスを思わせるし、破滅と死へ向かっていく官能的で暗い衝動はハムレットやオセロを連想させる。どの俳優も良い演技をしているが、特に花婿の母役と‘レオナルド’役は素晴らしい。

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ラッツォクの灯
途中でまったく別の劇が挿入されることもあり、短編では少々もったいないテーマとも言えるが、ショックからなかなか立ち直れずネガティブになりがちな主人公の不安定な心の有り様を永嶋氏が巧く演じていて、短編でも心情と雰囲気が良く伝わる。ところでランナーが登場するのはあの場面だけ?

20の物語 -週末を、劇場で-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/08/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
トイレはこちら
不条理劇というよりはコントに近い感じだが、演者が本職の俳優なので舞台作品として手堅く纏まっている。ロープがはるか上空から垂らされている、という感じで面白かった。
或日の一休和尚
武者小路実篤がこんな戯曲を書いていたとは知らなかった。前劇に続きコント風のストーリーと演出なのかなと最初は思ったが、なかなかの佳作で唸らされた。

煙の汽水域
ムシラセ
小劇場B1(東京都)
2026/07/11 (土) ~ 2026/07/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
話の内容や雰囲気は良いが、今ひとつリアルさが感じられず、とりあえず着想をリブレットの形にしてみました、というような作為感がある。一つ一つのシーンは心中を覗かせる面白いものだし、素直に受け取る観客には刺さると思うが。80分程度であまり長くないのに、ウダウダ会話が続く場面もあって凝縮された感じではない。これからこの台本をもう少し練り肉付し深化させていきますよ、という、まだ途中の印象。それにしても、あんなにキャラが似た女性に人生で3回も出逢うものなのか。完璧に同じ人間にしか見えない。それが狙いなのかもしれないけど。また、あのように逃げてばかり言い訳ばかりで動かない男と一緒にいて楽しいだろうかと最大限疑問に感じる。つまらん男にしか見えないのだが。