やまけんの観てきた!クチコミ一覧

21-36件 / 36件中
二ツ巴-Futatsudomoe-<舞台写真公開中!>

二ツ巴-Futatsudomoe-<舞台写真公開中!>

壱劇屋

ABCホール (大阪府)

2018/04/06 (金) ~ 2018/04/08 (日)公演終了

満足度★★★

エンターテイメントとして面白く見た。布を使った水の表現や人力で矢を飛ばす演出も、一歩間違えばチープになりかねないところをカッコよく見せていて◎。少年マンガ的な敵キャラや武器、必殺技(?)も楽しい。
一方、物語には疑問を感じるところも多い。言葉なしでやるのであればもっとシンプルな筋でもよかったのではないだろうか(そもそも言葉なしでやる必要性もよくわからないのだが……)。特に疑問なのがラスト。

ネタバレBOX

争いを止めるためとは言え、トモエに主(=トモエの父)を殺させるというのはあまりにともえとともえの父の都合でしかない、トモエの気持ちを考えていない解決ではないだろうか。トモエからして見ればともえ父娘が揃ってトモエを騙して父を殺させている(いやその前に一度死んではいるのだけど)わけで、万が一トモエが真相を知ったら新たな復讐劇がはじまってしまうのでは、と余計な心配をしてしまった。
平穏に不協和音が

平穏に不協和音が

演劇企画集団LondonPANDA

小劇場 楽園(東京都)

2018/03/29 (木) ~ 2018/04/01 (日)公演終了

満足度★★

俳優の力で一応は見られるものになっていたものの、面白いとは思えなかった。二人芝居を展開するために会話の中で新事実が次々と提示されることになるのだが、それらがいずれも物語を展開するためのネタとしてしか機能していない。展開自体がエンタメとしての面白さに結びついていればそれでもよいのかもしれないが、残念ながらそうなってはいなかった。夫の女装が単なるネタの一つとして登場していた点には特に疑問を覚えた。

SUPERHUMAN

SUPERHUMAN

ヌトミック

北千住BUoY(東京都)

2018/03/23 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★★

音楽的手法を用いて演劇作品を作ってきたヌトミック。次はどのような展開を見せてくれるかと期待していたら、今作は出演者の得意技披露大会の様相。初めのうちこそ今作は音楽とは関係ないのかしらんと思ったけれど、異なる技能を持つプレイヤーが集まって一つの作品を作り上げるという意味で、この作品の作り方はまさに音楽のそれ。楽しく見れたし出演者の魅力も堪能したけれど、欲を言えば出演者たちの未知の魅力も引き出してほしかった。
マップを作って会場周辺の魅力を引き出していたのはとてもよい試み。

Ten Commandments

Ten Commandments

ミナモザ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/31 (土)公演終了

満足度★★

今の日本で原子力を扱った作品を書くにあたって、書くことの葛藤それ自体を作品に反映することは作家として誠実な態度なのかもしれない。だがそれは表現者ならば、いや、言葉を発する誰もが持つべき葛藤であって、それ自体を作品の主題に据えた瞬間に、興味の中心は「書く私」になってしまう。よく言えばナイーブ、ともすればナルシスティック。それでも一応は「見られる」作品になっていた点にベテランの力量を見たが、作品としては評価できない。

巛

ゆうめい

OFF OFFシアター(東京都)

2018/03/02 (金) ~ 2018/03/04 (日)公演終了

満足度★★★

ゆうめいの作品を観るのはこれで3度目。初めて観た『弟兄』ではその巧さに唸りつつ、自らの痛々しい過去を笑えるものとして提示する池田の姿勢に疑問を感じた。観ていていじめの共犯者になったような息苦しさを覚えたからだ。2作目の『〆』は他人の痛みを笑っているようでさらにいただけなかった。
今作は前2作と比べると一歩引いた、客観的な視点から物語が描かれていて、その意味で前2作で感じた居心地の悪さはほとんどなかったのだが、一方で凄みも減じてしまい、結果として感じたのは物足りなさだった。
(その後、ゆうめいは6月に早くも新作『あか』を上演。こちらは文句なしの傑作だった。)

物の所有を学ぶ庭

物の所有を学ぶ庭

The end of company ジエン社

北千住BUoY(東京都)

