latticeが投票した舞台芸術アワード!

2018年度 1-10位と総評
卒業式、実行

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卒業式、実行

Aga-risk Entertainment

「〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』」以来のアガリスク鑑賞。
文句なく面白い。外れても裏切られても小劇場通いを続けていて良かった。

一言でいうと、卒業式実行委員長に降りかかる数々のトラブルメーカーを巡るドタバタ喜劇である。ドタバタとはいっても、どついたり、転がったり、裸になったりするものではなく下ネタも一切ない。また奇妙奇天烈な人物もいないし、悪人も聖人もいない。普通から微妙に外れた人たちが予想のわずか上をクリアして行く、その匙加減が絶妙な正統派会議系コメディーである。

皆さん芸達者な中で、生徒会長の熊谷有芳さんと美術教師の中田顕史郎さんがとくにツボだった。

詳しい説明は他の方にお任せして、とりあえず1番ゲット。

美愁

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美愁

The Vanity's

「観たい!」が66もありますがステマ臭いのも多く、さてどうなんだろうと行ってみてひっくり返りました。

「上質で面白い舞台を作る団体が、己が知らぬだけでまだまだ沢山有るのだなと序盤でふとそんなことを思った。」(c)あさりパクパク、時々しじみさん

にまったく同感です。音楽ものは結構観ているつもりですが、少なくとも歌については小劇場では聴いたことのないクオリティでした。

音楽を除いた演劇としても主宰のいうところの“ダーク・ファンタジー”にどんどん引き込まれて行きました。観客の心に微妙な違和感を生じさせ育てて解消する構成もジャストタイミングでした。

アフターライブも永遠に終わらないでほしいと心底思いました。
もっと広い劇場で多くの人に観てもらいたいものです。

NoBody,NoParty

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NoBody,NoParty

東京AZARASHI団

観客の笑いでシアター・サンモールが揺れてました。喜劇としての面白さに仕掛けの面白さが加わって、すっきりと笑いながら深く感心しました。アイディア勝負の面があるので肝心のところが書けないのが残念ですが、芝居のアイディアとか仕掛けとかが好きな人は必見です。

最後がグダグダべたべたになったので減点したいところですが、秘書役の那海さんにハートを射抜かれてしまったので星は5つです。

なおORICON NEWS 4/13 に那海さんのインタビューが載っています。
“5/16(水)から始まる舞台「NoBody,NoParty」に出演! 那海さんにインタビュー”

少しだけ引用すると

『あるお屋敷で連続殺人事件が発生する』という内容の舞台を上演する劇団の物語で、舞台で行われているお芝居の中でいろんなハプニングが起こってしまい、それをどう乗り越えられるか?というのを見せていく作品です。…

ということです。…から先はネタ晴らしになるので知りたい方は元記事をご覧ください。

白雪姫という女

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白雪姫という女

ライオン・パーマ

最近どうも小劇場の演劇に満足できないでいましたが、それには
・単調な展開に私が正気に返って白けてしまう
・スピードが早すぎて私がついて行けない
・提示された謎が回収されないまま終わる(が何の深みもなく書き散らしただけ)
というパターンがあったと私は認識しています(あくまで私の感想です)。

この舞台は童話の後日譚というナンセンスな喜劇ですが、ストーリーがしっかり書かれていて、進行の早さも適切で、常に話の先を期待する要素があって白けることがありません。最後はすべて回収後の大団円ですっきりとした後味です。

会場は本当に満席で年代も広く分布していました。

ところでアダムの妻役の絹川麗さん、私はずっと白石まるみさんだと思っていました。同年代の方はうなずいてくれるでしょう。

ナイゲン

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ナイゲン

ILLUMINUS


アガリスク3本目にして初「ナイゲン」です。
相変わらず美味しい料理ですが濃い目の味付けは3皿目になるとちょっと鼻につくところも出てきました(具体的にはここでは書きません)。

アガリスクのメンバーが抑え気味の演技で他の役者さんに譲っているような感じがしました。それに応えてやり放題の1・2年の男子(甲斐優風汰さん、秋本雄基さん、澤井俊輝さん)が痛快です。とはいえ今回の私の一推しは前田友里子さんの監査委員ですね。大騒ぎの中でもしっかり通る冷静な受け答えが最高です。

