Dの呼ぶ声
成城大学 演劇部
成城大学2号館地下1階002教室(東京都)
2018/06/28 (木) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
「心」と「身体」。目に見えないだけに「心」の存在は実に謎めいていると思わせる作品でした。
それがヒューマノイドであったとしても。
主要な役どころも含めて多数の1年生が出演。
ちょっとづつの自己紹介で見せた個々の魅力をもってすれば、今後場数を増やすごとに更なる良い公演を観せてくれそう。
緑色のスカート
みどり人
新宿眼科画廊(東京都)
2018/06/29 (金) ~ 2018/07/03 (火)公演終了
満足度★★★★★
恋愛は人生の椅子取りゲーム。
誰だって軽やかなステップを踏み鳴らし、男ならスマートに、女ならしなやかに目指した椅子へチョコンと納まりたいところ。
しかし、いざとなると思わず「ゴゥォリャ~!」と鬼の形相で飛び掛かってしまう悲しい人のサガ。
そこで軽く弾き出されてしまうか、誰かを引きずり降ろしてでも椅子にしがみつくのかは人それぞれ。
他にも踏ん切り悪く次のチャンスを虎視眈々と狙ったり、ちゃっかり座れたと思ったらなんと糞が付いてて飛びのいてしまったり・・・
そんな、あぁ~ッ穴があったら入りたい!感覚が満載でむちゃくちゃ楽しい。
本当にどこにでもいそうで、自分の友人だったり仕事仲間であったとしても全くおかしくない登場人物の面々。
その中に過去の自分自身が何気に紛れていたとしてもおかしくないくらい。
おそらくは多くの女性と同様に、子供の頃、憧れのキラキラ男子がドジで無欲な主人公女子に真剣な愛の告白をする少女漫画に心ときめかせ育ったであろう作者さん(偏見が入っていたら申し訳ない)が、大人になり冷ややかで鋭い観察眼・表現力と人間愛を装備して、これがリアルの恋愛劇です!と言わんばかりにホントのリアルを突き付けられたかの様でした。
役者さんは全員巧いし、流れるようなテンポや場面の表現力、足音が響くフローリングを逆手にとった演出も見事です。
観にいくと、ひょっとすれば舞台上に自分の姿があったりするかも。
安楽病棟
劇団青年座
本多劇場(東京都)
2018/06/22 (金) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
通常の病院よりも明るめの内装や、その調度品に至るまで私の認識しているものと寸分の違いもない終末期医療病棟が舞台上にありました。
その病棟で生活を送るのは様々な症状を抱えた認知症患者。
舞台を降りれば皆さんしっかりお元気な役者さん達なのでしょうが、それは最前列で観てもイメージに歩み寄る努力は全く必要のない年老いた認知症患者さんでした。
前半は病棟での何気ない日常が、看護師さんには本当に目まぐるしく、患者さんにはゆったりとした日々がとても丁寧に描かれており、ごく自然な可笑し味と「老い」が突き付ける各々の哀愁がしっかり感じ取られます。
休憩を挟んだ後半はドラマが大きく回りだし緊張感が生まれる中、認知症と終末のあり方について、もうとことん考えさせられました。
突き刺さる様な台詞のひとつひとつを噛みしめながら帰路につき、そのまま本作の内容を家族に報告して話し合ったりしました。
「老後」や「認知症」についてはラビット番長・光希・ハグハグ共和国さんも作品で扱われていますが、どの劇団さんも真摯にテーマと向き合われており、毎回考えさせられます。
認知症には将来なるかもしれないし、ならないかもしれない。
青年座さんの本作もしっかりした演技・演出で、とても長編小説の舞台化とは思えないほどの自然な流れと、舞台ならではの圧倒さでこちらに問いかけてきます。
コーラボトルベイビーズ
第27班
駅前劇場(東京都)
2018/06/22 (金) ~ 2018/06/27 (水)公演終了
満足度★★★★★
一言でいってしまえば「家族」の物語という事になるのでしょうが、あまりにもいろんな感情が染み出してくる深い味わいに驚きました。
現在進行している2方向からの描写や過去の情景等々、演劇テクニック的に何という手法が施されていたのかよく分かりませんが、料理なら「うまッ、コレいったいどうやって作ってんの?こんなの家じゃ絶対できないわー」的な感じ。(う~ん、伝わるのか、この表現で)
作中では家族の歴史とは全く関係のない、おバカな男3人衆がスゴくいいスパイスになっていたのは確かだと思うのですが。
幸いにも自分の父親は本作の様なダメ親父ではないし、家族構成的にも全く異なるので、共感するには遠く離れているはずなのに、だからといってよその変わった家族をただ鑑賞してきたというには、あまりにも心打たれる感触が生々しい。
悩み多き思春期の甘酸っぱさや苦みがたっぷり染み込んだ「家族時代」に培われたものが、親元を遠く離れた現在に、良くも悪くもしっかり繋がっている事をしみじみと噛みしめてしまうからでしょうか。
二代目はクリスチャン
★☆北区AKT STAGE
北とぴあ つつじホール(東京都)
2018/06/21 (木) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
「蒲田行進曲」同様に大きい劇場じゃなければとても納まりきれない弾けた作品。
昔観た映画版の記憶はおぼろげですが、多くの仲間がいたはずの教会陣営に舞台版ではシスターが一人だけで活動しており、自身の意志をそのままストレートに出せる環境の違いがポイントでした。
何より生の芝居、飛び散る迫力、エンターテインメント色の強さに加えて心の内を絞り出す様な台詞の応酬。
役者さんだけでなく、音響・照明さんの仕事量・内容のハードさは通常の舞台の一体何倍?
