楽園
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
こんな田舎あるあるの聞き飽きた話は退屈なだけだ(まあいろいろ現代の日本をまぶしてはいるけれど)。最初の1時間はもう拷問。もっとワクワクするお話を作ってよ。もっとも村長の娘と区長の妻、どちらも嫌味さが秀逸で、かなり興奮させられた。
R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
一人の男が二つの家庭のお父さんを交代交代せわしなく演じる。そんなカオスなオープニングでつかみは十分。理想の家庭とほころびのある家庭、お父さんもなかなか大変だ。そして突然お父さんは殺されてしまう。
犯人は誰かとあまり考えずに舞台に集中しよう。テンポの良い展開でそれは容易だ。そうすれば大きなカタルシスを得ることができるだろう。まあしかし、いつものことではあるけれど、犯人の動機は1ミリも私の心に入ってこない。
初日だったせいか登場人物が多いせいか、俳優さんたちの演技が融合していなかった。同じく恒例のmoveダンスも劇団員抜きで行われたため似て非なる何かになっていた。どちらもしばらく寝かせておけば自然と熟成して行くものと期待している。
『カミの森』『<花鳥風月>短編戯曲セレクション1・2』
ティーファクトリー
座・高円寺1(東京都)
2023/05/31 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
一度に3つの舞台が交互上演されているが、今回は2時間を超す長編『カミの森』を観た。あとの2つは短編集。
滅茶苦茶簡単に言うと「兄(今井朋彦)は新興宗教の教祖、弟(加藤虎ノ介)はゾンビ映画の監督。そういう兄弟の20年前に失われた関係の再生の物語」ということになるのだろう。「崩壊した別の家族の修復」も外せないか。
それを様々な演出技法で展開し拡大して行くのだがこちらの頭が回らない。笑いを取りに来る場面があっても一般観客はとまどうばかりでプロらしき一角で反応があるのみ。
今井さんと加藤さんの持ち味は楽しめた。
『クロノス・ビギンズ』『あしたあなたあいたい』
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2023/05/20 (土) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「クロノス・ビギンズ」を観劇
原田樹里様を久しぶりに拝みに出かけたのだが、かなり後ろの席だったのとどんどん悪くなる視力のために御本人かどうかもよく分からなくて涙目だった。
演目はこの劇団が舞台化を進めている梶尾真治の小説「クロノス・ジョウンターの伝説」の新作「クロノス・ジョウンターの黎明」の最初の上演なのだった。旧作では設計図を渡されその通りに作ったとしか書かれていないが新作ではその辺の事情が少し明らかになる。
シリーズものだがほとんどリセットに近く私のように初めてこのシリーズを観る者にも支障はない。タイムマシン+ラブ・ロマンスがこのシリーズのコンセプトで本作もそのど真ん中である。新しいものや尖ったものはないが普通に楽しめるエンタメ作品であった。
ホロー荘の殺人
ノサカラボ
三越劇場(東京都)
2023/05/03 (水) ~ 2023/05/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
三越劇場は5月を「ミステリー月間」として二つの公演を行う。
第1弾が本作、アガサ・クリスティーの戯曲版「ホロー荘の殺人」である。1946年の小説版ではポワロが登場するのだが1951年の戯曲版はポワロ無しに改作されている。また論理的にも物理的にも構造が簡素化され舞台映えのする解決篇になっている。70分+15分休憩+90分
5人の女優さんのうち4人が元宝塚である(凰稀かなめ、紅ゆずる、旺なつき、綾凰華)。4人も揃えるのは犯人が誰かを分からなくするためだが、なぜに宝塚なのかは後半になって犯人がブラックな感情を爆発させるところで分かる。普通の女優さんではできない表現をプロデューサーの野坂実さんが期待したのだろう。…って犯人が4人の誰かだって言ってしまった(汗)いやでも4人を差し置いて元アイドルの高柳明音さんが犯人だったりしたら詰めかけた宝塚ファンが暴動を起こすでしょう。配役表を見ると河相我聞さんが犯人臭いけど殺される方だし。