BLIND HERO

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BLIND HERO

演劇集団「バックドア」

いやあ、面白かった。久しぶりにスカッと笑えました。

チラシではシリアスな感じがするのですが(企画段階ではそういうテイストだったのかも)実際にはそんなところは微塵もありません。意外性重視でそういう表現にしたのでしょう。それも良いのですが観劇検討中の人をミスリードする恐れがあります。私もピアノとバイオリン目当てでした。

あからさまなキャッチコピーを作るなら「ゲス人間バトルロイヤル」とでもなるのでしょうか。私は“そうくるか”、“それはないよ”、“まさかあなたまで”という感じの呆れた仕業の連続に笑いが止まりませんでした(ちょっと盛ってます)。ナンセンス(?)・コメディ・ファンには絶対のお勧めです。

まだまだ試行錯誤を続けているようですし、俳優さんが一杯一杯になる場面も見受けられました。千秋楽に向かってどんどん進化して行くことでしょう。

私のツボは終盤になって聖子ちゃんが首のあたりを見せるところです。十字架でも出てくるかと思ったらまさかの…でした。

はりこみ

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はりこみ

殿様ランチ

チラシの図案からは松本清張風の刑事ものを想像しましたが実際は180度違うものでした。しかし、その勘違いが幸いして今まで観たことのないような舞台に、脳味噌が大喜びです。マンガでいうと、中崎タツヤかポテチ次郎が書いた「はりこみ」という題名の4コマあるいは短編の連作を読んでいるような感じもしました。ただし、あくまで私のイメージで全然違うじゃないかと後で追及されても困ります(笑)。

会話劇ですが、普通の会話から、いつもはかけているリミッターを外したものが多く、本音より先に行き過ぎてしまうものもあって、笑いながらも結構怖くなることもあります。もちろん、ほとんどは「ぐはは」と笑ってしまうものですが、「なるほど」と納得させられるものもある一方で、「それはないわ」というものも紛れ込んでいて油断ができません。

それぞれの会話は「はりこみ」とは関係のないものも多いのですが、全体としては確かに「はりこみ」だったなあと納得させられます。私の筆力、記憶力の欠如で実態にあまり迫ることができていませんが、(ドタバタでもエログロでもない)おバカな演劇を観たいという方には絶対のお勧めです。

その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

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その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

インプロカンパニーPlatform

観客参加型の即興的要素の多い推理劇です。基本的にコメディですが犯人当ての部分はガチです。なかなか面白い方式で私は大いに楽しめました。こういうものの愛好家には絶対のお勧めです。

カーテンコールで、その場限りのものなのでネタバレという概念はなく何でも書いて結構という発言があったので、少し丁寧に紹介しておきます。

「インプロカンパニーPlatform」という団体は「即興と台本の越境(コンセプト・インプロ)」を旗印に、いろいろなイベントを主催しているようです。観客からお題をもらったり、重要な選択を観客に委ねたりするのが特徴です。

今回の「その探偵の名、~エコソン少年の殺人~」ではおおよそ以下のように仕掛けになっています。私も初めての観劇なので細部で間違いがあるかもしれませんがご容赦を。

まず短い殺人のシーンの後、刑事と7人の容疑者が登場します。

容疑者は被害者の愛人や家政婦、会社の部下などです。
容疑者は
殺意/嫉妬/尊敬/母性/友情/依存/恐怖/愛情
と書かれた8枚のカードから1枚を引きます。これは容疑者が被害者に対して持っていた感情を表します。もちろん「殺意」を引いた者が犯人となります。だれが何を引いたかは観客にも本人以外の役者にも分かりません。

容疑者はその感情を持っていることを表すようにアドリブを加えて台本を演じます。どの程度、感情を表に出すかは役者に委ねられているようで、さりげなく、しかし後で振り返ったときに「あれがそうだったのか、なるほど!」といわれる演技をおそらく目標としているのでしょう。

本編が始まる前に、殺された被害者の職業を観客に決めてもらいます。私の回は「不動産」という発言だったので「不動産屋の社長」ということになりました。以下、台本をそのように読み替えて演技をするのです。