「愛と憎しみ」「友情と嫉妬」が入り乱れ、繋がり合ったり、敵対したりと関係性の変化を追うのになかなか苦労しましたが、そんな泣き言をいうと「ナ~ニが関係性じゃ!」とたたっ斬られそう。
おそらく真っ新な一度目の観劇よりも、程よく要点をおさえた二度目、三度目の方が、より味わい深く楽しめるのではないかと。
演じる方も観る方も一筋縄ではいかない感じが、つかこうへい作品。パワーの塊です。
白石邸~誘引速度アップアップ!!
劇団だっしゅ
北池袋 新生館シアター(東京都)
2018/06/22 (金) ~ 2018/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
さすが25周年劇団の貫禄。
場内の空気を自在に操る小劇場コメディーとして、そしてストーリーものとして最上級の面白さでした。
貫禄はあっても皆さん何故か若々しいのはどーゆう事?
最初の展開に、あらすじと全然違う話?かと思いきや、しっかりあらすじと合流していき、カオスな登場人物がひとつのストーリーに繋がっていくのがメチャクチャ楽しい!
コメディーとサスペンスのメリハリがバッチリ効いているのと、コメディーが故に事件真相の幅がグ~ンと広がって、誰が犯人か全く予測できません。
もっとも笑い楽しむのに没頭しきって元から犯人探しの方は放棄していましたが。
「前説」に連動しての「中説」もオモシロの加速度をUPさせたまま、いい頃合いで観客に背伸び運動させてくれるのは(『動物電気』さんも取り入れていますが)有難き気配り上手。
私の観た初日一発目で既にエンジン全開、客席は満席に近かったですが、日曜の回にはまだ席に余裕があるそう。
空席なんて絶対勿体ない!!ホント、マジで。
やんちゃんのマス遊び
シャービィ☆シャービィ
CINEMA BOKAN(BARガリガリ)(東京都)
2018/06/14 (木) ~ 2018/06/20 (水)公演終了
満足度★★★★
頭の中でイメージしていた、ポスターいっぱい老舗の下北沢BARな感じの会場(最寄は下北ではなく池ノ上だけれど)
会場の雰囲気だけでなく、作品を観ていてレトロで懐かしい感覚になるのは昔の演劇大好き“早稲田っ子”の香りがするからじゃないかと思え、帰って見直してみると作・演出家さんはやはり早稲田演劇研究会OGの方で大きく納得、しかしナゼ若い方達ばかりなのに古き良き香りを感じられたのかは謎。
赤川次郎ミステリーっぽい作品もあって、そんな所もちょっとレトロ。
ポップで不思議香辛料の効いた4作品、小さな会場に演劇愛がビシバシ伝わってイイ感じです。
どのパートの主人公も共通して「イケてる」に乗り切れない女子達、その迷える心理描写やリズミカルで分かりやすいストーリーに一番共感しやすいのは、やはり同年代の女性観客ではないかと思えるのですが、今日の会場ではその どストライクな客層が少なかったのは何だか意外でした。
今、小田急のCMでやってる、傷心の若い女性が一人 下北をさまよい小演劇を観て、ほんのり生きてる幸せを取り戻すヤツ。
あのCMが意図する演劇シーン部分にピタッとはまる!そんな感じの公演でした。
The Manpower
劇団スクランブル
シアター711(東京都)
2018/06/13 (水) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
いわゆる街で見かける喫茶店で会話する人々。