執事役の佐々木梅治さんがさすがの良い味を出しておられた。
夜叉ヶ池
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/05/02 (火) ~ 2023/05/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初日観劇。いやあ素晴らしかった。今年のナンバー1だ。
泉鏡花というと私的には受験勉強で覚えた名前で作品は読んだことがなく、時代遅れの作家という認識で、あまり期待しないで出かけたのだった。しかし、静から動へのダイナミックな話の展開、美しく斬新な衣装と踊りにすっかり引き込まれて3回目のカーテンコールでは周りの人に先んじて立ち上がってしまった。もちろん視界の端でどなたかが立ったのを確認してからなのだが(笑)
1913年(大正2年)の戯曲、つまり110年前の作品である。大正初期というと日本でもまだ人間と妖怪が共存していた時代だ。雨乞いで若い女子の生贄を捧げることも毎年どこかの村で行われていたという(「大正風俗大辞典」民明書房刊より)。そんな時代のお話……おいおい大正の人に叱られるぞ。
登場人物は
・山奥の釣鐘堂を守る晃(勝地涼)と百合(瀧内公美)、そして失踪した晃を探しにやって来た学円(入野自由)の3人。
・夜叉ケ池に封じ込まれた竜神の白雪姫(那須凜)とその乳母などの家来たち。家来たちは魚の精のようだ。
・干ばつにあえぐ村人たちと議員に雇われたヤクザ者たち。雨乞いを企てている。
の3つのグループに分かれる。
と書くと皆さんストーリーの大筋は想像が付くだろう。まあでもそんな余計なことを考えずに目の前に展開する美しきものことをただただ楽しめば良いのだ。
瀧内公美さんのはかなげな美しさ、那須凜さんの躍動する美しさが堪能できる。私の推しの勝地涼さんはもちろん素晴らしく、眼鏡姿の入野自由さんはぴったりの雰囲気を醸し出している。
原作は短いもので争うシーンの記述も簡素でもちろんダンスシーンなんて書かれていない。そこを限界突破に膨らませたのが演出の森新太郎さんと振付の森山開次さんだ。満足度は余裕の星5つ。
***
千秋楽も観劇
序盤の芝居はほとんど舞台下手で行われるので上手席の今回はかなり退屈であった。しかし魑魅魍魎がワラワラと湧いてくる歌舞伎風「スリラー」の踊りでダイナミックモードに入ってからはそうそうこれこれと膝を打っているうちにそのままエンディングまでハイテンションで持って行かれた。
本当は初日と千秋楽を比べてどう進化したかを比較するはずだったのだが三週間も空いてしまうと今の記憶力では無謀な試みであることを思い知った。
カーテンコールで一番に立つぞと意気込んでいたのだが2nd callで皆さん立ってしまって涙目だった。千秋楽と初日では違って当然。しかし2ndで真っ先に立つ勇気はないなあ。
*当日5/23はPARCO劇場50歳の誕生日ということで入口で御礼の大入袋が全員に配られた。中身は恒例の5円玉1枚。
令和5年の廃刀令
Aga-risk Entertainment
としま区民センター・小ホール(東京都)
2023/05/01 (月) ~ 2023/05/02 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
アガリスクらしさが満喫できる一作。文句があるとすればもう少し長くて変化があればなあということくらい。まあでも建前はタウンミーティングなのだからこんなものか。
私が参加した回の投票は廃刀令賛成が6割、反対が4割くらいだった。アメリカの銃社会の置き換えなので日本人が真面目に考えればほとんどが賛成だろう。しかし、それでは投票後の舞台がつまらなくなるので敢えて反対をした人(あるいはただのひねくれ者)が4割いたということだと思う。私ももちろん条例案には賛成だが投票は反対に入れた。
やさぐれた江益凛ちゃんが最高だった。
二次会のひとたち
エイベックス・エンタテインメント
紀伊國屋ホール(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