2018/02/28 (水) ~ 2018/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

ジエン社の特徴の一つに複数の時空間が重なり合い、その中で複数の会話が混線しながら展開する過剰な同時多発会話がある。これまでの作品の多くでは、あり得た別の可能性を描き、あるいは過去/現在/未来を並置して見せるために同時多発会話は用いられてきた。今作ではそこに「所有」というテーマが重ねられ、領有や居住、共存の可能性に関する思索を誘うものになっていた点にジエン社の進化を見た。土地と人をめぐる思考は震災後の日本を描き続けるジエン社がたどり着いた必然であり、排外主義の蔓延する現在の世界に生きる私たちにとっても避けては通れないものだろう。

ホールドミーおよしお

ホールドミーおよしお

オフィスマウンテン

STスポット(神奈川県)

2017/05/24 (水) ~ 2017/06/10 (土)公演終了

満足度★★★★

なんだかわからないが凄まじいものと対峙させられる稀有な時間だった。眼前で蠢く俳優や音、光は私の中に蠢く異物をも感じさせ、このような時間は他でなかなか体験したことがない。俳優の身体の一部が独立した生き物のように見える場面もあれば俳優を含めた空間全体が一つの生き物のように見える場面もあり、俳優の身体と周囲の空間との関わりの可能性の底知れなさを感じた。
昨年の『ドッグマンノーライフ』は観ていないのだが、一作目『海底で履く靴には紐がない』と比べると出演俳優の多くが「山縣メソッド」を我がものとしているように見え、長い稽古期間と継続した活動の成果が十分に見える作品だった。

レモンキャンディ

レモンキャンディ

匿名劇壇

王子小劇場(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

満足度★★★

劇団としての力を感じられるよい上演だった。首の動きが揃っているなど、細かい点に演出が行き届き統一されていた点に好感。はじまる前からワクワクさせられる舞台美術もいい。
台本はやや穴が多いものの、見ている最中はさほど気にならず楽しく見られたのも手腕のうちだろう。ただ、オチない話とはいえエンタメとしてはきちんと落としてほしかった。SF的には重要な設定を導入するレモンキャンディが登場してすぐ終幕となる点も物足りない。
もう一点、単に話を展開させるためにレイプ場面があるのは大きなマイナス。人間の欲を描きたいのはわかるが扱いが雑過ぎる。

『あゆみ』『TATAMI』

『あゆみ』『TATAMI』

劇団しようよ

アトリエ劇研(京都府)

2017/05/10 (水) ~ 2017/05/15 (月)公演終了

満足度★★

『あゆみ』や『わが星』といった柴幸男作品の一部は、大きな普遍性を持つ一方、あまりにヘテロノーマティブであり過ぎるという危うさをはらんでいるが、今回の上演ではそのバランスが崩れ、悪い方向に転がってしまっていたように感じた。つまり、オール男性キャスト、父視点の導入などの演出が、作品の全体を男性目線から見た女性像に押し込めてしまっていたのではないか。
特に、作中で唐突に「覚えていますか」「想像してください」とルーマニア日本人女子大生殺害事件の話が挿入される場面は観客の想像を広げるどころか狭めるものであり、かつ、自分たちが加害者である男の側にいることを忘却した押し付けである。
私の記憶によれば全く同じ演出が劇団しようよの別の短編でも採用されており、そうであるならば、それは演出の大原渉平の個人的なこだわりに過ぎないのではないか。

罠々

罠々

悪い芝居

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/04/18 (火) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★

演劇でエンタメをするという点ではそれなりに健闘しているが、それ以上の魅力は感じられなかった。
公式サイトにあるように「被害妄想はファンタジーなんだ」というテーマのもと、「罠にハメられたと思い込む人間たちによる、愛しい復讐劇」が演じられる。複数の筋が絡む物語はやや複雑な構成をとってはいるものの、宣言した通りの物語が展開され、意外性には欠ける。むしろもっと単純に物語を見せてもいいのではないかと感じた。
ビデオカメラによる中継映像が舞台上に映し出される仕掛けは、メタ視点を導入するという意図は見えるものの、効果的とは思えなかった。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度