何を話しているのかはうかがい知れないものの会社の愚痴だったり恋愛話だったり十人十色のコミュニケーション活動。
そんなやり取りが次から次へと目の前で生々しく繰り広げられ、ついでに喫茶店の内情まで露わになる、まさに人間ウオッチング満載状態でのスタート。
多彩な人間関係、のっぴきならない迷惑男がその点と点を結んでいったり、勝手に繋がったりしていくも、それらはストーリーというより個と個が接触して必然的に巻き起こる化学反応の様。
あっという間の2時間でしたが10分ほど休憩して、またその先が始まってもおかしくないくらい。
まだまだ彼等の生活は続くのだから物語は死ぬまで終わり無し。
創り手の意地悪な観察眼もなかなかですが、それを観て笑ってしまうごとに「そんな自分も下世話でゴメンなさい」と思ってしまう面白さでした。
希望のホシ2018
ものづくり計画
あうるすぽっと(東京都)
2018/06/13 (水) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
石原プロモーション&元宝塚男役そして野村宏伸さんが醸し出す商業演劇的華やかさと、ものづくり計画の役者さん達が醸し出す親しみやすい人情味、それぞれダブルの味わいが混在していて、今まで観た事ない新鮮な風が。
主に前者が刑事モノのサスペンステイスト、後者が事件に関わる人物が働く民宿で巻き起こる猥雑なコミカルテイスト、この二層構造でもって未解決殺人事件の謎解きストーリーを大いに盛り上げてくれました。
平和の象徴の様なスマイル顔 池田努さんと、苦悩が表情に張り付いた様なシリアス顔 野村宏伸さん、対極なキャラともいえる役者同士がバチバチぶつかり合う渾身の演技バトルシーンはかなり見応えありです。
フランケンシュタインー現代のプロメテウス
演劇企画集団THE・ガジラ
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/13 (水)公演終了
満足度★★★★
定番であるモンスターなビジュアルを封印し、心の葛藤に強くスポットライトを当てた演出はとてもガジラさんらしいと思いました。
原作の本質は尊守されていたとはいえ、それでもビジュアルの影響はかなり大きく、どこか楳図かずお的な恐怖のテイストを感じたのは自分だけでしょうか。
造った者も造られた者も、そして周りの者も不幸・・・ほんと何故造った。
ボーダーリング
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ高円寺(東京都)
2018/06/07 (木) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
観る前は「忍者」の設定がちょっと邪魔の様に思え、実際マンガチックな要素ではありましたが、大いに笑える作品として「なるほどな~」と納得、巧く機能していました。
婚活にあたってパーティー主催者のアドバイスが逐一的確に聞こえ唸ってしまうものの、それが為にロマンティックからはどんどん遠ざかっていき「結婚ってそもそも何だっけ」と何だか思考の泥沼にはまっていく様な感じがたまりません。
お見合い回転テーブルが如く参加者全員の人物像が廻り描かれ、中でも熟練参加者の手慣れているが故に、なんかもう戻れないキャラになっちゃってる感がツボでした。
本人の「いい加減ここで妥協してもという気持ち」と、「イヤイヤもう妥協できない気持ち」の揺れ動きも何となく分ります(笑・・・でよかったか?)