美村里江さんってあのミムラさんか。どこかで見た顔だなあと思いつつ終演後検索して初めて分かった。相変わらずの透明感が嬉しい。その美村さんは新婦の先輩同僚役で、披露宴には出席しない二次会の幹事という微妙な立場の4人を、幹事長として仕切って行く。かなりタカビー(死語?)で言葉はきついが苦労もしてきたらしく角は丸い、その微妙さを美村さんが見事に演じる。
前半は初回の打ち合わせ。新郎新婦や上司の悪口がちょうど私(そしておそらく多くの観客)のレベルに合っていてかなり笑える。休憩なしに後半は結婚式当日。すっかり調子が変わって4人のこれまでが語られる。意外な人が意外な過去を引きずっている。
素直な人もひねくれ者も楽しめるように入念に作られたお芝居である。一つだけ私には??なエピソードがあって星4つにしたいところだが、他があまりに良くて満点以外にできない。舞台セットがしっかり美しく作られていることも満足度を上げる。
劇中でこんなクイズがある。「私がこう答えるような質問は何でしょうか?」というもの。たとえば、私(lattice)が「最近はしていません」と答えるような質問は何かということである。クイズのくせに曖昧さが肝なのだ。劇中の問題は色々な要素からなるほどと思われるものなので会場では先回りして答えを考えよう。今のクイズの答えは「マスクをしていますか?」となる。少しは面白さが伝わっただろうか。例が悪くて分からないよと愚痴ったそこのあなた、ぜひ会場へ!
エンジェルス・イン・アメリカ【兵庫公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/04/18 (火) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
第1部が 60分+(15分)+60分+(15分)+60分の3時間半で
第2部が 90分+(15分)+65分+(15分)+55分の4時間
という演じる方も観る方も限界に挑戦の大作。
第1部第2部日替わりでも大変なのに一日で第1部第2部をやってしまう日もある。
これが4月18日から5月28日まで21セットも続くのだ。
第1部初日は満員の盛況。
ここまではゲイやクスリやレーガン政権中枢にも近い剛腕弁護士のお話が真面目かつ不真面目に進行する愉快な舞台だ。当時のアメリカ事情を知っているとより楽しめるのだろうなというところもあるが、長いのに全然疲れないので安心して7時間半を楽しもう。
第2部初日は空席がある。
前日の第1部を観た人でも第2部は後日にすることがあるし第2部から観始める人はいないだろう。第2部は第1部以上に脱線して楽しい。さすがに最後の55分は尻が痛くなったが驚くほど疲労感がない…ってもちろんクスリはやってませんよ(笑)
一番の見どころは那須佐代子さんの第1部第2部冒頭のスピーチである。扮装、声色、身のこなし、すべてが過剰な演劇史に残る怪演である。絶対に遅刻してはいけない。
第1部ではユダヤ教のラビに扮して葬儀で故人がコミュニティの本拠地を西部に移したことを讃える。これはモルモン教が各地の住民との衝突ののちソルトレイクシティーに本部を移して発展したことを指すのだろう。何故ユダヤ教のラビなのかは不明。
第2部では古参の共産党員に扮して(ゴルバチェフのペレストロイカに対して)理論なき改革は蛇が新しい皮なしに脱皮するようなもので死を招くと大アジ演説をぶつ。
全体の内容は政治的な側面もあって判断に困っているので書かない(書けない)。主な人物だけ挙げておく。他にも皆さん二役三役といろいろな味を出すのでそこも見どころである。
ベリーズ(浅野雅博)看護師、黒人、同性愛者
プライアー(岩永達也)名門の末裔、同性愛者、ルイスなどの愛人、エイズ患者
ルイス(長村航希)裁判所ワープロ係、同性愛者、プライアーなどの愛人、反共和党、ユダヤ系
ジョー(坂本慶介)ハーパーの夫、裁判所書記官、モルモン教徒、同性愛者
ハーパー(鈴木杏)ジョーの妻、薬物中毒者
ハンナ(那須佐代子)ハーパーの母、モルモン教徒
天使(水夏希)アメリカ大陸担当の天使、かなり保守的
ロイ・コーン(山西惇)政権中枢に近い剛腕弁護士。同性愛者、エイズ患者、ユダヤ系、ここまでの8人中唯一の実在の人物
ミスター・ライズ(浅野)ハーパーの夢の中の旅行業者