残念ながら、俳優二人の安定感以外は全くいいと思えなかった。
暗闇の中で「シュッ」「ピシッ」「ハアハア」と音が聞こえてきて、競馬の場面がはじまるのかと思いきや中年男性二人が縄跳びをしている、という冒頭は意外性があったが、そこから「どうしてこうなったんだっけ」と回想がはじまるにも関わらず、結局のところ縄跳びにも回想構造にもほとんど意味がないという構成は大きなマイナス。
最終的に男二人がなぜ前向きになったのかもよくわからない。具体的な肉付けのない「ダメな男」は記号的で奥行きを欠く。
タイトルの「輓曳競馬」がテーマを説明するための言葉に過ぎず、しかもそれを作中で自ら説明してしまうのも巧くない。
制作面では、私の席からは(というか角度的にかなりの数の席でそうだったのではないかと思うのだが)位置の低い芝居がほとんど見切れていた点が残念。

ハムレット

ハムレット

ゲッコーパレード

旧加藤家住宅(埼玉県)

2017/03/31 (金) ~ 2017/04/10 (月)公演終了

満足度★★★★

作品の詳細については初演時に批評誌『クライテリアvol.1』に書いた。
http://criteria.hatenablog.com/entry/criteria_vol1
初演と比べると「劇的」な要素が強調されているように感じたのだが、私はこの作品の魅力はリアルとフィクションを軽やかに行き来するところにあると思っているので、「演劇であること」の強調は作品の魅力を増すことにはつながらなかった。
もちろん、観るのが二度目である以上、初演時ほどには魔法が効かなかったということもあるだろうが、いずれにせよ初演のハードルは越えられず。
と、厳しいことを書いたが、もちろんこれは初演と比較するならばという話で、基本的には『ハムレット』の上演としても、民家での上演としてもよく考えられたよい作品。

時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★

果敢にエンタメに挑戦する姿勢は評価したいが、残念ながら映画や小説、漫画やアニメなど他のメディアのSFエンタメ作品と勝負できるほどのクオリティには達していない。エンタメで勝負するのであれば他のメディアとタメを張るくらいの矜持とクオリティがなければ、(小劇場)演劇全体の価値を下げることにもつながりかねないと私は考えるので、残念ながらこの作品を評価することはできない。

ネタバレBOX

タイムマシンだと思っていたらもしもボックスだったという設定は(さほど珍しくはないものの)よかった。
遠くから見ていたのに見えない。

遠くから見ていたのに見えない。

モモンガ・コンプレックス

BankART studio NYK 3C gallery(神奈川県)

2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★★

とにかく楽しい。ダンスに愛嬌があるのはもちろん、観客と「現在」を共有する上演に好感を持った。
作品のモチーフである「現在」を様々な手法で見せて飽きさせない一方、「現在」を示す手法はどれも予想の範囲内でもあり、モチーフの掘り下げという点では物足りなかった。
もっとも感心したのは「子供席」の設置で、出入り口の近くに十分なスペースを確保する制作的配慮も去ることながら、子供の「参加」を柔軟に受け入れる姿勢が素晴らしく、その姿勢が観客にも共有される幸福な空間が出現していたように思う。

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

「ここにはいない人」「ここではない場所」を描いてきた「いつ高」シリーズの最新作。中庭、噂話、短歌などのガジェットを利用したあの手この手で観客の想像力を刺激する。
無言の場面、無人の場面を大胆に使った手法に攻めの姿勢が見えて頼もしい。森本華の演技に「人が恋におちる瞬間をはじめてみてしまった」という羽海野チカ『ハチミツとクローバー』の名場面を思い出す。
連作を追ってきた身としてはこれまでの想像を見事に裏切るキャスティングもよかった。
別演目での1日4公演を見事に回した制作手腕にも拍手。

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

MICHInoX(旧・劇団 短距離男道ミサイル)

Studio+1(宮城県)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★

まったく好みではない、にも関わらず嫌な気持ちがしないというのはすごいことだ。
太宰治『人間失格』に引き寄せながらセミドキュメンタリー風に示される俳優たち本人のダメ男っぷり。本当にダメダメなのだが、舞台上の彼らはとてもチャーミングで、ついうっかり愛すべき存在であるかのように思ってしまう。ズルい。
全体としては決して「巧く」なく、学芸会的な手作り感にあふれた雰囲気なのに、ちゃっかりしっかり『人間失格』になっていて、「そこは巧いんかい!」と思わせるあたりもズルい。
面白かったです。

このページのQRコードです。

拡大