誰もが脇キャラだけで終わらず、ちゃんと生きているところがイイ。
隻眼の産婆
SYOMIN'S
シアター711(東京都)
2018/06/06 (水) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
フィクションではあるものの教科書には決して載らない庶民の歴史を目撃してきたかの様な力強さ。
貧しさの中、生き抜く凄まじさと笑いが同居した世界観には思わず「うわっ!」とか「ぬおっ!」とかのけぞってしまうシーンも多々あって引き込まれました。
決してハッピーな話ではないけれど、ちょっと落ち込んでいる人も、これを観れば元気になれそう。
状況説明的な部分で荒削りに感じるところはありましたが、力量ある役者さんのネットワークが強そうなSYOMIN'Sさん、今後の公演も楽しみです。
旗揚げ公演、初日。良い感じの愛と熱気が会場に溢れていました。
Last Night In The City
シンクロ少女
ザ・スズナリ(東京都)
2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★
シンクロする男の半生や、縁あっての数々の生き様がズッシリ、さすがに見応えありました。
どうにも薄幸な人生が多く胸が締め付けられますが、それ故にちょっとした幸せが宝石の様に貴重で美しく見え、何とも切なくなります。
個人的には如何にも生き下手でうわぁ~っ苦手なタイプだと思ってしまう女性ミキに最初からもう目が釘付け、彼女に関わるとその相手まで輝いて見えるくらいにダーク、且つ面白くもあり味わい深いキャラクターでグイグイ引き込まれました。
全部ホントで全部ウソ
MacGuffins
北池袋 新生館シアター(東京都)
2018/05/29 (火) ~ 2018/06/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
なまじ良い思いをしたばっかりにモーニングTVの占いに依存するようになった主人公青年、恋や仕事の熱血人生奮闘記。
冒頭からのハイパーエンジン全開っぷりに「最初から、こんなにかっ飛ばして大丈夫?」という心配をよそに次々と展開するトラブルストーリーが微妙に絡み合い、それを養分に増々パワーアップしていく様がもうスゴい!
大人の本気と演技力が伴った全力疾走コメディーは、もはやコメディーの枠を超えたジャンルになるのだという実感。
観客を笑わせ楽しませる為ここまでやるか!!と、かなりジ~ンときてしまったようで、観終わった後はじっとしているのが勿体なく無性に走りたくなりました(笑)
それにしても強烈、強力な登場人物達と終始渡り合う主人公の、一公演あたりの消費エネルギーはマラソンに置き換えるなら何十km相当になるのだろうか・・・主人公と役者さんが相まって、その完走を見届けられた様な達成感が何とも良かったです。
追想のエレジー
踊る演劇集団 ムツキカっ!!
シアター風姿花伝(東京都)
2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
開演前に読んだ当日パンフでの作・演出家さんの言葉、これが私にはすこぶる効果的でした。
前後にも文章があるのを前提に一部抜粋すると
・ドラマ部分をダンスに託しました。
・伏線を回収しませんでした。
・色々な説明をしませんでした。
・登場人物の変化にあまり関係のないキャラクターがいます。
一言でいうと「分かりづらい作品ですよ」的な事が書かれているのです。
そうなると、こちらも「よし、わかった!分かりづらいわけね、オッケー」とそれなりに観る体制が整ってくるものです。
ただひとつ気になるのは、観客の中にはそう演劇慣れしている風でもない、ご年配の方々も多数おられて、そんな難解な作品に対して不満が出てこないかという事でした。
そして公演がスタート。
んっ?全然分かりにくくなどありません。
むしろコメディー色が前面に出たアットホーム感が漂っています。
東京から帰ってきた娘はどこか気難しい所があるものの、島の家族や仲間達が創りだす空間は和やかで笑いも起こります。
ただ観進んでいくうちに段々違和感が生じてきました。
どうやら謎は随所に挟まれるダンスシーンにあった様です。
観終わった後には工夫が張り巡らされた演出にちょっと感動してしまいました。
あのダンスにはそういう意味があったのか~等ポロポロ気付きが浮き上がってきて面白いのです。
その気付きの数々が全て演出家さんの意図するものと一致しているのかは確かめませんでしたが、うんそれでOK。
イマジネーションを強く刺激する画期的な作品だったと思います。
前の当日パンフの言葉が自分にとって効果的だったのは、法律的な解釈や登場人物のバックグラウンドといった細かい事に対して逐一追求しようとは思わず、ただひたすら本流の物語に没頭できた点にあります。
気になっていた年配のお客さん達も満足気な笑い声をたてながら「あそこはこういう事だったのねー」と終演後の談義に花を咲かせていたのが印象的でした。
Silent Majority
劇団龍門
サンモールスタジオ(東京都)
2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