エセル・ローゼンバーグ(那須)夫とともに原爆の機密をソ連に渡したとして死刑になったユダヤ人。検察官時代のロイ・コーンが死刑の画策をした。この戯曲の書かれた当時は冤罪の疑いが強かったが今では実際にソ連のスパイであったことが分かっている。
役者さんは皆さん素晴らしく私の下手な感想は邪魔なだけだ。
よく分かっていないけれど見栄も込みで満足度は星5つ。
彼女も丸くなった
箱庭円舞曲
新宿シアタートップス(東京都)
2023/04/12 (水) ~ 2023/04/18 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
題名とはかなり違って、実際の内容は作者の最近の社会問題についてのエッセイだ。大雑把にまとめると「ハラスメントについて」ということになるだろうか。一番目立つのは「*ネタバレbox参照*」な大迷惑正義の味方野郎である。まあこの件は右も左もないが、他では最近の風潮に軽く疑念を呈するところもあって新鮮に感じられた。これは私の誤解かもしれないので各自確かめていただきたい。
演劇の作りは時系列不詳のピースを提示されて終演にかけてどんどん全体像が見えて来るものだ。面倒くさいが頭の体操にはなる。まあそれは良いのだが、ほとんどの会話が遅延の大きな電話越しのようにぎこちないのが疲れる。「あっ」とか「はっ」とか言って発言を繰り返させてしまったりする。私自身が電話ではこういう会話になりがちなのも不快だった原因ではある。しかし、タイミングの合わない会話を続ける役者さんたちには本当に感心してしまう。単にタイミングが合わないのではなく“微妙に”合わないのだ。そして合わない間隔は一定でなければいけない。地獄だと思う。そこは凄いのだけれどもやはり不快なのでこの作者の作品はもう観ないとなってしまう。
Call me Connect you〜交渉人遠山弥生〜
劇団6番シード
六行会ホール(東京都)
2023/04/06 (木) ~ 2023/04/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
4年ぶりの6番シード。出演者に土屋兼久さんのお名前がないので調べてみると2021年に退団されていたのだった。そこは残念なのだが新人の補強もあって今作は素晴らしい出来上がりになっている。
交渉人が主役のコメディー。人質事件の緊迫感もあり、謎解きの要素もあって雨の中遠くまで出かけた甲斐があった。1時間45分休憩なし。
二階建ての舞台を使ってスピーディーに場面が転換して行くのはTVか映画のようだ(褒めてます)。そして舞台装置、衣装、もちろん硬軟自在の演技すべてに完成度が高くどなたにもお勧めしたい。
犯人役の小林亜実さん、本番中は当然ながら怖い表情だったがカーテンコールでは穏やかな笑顔がとてもチャーミングで一瞬でファンになった。
ブレイキング・ザ・コード
ゴーチ・ブラザーズ
シアタートラム(東京都)
2023/04/01 (土) ~ 2023/04/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団四季の1988年の公演では「暗号と道徳を破った天才の物語」という副題が付いていた。「道徳を破った」というのが適切かは微妙だが、この the code にはそういう二重の意味がある。そして資源の多くは後者の同性愛に費やされる。前者も暗号というよりはコンピュータあるいは人工知能についての展望である。エニグマ暗号については何だか難しそうだねという印象のみ、まあ当然。
主となるのは空き巣とそのときの男性の恋人の話でそれは段階的に進む。そこに研究所長とのやりとりや若い頃の母との会話、また破局した女性の恋人や別の男性の恋人とのエピソードなどが入ってくるのだが、テンポが良く適切に時代が前後し、時々のチューリングと人々の応対が面白く興味が途切れない。ところでチューリングは観光で行ったギリシャで言葉が通じなくても相手を見つけるのだが何かそういう場所があるのだろうか、見た目で同志だと分かるのだろうか……と考えていたら昔スポーツジムで見ず知らずのお兄さんに話しかけられたことを思い出した。気さくな人だなと思いながらも違和感があったのだが、もしかしたら仲間チェックをされていたのかな??