そこからは刑事(と一部で観客)の指定した容疑者(1~2名)と被害者との最近のエピソードが演じられます。それを見て刑事がその容疑者の持っている感情(=引いたカード)を当てます。ここはいくつかの候補から観客の拍手で決めたりもします。当たった場合は以後、刑事と一緒に推理をすることになり、外れた場合はそのまま演技を続けます。一定の長さの演技をしますので、そう何回も当てる機会があるわけではありません。私のときは6~7回目くらいで犯人を当てましたが、それ以前の公演では時間切れで当てることができなかったそうです。刑事は被害者役も演じるので、忙しくて推理に集中できないので無理もありません。

観客がすることは上で書いた以外に最初に配られる小さな紙にキーワードを書いて提出することがあります。その紙は集められ、途中の寸劇の中でくじ引きされて使われ、話をカオスに陥れたり、歌の題名になったりします。なお、解答用紙を回収して正解者には賞品というような企画はありません。

劇の途中で意見を聞かれたりするのは困るという人は、×マスクをもらうことができますし、前2列、通路側2列を避ければまず聞かれないでしょう。

なんだか説明がよく分からないという方も含め、ここまで読んだ方はぜひ劇場へ!

円盤屋ジョニー

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円盤屋ジョニー

ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン

「男っておバカですね」という永遠のテーマに寄り添った30分の短編3作。
3つの話はサービス精神溢れる喜劇エンターテインメントでどれもダイレクトに感じ楽しめるものです。お父さん向けのカットもありますよ(笑)。
3つはまったく異なる設定ですが、的確に役者さんが集められていて作者の意図が明確に表現されています。衣装も大道具も小道具もしっかりしていて、ああ演劇ってこうだよなあと再確認しました。
平日昼間割3,000円はちょっと申し訳ないくらい。

人狼TLPT S『未来への十字架』

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人狼TLPT S『未来への十字架』

私立ルドビコ女学院

ミステリーファンで美少女グループファンの方は必見です。

まずは13人の美少女による近未来の巨大生物との戦いの寸劇があり、続いてグループの歌と踊りが続きます。ここまでが「アサルトリリィ×私立ルドビコ女学院」の部分でこれまでの活動の様子は YouTube で見ることができます。今回はここから、この世界観、メンバーで「人狼TLPT」の指導の下でメインの「人狼」ゲームが始まります。観客は彼女らと一緒に(やや有利な条件で)推理して人狼を当てるのです。

【私立ルドビコ女学院ホームページ】 には【宣伝動画】があります。
注意書きには「多少のネタバレを含みます。」とありますが寸劇、歌、踊りの一部があるということで人狼ゲームの解答には無関係です。行くかどうか迷っている方には見ることをお勧めします。美少女度は、さすがに乃木坂には負けるものの「まゆゆ」の抜けたAKBとは良い勝負ではないでしょうか。

会場に入ると、開演前ながら教官役のお二人が「人狼」ゲームのルールを説明していました。配られる紙にも書いてあり、ゲームの途中でもかなり述べられますが、いきなり行って理解するのは結構辛いので、あらかじめ【人狼TLPTホームページ】で調べておくのが良いでしょう。

誰が誰に投票したかをきちんと記録(記憶)していれば、かなりの確率で正解が得られると思います。ただし、普通は老若男女、様々な職業の人々が13人ですが今回は全員が同じ制服を着た美少女なのでほとんど区別がつきません。特別に胸に番号札を付けても良かったのではないかと感じました。まあ番号札なんて世界観が壊れますし、真剣に当てに行かずとも、彼女らのやり取りを無心に楽しんでいれば十分幸せになれるでしょう。

前方の観客は100%男性でした。後方にはチラホラ女性の姿も。
1,300円のチェキは全員分が完売とのアナウンスが。
「人狼TLPT」のルールでは本番の直前にくじを引いて役割を決めるということなのですが、アドリブにしては女優さんの対応がうますぎます。当然いくつかのパターンは事前に練習してあるでしょうが、それ以上の何か秘密がある気がします。最初に考えたのは、夜になって引っ込んだところでアドバイザーの指示で次の準備を大急ぎですることですがちょっと難易度が高いですね。公演の回数分だけ練習しようにも公演ごとに出演メンバーが違うので難しいし。ここが一番の謎である気がします(私がひどく誤解しているの?)。
*「そんなつまらないことを考えるな」と叱られそうなのでこちらに移動しました。

総評

今年は大手の公演を除いて選考しました。
結果を見てみると、見事にエンターテインメント系ばかりになって自分でもびっくりです。

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