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2017年度 1-9位と総評
〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

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〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』

Aga-risk Entertainment

女性アイドル界の2017年夏の最大の収穫が欅坂46の全国ツアー最終日幕張公演2日目であるとすれば、若手演劇界でのそれは間違いなくアガリスクエンターテイメントの本公演である。

綿密に練られたシナリオを得て、優秀な俳優陣がおそらく膨大な練習を積み上げ作った珠玉の作品を目の前で観ることができるのは今回が最後であろう。今はシアターミラクルの80席のキャパであるが次期公演からは10倍、20倍となり、それでもプレミアチケットとなって入手は困難となるはずだ。

なんてことを秋元康のAKB48の話に重ねて妄想した。
そして彼曰く「大衆が求めるものは何かを考えるのではなく大衆の一人である自分が面白いと思えるものをやれ」と。
常識人の私は伏線回収は多すぎると思うのだが、作り手が面白くてたまらず突き抜けたのだろう。
それで良いのだというのが秋元康の教えだ。
バリバリ突き進んで行ってもらいたいと思う。

脚本などをネット上で公開しているという。
いっそのこと動画をYouTubeで公開してはどうか。
編集して予告編とか最初の「はあ??」のところまでをダイジェストでとか。
iPhone1台を客席上部に固定したもので撮影すれば十分だろう。
動画を見ると絶対に実演が見たくなるはずだ。

欅坂46のセンターは声が出なくなったり、倒れたりしたらしい、
こちらのセンターもあの長台詞が最終日までもつのか非常に心配である。
気になる人は1日でも早く出かけてみることをお勧めする。
*「なんでいきなり欅坂46?」の伏線回収はできたぞ。……弱い弱い(笑)

髑髏城の七人 Season鳥

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髑髏城の七人 Season鳥

TBS/ヴィレッヂ/劇団☆新感線

主役7+1人の中でベテラン勢を差し置いて全体の明るく溌溂とした雰囲気作りに最も貢献しているのは沙霧であろう。
よく通る明るい声、可憐で美しい肢体、手足のしなり、指先の踊りが空気を弾ませる。
演ずるは清水葉月、失礼ながら美貌を第一の売りにしている方ではない。
しかし舞台に立つと、こんな綺麗な女優さんっていました??となるのである。
単独の見せ場はなかった気がするが舞台上にいた時間は一番長く思えた。
これからフォローして行きたい女優さんである。
ところで、次の「風」では沙霧は霧丸という男になるという。
男性観客をこれ以上減らしてどうするんだと言いたい。
すぐ復活するだろうから、その次は、まあ無理だろうが広瀬すずでお願いしたい。

華やかさと切れの良さは極楽太夫にお任せだ。
キップの良いせりふ回し、芯の通った声、松雪泰子はテレビでの印象とはまた別の方向で魅力的である。
歌は満点とはいかないが情感たっぷりで聞きほれてしまった。
拍手のタイミングがなかったのが残念である。
極楽太夫はそのうち藤原紀香でお願いしたい。
熱海五郎一座でのワンマンショー部分は見事であった。

仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 鰹&栄螺

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仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので 鰹&栄螺

ポップンマッシュルームチキン野郎

(栄螺を鑑賞)
最後のあいさつでfacebookに並べてcorichを挙げていた。corichが話題にされるのを初めて聞いたよ。

内容を一言で書けば「喧嘩別れした兄妹が30年の歳月を経て和解する人情喜劇」ということになる。そしてそこに硬軟、美醜、清濁、正邪、その他取り混ぜて大量にトッピングが載っている。
…ううむ先が続かない。こういうときは他の方の感想をカンニングしよう。

*この劇団の良さは「感情操作」の上手さにあると思いました。(c)itomasa7さん

ですよね。散々笑わされるものの、すっと人情ものに戻っている。

*「中東事変」が 暴れまわるんだろうな~ と思ってたけど、 最初だけで、 ちょっと物足りなさを感じました。(c)ガチャピンさん

インタビュービデオのクオリティも高くて、もったいないというか贅沢というか。
まあしかし、煽られて煽られて蹴落とされるというエアポケット的な快感がありました。

小岩崎小恵さんてどこかのバンドのボーカルかと調べてしまった。
いやいや絶対昔やってたでしょう。
そのまま役になりきって地下アイドルとして握手・チェキ・物販で稼ぎましょう(笑)