堀部圭亮さんの落ち着いたしかし重すぎない演技が印象深い。加藤敬二さんの飄々とした上司も味わいがある。もちろん亀田佳明さんのアスペルガー的な演技は真に迫っていて素晴らしい。
しかし面白かったという確かな感触はあるのだが振り返ってみてそのポイントを特定するのは難しい。ストーリー的なものではなく演劇としての魅力だったような気がしている。
舞台『鋼の錬金術師』
舞台『鋼の錬金術師』製作委員会
日本青年館ホール(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「鋼の錬金術師(略称ハガレン)」は『月刊少年ガンガン』で2001年8月号から2010年7月号まで連載された。全108話、単行本27巻で完結している。この舞台はそのうち16話の途中までを扱っている。最後に「to be continued」が出るのだがこの調子ではさらに5,6回続けねばならない。さてどうなるのか。
連載雑誌から分かるように少年向きのお話なのだが会場は99%がイケメン俳優さんファンの女性である。私も瑞生桜子さん推しのコミック一夜漬けの口なので完全にお仲間なのだ。
舞台は丹念に漫画を3次元化してあって皆さんのセリフも明瞭で衣装・音楽なども良い出来である。この作品のファンの方や推しが出演している方にはお勧めである。そうでない方は世界観が分からずにとまどうことになるだろう。
四兄弟
パラドックス定数
シアター風姿花伝(東京都)
2023/03/17 (金) ~ 2023/03/26 (日)公演終了
諸国を遍歴する二人の騎士の物語 風に吹かれてドンキホーテ 交互公演
Pカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2023/03/15 (水) ~ 2023/03/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
席に着いて「風に吹かれてドンキホーテ」の開演を待っていると制服を着た高校生が次々とやってくる。全部で男女10人ずつくらいになっただろうか。修学旅行なのか。私のときはグループサウンズを聴きに新宿のライブハウスに行ったものだ。それが別役実の不条理劇の観劇とは。「若いうちからこんなわけの分からないものを観ていてはろくな大人にならないぞ」と小言の一つも言ってやろうかと思っていたが、これが実に良く分かる芝居で、迷惑な高齢者にならずに済んだ。
交互上演の「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」の方は“大人向け”ということでつかみどころが分からず「観てきた!」がずっと書けないでいる。こちらは“子供向け”ということで居間で寛ぐ夫婦が小ネタをかます最初から分かりやすい。そしてドンキホーテとなって旅に出て行く流れが実に良い。そこに歌と踊りが入って「注文の多い料理店」風のブラックなお話を明るく楽しく観せてくれる。いやあこの曲もギター伴奏もプロの技だ。歌と踊りは普通のおじさんおばさんのそれ(+アルファ)だが十分楽しめた。
聖なる怪物
MIXZONE
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/03/10 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
分類すればオカルト・ミステリーとでもなるのだろうか。
こういうものを面白いと感じるセンサーが私の体には備わっていないので感情は1ミリも動かされなかった。一言で言えば「あほくさ」だ。しかし近くにいた若い女性の団体は大喜びで拍手をしていたのでこれが気に入る人も多いのだろう。まあ何だか理解不能なので評価せずにしよう。
蜘蛛巣城
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2023/02/25 (土) ~ 2023/03/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
オリジナルは黒澤明監督の1957年の映画で、シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に移したものである。私は10数年前にこの映画をTVで観て黒澤映画とシェイクスピア戯曲の面白さを初めて理解できたのであった。