もし現在、問題を抱えて行き詰っている人には、きっと何らかの指針になってくれるのではないかと思えるエンターテインメント作品。
予定調和に収まらないエネルギッシュな展開に終始圧倒されながらも観終わった後には、登場人物に比べ全然平穏で甘ちゃんな私にも、どこか視界が開けてくる様なスッキリ感をもたらしてくれました。
既に見た目だけで人生ドラマを感じさせる趣ある役者さんと、若さ溢れる役者さんが混在していて実にバラエティーに富んだ座組でした。
フーリッシュゲーム
劇団なのぐらむ
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/05/17 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
思うに、演劇という創作である事を前提に「お葬式」モノにはハズレ無しだなーと。
それぞれが抱く大小様々な故人を偲ぶ気持ちに、個人的思惑・性格が合わさって出来上がる独特の空気感。
これにはつくづく創り手さんの観察眼の鋭さに感心してしまいます。
暗転なし、リアル進行の1時間30分。
本作の舞台は葬式会場そのものではなく、有志が別宅で行った「偲ぶ会」であり、ご家族がいない場所であるが故に生まれる ちょっと気が緩んだ空気が実に活かされていました。
“あらすじ”ほどのイケイケなドンチャン感はありませんでしたが「ゲーム」的な要素があるとすれば、故人「安藤くん」の死因に憶測が飛び交い「真相を知りたいよね」という目的を含有しているところでしょうか。
そしてこの部分が「安藤くん」の人柄を肉付けしていき、多種多様な人達のリアルに雑多な「偲ぶ会」の進行の軸にもなって、もうひとつの面白味となっていました。
本当に沢山の人が出入りしますが、その一人の故人をめぐっての雑多さがかえってリアルで味わい深く、この人間模様こそが面白味のメインでした。
カッター
シアターノーチラス
RAFT(東京都)
2018/05/10 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
アガサ・クリスティー張りに全員が真犯人の可能性を秘めたストーリーではあるものの、謎解きを楽しむというより、どうしても注目してしまうのは、その人間模様。
仕事仲間が容疑者のまま自殺してまだ日が浅いというのに、この雰囲気は一体なんだ。と最初からイヤ~な人達だという印象を持って観ていましたが、さもありなん。
己のセンスを競い合うパッケージデザインという業種も関係しているのでしょうか。
本来視線をそらしてしまいたいはずなのに、思わず凝視してしまう心の闇。
日々満員電車に揉まれ、会社では自信をすり減らしていく都会の日常が、自分でも意識しないうちに心を歪めていく人物サンプルを目の当たりにしている様でゾッとしました。
Y FUTAMATA vol.2
ロ字ック
小劇場B1(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
『ぼんやりした話/セプテンバー』
せっかくオムニバス企画公演をするなら、この機会に振り切った作品がしたい!
そんな思いが伝わる不条理を遊び倒した様な作品。
いい出汁がいっぱい出そうな役者さんの旨味がよく出ていて楽しめました。
「う~ん」といった感じのお客さんと、思わず笑ってしまうお客さんとがいらっしゃいましたが私は後者。
「何じゃそりゃ」「そこスルーかよッ!」脳内でツッコミまくっていました。
『Re:』
役者さんの瞬発力が生かされていた作品で、こちらも実験的な作風。
後半もうひと工夫欲しい気もしましたが、世知辛い社会に対してのメッセージは大いに共感でき、じんわり沁みてきました。
『カラオケの夜』
前2作とガラッと変わって超リアルな二人芝居。
男女の機微が何気ない会話や所作だけでビシバシ伝わってきて思わず感動。
まだ若い役者さんなのに職人芸の様な味わい深さで、最後に根こそぎもっていったなーと。
どう考えても実体験が存在していなければ描けないであろう血の通った切なさでした。
全編を通じて「巧いなー」と感じたのですが、前2編がタイプかどうかで全体の印象が大きく変わってくるのかも。と前に掲載されているレビューを拝見していて思いました。
「篝火」
劇団 背傳館
王子小劇場(東京都)
2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
客席が舞台を3辺から囲む臨場感仕様。
実際に、社会から弾き出されて自殺しようと集まった男女が醸し出すダメ~な空気の臨場感がたっぷりでした(笑)
ただ人数が多い中、会話からはちょっと説明的なアプローチが少なく感じられ、同時に2か所でやり取りが始まったりで個人的には追いつくのに必死な面も。
観ているうちに、かなり練り込まれた「空間」そのものの体感を最優先すべきと思えてきたので、途中からは台詞の咀嚼はほどほどにする事にしました。
歪んでいく様な、救いがある様な無い様な、自身の身をそこに置かなければ表現しきれない、群像で創り出された不可思議な「空間」
何というか、出来る限り全員の観客に的を合わせて打ったというより、打った後に、はて何人にヒットしたのか確認してみようかというギャンブル性を感じる公演(異色作)でした。