*大きな劇場やテレビ、映画での見せ方を知ってる人が、メジャーな場所ではできないことを、タガを外せる小劇場でやっちゃう面白ステージ。(c)数学者の奥さん

というまとめに納得。危ないところもギリギリセーフ、音楽も衣装もしっかりしているし、素人臭いところがないですよね。
ここだけは滑りまくりでした。
*肩こりが長かった(c)naisen424さん

星屑バンプ

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星屑バンプ

THE CONVOY

The CONVOY SHOW 不覚にも全然知らなかった。
ここで出会って人生の失点を最小限に食い止めた思いだ。

観客には男性ばかりのグループ(こういうところでは絶滅危惧種だ)も見かけたりしたが多くは女性である。若い方も多いが、かなり古い昭和ネタにも反応が良いので結構な年代の方もそれなりにいらっしゃるのだろう。
そのほとんどが昔からのなじみのようにアットホームな雰囲気を作り出している。
何をやっても笑ってやろうと待ち構えているお姉さんたちもたくさんいるようで、よそ者の私は「そこで笑うの???」と圧倒的なアウェー感に最初は押されっぱなしであった。

お目当てのダンスはまさにキレッキレでバレエ的な優雅さを排除したスピード感あふれるものだった。
1曲の時間が長く、普通なら終わるところで、さらに1コーラス2コーラスと続き、そうだそうだ、どんどん行けと心の中で叫んでしまった。
そして曲の数も多い。
ポーズも決まって拍手喝采、これで終演と思いきやそこから30分くらいも続いたような気がする。

男ばかり8人(内4人は若者)のダンスショーということで、「俺には無関係」となりそうだが人生踏み外すことも必要だ。騙されたと思って行ってみよう。
最初の30分の(今と昔の)お姉さん方の熱狂に同化しているかのように見せかけてしのいでいれば、そこから先には男性観客も大いに楽しめる世界が開けている。

くるんのぱー

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くるんのぱー

ふくふくや

「ふくふくや」は初めてで、題名が「くるんのぱー」ということもあって、何か変わったことを仕掛けてくる劇団かと思っていました。しかし、全くそんなことはなく、芸達者の皆さんと達人脚本家の方が正統派の人情話を自在に料理し、単純な予定調和に陥らない極上のお芝居に仕上げてくれていました。

まあしかし何度も転がしてくれます。周りのファンの皆さんは転がす前のサインをしっかりと捕まえていたとのこと。私はそんなことにはまったく気づかず、なすがままに飛ばされていました。

アフタートークでリピーターの方から「歌手の三条きよし」に歌のリクエストがありました。なるほど25年も歌っているヒット曲だというのに鼻歌のひとつもなかったなあと共感していると、きよし役の岩田和浩さんはあきらかに動揺されたご様子。どうなるかなあと見守っていると「後からYouTubeで」という助け舟が出て岩田さんほっと一息。このファンの方にも星5つ!役者さん達とこういう濃いファンの方々が作る幸せな空間がここにあるのだなあと羨ましく感じました。

屋根の上のヴァイオリン弾き

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屋根の上のヴァイオリン弾き

東宝

ミュージカルファンとしては押えておかねばならない基本演目ということで行ってきました日生劇場。昔、ミュージカルに興味がない、というか精神的にも金銭的にも余裕がないころに森繁さんで話題になっていたことは覚えています。何十年も経ってようやくの鑑賞です。

歌、踊り、ストーリーのバランスが絶妙です。
ミュージカルのストーリーというと単純すぎたり、壮大すぎたりで軽視されていることが多々ありますが、この作品では力まず、急がずじわじわと心に沁みこんできます。日本での初演から50年というのも納得です。

実咲凜音さんはしっかりものの長女にぴったりで凛とした美しさにあふれ、神田沙也加さんはいかにもその妹らしい柔らかな振る舞いが印象的でした。また肉屋の今井清隆さんのバリトンボイスは歌もセリフも朗々と響いて、しかも嫌味がありません。もちろん鳳蘭さんの安定した歌と演技は全体を引き締め、…他の方も挙げればキリがありません。