それが今回舞台化された。出演者を見てみると
・マクベス→鷲津武時(わしづたけとき):三船敏郎(37):早乙女太一(31)
・マクベス夫人→鷲津浅茅(あさじ):山田五十鈴(40):倉科カナ(35)
となっていて、三船と山田という超名優に対して今回のお二人がどんな風に対抗してくるかがポイントである。山田さんは実際の年齢以上に見えてしまうのに対して倉科さんはかなり若く見える。それは三船さんと早乙女さんについても同じであってどちらも20歳くらいの違いにすら見える。重厚対新鮮の戦いやいかにというところか。
最初から若くストレートな演技でぐいぐいと引き込まれた。そして残り30分までは星5つだったのだがエンディングは映画とは異なるもので私好みではなかった。そこだけが残念。
ペリクリーズ
演劇集団円
シアターX(東京都)
2023/03/01 (水) ~ 2023/03/08 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
CoRichにもあるあらすじを読むと「そんなアホな!」という感想の連続でシェイクスピアの金看板が頼りの作品という気がしてしまう。しかし、舞台が始まってみると物語の振れ幅と同じくらい躍動的な振付けと斬新な舞台演出に圧倒されてしまう。とくに嵐に翻弄される船を椅子と机で表す手法は舞台上に甲板を見事に現出させる。感情をすべて舞台に持って行かれた結果、終盤のあまりにあからさまな父と娘の再開シーンでは不覚にも場内の湿度の調整に貢献してしまった。振り返ってみて、荒唐無稽なストーリーを円熟期に入った天才が周到に配置してこの演劇を構成したのだと納得した。
売春宿の古顔を演じる杉浦慶子さんのぶっとんだメイクと演技にぶっとばされた。
古典+斬新な演出+確かな演技で言うことなしの星5つ。…と勢いで書いたけど、冷静になってみると演技のレベルには結構ばらつきがあった。
聖なる炎
俳優座劇場
俳優座劇場(東京都)
2023/02/26 (日) ~ 2023/03/04 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
(^^♪オレがむかしサマセットだったころ父さんはモーニングセットで母さんはゲームセットだった。
などと昭和のギャグの真似を作ってしまった。
というのはまるで自分がサマセット・モームの生まれ変わりではないかと思うくらい先が読めたからである。もちろん転生したはずはなくこういう古典は部分部分がいろいろなドラマなどで借用されてお馴染みになっているからである。そういう事情を差し引いても満足度は普通だなあ。
アンナ・カレーニナ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2023/02/24 (金) ~ 2023/03/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
マンガ版で予習した段階では自己チューの不倫女の物語であって、これを3時間半もやられてはかなわんなあと気が重かった。しかし舞台が始まってみると特に何があるのでもない各場面に引き込まれるのである。舞台でもアンナはただのバカ女であって1ミリも共感できない。この物語はあらすじという骨でなくそこにたっぷりと付いた肉を味わうものなのだ。
実に演劇らしい演劇だ。宮沢りえさんの芝居臭さ100%の演技も非常に心地良く感じられる。宮沢さん以外は80%に抑えて彼女をより際立たせるサポートをしているようにも感じられた。初めて演劇について何かをつかめたような気がする。納得のスタンディングオベーション。
これから観る人はこのお話の構造を頭に入れておかねばならない。
話の本筋はアンナ(宮沢りえ)+夫のカレーニン(小日向文世)+愛人のヴロンスキー(渡邊圭祐)の三角関係であるが
副筋にキティ(土居志央梨)+リョーヴィン(浅香航大)の愛の形があり、この二つが並行して演じられ対比される。そしてこの二つに密接に絡んで別の男女の関係を提示する
第3の筋としてドリー(大空ゆうひ)+スティーヴァ(梶原善)夫妻の姿がある。
リョーヴィンはトルストイ本人をモデルにしていると言われるが彼とアンナとが結ばれたりはしない。