何かあっと驚くものを求めるという人を除き、どなたにもお勧めできるものです。

初回のためか、長い休符のあとの歌い出しがこのレベルではありえないくらいバラバラなことが2度ありました。たぶん何人か居残り特訓させられているでしょう。

『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』

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『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』

座・高円寺

「ジョルジュ」も聴いてきました。

クラシックにはまるで疎い私でもショパンの曲は知っています。しかし、演奏会に行ったことはありません。その程度の関心でもこの演奏にはノックアウトされました。座席の位置も良く、ピアノの反響板正面約10メートルで聴く一流のクラシック・ピアニストの演奏は想像を超えていました。一音一音の分離の良さ、流れの滑らかさ、強弱のレンジの広さ、すべてが初体験でした。演奏に精神を集中していると別世界に吸い込まれそうになりました(もちろん眠くなるのとは違います)。クラシック・ファンもジャズ・ファンもそしてオーディオ・ファンも楽しめるものだと思います。

オープニングはまず中島朋子さんがにこやかに登場し、感情たっぷりに話し始めると、ジョルジュ・サンドもこのように優美というか耽美というか魅力的な女性だったのだろうか、それならショパンがあっさり陥落し10数年も生活を共にしたのも無理もないという気にさせられます。ついで田中美央さんが顧問弁護士として魅力的な低音で入って来ます。ひとしきりメッセージの交換をすると、お待ちかねの関本昌平さんのピアノが颯爽とソロを取ります。中島さんをクラリネット、田中さんをコントラバスと思えば変則的な編成のピアノトリオです。もちろん同時に音(声)は出しませんが、なにかそういう一体的なユニットを感じました。

私の毎年末の行事にしたいと思います。

売春捜査官

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売春捜査官

稲村梓プロデュース

昔は演劇に興味はなかったが初演当時に評判になったことは記憶している。
それを半世紀も経った今、初めて観ることになるとは。

圧倒的なスピード感、観客を追い込む激しく無意味なセリフとアクション。
重層的な構成。
これは楽しい楽しい。評判になるのもわかるわかる。
へたな役者が演じたら目も当てられないが、この4人はフルスピードでコーナーぎりぎりを攻めて行く。
勢いあまって最終盤では早口すぎてセリフが聞き取れなかったのはご愛敬。

もっとも、時代がまるで違うので、若い人にはどんなメッセージが伝わっているのだろうか。

いわばプロレスなので生理的に受け付けない方もたくさんいらっしゃるでしょう。

欲望という名の電車

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欲望という名の電車

Bunkamura

演劇鑑賞初心者としては観ておかねばいけない作品の一つでしょう。無駄なひねりのないストレートな感動作でした。大竹しのぶさんは言うまでもなく、北村一輝さんも鈴木杏さんもすばらしい熱演でした。

ひねってあるのは題名くらいです。この題名からこのストーリーを想像する人は皆無でしょう。しかし非常に記憶に張り付いて忘れることのできない題名です。作者の狙いもそこにあるのでしょう。

この舞台の後でビビアン・リーとマーロン・ブランドによる映画版をアマゾンでレンタルして観ました(199円)。映画は良くも悪くも丁寧に説明してくれます。冒頭には実際にあった「欲望」行の路面電車も出てきます。当時の街の様子も分かって、私の貧しい想像力を補ってくれます。映画では最後にブランチは自動車に乗って去って行くのですが、舞台を観ているときはそういう時代だとはまるで考えもしませんでした。

しかし、どこの国でも一つの階級が没落し、別の階級が勃興することはしばしば起こることです。第二次大戦後のニューオーリンズに限定された話ではありません。そういう意味では国籍も時代も曖昧になる演劇・舞台という枠組みも悪くないと思い直しました。

初めてのシアター・コクーンは入口が分からず、ビルを一回りする羽目に。

*ミッチが「何を教えていたの」と尋ねるとブランチが "...English..." と答えるのを舞台では「英語」、映画字幕では「国語」としていました。私が訳者でもどちらにするか迷うところです。


総評

昨年までは年に2つか3つの公演にしか行っていないので比較はできませんが、今年私が行ったものはどれもほぼ満員で結構なことだと思いました。

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